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【books】春にして君を離れ

2013-05-11 20:28:59 | books
・・・「春にして君を離れ」読了・・・
ずっと読んでたアガサ・クリスティー「春にして君を離れ」読了!うーん… 上手く言葉に出来ない。哀しくもあり、切なくもあり、失望もあるけど、結局そういうものかもしれないと思ったり… 夫婦の話しであり、家族の話しだけど、"自分"の話し。気づくと読み手も自分と向き合っている。さすが! Posted at 08:06 PM

「春にして君を離れ」をはじめとた恋愛小説は、ミステリーと思って買った読者を失望させないために、メアリ・ウェストマコット名義で出版されたとか。なるほど、素敵☆ Posted at 08:10 PM



*ネタバレありです! 結末にも触れています!

本を読むのは大好きなんだけど、最近はなかなか時間が取れない・・・ 集中してしまえばあっという間なんだけど、ちょっと間が開いちゃうと結構放置しちゃったり。この小説は、もう何年も前にBSか何かでアガサ・クリスティー特集の番組で紹介されていたので、気になって購入。ずーっと放置しちゃってたw

「第2次世界大戦直前、イギリスの田舎町の弁護士の妻ジョーンは、病気の娘を見舞うためバグダッドへ行った帰路、汽車の遅れでテル・アブ・ハミドで足止めを食ってしまう。偶然にも再会した女学校時代の友人ブランチの何気ない一言が気になり、1人で過ごす長い時間、家族のこと、自分のことに思い巡らす。すると、今まで思っていたのとは違う面が見えてきて・・・」という話。うん! これはおもしろい!!

主人公のジョーンは自分は家事も子育ても完璧な主婦だと思っていた。イギリスの中産階級の比較的裕福な家庭の妻なので、メイドと女性料理人を雇っているため、いわゆる家事自体はしないけれど、それらをコントロールするのが、この地位の妻の役目。料理人が多少愚痴ってきても、見事にコントロールしていると思っている。夫のロドニーは最近疲れているようだけれど、結婚当時牧場を経営したいなどと言っていたが、先祖からの仕事である弁護士を継がせたのは正解だったし、3人の子供達も世間の誘惑から守ってきた。自分は家族を愛しているし、家族からも愛されている。完璧な主婦で完璧な人生! でも・・・

2個目のtweetにも書いたとおり、この作品はメアリ・ウェストマコット名義で発表され、数十年間もアガサ・クリスティーの作品であることは隠されていた。理由もtweetに書いたとおり。確かに誰も殺されないけど、これ立派なミステリーかもしれない!

読み手も最初のうちは新聞や雑誌に載っている身の上相談を読んでるような気持ちで、私は有能な主婦で、夫や子供達を愛し、彼らが間違った道に進まないように導いてきたという論調に、イヤイヤそれは旦那さんや、子供達から見たらそうではないんじゃない?なんて思いながら読んでいる。ジョーンは決して嫌な人ではないんだけど、この思い込みの激しさはちょっと・・・ なんて思っていると、そのうちジョーン自身が「あら?」っと思い始める。ロンドンを立つ時、自分を見送った後のロドニーの後姿は、開放感あふれるものではなかったか? バーバラとその夫ウィリアムの何か隠しているような態度は? その度、ほらやっぱり迷惑がられているじゃない!とか、ちょっと勝ち誇った気持ちで読んでいる。

その内、ジョーンは癌で亡くなった近所の主婦のことを思い出す。夫が横領事件を起こし逮捕されたあげく、出所した夫と子供達の生活を支えるため働きづめ、ついには癌で命を落とす。なんという、みじめな一生と哀れんでいた女性。でも、その女性こそロドニーが愛した人ではなかったか・・・ というところまで思い至る。ここまでくると、読んでいる側も、少し不安になってくる。自分が良かれと思っていしていたことが、実は相手にとっては迷惑だったことはなかったか? 自分は相手を見たいようにしか見ていなかったのではなかったか? ジョーンと同じように考え始めてしまう。この頃になると、夢中になってページをめくる手が止まらないw

そして、灼熱の砂漠の中、ジョーンは光を得る。そこに至るまでは、追いやっても追いやってもよぎる思いにイライラしつつ、とうとう見たくなかった真の自分と向き合うことになる。その苦痛の描写がすさまじく、こちらもジョーンと同じく気を失いそうになる。そして、苦痛を乗り越えた後、実にスッキリとまるで別人のようになったジョーンの姿に、読み手としては感動を覚える。そうそう、自分もこの境地になりたいとすら思う。ところが・・・

