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【cinema】『つぐない』

2008-04-27 22:50:56 | cinema
'08.04.19 『つぐない』@テアトルタイムズスクエア

「第二次大戦中のイギリス。政府高官の娘ブライオニーは小説を書くのが好きな夢見がちな少女。家政婦の息子ロビーと密かに愛し合う美しい姉セシーリア。ブライオニーは2人の仲を衝撃的な形で知ってしまう。そして彼女がついた哀しい嘘が3人の運命を大きく変えていく・・・」という話。これは重く辛い。でも切なく美しい。

とにかく映像が美しい。言葉にできない気持ちや心の揺れを映像で表現するのが上手い。ブライオニーが自作の演劇の脚本を書き上げ母親に見せに行くところから始まる。美しい花柄の壁紙に趣味の良い調度類。短めの金髪を横わけにしてきちんとピンで留め、真っ白なワンピースを着たブライオニーが、自室を出て広く重厚な屋敷内を正しい姿勢で歩いて行く。角に来ると直角に曲がる。躾の良さと同時に、彼女の生真面目さや潔癖さを感じる。同時に、彼女がこの大きな家で感じているであろう孤独と居場所のなさも感じる。

母親も姉も優しく接してくれはするけれど、彼女をあくまで子供として扱う。13歳の彼女は思春期で中途半端な年齢。母親に甘えたくもあり、一人前の人間として扱って欲しくもあり。自分で自分の気持ちが分からないし、コントロールできない時期。イギリスの良家の子女は学校には通わず、家庭教師の指導を受けるという習慣があったらしい。第2次大戦中のこの頃までその風習があったのかはよく分からないけど、同じ年頃の友達がいるようには見えない。感受性豊かな彼女が大人ばかりに囲まれているのはかわいそうに感じる。しかも、両親が離婚するため預けられたいとこたちとも感性が合わない。双子の少年達は幼く、彼女より1~2歳年上に見えるローラは早熟で色気づいているけれど、内面の繊細さのない俗物。ブライオニーの居心地の悪さは理解できる。自分と感性が合わない人物と「子供だから」という理由でひとくくりにされる苛立ち。ローラはこの後、その早熟さと未熟さである事件を起こす。その事件がブライオニーの人生を大きく変える。

この映画の核となる物語の主人公。ブライオニーの姉セシーリアと家政婦の息子ロビーの恋愛がいい。哀しいけれど切なくて美しい。美しく才気あふれ気の強いセシーリアが魅力的。身分違いのロビーを心の底では愛しながらも素直になれず遠ざけてしまう気持ちは分かる。庭内の噴水での2人のやり取りがいい。お互い強く相手を求めながら素直になれない感じ。そのギクシャクした中で、割れた花瓶の欠片を取りに水中に潜るセシーリア。その勝気さと水に濡れて下着が体にはりつき、彼女の美しい体のラインが露になってエロティック。このシーンがロビーと偶然目撃してしまったブライオニーの心にエロティックな感覚を芽生えさせる。ロビーには甘美なものとして、ブライオニーには甘美ではあるけれど淫靡なものとして・・・。

そして事件が起きる。事件自体はローラの手首のアザという伏線から見ている側には"事件"ですらないことは分かる。事件は完全にブライオニーの中だけで起きた。お互いの気持ちを開放し激しく求め合ったセシーリアとロビー。このシーンは美しい。でも、それを目撃してしまったブライオニーは激しいショックを受ける。彼女には完全にではないけれど男女のことは分かっているはず。でも思春期特有の潔癖さで汚らわしいものと思っている部分もある。でも、自分の憧れている"恋愛"にはその行為が重要な意味を持つことが理解できない。でも、おそらく本能で知っている。だから2人の関係に嫉妬したのだ。そして嘘をつく。

