2019.10.21 『ボーダー 二つの世界』鑑賞@ヒューマントラストシネマ有楽町
存在を知ってから見たいと思っていた作品。試写会あったかな? 見かけた覚えがない。テアトル会員なのでいつでも1300円で鑑賞可能ってことで、翌日が御即位で休日となるこの日見に行ってきた
ネタバレありです! 結末にも触れています! 長文です!
「並外れた嗅覚を持つティナは手荷物検査官として働いている。彼女は容姿が醜いことで他人と距離があったが、ある日手荷物検査をした男性に強く興味を引かれ、彼に自宅の離れを貸すことにする。そして、ティナは衝撃の事実を知ることになる」と、あらすじとしてはこんな感じかな。この情報は自分が見る前に知っていた事で、ここから想像しながら鑑賞していたわけなのだけど、まさかの展開にビックリ😲 そう来ましたか! イヤ、さすがに『ぼくのエリ ~200歳の少女』の原作者の作品だわ。ボーダーというタイトルはあらゆる事の境界線を表していて、それを越えるか越えないかってことがとっても重要で切ない。これはとても良かった。
アリ・アッバシ監督作品。調べてみたけどWikipediaも英語版しかなく、フィルモグラフィーも3本でうち1本はショートフィルムらしい。前作『Shelly』もデンマーク映画で、第66回ベルリン映画祭で上映されたっぽい? 『ぼくのエリ ~200歳の少女』(感想はコチラ)の原作者ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストの短編をもとに、作者本人と監督、イザベラ・エクルーフの3人で脚本を手掛けたらしい。
作品について毎度のWikipediaから引用しておく。『ボーダー 二つの世界』(Gräns)は、アリ・アッバシ監督による2018年のスウェーデンのファンタジー映画である。ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストのアンソロジー集『Pappersväggar (Paper Walls)』に収録されている同名の短編を基にアッバシ、イサベラ・エクルーフ、リンドクヴィストが脚本を執筆した。第71回カンヌ国際映画祭ではある視点賞を獲得した。第91回アカデミー賞外国語映画賞にスウェーデン代表作として出品されたものの落選したが、一方でメイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされた。とのことで、後はキャスト情報と受賞情報が載っているのみ。
さて、今作はとても不思議な話で、それぞれのシーンにはちゃんと意味がある。でも、例えば主人公が森の中を歩くことが好きで、動物の存在とか何かを感じ取ることができることは、とっても意味があるのだけど、それはセリフなどは一切なく、ただ主人公が森を歩き動物に遭遇する映像を見せられて、見ている側が感じ取るという描き方。といっても難しいことはなく、ちゃんと分かるように描いているので、難しく考えなくても伝わるはず。ただ、そういうシーンを文章にして上手く伝えられる自信がないので、適当に割愛したりします。毎回、どうでもいいと思うけれど、一応断り書きとして書いておく😌
主人公のティナ(エヴァ・メランデル)は港の手荷物検査官。醜い容姿。おでこが出ていて目が落ちくぼんで小さく、大きな鼻の下には突き出た口があり、乱くい歯。容姿に恵まれていなくても明るい雰囲気の人もいるけれど、ティナはどんよりとした雰囲気が漂っている。ティナは人間の気持ちを臭いで感じることができる能力があるそうで、その能力を生かして手荷物検査で不正持ち込みを検挙している。
ある日、ティナは身なりが良く人当たりの良い人物を呼び止める。見ている側もかえって怪しいと思うのだけど、手荷物には不審な物はない。するとティナはスマホを見せてほしいと言う。スマホの臭いをかぐティナ。そしてスマホケースの中からSDカードを発見する。慌てた男はそれを飲み込もうとするけれど、同僚の検査官に取り押さえられる。実は中には児童ポルノが入っていたのだった。こりゃスゴイ。
今作は2つの流れがあって、それが最後に絡まってくるのだけど、そのうちの1つがこの犯罪について。全体的にはダークファンタジーなのだけど、この犯罪の流れがあるためにサスペンスタッチになっていて、かなり衝撃的な方向に向かうけれど、現実に引き戻される形になっている。その物語運びが上手いと思った。
