【tv】100分de名著「薔薇の名前」(第4回)
謎は解かれるのか
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1回25分×4回で1つの作品を読み解く番組。9月はウンベルト・エーコ著「薔薇の名前」(
Wikipedia)で、講師はイタリア文学者の和田忠彦氏。今回はその4回目。最終回ということでゲスト出演あり。
ゲストについてザックリと説明。人類学者の中沢新一氏は作者のウンベルト・エーコと同世代で、その登場から「薔薇の名前」を書く経緯をリアルタイムで見ていた。エーコを認識したのは記号論者として。記号論とは人間のする全てを記号化することで"普遍学"を作ろうとしていたのではないか。自身もエーコの記号論に影響を受けた。調べてみるとエーコはテレビディレクターであり、その経歴が記号論に影響を与えているのを感じるのだそう。
6日目の朝図書館長マラキーアが倒れる。舌と指は黒ずんでいる。サソリは「ヨハネ黙示録」(
Wikipedia)の第5のラッパに符合。ウィリアムは次に狙われるのは図書館の秘密を知る唯一の人物となった修道院長アッボーネだと考える。しかし、アッボーネは事件が解決しないこと、大切な会談が台無しになったことに苛立ち、ウィリアムたちに明日出て行くように言う。ウィリアムはならば明日までに解決しようと奮い立ち、アフリカの果てに入る暗号に挑戦する。
禁書を定めていたのは図書館長マラキーアで、修道院長であるアッボーネも知っている。マラキーアが亡くなった今、図書館の秘密を知るのはアッボーネのみ。
マラキーアは図書館補佐ベレンガーリオと恋愛関係にあったが、ベレンガーリオは細密画家アデルモに心を移してしまった。マラキーアは2人を殺す動機がある。しかし、これは人間同士のいさかいでは無く、長い歴史に端を発しているとウィリアムは考える。
書物(「詩学」(
Wikipedia)第二部)は薬草係セヴェリーノが殺されてから学僧ベンチョが持ち去った。マラキーアはベンチョに書物を返却する見返りに図書館補佐の職を与えると持ち掛ける。ベンチョは怪しいが殺害しても得はない。
書物を手にしたのにベンチョは何故死なないのか? ベンチョはページがはがれずめくれなかったと語る。当時は本を指をなめて濡らしめくっていた。既に誰かが読んでいたため濡れてくっついていたため本がめくれなかった。このことからベンチョは犯人ではないことが分かる。そして、アッボーネもギリシャ語が読めないため犯人ではない。
ちょっと解説の部分で補足し過ぎというか、ここで明らかになる事実が多くて、やっつけ仕事的な気がするけれど、まぁそれはいいか😅 しかし結構人間関係が入り組んでいる。これは確かに本で読んでいたら混乱するかもしれない。しかし会議やベルナール・ギーはどうなったんだろう🤔
ウィリアムはギリシャ語翻訳者ヴェンナツィオが残した暗号「手を偶像の上に置き、4つの第1と第7を押せ」の意味は、4という言葉の第1と第7を押せということだと気づく。鏡の上に書かれていた"QUATUOR"という文字の1番目のQと7番目のRを押すと扉が開いた。ついにウィリアムとアドソは"アフリカの果て"に足を踏み入れる。そこは中央に書物が積まれており、そこに老僧ホルヘた座っていた。
ウィリアムはかつての図書館長であり、今でも陰で図書館を支配しているホルヘが関わっていると推理していた。ホルヘがウィリアムに望みは何かと尋ねると、ウィリアムは隠している書物を見せて欲しいと答える。アリストテレスの「詩学」第二部。ウィリアムは皮手袋をはめて読み始めるが、盲目のホルヘは気づかない。ホルヘはアドソに読ませるように言うが、毒が塗ってあるから弟子には読ませられないとウィリアムが答える。本の角にはヒ素が塗りつけられていたのだった。ヒ素を塗ったことを見破られたホルヘは書物を火にくべてしまう。その火は燃え上がりホルヘを焼き、図書館の書物を焼き尽くし、修道院も燃やしてしまう。
一連の事件の犯人はホルヘなのか? セヴェリーノが撲殺された件は、ホルヘにヴェレンガーリオとの関係を吹き込まれたマラキーアによる犯行であった。
ホルヘは書物の力を知ったうえで封じ込めたいと考えた。一方、ウィリアムも憑りつかれている部分はある?
中沢新一氏:書物や知識に対する情熱は理屈ではない。それはエーコのものであり、ウィリアムのものであり、ホルヘ・ルイス・ボルヘス(
Wikipedia)のものである。ボルヘスとはホルヘのモデルとなったアルゼンチンの作家で、晩年は盲目で図書館長であった人物。
書物への愛。犯人と追及者一体化。
ホルヘが笑いを恐れた理由とは?