その嘘がロビーを戦地に追いやってしまう。激戦の後、隊とはぐれてしまったロビー達は彷徨いながら様々な体験をする。そんなロビーを支えるのはあの日セシーリアが彼の耳元で搾り出すように言った「私の元に帰ってきて」という一言。2人にはあの1夜しかなかった。入隊直前、わずかな時間会った時、彼女が重ねてきた手をロビーは取ることができなかった。その彼の純情を見た時、涙が出た。男の純情。こんな風に純粋に愛されたいものだ(笑) 大学進学をやめ看護婦となったブライオニーが看取った13番の患者の「普通の夢」がリンクしていて切ない。このシーンも辛かった。描きたい主題はセシーリアとロビーの純愛とブライオニーの贖罪だけど、もう一つ戦争の悲惨さというのもある。それは十分に伝わった。その部分が強過ぎてちょっとブライオニーの贖罪の気持ちが薄れてしまった感もあるけれど、13番の患者を看取った時、より深く自分のしてしまったことの意味が突き刺さったのかもしれない。

役者たちはみな良かった。セシーリアのキーラ・ナイトレイが美しい。勝気でいつも不満気だった彼女がロビーの前でとても女性らしくなるのがいい。そして素晴らしいスタイル。背中の美しさが印象的。ロビーのジェームス・マカヴォイがいい。ロビーの傷つきやすさや純情をとてもよく表現していたと思う。哀しげで切ない表情がいい。ブライオニーは3人の女優が演じている。少女時代のシアーシャ・ローナンがいい。晩年のヴァネッサ・レッドグレーブはさすがの存在感。娘時代のロモーラ・ガライは一番難しい役どころ。見事に演じていたと思う。

映画は老女となったブライオニーの告白で終わる。彼女の行動は贖罪なのか自己満足なのか。唯一その答えとなると思われたシーンも実は真実ではないことが分かる。でも、実はこのシーンを見た時、とても違和感を感じていたのだ。このシーンが実際どこに差し込まれるものなのかが微妙なのだけど、2人のセリフや態度には納得できないものがあった。もしも自分だったらどうしただろう・・・。もし2人が無事に再会できたらブライオニーを赦しただろうか。多分、とても苦しんだと思うけど赦したと思う。何故彼女が嘘をついたのか理解できるから。

とにかく映像が美しい。装飾、衣装、戦争シーンですら美しい。とても美しく辛く切ない映画だった。こんな重い人生はイヤだなぁ・・・。でも、それは彼女が感受性豊かで潔癖だった証。だから俗物2人に贖罪の意識はない。それもまた重い。そして女は少女の頃から女なんだと改めて納得(笑) そして、これは少女が「女」として犯した罪の贖罪なのだと思う。


『つぐない』Official site

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【cinema】『ハンティング・パーティー』(試写会)

2008-04-21 01:29:03 | cinema
『ハンティング・パーティー』(試写会)@よみうりホール

実はこのブログ映画情報サイト、シネトレ公認ブログになっているのです。といっても映画の感想を書くだけなのですが(笑) というわけで活動第1弾として『ハンティング・パーティー』試写会に行ってきた。ちなみに掲載画像はシネトレからご提供いただきました。

「人気戦場レポーター、サイモンは内戦中のサラエボからの生放送中キレてしまいクビになり表舞台から姿を消す。彼とチームを組んでいたダックは局を代表するキャスターの専属カメラマンとして、コネ入社の新人プロデューサー、ベンと共にボスニアにやって来る。そこでサイモンと再会し、彼の持ち込んだ特ダネを追うことになるが・・・」という話。これはなかなかおもしろかった。冒頭の戦闘シーンでのサイモンとダックのコミカルなやり取りなど、コミカルさと重いテーマのさじ加減がいい。ボスニアで起きたことを思えば重くてやり切れないけれど、3人のチームのコミカルなやり取りがそれを救っている。

