ぼくは、熟年世代を対象にした、近くの大学の公開講座を受講しているが、一年ほど前の、伊藤淳先生の美術史の中でグエルチーノが出てきたことを思い出した。”バロック美術の魅力(1)/ルネッサンスの後継者たち”のシリーズで、カラッチ一族、グイド・レーニにつづきグエルチーノが取り上げられていた。あの彫刻家ベルニーニもこのシリーズだった。カラヴァッジョは、これとは別に5回連続。
そのテキストによると、グエルチーノ(1591-1666)は、エミリア(チェント)の出身でローマ、ボローニャで活躍した。グエルチーノという名は”やぶにらみ(guercio)という意味で、彼のあだ名だったとのこと。17才のとき、ボローニャ派の画家、ベネデット・ジェンナーリと友人関係となり、1615年(24才)のとき、ボローニャに移り、ルドヴィーコ・カラッチの称賛を得る。グエルチーノの初期のスタイルはアンニーバル・カラッチの影響を受けるが、後期になると同時代の巨匠、レーニの作風に接し、より明るく、明瞭な絵を描くようになる。またローマ滞在中は、教皇や枢機卿に依頼されて、サン・ピエトロ寺院等の巨大な祭壇画を106点も制作した。
さて、展覧会では、時系列にグエルチーノの作品が展示されていく。大きな絵が多く、紺色あるいは深紅色の背景の中に浮かび上がる様は見事だった。
はじめに、グエルチーノを認めてくれた、ルドヴィーコ・カラッチの絵を。ルドヴィコ・カラッチ 《聖母子と聖人たち》
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1615~16年(24歳)、カラッチの影響を受けた、グエルチーノ ”聖母子と雀”。幼いキリストのスズメをみる眼のカワイイこと。
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そして、初期画風が確立した頃(1617年、26才から)の作品。グエルチーノ”聖イレネに介抱される聖セバスティアヌス”
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二つ折りちらしの裏表紙に採用された、1618年(27才)、グエルチーノ”キリストから鍵を受け取る聖ペテロ”。迫力満点!ゲーテは”彼の筆の軽妙さ円熟さはただただ驚異のほかはない”と語り、スタンダールは”最後の大画家”とまで言った。
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グエルチーノ”ロレートの聖母を礼拝する聖ベルナルディーノと聖フランチェスコ”もこの頃の作。
第3章では、ローマ滞在と画風の変容がテーマ。表紙に採用された、1622年(31歳)作、”グエルチーノ”聖母被昇天”。
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1628-30年(37才頃)グエルチーノ ”聖母のもとに現れる復活したキリスト”
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グエルチーノ”放蕩息子の帰還”、グエルチーノ ”聖母と祝福を授ける幼児キリスト”もこの頃の作。
第4.5章に入り、グエルチーノの後半生の画業。初期の自然主義的で光の効果を駆使した表現法に代わり、明るい光を当てられた理想的な人体像を好んで制作。同時代の巨匠、レーニの影響が大きい。この章では、グエルチーノとレーニの、同じ主題の絵が並べられていて、面白い。聖と俗のはざまの女性像。ラファエロの再来とまで言われたレーニの”美人画”はさすが。ぼくは、女性美に関しては、グエルチーノよりレーニに軍配をあげる(笑)。
グエルチーノ”説教する洗礼者聖ヨハネ”
グエルチーノ”ゴリアテの首を持つダヴィデ”
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グエルチーノ ”スザンナと老人たち”
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グイド・レーニ ”ルクレティア”
グイド・レーニ ”巫女”
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出展作品の多くはチェント市立絵画館からのもの。2012年5月の大地震で被害を受け、絵画館はいまもって閉館し、復旧のめども立っていない。本展は震災復興事業でもあり、収益の一部は絵画館の復興に充てられるとのことです。
とても素晴らしい展覧会でした。放蕩息子の帰還
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国立西洋美術館、常設のフェルメールもいいですよ。
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今日はこれから、六本木のフェルメールさまにご挨拶。
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