ロンドンに向かう列車の中で、ある貴婦人と同室になる。ジョーンは彼女に請われるままに、自らに起きた体験を語る。貴婦人はそれは素晴らしいことだと言われるけれど、何かかジョーンの中をよぎる。ロンドンに着いて長女と食事。ジョーンは長女の瞳に自らへの冷たい思いを見てしまう。そして、自宅へ戻ったジョーンには、2つの選択肢が生まれていた。新しい自分に生まれ変わる未来、今までの自分を貫き通す未来。ジョーンの選択は後者だった。この選択は自らの意思でしたというよりは、気持ちが自然とそちらに向かったように描かれているけど、実際作者の言いたいことは人は変わらないということなのかな・・・ 今回の旅の間に自分が思った"本当の自分"や相手の"本当の姿"は、やっぱり妄想だったのだと思わないと、ジョーンは生きていけないってことかも? 気づかなかった方が幸せってことだってある。ここで終われば残念な感じだなでも済むのだけど、もう一ひねりしてくる。

今まではずっと、ジョーンを追いかけていた視点は、最後にロドニーの視点になる。読んでいる側には、当然ジョーンが妄想だと思い込んだことが事実であることは分かっているけど、ロドニー視点でそれが立証される。ロドニーのジョーンに対する思いは、ジョーンの回想にもあったとおり"リトル・プア・ジョーン"(かわいそうなジョーン)なのだけど、それは最後の一言で別の意味を持ってくる。「君はこれからもずっと1人だ。どうかそれに気づきませんように」とロドニーは思うのだけど、一見優しいこの一言の残酷さったない。だって夫婦なんだから、ロドニーにだって責任があるじゃない! ジョーンは確かに思い込みが激しくて、見たい世界しか見ず、狭い視野の中で判断し、夫や子供達にその価値観を押し付けて来た、だったらそれは違う言ってあげればよかったのに、ロドニーはそれをしなかった。だったら、ロドニーだって同じじゃないか。ということ・・・ 結局、人は誰でも見たいものしか見ないってことかと・・・ 完璧な人間はいない。

この本自体の出版当時の評判については不明。なので、ご本人の懸念どおり、アガサ・クリスティー名義で出版されていたら、殺人が起きないと失望したのかも分からない。自分はアガサ・クリスティー名義でしか知らないわけだし、ミステリーではないことを承知で読んだ。正直、最初はミステリーじゃなくておもしろいのかな?と思いながら読んだけど、さすが読み手を惹きつける! 何度も言うけど、ある意味ミステリーだしw

というわけで、オススメ!


http://twitter.com/maru_a_gogo


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【books】ぼくと1ルピーの神様"

2009-06-22 01:27:46 | books
感想文:"ぼくと1ルピーの神様"

昨日読み終えた。活字中毒なので、小説などは何かしら読んでる。このblogでも自分が心動かされた本について紹介できたらいいなと思って、一応カテゴリーには"books"を作ってあるのだけど、読書感想って難しい。与えられた情報が文章しかないので、脳内でイメージを映像化していくわけで、それが読書の醍醐味でもあるのだけど、それだけに自分の主観が入り込みやすい。でも、映画の感想にしても勝手にいろいろ書いてるわけだし、あまり深刻に考えずに書いてみるとする。

これは『スラムドッグ$ミリオネア』の原作。だけど全く別モノ。コンセプトだけ借りた別モノだというのは知っていたので、別の人物の物語として楽しく読めた。こちらも大変な人生なので楽しんだというと語弊があるけど、小説として堪能したという意味。映画は主人公の人生を主軸として時間が流れ、そこにクイズの録画映像、取調べが絡んで交互に描かれていた。原作も基本的には3点が入り交じり描かれるけれど、大部分を占める主人公の人生ではなく、それを語る現在を起点としているため、彼の人生は時系列ではない。

クイズの問題が時系列どおりに出題されるというのもおかしいし、後の伏線を張りながらの構成となっているため、こんな入りくりになっているんだと思う。そもそも、現在と過去と過去の3点を絡ませているので、小説ではOKだけど、映画では余計に混乱してしまうかもしれない。だから映画の変更はよかったんじゃないかと思う。小説では各パートに「ラム(小説の主人公の名前)16歳」などと記載があるので、そんなに混乱しないけど、映画では18歳までの生い立ちを演じ分けるには俳優は3人が限度。となると、彼の年齢の変化を見せるのは難しいし、それぞれが交互に出てきても分かりにくいかも。

その他の変更点としては、主人公の名前が違っていることと、兄の存在が小説にはないこと。もちろん主人公は全く一人ぼっちというわけではなく、その時々友人や大人達に助けられたりしているけれど、基本は天涯孤独であるということ。小説ではページを戻れば登場人物達がすぐ分かるけど、映画ではあまりに人物が多いと混乱する。インドの人の顔って見分けにくいし(失礼) なので、この変更もありだと思うし、兄弟の絆と初恋の2つの愛情を主軸にしたのは映画としてはいいと思う。

と、ここまで映画との比較ばかり書いてきたけど、ここからは小説の感想を書こうと思う(笑) ラスト少々ご都合主義的になってしまう部分はあるけれど、原作でも疾走感と熱気がスゴイ。そして主人公ラムの人生がやっぱりスゴイ。貧困ゆえに死が常に身近にある。そして暴力と性。ラムは孤児なので、それらの真の意味や対処の仕方を教えてくれる人はいなかった。彼は全て自らの体験の中で学んでいく。それらを知ることは「生きる」ということ。たった1人で生きていくそのエネルギーはすごいけど、彼が一貫して思っていたのは「生きる」ってことより「死なない」ってことだったのかも。