サイモンは一見いいかげんで自分勝手で、ムチャなことをするのがかっこいいと思っている鼻持ちならない人物に見える、大部分はあっているけど(笑) でも、それだけではない。彼が持ち込んだネタは国連やCIAが捜査するも未だ発見されていないフォックスの潜伏先。彼には500万ドルの懸賞金がかけられていた。彼を生け捕りにしたいとムチャを言うサイモンには、ある理由があった。ダックはサイモンのブチギレ事件で逆に株をあげて出世し、今では仕事にもお金にも女性にも不自由しない生活。常に冷静で暴走しがちなサイモンを上手くコントロールする彼が、再び行動を共にすることにしたのは単に特ダネが欲しかっただけではない。ハーバード卒で頭でっかちな副社長の息子ベン。父親に認められたい彼は足手まといになるだけかと思いきや、意外に役に立ったりする。

この3人のキャラクターや関係ってありがちだし、こういうタイプの映画ではよく見てきた気がする。ハリウッド映画はこういう王道なキャラを組み合わせてコミカルな感じに描くのが上手い。ただ大半はコミカルな感じだけで終わってしまいがちだけど、そうはなっていない。伝えたいメッセージはちゃんと伝わった。3人が核心に迫っていくと、いろいろ個性的な人物が出てきたり、危険な目にあったりするけど、緊迫感の中にもコミカルさがあっていい。『ランボー』のパロディとか(笑) サイモンの辛い過去も、ボスニアの重い過去や現状も重くなり過ぎずに見れた。

旧ユーゴスラビアの内戦で起きたことについてはNHKの特番を見たので、ある程度の知識はあった。でも、フォックスのモデルとなったラドヴァン・カラジッチという人物は知らなかった。映画の中で「この国をこんなにした極悪人」と言われるけれど、あの戦争から10年経った今でも、建物に残る生々しい銃弾の跡・・・。イスラム教徒が去り、いわゆる「民族浄化」がなされた街・・・。目に見えるそうした傷より深刻なのは人々の心に残された傷。サイモンが最初に対峙した時の得意げなフォックスの顔を見た時、激しい怒りを感じた。「民族浄化」という名の下に幼い子供達まで無残に殺害された。女性達は何時間も何度もレイプされ続けて殺された。「民族浄化」って一体何? お前はそんなに高潔だとでも言うのか! でも、フォックスがしたかったのは「民族浄化」ではない。権力を掌握したかっただけだ。なおさら罪深い。だけど、「浄化」された人々や第三者から見れば極悪人で許せない人間だけど、同胞の人々からみれば偉大な指導者なのだ・・・。この辺りもきちんと描いている。

役者達はよかったと思う。サイモンはあまり好きなタイプではないけど、リチャード・ギアはイヤなヤツになりがちな彼を上手く演じていたと思うし、ちょっとキザな感じと合っている。ベン役のジェシー・アイゼンバーグも良かった。’80年代か?というような風貌もいい(笑) そしてテレンス・ハワードの佇まいがいい。恋人のことでは取り乱すのに、どんな危険な状況でも落ちついていて、でも生き生きして見える。知的な感じもいい。

ボスニアで起きたことは、これまでもどこかで起きてきたし、今もどこかで起きている。日本でも起きたし、他の国にもした。こんな悲劇は2度と起きてほしくないし、早くなくして欲しい。でも、フォックスいやカラジッチのような人間がいるかぎりなくならないし、彼を本当は捕まえようとしていない国連やCIAなどの「事情」があるかぎり終わらない。私達の考える単純な正義は行われていない。伝えられていることが全てでないのは、最近話題のあの国だけではないのだ。

冒頭「この映画ではありえない所が真実である」とクレジットされるけど、これは実話を基にしたフィクション。映画ではある程度スカッとする部分はあるけど現実は違う。ラストおそらくボスニア語(?)と思われる言葉で”I fought the law”が流れる。「法と闘ったけど結局法が勝った」という事でしょうか・・・。

笑えるところもニヤリとするシーンも"I fought the law”を含めてたくさんある。重いテーマだけど社会派サスペンスとして楽しめた。エンドロール中に「真実」部分の種明かしがある。なかなか楽しいので、普段はエンドロールを見ない人も残って見る価値あるかも。


