こんばんわ。
第1報は主題をはずれて、”思い出のドレスデン”ばかりでしたが、いよいよ本論に入ります。ドレスデン国立古典絵画館所蔵のフェルメールと17世紀オランダ絵画展。本展の目玉は、フェルメールの名作、”窓辺で手紙を読む女”。それも、修復されたもので、所蔵館以外では今回が世界初公開というもの。まず、これから入りましょうか。
ぼくも8年半前に、修復前の作品をドレスデンで見ている。それがこれ。
女性の背後の壁に、かってキューピッドが描かれていたことは、すでに1979年のX線調査で判明していた。ただ、長年、その絵はフェルメール自身が消したものと考えられてたが、2017年の科学的調査により、フェルメールの死後、別人に消されていたということが分かった。どうも、当時、この絵はレンブラント作と思われていたらしく、所有者の判断でよりレンブラントらしい絵にしようとキューピッドを塗りつぶしたらしい。
それならばとフェルメールが当初描いた作品に戻そうと、3年かけて塗られた絵の具層を取り除く作業がドイツチームにより続けられた。すると、フェルメールが描いた画中画のキューピッドが現れ、よい保存状態であることがわかった。さらに慎重に修復し、完成させた。その修復の過程は、映像等で紹介されている。
これが修復後の作品である。
展覧会場には修復前の複製品も並べて展示されている。
この作品は、窓から差し込むやわらかな光の表現、室内で手紙を読む女性像など、フェルメールがそれまでの宗教画から自身のスタイルを確立したといわれる初期の傑作といわれている。ただ画中画が入ることで印象が違ってくる。
当然ながら、この修復には賛否両論がある。山田五郎さんの公式ユーチューブによると、”これは、フェルメール修復事件ですよ。個人的には大ショックですよ。とくに、これは自分が初めて見たフェルメール作品だし。修復で台無しになってしまった、200年もの間、みなこれで親しんできたのにわざわざ直すことありませんよ”と手厳しく批判している。ぼくもどちらかというと、五郎さん派かな。壁にキューピッドが居ると目移りがしてしまう(笑)。
ついでながら、五郎さんによると、アムステルダム国立美術館の”牛乳を注ぐ女”の背後の壁にも地図が描かれていたらしい。でも、オランダ人はドイツ人みたいなこと(科学的修復)はしないと思う、と。確かに、この背景はこのままがいいと僕も思う。空白は日本人好みでもあるのかも。
ついでながら、名画の修復で思い出すのは、ルーブル博物館の”レオナルドダビンチ展”でみた”聖アンナと聖母子”。
ルーブル所蔵の”聖アンナと聖母子”が数年間の修復作業を終えたので、そのお披露目を目的とした展覧会だった。この作品はレオナルドの晩年期に描かれたもので、自身が何度も手を入れた未完の大作だそうだが(ぼくには完成品にみえるけど、背景などが十分でないらしい)、非常に高い評価を受けている。さて、リニューアルされた作品の評価はどうか。鮮やかになりすぎて、違和感をもった人も多いと、ガイドさんが言っていた。たしかに修復前の薄汚れた感じの、マリアの青いマントは眩しいくらいのブルーになっていた。実際はどうだったのか、レオナルドに聞いてみるしかないだろう。修復に関わった専門家、20人のうち、2人が途中で、”ゆきすぎる修復”を理由にメンバーから抜けたということだ。
レオナル・ド・ダビンチ 聖アンナと聖母子 (みためはもっと青が鮮やか)
あれ、また本題からはずれて、脱線してしまった。たしかに、原状を修復する程度にするか、時代を遡ってまで修復するのが良いのか、議論のあるところだろう。逆に色彩の経年変化を計算に入れての作品もあるだろうし。素人が口をはさむことではないので、ここら当たりで退散しよう。
なお、この絵を含む当絵画館の所蔵品はドレスデン大空襲から逃れたが、第二次世界大戦終了後、ドレスデンはソビエトの占領下となり、このときに多くの絵画と共にキエフへと持ち去られた。その後、これらの絵画は東ドイツへ返還されたが、多数の絵画が行方不明になり、中には破棄されてしまったものもあるようだ。絵画泥棒の中に若き日のプーチンがいたかどうかは知らない。
また、脱線してしまったようだ。では、おやすみなさい。
いい夢を。
今日、見てきた海棠の花。