2016.07.01 『ブルックリン』鑑賞@TOHOシネマズシャンテ
試写会応募したけどハズレ 最近当たらない。・゚・(ノД`)・゚・。 ファーストデイの金曜日に公開ってことで、これは見なきゃと行ってきた~ 18:30~の回満席だった。
ネタバレありです! 結末にも触れています!
「母と姉を残して1人アイルランドからアメリカに渡ったエイリッシュ。アイルランド系移民の多いブルックリンの寮や、慣れない仕事になじめずホームシックに。そんな中、イタリア系移民のトニーと恋に落ちる。幸せな時を過ごすエイリッシュだったが、一時帰国した故郷で心が揺れて・・・」という感じ。良かった。若い娘がたった1人でアメリカに渡るという決断以外は、普通の人の普通の人生。でも、普通の人生にだってドラマがある。特段ドラマチックではないその人生を、じっくりと描いた良作。
この10年で最も高い評価を受けた、2009年発表のコルム・トビーンの原作「ブルックリン」を、『BAY A』(感想はコチラ) のジョン・クローリー監督、『17歳の肖像』のニック・ホーンビィ脚色により映画化。Rotten Tomatoesで、批評家98%、観客90%という高支持を集め、アカデミー賞作品賞、脚色賞にノミネートされた。主演は『ハンナ』で共演したケイト・ブランシェットが「シアーシャの時代が来るわ」と評したシアーシャ・ローナン。今作でもアカデミー賞主演女優賞にノミネートされた。原作を読んだアマンダ・ポージーとフィノラ・ドワイヤーの2人のプロデューサーは、「アイルランドからアメリカに渡った無力な女性が、自分がなりたいと思っている女性になっていくまでの成長物語」ととらえたそうで、現代でも夢を求めてアメリカへ渡る人は多いけれど、4人に1人がアイルランド系アメリカ人と言われるアメリカの基礎を作った人々がたどった物語の1つでもある。
監督のジョン・クローリーもアイルランドではない所に住んでいるアイルランド人。シアーシャも両親がアイルランド人でニューヨーク生まれ、後にアイルラドに渡りダブリンで育ち、現在もアイルランドに暮らしているのだそう。クローリー監督は本作をあの時代と場所、アメリカ移民の経験を詳しく伝える印象的なキャラクターを描くチャンスだと考え、また運がよければ生涯に一度だけ役者と役が交わるチャンスに出会えると考えていたそうで、そういう意味では今回のシアーシャとエイリッシュはまさに役者と役柄が交わったと言える。アメリカとヨーロッパの助演キャストが出演しているけれど、その中でもひときわ存在感を示したのが、エイリッシュの下宿の女主人キーオ夫人役のジュリー・ウォルターズ。『リトル・ダンサー』の先生だよね? どうやらこのキーオ夫人の下宿を舞台としたテレビドラマが、スピンオフ企画としてBBCで製作されるそうで、もちろんジュリー・ウォルターズも出演するのだそう。見たい!
冒頭、西暦とアイルランドの街の名前が出たと思うのだけど失念 撮影はコルム・トビーンの故郷であるエスコーシー、タイトルにもなっているブルックリン、そしてロングアイランドなどで行われたそうなので、エスコーシーだったと思われる。町一番の美人である友人とダンス・パーティーに向かうエイリッシュ・レイシー(シアーシャ・ローナン)。愛嬌のある友人は直ぐに男性からダンスに誘われるけど、エイリッシュには声がかからない。彼女に魅力がないということよりも、彼女自身の生真面目さとか人見知りな感じによるものかなと思う。もちろん女性なのだから、声をかけて欲しかったとは思うけれど、性格的にそれを素直に出すことができない。結局いたたまれなくなって会場を出てしまう。このシークエンスだけでエイリッシュの性格や複雑な心理まで描いていて見事。そして"田舎の美人"である友人役のチョイスが完璧。ホメてます!