(C) 2007 IM Filmproduktions GmbH All Rights Reserved
5/10(土)よりシャンテ シネ、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
『ハンティング・パーティー』Official site
『ハンティング・パーティー』Official blog

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【music】FOO FIGHTERS LIVE @幕張メッセ

2008-04-17 00:36:06 | music
08.04.13 FOO FIGHTERS LIVE@幕張メッセ

あいにくの天気の中、幕張メッセで行われたFOO FIGHTERSのLIVEへ。しかし、彼ら雨男だよなぁと思う(笑) 一緒に行く予定だったbaruが都合で行けなくなってしまったため、急遽Mッスにご出動願った。海浜幕張駅前のアウトレットGarden Walkで待ち合わせ。ちょっと買い物(笑)

17:00開場、18:00開演ってことで17:30頃会場着。開場後30分も経っているのに長蛇の列! 何でも念入りに手荷物検査をしたため遅れているとの事。結局入場できたのは18:00過ぎ。既に前座BANDのLIVEが始まってしまっていた。この日は4月と思えない寒さ。外まで列ができて並んだけれど、もう少し何とかならなかったのか? 既にTシャツ姿の人達もいてかなり寒かったと思う。

前座BANDは可もなく不可もなくという感じ。曲が終わるごとに「Thank you very much」ときちんとお礼を言う態度には好感が持てた(笑) しかし寒い・・・。チケはB1ブロックとなっていたけどB1、B2とも同じ入口で、入ってみても特に仕切りがあるわけではないので、区別がよく分からない。チビッコなので後ろの方から人の頭越しに見るしかない。人の中に入ってしまうと全く見えないので(涙) なので後ろの壁側で見ることにしたけど人も少ないし、空調が近いせいかホントに寒い。ダイブしたりモッシュしたりする人達の気分が悪くならないようにという配慮だと思うので仕方がないけど、厚手のカットソーにスプリングコート着用でも寒かった。

19:00過ぎ客電が落ちて御大登場。始まってからは一気に突っ走る感じでかっこよかった! 正直、オッサン大丈夫かと心配になるほど。まぁ、そこまで年ではないけども・・・。前半はMCもほとんどなくガンガンやる感じでいい! 疲れた頃にデイヴお得意(?)のMC。「Mt.FUJIに来たことある人は?」ってこれはFUJI ROCKのこと。なんか毎回聞かれてる気もするけど気のせいか? 彼ら的にも印象深いのかな。毎回大雨だから(笑) 話してる途中に声がかかると「今、俺が喋ってる!」と客いじりもバッチリ。もう一度長めのMCが入った後はラストまで一気! ここの流れはマジでかっこよかった☆ けっこう帰っちゃう人もいたけど、きっちりアンコールあり。「1曲? 2曲? もっと聴きたいか?」とサービス精神旺盛。しっとりと始まって最後は大合唱へ。大満足。

私の連携ミスでオール・スタンディングのLIVE初体験のMッスはパンプスで来てしまい、前座の時には足が痛かったみたいだけど「メインはあっという間だった!」と言っていたからには満足だったもよう。ノエビア化粧品しか知っている曲はなかったみたいだけど楽しんでくれてよかった。そして、自分だけ分かったつもりで単語を伝えても、意味が伝わっていなかったらダメなんだと痛感。

というわけで、仕切りの悪さや、ききすぎの空調に不満はあったものの、LIVE自体はホントによかった。最近、決算で忙しくて気持ちがカサカサしていたけど元気になれた! やっぱりROCKはいい! LIVE大好きだ(号泣)


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【cinema / DVD】『リトル・チルドレン』

2008-04-17 00:29:51 | cinema / DVD
DVDにて鑑賞。

「裕福な家庭の主婦サラは公園での退屈な母親同士の付き合いに馴染めずにいた。彼女達は司法試験の勉強中の主夫ブラッドをプロム・キングと呼び噂していた。ある日賭けでサラはブラッドと話をすることに。お互い惹かれるものを感じた二人は…」という話。リトル・チルドレンというのは大人になりきれない登場人物達のこと。

