気ままに

大船での気ままな生活日誌

舞踏会の手帖

2015-03-22 06:38:28 | Weblog

舞踏会の手帖。1937年のフランス映画だから、ぼくは観たことはないし、ビデオでも視聴したこともなかった。でも、映画史上に残る名画ということくらいは知っていた。鎌倉の川喜多映画記念館で上映されているというので、お彼岸の墓参りの帰路、観てきた。一言で感想をいえば、さすが、名画!でしょうか。約2時間、ひとときも眠らせない(汗)、素晴らしい映画でした。

はじめのシーンが、霧立ちこめる、イタリア北部のコモ湖畔。ここの風景は、ちょっとした思い出があるのでいきなりひきこまれる。ここで一泊したことがあるのだが、スイスに向かう列車の時間の関係で、早朝、ここを出発しなければならなくなったこと。もっと、ゆっくりしたかったことを思い出す。

さて、主人公のクリスティーヌ(マリー・ベル)はコモ湖畔に住んでいるが、主人を亡くしたあと、16歳の時の初めての舞踏会のことを想う。そして、そのときの手帖を頼りに、昔の七人の踊り相手を訪ねて回る旅をしようと思う。

当代きっての名優七人による七つの物語が次々と繰り広げられていく。いくつかのエピソードを並べた、いわゆるオムニバス映画の走りだという。若き日の自分に思いを寄せてくれた男たちの現在はいかに。彼女の結婚を知って、すぐ自殺してしまったものもいれば、神父さんになったり、アルプスのガイドになったり、自身が精神を病む、陰の医者になったりしていた。

クリスティーヌの心に残る、20年前の夢のような舞踏会の思い出に比べて、現実の男たちの生活の落差に失望するのだった。レジメの文章を借りれば、心に美しく描いてきた”過去”への失恋。

コモ湖畔に戻ったクリスティーヌは、残す一人、”本命”の恋人が、実は湖畔の向こう岸に住んでいることを知る。もう、”失恋”はいやと思いながらも、結局、彼を尋ねると、直前に世を去っていた。そして豪邸が今日人手に渡ると、一人残された子供が言う。

さびしい物語でこのまま終わるのかと思ったら。ラストシーンで救われた。まるで春風が心の中に入ってきたみたい。クリスティーヌが、母親として、あの少年を、初めての舞踏会に笑顔で送り出しているではないか。

それぞれの短編が面白いし、それらがつながって、トータルとして人生劇場をしみじみ考えさせる、素晴らしい映画だった。

 

春のお彼岸に必ず咲く、お寺のバイモ(編笠ユリ)の花


大銀杏とお地蔵さん

 

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