真理を疑え。真理を祀り上げて高みに置いてはいけない。ホルヘは「笑い」は真理を暴いてしまうと考えた。だから怖い。
「詩学」の中身とは?
中沢新一氏:「ポイエーシスの技術」というタイトルの文芸創作論。喜劇は価値や権威付けをひっくり返す。キリスト教世界にとってはスキャンダルたりうる。アリストテレス(
Wikipedia)は生真面目なタイプではない。師匠のプラトン(
Wikipedia)は真理を追究するのにオシャレは不要と考えていたが、アリストテレスは髪をカールし、指輪をたくさんつけて学園に現れるような人物だった。生真面目さを笑ってしまおうという部分があった。アリストテレスは古代世界最大の科学者だったのだから、絶対に面白いハズ。読んでみたい。
自分も読んでみたいけど、絶対に難解なんだろうな~😣
結局「ヨハネの黙示録」とは無関係であった。ウィリアムが信頼した記号は正しかったのか? ウィリアムは真実性を疑ったことはないと答える。人間がこの世界で自分の位置を定めるための手がかりはこれしかないと考えるが、自分が分からなかったのは記号と記号の関係性であって、ホルヘに辿り着いたのは偶然だった。それぞれの犯罪には別の犯人がいるか、もしくは誰もいないことを発見したと語る。
ウィリアムとアドソは翌朝修道院を立ち、別れて後は二度と会わなかった。数年後、ヨーロッパを席巻したペストでウィリアムは命を落とした。後にアドソは一度だけ修道院の廃墟を訪れた。燃え残った羊皮紙の断片を拾って去っていった。
"過ギニシ薔薇はタダ名前ニ虚シキソノ名ガイマニ残レリ"という一文でアドソの手記は締めくくられていた。
ホルヘは真犯人なのか? 本当の犯人は? ホルヘは本に毒を塗ったが、それは読ませないための方法であり、修道僧たちは知りたいという執着のあまり命を落とした。
伊集院光氏の感想:このオチに至るまでがよっぽど力がないと許されない終わり。これはアリなのか?
中沢新一氏:エーコの作品はこのオチが多い。ガチョーンみたいな。「フーコーの振り子」も同じ終わり。ミステリー自体の決まりとごともひっくり返したいと思っていたのではないか。
和田忠彦氏:謎なんてない。ミステリーのパロディ。完璧に模倣しているからこそのオチ。生真面目に読んだ読者は肩すかしを食う。なんちゃって感。我々が抱えている「知」の限界でもある。
中沢新一氏:人間は記号によってしか世界を解釈する方法がない。自然の真実にはそのまま触れることはできない。人間の運命。それが記号論の世界観。世界観を巧みに面白くし、肩すかしをし、とてつもない真実に立たせる離れ業。
伊集院光氏の感想:無力感を含めた笑いで終わる知はいらないという結論はホルヘ的。そうなろうとも知りたいのだというウィリアムはかっこいい。ホルヘ的な部分があったり、ウィリアム的な部分があったりする。
自分は映画から入ったので、やっぱりミステリーとして見てしまったのだけど、これはやっぱり犯人はいないってことになるんだよね。謎なんてない。あえて言えば好奇心が死を招いたということ。とはいえ、毒を塗っちゃった時点でダメだとは思うけどね。まぁあとマラキーアは殺人を犯していたのか。でも、連続殺人事件ではないということ。
異端を生み出すことにより差別化が起こり、禁じることにより好奇心が刺激されてしまう。そして、疑心暗鬼は真実をゆがめてしまうってことなのかな?🤔 やっぱり難解💦
「薔薇の名前」というタイトルはアドソの手記の最後の一文から取ったということなのだろうけど、これ意味がサッパリ分からない💦 何となく勝手に『市民ケーン』の"バラのつぼみ"からきてるのかなと思ったり。"バラのつぼみ"の謎を追うことで新聞王ケーンの一生をたどるというような話だったように思うので、ある意味ミステリーってことなのかなと。
ところで、映画は2回見たのだけど、2回目に見た時の感想をcocoに投稿していたので、それをちょっと紹介させていただく。
『薔薇の名前』ものすごく久しぶりに鑑賞。前回は多分テレビで吹替え。個性的過ぎる修行僧たち、妖しい雰囲気。ホームズ&ワトソンに横溝正史混ぜたみたいなw 大好き❤️原作は難解みたいだけど、謎解きものとして見たのでおもしろかった!髪型w
ということで、ちょっとバカみたいな感想をあえて紹介したのは、シャーロック・ホームズがモチーフになっているってことに気づいてましたよってことが言いたいわけです。まぁ、おそらくそこは強調されていただろうから、誰でも気づくと思うけど😅
かなり難解だったし、オチは肩すかしといえば肩すかしだけど、それはミステリーと思って読んだ場合だと思うので、別の見方をすればちゃんとオチはあるってことだよね? めっちゃおもしろかった! 読んでみたい😃
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