'07.11.25 「鳥獣戯画がやってきた!」鑑賞@サントリー美術館
これは見たかった! 急に六本木に行くことになったので、少し早めに出て見て行くことに。日曜日の4時ごろなら空いてるかと思ったら甘かった。間近で見たい人は入口から列ができていて、一本目の展示に辿り着くまでに20分待ちという状態。
鳥獣戯画というのは、京都・栂尾の高山寺所蔵の甲・乙・丙・丁の4巻からなる国宝の絵巻物。兎や蛙などの動物を擬人化し、人間と同じ遊びに興じる姿を描いたもの。特別美術に興味のある人でなくても、一度は目にしたことがあるんじゃないかと思う。以前からその悦に入った動物たちが好きで、一度実物を見てみたいと思っていた。
実は甲・乙・丙・丁の4巻ものというのは知らなかった。一番有名な兎と蛙が描かれているのは甲巻。これが一番素晴らしい。すべて紙に墨一色で描かれている。一見簡単に描かれているように見える線には全く迷いがなく、ぶれもにじみもない。筆で一気に描くのは大変なことだと思う。擬人化しているからには人間を皮肉っているのだろうけど、滑稽でありながらかわいらしい。兎や蛙など動物達の生き生きとした動きが素晴らしい。これ、本当に大好き!
乙巻は馬や牛などが描かれ、かなり写実的。鷲などはかなり細かく描かれている。丙巻になると人間が登場してくる。丁巻に至っては人間しか出てこない。そしてこれはかなりタッチが違う。鳥獣戯画は鳥羽僧正の作とされてきた。近年この説には異論が出ているようだ。確かに甲乙丙丁どれも違う人が描いたように見える。間違いなく丁巻は違う気がする。でも甲巻の次に好きだったのは実は丁巻。一筆書きみたいなタッチがいいし、人々の表情もいい。
そもそも4巻しかないし、私の行った会期前半では、その中でも前半部分しか展示されていない。メインの甲巻でも5~6mくらいという感じなので、実は展覧会の早い段階で鳥獣戯画は終わってしまう。その後は模本として有名な長尾模本など、多くの模本が展示されている。中にはあの狩野探幽の写しもある。さすがの筆力。さらりと描いているようで、どの線にもまったく無駄がない。長尾模本はすごく興味深かった。特に甲巻には現在失われている部分があったことが分かったりと、資料としての価値もさることながら、美術品として楽しい。
3Fに戻って後半は鳥獣戯画の生まれた背景を探るということで、同時代に描かれた擬人画などを展示。作者とされいる鳥羽僧正の作品もあったけれど、専門家ではないので同一人の手によるものかは分からない。後半部も美術品としては素晴らしく、それなりに楽しかったけど「鳥獣戯画展」として、これで終わるのはなんとなく視点がぶれる気も・・・。まぁ、絶対数が少ない中のやりくりは大変なのかもしれないけれど、ならば鳥獣戯画全部を一挙に会期中じっくりと見せてくれればいいのになんて思ったりもする。
でも、とにかく本当に見たかった鳥獣戯画の一部でも見れたのはうれしい! 後半部分も是非見たい! と思うツボだったり(笑)
★鳥獣戯画がやってきた!:12月16日まで
サントリー美術館