リトル・チルドレンというタイトルはアダルト・チルドレンを思わせる。調べてみたところアダルト・チルドレンというのは幼少期に親から虐待を受けるなど家庭に恵まれずに育ったため、大人になっても生き方に悩む人のことで、アメリカでは親がアルコール依存症の場合を言うのだそう。主人公達の生い立ちは描かれていないし、舞台がアメリカということを考えると彼らはアダルト・チルドレンではない。でも、30代~40代と思われる登場人物達が生き方に悩まないはずはないし、そう簡単に大人にはなれない気がする。

キーとなる人物は4人。主役のサラとブラッド、ブラッドのラグビー仲間で元警官のラリー、そして幼児への性犯罪を犯した過去を持つロニー。話はサラとブラッドの不倫とラリーとロニーの関係を絡めて進む。これが上手い。始まってすぐロニーが保釈され町に帰ってくるというニュースが流れる。アメリカでは各州によって法律が違い、中には元犯罪者が住むことになった場合に、本名や顔写真などを公開している所がある。確か、前科者に殺害された少女の名を取りミーガン法というのだと思う。その是非は難しいものがあるけど、映画ではこの法律が新たな悲劇を生む。

ロニーは周囲から孤立していく。年老いた母親は自分が生きているうちに彼が普通の人生を歩む道筋をつけたいと思っている。この母親がスゴイ。母親というのはこんなにも強くなれるのかと思う。強さは表に出す強さと内に秘める強さがある。この母親は前者。なので気が弱く性的に問題を抱えるロニーを追い込んでしまっている部分もある。でも、夜中に酔って押しかけ嫌がらせをするラリーにも敢然と立ち向かう。あまりに執拗な嫌がらせにラリーの傷をえぐってしまうけれど…

ラリーは2年前の勤務中に悲劇的な事件を起こしてしまい、警官を辞めた。彼はその傷から立ち直れていない。事故とも取れるし、ラリーが冷静さを欠いてしまったからとも取れるその事件から立ち直るのは簡単なことではないと思う。人とコミュニケーションを取るのが上手くないように見える彼は、警官であるという誇りで人と対等に接することができていたのではないか。地位も名誉も失った彼はロニーという格好の蔑むべき相手を得る。そして新たな悲劇を生んでしまう。彼を責めることは簡単だけど、根っこの部分を考えるとやり切れない。

ロニーは性的に異常である自分と母親の気持ちの間でバランスを取れなくなったのかもしれない。母親は正しい。そして自分を愛している。それに応えたい。でも自分は普通ではない。犯罪には必ず被害者がいる。被害者のことを考えればどんな理由にせよ許しがたいことではある。まして幼い子供が被害者ならば… ロニーがどんな気持ちで戻ってきたのかは分からない。市民プールの騒動も、お見合い相手にした事も彼の真意は分からない。単純に異常者なのか、苦しんでいるのかなかなか分からなかった。でも母の残した一言に彼の取った行動を見た時、全てではないけど理解出来た気がした。

サラとブラッドの問題は誰もが漠然と感じるものではないか。年齢的には大人であることは自覚しているけど、大人に成り切ることに不安と喪失感を感じている。自分の気持ちからも人生からも「何か」が徐々に失われていく気がする。それは「若さ」なのかもしれない。2人はまだ若い。でも、もう若くもない。多分、実際には何も失ったりはしないし、これからだって楽しい事はあるはず。でも、10代や20代のように無邪気に楽しめない気がする。多分そうだし、それで当然。それが大人になることだから。若いうちに思い切り楽しめるのはそれだけに没頭していられるからだし、それだけの世界観しかないから。でも、そこに留まっていたい気持ちも分かる。自分が自分じゃなくなる気がするから。自分が必要とされていると感じるには恋愛するのがいい。だから2人は恋に落ちた。

