2016.6.26 『夏美のホタル』鑑賞@シネマカリテ
お友達のmigちゃんの弟さんで映画監督の片岡翔さんが、脚本を担当されたということで、これは見なきゃと思いつつ、6月仕事が忙しくてなかなか行けず この日を逃すと次週から昼間のみの上映になってしまうということで、急遽予定変更して行ってきた~
ネタバレあり? なし?
「写真科の学生河合夏美は将来のことや、同級生の恋人との関係に悩んでいた。父親の形見のバイクで、思い出の地を訪ねる。そこで知り合った人々とのふれ合ううちに、夏美の心は癒されていくが・・・」という話。じんわりと心にしみる作品だった。主演2人のさわやかさそのままの清々しい作品。
吉永小百合主演の『ふしぎな岬の物語』(未見)の原作「虹の岬の喫茶店」などでおなじみの、森沢明夫原作の同名小説の映画化。森沢作品は読んだことないので、本作も未読。『ストロボ・エッジ』(未見)の廣木隆一監督作品。監督の作品は『余命一ヶ月の花嫁』(感想はコチラ)と、『きいろいゾウ』(感想はコチラ)を見ていて、それぞれ心に残った。ちなみに『きいろいゾウ』の脚本も片岡翔さんが担当している。
河合夏美(有村架純)は写真学科の学生。同じサークルの仲間が賞を取ったり、恋人の相羽慎吾(工藤阿須加)のカメラマンになる夢をあきらめて、実家の酒蔵を継ぐかもしれないとの言葉に、心が揺れる。若いうちから焦って将来を決めて、可能性を摘んでしまうのはもったいないとも思うけれど、専門的な仕事であればあるほど、早めに将来の目標を決めた方がいい部分はあるかもしれない。そして、自分の才能に限界を感じているのであれば、見切りをつけるのもそれはそれで人生かもしれない。
夏美は父親(淵上泰史)の形見のバイクで、子供の頃連れてきてもらったホタルのいる川を目指す。初日はキャンプをしてホタルを待ったが成果が得られず、食料調達に訪れたたけ屋という店で、店番をしていた男性と知り合う。小学生の兄妹から"地蔵さん"と呼ばれているこの男性は福井恵三(光石研)で、工事現場での事故で半身不随となり、母親のヤスエ(吉行和子)と2人暮らし。ヤスばぁちゃんにスイカをふるまわれた夏美は、2人と意気投合。この家に泊めてもらうことになる。現代では結構ビックリな展開ではあるけれど、3人の人柄と田舎ののんびりした空気のおかげで、ほっこりした雰囲気になっている。実は地蔵さんが夏美に声をかけたのは理由があって、それは後の感動エピソードとなっている。
年齢的には夏美は地蔵さんの娘ぐらいなので、祖母、父、娘のような関係。その3人に、ちょくちょく遊びに来る小学生の兄妹が加わり、さらに疑似家族のような雰囲気。5人でホタルを探しに行く感じが好きだった。この兄妹が生意気なところがなくて、とってもかわいらしい。公式サイトになかったので、演じている子供たちの名前が分からないのだけど、2人演技上手かったと思う。自然な演技。そんな中、慎吾が夏美を追ってやって来る。駅に"つきざき"と書いてあったと思うのだけど、ここどこなのかな? エンドロールに千葉ってあったので、千葉県なのかな? 2車両くらいしかない電車でやって来た慎吾が「来ちゃった」って言ったの笑った 慎吾も泊めてくれないかと頼んだ時の、地蔵さんの反応が興味深かった。これは、単純にずうずうしいと思ったのではなくて、やっぱり娘が彼氏を連れてきた時の父親みたいな気持ちになっちゃったのかな? そんな気がした。
とはいえ、4人の生活もほっこり。ただ、地蔵さんの親友で仏師の雲月(小林薫)にイヤミを言われてしまうけれど、これに夏美が反論する形で、掃除をするなどの条件でお世話になっていることが説明されていて、見ている側も納得 共にバツイチどうしの地蔵さんと雲月さんは意外にいいコンビ。