手荷物検査の前をティナに良く似た風貌の男が通りかかる。ティナは何かを感じて呼び止めるも、何も発見することができない。ヴォーレと名乗るその男性(エーロ・ミロノフ)はティナに虫の羽化装置を見せるなど不思議な雰囲気。ティナが手荷物検査に現れた男性に惹かれていくことは知っていたので、この人物なのかと思うのだけど、かなり不思議な人物でビックリ。そしてティナと容貌が似ていることは知らなかったので驚いた😲
ティナは森に近い郊外の家に彼氏のローランド(ヨルゲン・トーソン)と暮らしている。ローランドは犬のブリーダー的なことをしているようだけれど、ほとんどヒモ状態なのかな? でも、晩御飯の準備などはしてくれる。前述のようにティナがヴォーレに惹かれるという情報があったため、2人が恋人になる話だと思っていたので、同棲相手がいてビックリした。でも、ローランドとしては生活のため、ティナとしては一人でいるのは寂しいからという感じっぽい雰囲気。それでもローランドは夜にティナを求めてくるけど、ティナはかたくなに応じない。それには理由があった。
ティナには父親(ステーン・ユングレン)がおり、今住んでいる家は父親から譲り受けたもの。少し痴呆の症状がある父親は施設に入っており、ティナが訪ねるのを楽しみにしている。そして、ローランドに利用されているのではないかと心配している。ローランドとの関係をたずねると、自分には欠陥があるからとティナが語り、ティナは子供が産めない体であることが分かる。これは後の伏線なのだけど、この時には単純に婦人科系の問題なのかと思わせる。ティナは常に無表情で感情をほとんど表すことがないので、父親に対しても温かさのようなものは感じないけれど、お互いを思いやっている感じは伝わる。しかし、この父親が実は重要なカギを握る人物だった。
ティナは警察に呼び出されアグネータ(アン・ペトレン)という女性刑事からSDカードに児童ポルノ動画が収められていたことを聞かされ、何故中身が分かったのかとたずねられる。ティナは自分には人間の感情が臭いで分かるのだと答える。アグネータがその答えを受け入れたのか微妙な感じではあったけれど、とにかくティナに協力を求める。彼らのアジトの大体の場所は分かっているのだけど特定できていないため、ティナに嗅ぎ取って欲しいということらしい。
ティナが仕事に戻ると、再びヴォーレが現れる。見ている側にも不審な雰囲気がプンプンするけど、荷物からは何も見つからない。それでも何かがあるとティナが主張するため、同僚が別室で身体検査をする。そして同僚は意外なことを言う。ヴォーレは実は女性だと言うのだった。イヤイヤどう見ても男性なんだけどと見ている側が思っていると、腰に傷があったとも言う。ティナはそれに少なからずショックを受ける。自分にも同じように傷があるからなのだった。顔立ちも似ている2人はどういう関係なのか?
ティナには人間の気持ちが嗅ぎ取れるだけでなく、動物と心が通じる能力がある。それはペットの気持ちが分かるとかいうことではなく、もっと神秘的なもの。ティナは近所のステファン(Tomas Åhnstrand 読めない😢)から妻のエスター(ジョゼフィン・ネルデン)から産気づいたので病院に連れて行ってほしいと頼まれる。病院へ向かう途中で車を止め、急いでほしいと言うステファンに少しだけ待ってと答えると、野生の鹿が現れて道路を横切る。他にも森に入ると鹿が現れて触れ合うとか、夜寝ていると窓の外にキツネが現れたりする。本筋とはあまり関係ないそういうシーンが時々差し込まれる。それは後の伏線ではあるのだけど、見ている側にファンタジックな不思議な感じを抱かせる。
ある日、簡易宿泊所で偶然ヴォーレを見かける。施設の庭の木から虫を取って食べてしまうヴォーレ。キモッ🤮 ティナも顔をしかめるけれど、ヴォーレは何故か食べてみたいくせにと不敵な笑いを浮かべながらティナに虫を差し出す。するとティナはそれを食べてしまう。うわー💦と思っていると、話が急展開する。
ティナはヴォーレを自宅の離れに住まわせることにする。この離れには小さいけれどキッチンもあったりする。シーンが変わると2人で離れにいたので、どういう話をしてヴォーレを連れて来たのかは不明。いきなり住むことになっていた。ローランドはヴォーレの容貌や雰囲気に不気味なものを感じているようだけれど、居候の身だから強くは言えない様子。そして、ローランドはドッグショーに出場するため出かけて行き、少しの間ヴォーレと2人きりになる。ちなみに、後にティナはローランドを追い出す。
ヴォーレはティナの顔にヤケドの跡を見つける。雷に打たれたのだと告げると、自分も雷に打たれた跡があると胸をはだけて見せる。どういうつながりなのか?
