朝9時近くに起きると、予報通り、外は一面の雪景色。雪はまだ降りつづけていた。
いつも通り、2階の窓から眺めた東京の家々の屋根の雪景色を撮った。
中国映画“紅夢”(1991年。張藝謀(チャン・イーモウ)監督、鞏俐(コン・リー)主演)。
題名は「紅」で、主人公の大邸宅の玄関には赤い大きな提灯が提げられていたのだが、なぜか、ヒロインが殺される冬の早朝の、雪をかぶった邸宅の屋根だけが印象に残っている。
向かいの家の南側に植わっているヒマラヤ杉も雪をかぶって屹立している。
話は変わって、先日鎌倉へ行ってきたので、久しぶりに小津安二郎監督の“晩春”を観た。
最初のシーンは、記憶通り、北鎌倉駅に初夏の風が吹きわたるショットだったが、踏切は別の映画だったようだ。
隣りの鎌倉駅のホームの場面もあった。
先日、乗り換えのために降り立った鎌倉駅のホームは、けっこう観光客で混みあっていたが、“晩春”の頃は長閑なものである。
1949年の完成とあったから、ぼくの生まれる前の年、今から62年前の風景である。
走っている電車は、古い木造の車両である。
ぼくの子どもの頃の湘南電車は、緑とオレンジ色の2色に塗り分けた車両だったが、それ以前はこんな電車だったのだ。
高橋治「絢爛たる影絵」などを読んでからは、いよいよ原節子の顔が怖いので、その辺は早送りで済ませる。
笠智衆との京都旅行で原節子の気持ちが和らぐのだが、清水寺のシーンでは、笠智衆と坪内美子のツーショットが見られる。坪内はぼくが好きな女優だが、笠の友人の後妻役で出ている。
そして、ラストシーン。
娘、原節子を嫁がせた婚礼の帰り道、料理屋に立ち寄って月丘夢路と酒を飲む。
このあたりは、“秋日和”の岡田茉莉子と同じである。“秋日和”で褒められていたのは佐分利信だったが。
自宅前で煙草を捨てるモーニング姿の笠智衆。その後、家に戻った笠がリンゴの皮を剥きながら眠る(?)シーンになる。
※ スチール写真はいずれも小津安二郎監督“晩春”(1949年)“日本名作映画集21”KEEP社刊より。
2012/2/29 記