ラムが人の死を初めて認識したのは8歳の時。名前すらなかった彼に名前をくれた人。キリスト教の神父だった彼は、主人公にラム・ムハンマド・トーマスという名前をつける。ラムとはヒンドゥー教徒の、ムハンマドとはイスラム教徒に多い名前。そしてトーマスは英語名つまりキリスト教徒の名前を持つことになる。多分、作者が最も言いたかった事はこの3つの名前に託されているんだと思う。この宗教の違いがインドだけではなく、世界中で悲劇を生んでいる。作者自身の宗教が何であるのかは不明だけど、3つの宗教の名前を持ちながら宗教を持たないラムは、アラーの神でも、キリストの神でもない、1ルピーの神様=運命と自分を信じることで生きていく。宗教なんて関係ないってことが言いたかったのかなと思う。彼にこの名をつけた神父は、そこまで意図したわけではなかったのだけど・・・。そして神父はラムに暴力と性、そして死を身をもって教えることになる。これも意図したわけではないのだけど。

ラムを支えていたのは結局人への愛情と正義感。彼はそれを意識してはいないし、博愛主義とも違うから、彼は彼が愛した者のためにのみ行動を起こすけれど、それは別に自分勝手なわけでも、彼が無知であるからでもない。人は多かれ少なかれそういうものだと思う。ただ、頼るものもお金も地位も無い少年が、自分の身を守り、愛する者達を守るためには、時には法に触れてしまうこともある。彼がずっと背負い続けたそれらの罪は、彼が意識せずに必死でしていることだけど、全て正義感からきている。厳密に言えば全て罪に問われることだと思うし、正しいことだとは思わないけれど、でもラムの行動が間違っているとも思わない。それがスゴイ! それは貧しくて無学で孤独な少年に同情しているからじゃない。むしろ彼の「生きる」能力の高さに感心してしまう。そして、人生は机上の論理で進んでいくものじゃないんだと改めて思う。

彼の人生の中で起きた事件=クイズの解答というのはやっぱりスゴイ設定だと思う。そしてその事件を彼は自らの力で乗り越えてきた。時には法を犯しても貫いてきた彼の強さは、前にも書いたけど愛した人を思う気持ち。相手のためを思ってのことではなくて、彼が相手を思う気持ちが彼を突き動かすのだということ。13歳の時、アルコール依存症の父親にレイプされそうになった隣人の少女を思ってした事も、自ら貯めた5万ルピーを盗まれどん底の彼を救ってくれた、シャンカールの悲しすぎる死に対して、彼が感じた悲しみと憤りからした事も。そして愛するニータを救うためにした事も。全て法に触れることかもしれない。でも、何も持たない彼が愛する人を思ってとった行動に感動すらしてしまう。そして、それが彼を救うことになる。"情けは人の為ならず"って諺がインドにもあるのかは不明だけれど、まさにその通りなんだと思う。そして、それは見返りを求めず彼の純粋な行動だからこそ肯定されるのだし、美しいのだと思う。そういうことが伝わってきた。

原題は「Q&A」ととってもシンプル。このシンプルさは潔いけれど「ぼくと1ルピーの神様」ってタイトルも嫌いじゃない。ちょっとお伽話っぽい話と勘違いされそうだけど、後にわかる"1ルピーの神様"の正体にニヤリとなるから。彼がクイズ番組に出場した真の目的は、本質的には映画と同じだけど、もっと重い。この辺りも、ライフライン(原作では「クイズ$ミリオネア」のパクリ番組なのでライフラインじゃないけど・・・)も、彼が救われるのも、ちょっとご都合主義な気がしないでもないけれど、"情けは人の為ならず"ってことを描きたいのであれば、これは正にその通りなのでOK。そして何よりスカッとするし(笑)

映画同様、ラムの人生は辛い。正直、映画よりも悲惨かも。でも、こちらも映画同様、その疾走感とラムの生きる強さに心を動かされて、重くなり過ぎず一気に読んでしまった。映画の兄と同名のサリムの存在がラムの心の支えとなっているけれど、彼の存在がこの作品の救いであることもおもしろい。

おもしろかった! インドの現実とかそういう問題も多く描かれている。でも、そういう問題を知ろうと構えて見るのではなく、ラムの人生から"生きていく強さ"を感じればいいんだと思う。自分の信念を貫く強さというか・・・。もちろん間違った信念を貫いちゃダメだけど(笑) そして「相手のためを思って・・・」なんて言い訳したりしないで、自分の本能にしたがって生きていけばいいんだと思った。そんなパワーをもらえた!


★ぼくと1ルピーの神様:ランダムハウス講談社 840円

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