入試も一段落して、ようやく春休みらしくなってきた。天気もめっきり春めいてきた。
東京は、だいたい2月の17日から20日頃の間に春がやってくることになっている。気温が低かったり、風が吹いたりしたとしても、この時期になると確かに光が変わるのである。
4年生の卒業判定も終わり、わがゼミ生たちは、無事全員卒業が内定した。
卒業判定発表の日には、ゼミ生たちが研究室に報告にやって来て、卒業の喜びを語っていった。
ゼミ生たちには出来上がった「ゼミ論集」を渡し、ささやかな卒業祝として、去年のうちに軽井沢のメルシャン美術館で買っておいたモネの絵のコースターをプレゼントした。
3月は、会議や卒業式などの日を除いて、1日8時間勉強をして、2時間は映画(DVD)でも見ることにしよう。
5月初めの連休明けが締切りの大きな原稿執筆を抱えている。締切りまでの60日間を逆算すると、1日あたり結構やらなければならない。4月に入ると新学期の行事もあるし講義も始まるから、3月中にやれるところまでやっておかないと、5月の連休に遊びにもいけなくなってしまう。
・・と言いつつ、きょうは午前中に3時間ほど原稿を書いた後、昼飯を食べながら、“ガンヒルの決闘”を見てしまった。ま、今日はまだ2月最後の日なので許してもらおう。
そして、この“ガンヒルの決闘”がよかった。時代はよく分からないが、もう子どもたちは、生まれてから一度も銃声を聞いたことがないと言っていた。舞台はオクラホマの片田舎ガンヒル(架空の町かな)。
その町を支配する牧場主アンソニー・クインの馬鹿息子が、隣町の保安官カーク・ダクラスの妻(インディアンの娘だった)を犯して殺してしまう。クインと保安官は旧友同士だったが、保安官はガンヒルに乗り込んでいって、犯人である息子を逮捕する。
父クインは、息子を護送させまいと保安官の滞在するホテルを部下たちに包囲させる。町中はすべてクインの言いなりの者ばかりだが、クインに暴力を振るわれた元愛人の協力もあって、保安官は鉄道の駅に到着する。
“ガンヒル発最終列車”(これが原題である)で息子を護送して裁判にかけようとするのだが、息子の共犯者が脱走させようとして、誤って息子を撃ち殺してしまう。妻に先立たれ、一人息子も失ったクインは、カーク・ダグラスに決闘を挑むが、敗れる。
歩み寄ったカーク・ダグラスに向かって、アンソニー・クインが、「おまえの息子は何と言う名前だったか? 立派な人間に育て上げろよ」と言ってこと切れる。
キネマ旬報『アメリカ映画作品全集』の解説では、「浪曲調西部劇の水準作」などと失礼な評釈を加えているが、ぼくはラスト・シーンで不覚にも目頭が熱くなってしまった。☆☆☆はつけていい。
アンソニー・クインがいい。昨日見た“リオ・グランデの砦”のジョン・ウェインとはえらい違いである。アンソニー・クインには表情があるが、ジョン・ウェインには「ジョン・ウェイン顔」しかない。
カラーで撮影されたオクラホマ(?)の田園風景も美しかった。ちょうど今時分のような感じである。
* 写真は、キープ(KEEP)版“水野晴郎のDVDで観る世界名作映画[黄1] ガンヒルの決闘”。原題は“Last Train from Gun Hill”、1959年。