ある出来事があって、地蔵さんの別れた妻美也子(中村優子)と、息子の公英(村上虹郎)との感動エピソードからの、夏美と父親の流れも良かった。慎吾はある決断をして、たけ屋を去ることになる。この時、駅のホームで慎吾を見送った夏美が、バイクで電車を追いかけるシーンが、田舎の風景とともに美しくて良かった。
一つの別れが再会を呼び、また繋がっていく。現代では夏美と地蔵さん、ヤスばぁちゃんとの触れ合いは、ファンタジーになりつつあるかもしれない。でも、映画の中ではとっても自然だったし、こういう出会いっていいなと思った。夏美たちが一方的にお世話になっているように見えるけれど、彼女たちの存在が、地蔵さんとヤスばぁちゃんの2人きりの生活に変化をもたらしたことは間違いない。人間関係は時々めんどうで、煩わしくなってしまう時もあるけど、やっぱり人は人と繋がって癒されたり、元気や一歩踏み出す勇気をもらったりするものなんだなと思った。そして、悩んだ時にじっくり悩めることは幸せなんだと思った
キャストは皆良かった。若い主演2人をベテラン俳優が支える感じ。地蔵さん役は大好きな光石研。若い女性にいきなり家に上がれなんてビックリ発言も、とっても自然に感じてしまう。お地蔵さま感はなかったけど、幼い兄妹に慕われている感じは分かる。辛い過去と現実を生きているのにとっても穏やか。普通の人を普通に演じるのって難しいんじゃないかと思う。さすがの演技。小林薫がちょっとクセのある雲月を好演。ひねくれているわけでもないし、若者たちに対して偉ぶりたい感じとも違う。嫌な人ってわけでもない。でもクセがある感じ。小林薫に合ってる(笑) ホメてます! ヤスばぁちゃんの吉行和子がさすがの存在感。ホントに普通のおばあちゃんでビックリ。あることで選択を迫られるけれど、息子を思う母親の気持ちが伝わって来た。同時に自分の気持ちも揺れていたのだと思う。きっと会いたかったはずだから。その辺りも感じさせて見事。
若い2人も良かった。工藤阿須加がさわやか。慎吾は穏やかで繊細なタイプっぽくて、プロを目指すか実家を継ぐかで悩んでいるけど、実家に帰ることが逃げに感じてしまうようなことがなかった。見た目は体育会系なのに、繊細な感じを感じさせたのは良かったと思う。スタイル良くてビックリ! 主演の有村架純が良かった。本当に普段もこういう子なんじゃないかというくらい自然だった。夏美は思っていることを臆せずハッキリと言うタイプだけど、そんなに感情表現豊かなタイプではない。でも、ちゃんと気持ちが伝わってきた。人好きのするタイプ。でも、ちゃんと人との距離も取れてる。その辺りのさじ加減も良かったと思う。
悲しい出来事もあったりするけど、とってもほっこりする作品。原作未読なので、この感じが原作によるものなのかは不明だけど、片岡翔さんの脚本によるものなのかなと思ったりもする。たんぽぽの綿毛が飛んで行くところとか、翔監督らしいなと思ったのだけど、これは原作にもあるのかな?(o゚ェ゚o)
夏美が訪れた田舎町の風景がいい。たけ屋は坂道の入り口にある感じで、店の入り口までが急な坂になっている。店舗裏の居住部分は庭も含めて田舎のおばあちゃん家感満載で、こちらもまたいい感じ。どちらも同じ家でロケしたのか不明だけど、よい店を見つけたなという感じ。ホタルを見に行く川も良かった。清々しい美しさ。ホタルのシーンは夏美と共にじんわり感動していたのに、前の席でビニールガサガサされて集中力そがれて悲しい 本当に美しいシーンだった。雄大な自然という感じではないのだけど、自然が寄り添ってくる感じ。これは映画館で見て良かった。
今ちょっと疲れてる人にオススメな作品。立ち止まって悩んでいいんだと思わせてくれる。有村架純ちゃんファンの方は言われなくても見てると思いますが、必見です 光石研さん、工藤阿須加くんファンの方も是非!