この映画が上手いのは、この2人の恋愛が現実逃避であることが良く分かるところ。激しく燃え上がる2人は周りから明らかに浮いている。もちろん秘めた恋ではあるけれど、心が浮き立ち、後ろめたい気持ちとその裏返しの優越感。サラが子守をしてくれた友人にお金を差し出し断られるエピソードが利いている。2人の気持ちは理解できる。でも美しいものとしては描いていない。だから絵空事になっていない。そして2人のまるで10代みたいな恋愛を描いているから、ロニーとラリーの問題を重くなり過ぎず見れるんだと思う。サラとブラッドの不倫を良いこととは思わないけど、サラが参加した読書会でボヴァリー夫人を淫乱だとまくし立てる"貞淑"な主婦こそ俗物で欲求不満に見えるのが皮肉で笑える。そういうのも上手い。サラが小説みたいな恋に夢中になっている感じも良く分かる。そして2人の関係があっけなく終わるのもいい。

ケイト・ウィンスレットは上手い。彼女のたくましい体格と全体に漂う肝っ玉母さん感。全体的にお子チャマなブラッドに少しイライラするけど、それが大人になりきれないってことだからOK。役者達はみんな良かった。特にロニーの母役の人が良かった。ブラッドの妻役のジェニファー・コネリーが地味にいい。

ラリーは最後にロニーを懸命に救おうとする。そこに「過去は変えられない。一歩踏み出さなくては」とナレーションが重なる。この言葉が心にしみる。人は間違いを犯す。犯罪のことではない。間違いや愚かな事をしたことがない人なんていないんじゃないかと思う。でも、間違いに気付いたら正しい方向へ歩いて行けばいい。

重いテーマも重くなり過ぎてはいない。最後のセリフがすっと心に落ちてきて、自分も一歩踏み出さなくてはと素直に思えた。


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【MJ】「スカパー多チャンネル放送 みうらじゅんトークイベント」

2008-04-06 23:07:33 | MJ
'08.03.29 みうらじゅんトークイベント@六本木ヒルズ

尊敬するMJことみうらじゅんのトークイベントがあるというので行く。スカパーの多チャンネル放送の宣伝で、フリースペースでの無料イベント。

14時からということで20分くらい前から待機。小さなステージの右側の最前列をキープ。着いた時にはまだそんなに人もいなかったけど、だんだん集まってきた。そんなに遅れることなく司会のおねえサマ登場。きれいな発声と滑舌でMJを紹介。いつもどおり飄々と登場。そしてビックリシャツ(笑)

King of Subcultureの異名を持つMJ。あまり地上波ゴールデンに登場するタイプではない。当然、深夜番組かCS、BSなどの「見る人だけが見る」みたいな番組に出ることが多い。最近はCS放送ばかり出ているので、CS紳助という名前にしようと思うと語る(笑)紳助とは島田紳助氏のこと。素敵です(笑)

そしてスライドショー。この日はローリンについて。ローリンとは数人が輪もしくは球状に繋がった銅像(詳細は「シンボルず」参照)のこと。不自然な体勢のそれらの銅像を眺めているうち、転がって行きそうに思ったのだとか(笑) その発想がスゴイ。

30分程のイベントの最後はジャンケン大会。MJがその場で描いたサイン色紙(カエルのイラスト入り)や、MJ持参の勝手に観光協会のDVDをかけてMJとジャンケンするというもの。完全勝ち抜けであいこはなし。なんと12名にまで勝ち残りステージ上に! とりあえずサイン色紙の勝者を決めましょうってことでジャンケン。またも勝ち残って5名に。ここで欲が出たのか負けてしまい色紙は貰えず。でも勝ち残った5名にはDVDが貰えると信じていた。しかし、何故かステージ上の11名で再びジャンケンすることになり、動揺している内に負けてしまった(涙)まぁ、仕方ないけどなんか悲しい

30分と短かったけど楽しかった。おねえサマの「みうらさんにとって多チャンネルとは?」というムチャぶりにも「多」という漢字の面白さを語って答えるなんてさすがMJという感じ。素敵です☆ 多チャンネルについてはあまりよく分かりませんでしたが…(笑)


シンボルず
SKY Perfect TV!

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