この5月に見た映画は、きのうラスト・シーンだけを見た“猟奇的な彼女”と“シベールの日曜日”を除くと、“二重結婚者”と“ドクトル・ジバゴ”の2本だけだった。
“二重結婚者”(原題は“The Bigamist”)。
重婚は、わが国でも、そして現在でも、婚姻の取り消し原因であると同時に、刑法上の犯罪でもある。重婚罪は六法を探してもなかなか見つからなかったが、刑法184条にあった。なんと、「わいせつ、姦淫」の罪の後に置かれていた。そういう位置づけだったのか。
ぼくは、いまだに刑法各論の犯罪の並べ方のルールが分からない。
サンフランシスコに住む妻のあるセールスマンが、ウイークデーはロスアンゼルスに単身赴任するが、そこで貧しいけれど心やさしい女性と恋に落ち、子までもうける。シスコで待っている妻には何の不足もなかったのだが、そういうことになってしまう。
やがて、この関係が発覚し、男は裁判にかけられる。結末は描かれてないが、ラスト・シーンの妻の表情は夫を許しているように見えた。
不思議だったのは、男がロスの女とは法律上の結婚はしていないことだ。それでも当時(1953年作品)のキャリフォルニア州の刑法では重婚罪が成立したのだろうか。
わが国の判例ではこのような関係は重婚的内縁といって、重婚とは区別されている。もちろん重婚罪にはならないのだが。
もう1本は“ドクトル・ジバゴ”。
近所のホームセンターのレジの横に並べられたDVDやCDの中から見つけて買った。500円だった。
当然、オマー・シャリフとジュリー・クリスティーの、あの“ドクトル・ジバゴ”だと思って買ったのだが、リメーク版だった。ケースのスチール写真を見れば分かることだったのだが、迂闊だった。
知らない俳優ばかりだが、ヒロインのララ役のキーラ・ナイトレイという女優は“パイレーツ・オブ・カリビアン”に出演したとある。興味のないジャンルなので知らないが、そこそこの役者なのだろうか。
リメーク版と知ってがっかりして、ほったらかしにしていたが、ある時、いよいよ見る物がなくて見はじめたら、学生時代に見たオマー・シャリフのものとは違って、善意だが空想的なジバゴと対比して、あの悪徳弁護士の生命力(?)にも何がしかの感慨をもった。
こちらが歳をとったのか、旧版とリメーク版とで描き方が違っているのか。いつか旧版も見てみよう。
* “二重結婚者”(1953年)Classic Movies Collection シリーズ、ファーストトレーディング。“ドクトル・ジバゴ”(2003年、イギリス、Granada)、ウエストブリッジ。
2011/5/30