ティナは警察に同行して捜査に協力する。そこへある男性が自転車で通りかかると、ティナは彼から臭いを感じ取る。彼の後をつけてアパートを訪ねるも、女性が出て来て不快感をあらわにされる。この時点では捜査令状もないので協力が得られなければ退散するしかない。報告を受けたアグネータはティナの強引さを注意するが、ティナは赤ちゃんひどい目に合っていると主張。同行した警官も赤ちゃんの泣き声を聞いたと言う。間違いなく怪しい。
ティナとヴォーレは森に出かける。自分は醜く子供が出来ない体だと話す。ローランドに対する拒みっぷりなどから、なとなく体に異常があるのではないかと思っていて、この時点で両性具有なのかなと思っていた。後に衝撃的なシーンがあり、当たらずも遠からずという感じだった。
これも衝撃的なシーンだったのだけど、ヴォーレは暗い森の中で赤ん坊を産み落とす。え? 確かにヴォーレは女性だったとティナの同僚が言っていたけれど、女性としての機能までが備わっているとは思っていなかった。ヴォーレを演じているのは男性だったし、言動も女性とは思えなかったので。男性になった女性という風にも描いてなかったし、ならばなおさら出産するというのも不思議で、さらに森の中で出産するという行為が動物的。
例のアパートの住人が留守の間に、ティナと警官が捜索する。ティナはビデオカメラを発見。警官が確認し酷いとつぶやく。見ている側には見せないので、どんな内容なのか不明だけれど、赤ちゃんが酷い目にあっているということなのかな。酷い奴らだ(*`д´) しかし、よく分からないのだけど、令状もなく勝手に忍び込んで得た証拠でも逮捕出来るものなの?
ティナが家に戻ると雨が降り出し雷が鳴る。ティナは怯え家中のコンセントを外して回る。ヴォーレを家に入れて2人でテーブルの下に隠れる。共に雷に打たれた2人なので、気持ちは分かるけれどテーブルの下に隠れたら大丈夫なものなの? 電気なのに? そして何故2人は被雷したのか?🤔
雨が止んだので2人は森へ向かい、そこで激しく求め合う。ティナの股間がアップになると、なんと男性器が出現する! コレよくモザイクかからなかったね。作り物だからいいのか? かなり衝撃的なシーン。前述したとおりローランドをかたくなに拒む感じで、そういうことかなと思っていたのだけど、実際見るとビックリ。そして2人は獣のように交わる。
見ている側も驚いたけど、どうやらティナ自身もビックリだったらしく、自分が何者か分からないというティナに、ヴォーレは衝撃の告白をする。なんとティナとヴォーレはトロールなのだという。え 人間じゃないのね? なるほどこれは北欧の伝説に基づいているのかと妙に納得。トロールといえば有名なのがムーミンだけど、ムーミンはフィンランドの作家トーベ・ヤンソン作。でもスウェーデンにもトロール伝説はあるのね。
腰の傷は尻尾を切除された跡で、この尻尾により人間の感情を嗅ぎ取る能力が備わっているそうなのだけど、ティナの尻尾は切り取られてしまっているのに効力発揮するものなの? ちなみにヴォーレの尻尾も切られている。雷に打たれやすいのもトロールだから。何故トロールが雷に打たれやすいのかは不明。どうやらトロールは集団で暮らしているらしく、ヴォーレは彼らと接触しようとしているのだそう。ビックリ展開😲
ヴォーレの両親は人間に捕まり実験対象とされ長い間苦しんで亡くなり、ヴォーレは施設で育てられた。この経験から人間を憎んでいる。ティナは子供を性的虐待し、さらに映像に収めている人物たちを逮捕したこと話す。でも、自分の父親は悪い人間ではないと言うが、彼もティナに嘘をついていたじゃないかと言われてしまう。なるほどティナがトロールなのだとすれば、父親だと思っていた人物は本当の父ではないことになる。
ティナはヴォーレがいない間に離れに忍び込む。すると冷蔵庫の扉がガムテープで止められていた。躊躇するもテープをはがして開けてみると中に箱が入っており、その中にはなんと赤ちゃんが入っていた。その顔はティナやヴォーレ同様額が突き出てており鼻筋が太い。間違いなくトロールだった。