エイリッシュは父親を亡くして母親と姉(フィオナ・グラスコット)の3人暮らし。家系は会計士として働く姉が支えている。エイリッシュも姉と同じ会計士になりたいと思っているが、経済的に学校には通えず、地元には就職先もなかった。現在は週に数回食料品店で働いている。この食料品店はかなり繁盛しているようだけれど、女主人は客を選び、面と向かってイヤミを言ったり、有力者には他の客を差し置いて食品を優遇したりとあからさま。この女主人は後に本人の意図しない形で、エイリッシュの人生に大きく関わることになる。
地元には自分の将来がないと考えたエイリッシュは、ニューヨークに住むアイルランド出身のフラッド神父(ジム・ブロードベント)を頼りアメリカに渡る決心をする。 食品店の意地悪な女主人に母親を姉に押し付けるのか的なイヤミを言われ、ちょっと心が揺れるけれど、姉に背中を押されて船で出発する。この一言が後に多少なりとも作用したのだと思う。当時も飛行機はあったと思うけれど、庶民はまだまだ船旅。当然ながら一等船室ではない。二段ベッドのみの狭い船室。トイレは隣の船室と共通らしい。エイリッシュが食堂でたった1人まずいスープを飲んでいると、従業員が揺れるからみんな夕食を食べないのだと声をかける。彼の言葉通り船は激しく揺れ、酷い船酔いになってしまう。トイレは隣の船室の客に占領されてしまい使えない。慌てて廊下に出て、掃除用のバケツに用を足し、部屋にも嘔吐したバケツが。戻って来た同室の女性が介抱してくれる。この女性から化粧を習い、アメリカに入国する際には堂々とすることなど教えてもらう。これは後にニヤリとなるシーンにつながっている。
原題も『BROOKLYN』。どうやら1950年当時アイルランド系の方々がブルックリンに多く住んでいたのだそう。現在もそうなのかな? エイリッシュはキーオ夫人(ジュリー・ウォルターズ)の下宿に住むことになる。エイリッシュを含めて5人のアイルランド出身の女性が暮らす。2人は軽めの女性たち。ファッションのことと、男性のことで頭がいっぱいという感じ。1人は離婚歴のある女性で、2人に対してピシャリと皮肉を言う感じがちょっと爽快(笑) もう1人は生真面目そうな女性で、後に下宿を出る。キーオ夫人は規律に厳しく、ハッキリものを言う人だけど、面倒見が良くサッパリした人。でも、人見知りのエイリッシュは下宿の雰囲気になかなかなじめない。下宿の風景としては、キーオ夫人を中心に全員で食事している風景が、エイリッシュが自室で過ごしているよりも多く登場する。この食事シーンで、エイリッシュがどんどん馴染んで行く姿を見せ、彼女の成長を描いていて興味深い。
エイリッシュはブラント神父の紹介でデパートで働き始める。何か筒状の物に機械的な物を使って詰めているのだけど、これは何? その間、お金持ちそうなご婦人相手に話をしなければならないのだけど、同僚との軽口すら拒否してしまう人見知りのエイリッシュにはハードルが高い。ある日、目に見えて様子がおかしいエイリッシュは、マネージャー(?)の女性に呼び出されてしまう。駆けつけたフラッド神父は重度のホームシックであり、それは誰もが通る道だと諭す。少し心が軽くなったエイリッシュは、神父の手伝いをする。クリスマスの日に老人たちに食事を提供するというもの。軽めの2人が老人たちが臭いからやりたくないと言っていたボランティア。老人たちはアイルランドからの移民たちで、この国に多くの橋を架けた元労働者たち。今では年老いて仕事もない。普段どんな生活をしているのか? みな痩せこけている。エイリッシュは神父に彼らは国に帰らないのか尋ねるけれど、君ですら仕事がないのだから、彼らが戻っても仕事はないだろうと言われる。これも移民の現実。ここで1人の男性が神父に乞われて歌う。公式サイトの記載の仕方だとハッキリしないのだけど、おそらくこの方はアイルランド人歌手のイアーラー・オー・リナードで、ここで歌われたのは「Casadhan Tsugain」なのだと思う。ケルト語のアカペラで歌われた曲は哀愁があって心にしみた。
神父はエイリッシュに会計士の資格を得るため学校に通うように提案。資金援助も申し出てくれる。自身もアイルランドからの移民である神父は、同胞を助けたいという思いが強いのでしょう。エイリッシュは昼間デパートで働き、夜学校に通うようになる。クラスはほぼ男性ばかりだけれど、人見知りのエイリッシュには女性ばかりの中にいるより居心地がよかったのかも? 姉が会計士をしていたことから、自身も会計士になりたいという夢を持っていたため、勉強に打ち込む日々。