一方、例の児童虐待犯を乗せた車が襲われ、犯人が無残に殺されてしまう。現場に残った臭いからティナはヴォーレの犯行であることが分かる。人間に憎悪を持っているヴォーレの怒りが、ティナから聞かされた子供を虐待する犯人に向かったものと思われる。ここ結構残虐シーンだった。
ティナは森に向かいヴォーレを探す。ヴォーレは人間を殺したことを全く後悔していない様子で、ティナはそれに不快感を表す。冷蔵庫の中の赤ちゃんについて尋ねると、自分が生んだと答える。無精卵だと言っていたと思う。トロールについてまとめると、女性と男性の機能が人間と逆であり、出産するのは男性だけど、人間とは違い無精卵の子どもを定期的に産み落とすということらしい。そもそものトロールの設定がそうなのか、原作者のオリジナル設定なのかは不明。
どうやらヴォーレは定期的に産み落とした子供を、人間の子どもとすり替えているらしい。すり替えた子供をどうするのかと尋ねると、売るのだと言う。どこに売るのかティナは聞かなかったと思うので、見ている側にも分からないのだけど、子供たちが幸せになる方向ではないことは分かる。ティナは怒りに震え獣のような叫び声を上げる。ティナのこの反応が人間的なのか、トロールとしても許せないのか、その両方なのか。でも、この怒りはスゴイ。
サイレンの音がし、エスターの家で何かがあった様子。エスターが泣いており、家の中には警官がいたように思うのだけどちょっと記憶が曖昧。重要なのはティナが赤ちゃんを見ると、そこにいたのはヴォーレが生んだあの赤ちゃんだったということ。要するにヴォーレがすり替えてしまったということ。うーん🤔
ティナは急いで離れに向かうと既にヴォーレの姿はなく、フェリーでティナを待つという主旨のメモが残っていた。なるほど、それで港が度々出てたのね。まぁティナの職場ということもあるけれど。
ティナはフェリーに向かい船内でヴィーレを見つける。ヴォーレは2人で種族を増やそうという主旨のことを言うが、ティナはそれを断る。ヴォーレは自分を人間だと思っているのか的なことをティナに言うけれど、ティナは誰も傷つけたくないと答える。そして、それが人間的な感情なのか的なことを言うけどヴォーレはそれには答えなかったように思う。
ティナが合図すると警官たちが現れ、ヴォーレに手錠をかける。しかしヴォーレは海に飛び込んでしまう。いろいろビックリ展開ではあるのだけど、何となくヴォーレは生きているんじゃないかと思いながら見ている。
翌日、ティナが父親を訪ねると、父親がティナの生い立ちについて話してくれる。父親は以前看護師をしており、その施設にはトロールたちが収容されていた。ティナの両親がどういう経緯でその施設に入れられることになったのか、また何をされていたのかは語られなかったので不明だけど、おそらくヴォーレの両親と同じなのでしょう。両親は長く生きられないことが分かっていたため、娘が欲しいと思っていた父親は、両親にティナを養女にすることを申し出たとのこと。
父親に自分の本名を尋ねるとリエヴァだと教えられる。両親は施設の裏庭に埋葬されたと教えられ、訪ねてみるとたくさんの石が並べられていた。こんな施設があって秘密裏に実験が行われていたとして、それが隠しおおせられるものなのかしら? そして、たくさんのトロールが捕らえられたのだとしたら、その当時大々的なトロール狩りのようなものがあったと思われるけど、それについて一般人は全く知らずにいたということ? など、ツッコミどころというか謎も残るけれど、物語に引き込まれているので気にならない。
ティナの表情からはティナが父親のしたことについてどう思っているのか読み取るのが難しいのだけど、ティナが自分で思うところの"人間的"な部分というのは、この父親に育てられた過程で培われたものだと思うし、それはやはり父親が娘としてティナに愛情を注いだからだと思われる。ただ、本当の両親のことを思うと辛いのは間違いない。
ティナが森から戻ると、玄関に箱が置かれており、中には尻尾のあるトロールの赤ちゃんが入っていた。ハッキリとは示されないけれど、赤ちゃんを置いたのはヴォーレであり、赤ちゃんを産んだのもヴォーレなのでしょう。そして、きっとこの赤ちゃんはティナとの間に生まれた子ということなのだと思われる。
ティナは赤ちゃんを抱いて森に向かう。虫を捕まえて赤ちゃんに食べさせると、赤ちゃんは機嫌よく笑う。その姿を見てティナも笑顔になる。ティナが笑顔を見せたのは初めてかもしれない。映画はここで終わる。
何とも不思議な話。トロールという伝説の生物を描く時、いろいろなアプローチがあると思う。前述のムーミンのようにかわいらしい方向でのファンタジーにもできるし、怪獣的な存在として描くこともできる。今作は人間社会に紛れて生きる存在を描いている。とはいえ、ティナもヴォーレも自分で望んだわけではなく、人間によって自分たちの世界から引き離されてしまい、人間社会でもトロール社会でも異端者になってしまっている。これは、本来自分が属するはずだったカテゴリー、例えば家族とか学校とか社会などからはみ出してしまった人たちを象徴しているのかなと思う。
また、トロールと人間では性別による機能が逆ということも興味深い。この辺りはジェンダー問題とかを表しているのだと思う。またトロールたちが動物や自然ととても近しい存在であることも、人間と自然界とのあり方を揶揄しているのかなと思う。そういう、いろいろな隔絶を"ボーダー"としているのかなと。
その観点で行くと、ティナは人間として生きることを選んだように見えたけれど、ラストカットを思うとその間で生きていくのかなとも思う。ティナにとって醜い容姿や普通の体でないことは、人と違う自分を強く認識させるものだったけれど、それこそが本当の自分であるトロールの特徴であることを知り、自分のアイデンティティを確立できたわけなので、ここから自分の道を歩んで行くのかなと思う。人間社会でトロールの子供を育てることはとても難しいことだと思うけれど、映画としては希望の持てる美しい終わり方だったと思った。
キャストはそこそこ登場人物がいるものの、主演2人以外に重要なのは父親くらいかな。同居人のローランドにしてもティナの特異さを説明するための存在という感じなので。とはいえいい加減なのに何故か憎めないローランドをヨルゲン・トーソンが好演していたと思う。父親のステーン・ユングレンも良かった。ティナの運命を大きく変えた人ではあるけれど、娘を愛する父親であることに変わりはない。そして、彼に引き取られなければティナも両親と同じ運命だったかもしれない。そう感じさせた。
ヴォーレのエーロ・ミロノフは登場時は得体の知れない感じで、中盤ティナと心を通わせ恋人になるのかと思いきや、まさかの残虐性を発揮するという難役をこなしていた。不思議な魅力。エヴァ・メランデルはティナの複雑な心の動きをほぼ無表情で演じきった。これはエヴァ・メランデルの演技プランなのか、監督の演出なのか不明だけど、ティナの動きには覇気がなく、どんより鈍くて見ている側をイラ立たせるものがある。その感じが絶妙で、イライラしてしまうというより、なんとなく違和感があるという感覚。おそらくこの感覚が人を差別したり、いじめたりしてしまう原因の一つなのかもしれない。もちろんだからといっていじめをするのは言語道断だけど、誰にでもその根っこはあるっていうことかと。イヤ、この感覚を持ったの自分だけなのかな? でも、この違和感を持たせたことがスゴイと思ったので。
エヴァ・メランデルもエーロ・ミロノフも4時間かけてメイクして撮影に臨んだそうで、彼らの自身の部分は瞳と唇のみなのだそう。人間としては醜いということでティナは劣等感を持っていたわけだから、このメイクはとても重要。しかもエヴァ・メランデルは体重も増やして役作りしたのだとか。体型を変えたこともとても意味があると思うので、やってくれて良かったと思う。ホント役者ってスゴイと思う。
そもそもが北欧伝説に基づいていることもあるけど、この作品は北欧でしか撮れなかったと思う。全体的にどんよりと暗い感じや、森の神秘的な感じとか。街の中なども出て来るけど、とにかく森や湖の映像が印象的な妖しさ。
これはやっぱりダークファンタジーなのかな。あらすじなどからヒューマンドラマ系を想像しちゃうとちょっと違うってなるかも。イヤでもヒューマンドラマでもあるのか。でもヒューマンじゃないか🤔 一般ウケする作品ではないけど、ダークファンタジー好きな方にオススメしておく😌
『ボーダー 二つの世界』公式サイト