充実した毎日を過ごしていることにより、エイリッシュの中で一つのハードルを越えたようで、その後は吹っ切れたように仕事も見事にこなせるようになり、下宿での生活も楽しめるようになった。キーオ夫人の信頼も厚く、生真面目タイプの女性が出た後の、玄関とは別の入り口がある特別な部屋を使わせてもらえるまでになる。そんな時、新しく入居した空気が読めないタイプの女性を、ダンスパーティーに連れて行くことになり、ここで運命の出会いをする。空気読めない女性と一緒にいるのが苦痛になったため、1人ダンスを踊り始めるエイリッシュ。冒頭のいたたまれなくなって帰ってしまった姿との対比になっている。1人で堂々と楽しめる自立した女性になったということ。そんなエイリッシュを熱心に見つめる男性が。彼はエイリッシュにダンスを申し込む。エイリッシュは、彼とも上手に会話できるようになっている。パーティーを抜け出そうという彼に対して、気の合わない同行者と別行動できる口実になるなどと返したりする。この辺りの変化や、セリフの粋な感じも良かった。
この青年は家族と共にイタリアから移民してきたトニー・フィオレロ(エモリー・コーエン)。このダンスパーティーはアイルランド系の人々のものだったらしく、いわゆるイタリア人の恋愛に対するノリが合わないトニーは、控えめなアイルランド女性がタイプなようで、ちょくちょくアイルランド系のパーティーに顔を出していたのだそう。エイリッシュがこの時イタリア人に対して、どの程度知識があって、どう思っていたのか分からないけど、見ている側としてはイタリア人といえば情熱的な印象なので、このトニーの感じは意外だったりしつつも、もしかしたらエイリッシュは騙されてしまうのじゃ?と心配になったりする。でも、このトニーがとっても純粋でカワイイ人だった。
意気投合した2人は翌日食事に出かける。自分の話よりエイリッシュのことが聞きたいと言うトニー。ずっと話し続けたエイリッシュはトニーが食べ終わりそうになっても、ほとんど手を付けていない状態。でも、それだけ楽しい時間だったということで、それは2人がとても合っているということ。配管工をしているトニーは、毎日エイリッシュの学校が終わるのを待つようになる。今ならストーカーじゃないかと言われちゃいそうだけれど、エイリッシュが迷惑じゃなければ問題ないわけで、彼女を下宿まで送り紳士的に帰って行く。この2人の感じがかわいらしくて良かった。トニーから家に招かれたエイリッシュが、軽めの2人からパスタの食べ方を習うのも微笑ましい。でも、当日スプーンを使って食べてたのはエイリッシュのみ 彼女が練習したのが直ぐにバレる感じも、家族に気に入られるエピソードになっている。生意気な小学生の弟のキャラがいい。この食事の際にトニーはエイリッシュとの結婚を望んでいるような発言をしてエイリッシュを戸惑わせる。
下宿の離婚歴のある女性に相談したりしつつ、悩むエイリッシュ。ある夜、トニーが迎えに来ていないことに気づき不安になる。そこに遅れてトニー登場。そして彼女は自分もトニーと同じ気持ちであることを告白する。その夜2人はエイリッシュの下宿の部屋で結ばれる。この感じも良かった。とっても好感がもてる2人。直ぐに結論を出してしまうのは危険かもしれないけれど、自分の気持ちに従うことは大切。相手の気持ちを尊重しつつ、愛情を育てていく感じが良かった。なにより良かったのは、この恋愛を通してエイリッシュがどんどん大人の女性になってくこと。恋をして愛されて自分に自信が持てたことで、どんどん輝いていく。化粧も服装もあか抜けていく。トニーと海へ行き水着姿を披露したりする。その変化は女性として見ていて楽しい。
そんな幸せな日々、突然故郷から訃報が入る。姉が亡くなったのだった。おそらく以前から病気で、自覚があっただろうとのこと。帰国を考えるエイリッシュだったが、トニーは彼女が戻ってこないのではないかと不安になる。彼はまだ何もない一面野原のロングアイランドにエイリッシュを連れて行く。自分が好きな場所であり、兄と2人で建築会社を作り、ここに家を建てたいと思っているという夢を語る。一見すると無謀な夢の気がするけれど、現在のロングアイラドは、周囲を守られた島という地形から住宅地として発展、ゴールドコーストやファイヴ・タウンズには高級住宅が並ぶなど、一大住宅街となっている。そのことを考えるとトニーは先見の明がある有望な人物であると言えるのだそう。なるほど、そういう背景が分かるとより楽しめるのね どうしてもエイリッシュをつなぎとめたいトニーは、結婚して欲しいと申し出る。この時のエイリッシュの心境が、自分には少し押し切られたように感じたのだけど、どうだったのだろうか? 2人は身なりを整え役所に向かう。手続きが終わるのを待っている間、アイルランド出身の家族と会話をする。この家族が後にエイリッシュにある決断をさせるきっかけとなる。ミセス・フィオレロとなったエイリッシュはアイルランドへ帰国することになる。
アイルランドに戻り姉の葬儀を済ませると、彼女が優秀な会計士として同僚たちに厚い信頼を得ていたこと、ゴルフクラブでは優秀な成績を残し、また明るく優しい性格から皆に慕われており、姉の名前を冠した賞が設けられるほどであったことが分かる。エイリッシュや母親の犠牲になってしまった不幸な姉というイメージだったけれど、彼女は彼女なりに充実した幸せな人生であったことにホッとすると同時に。どんな境遇であっても、幸せを見出すことは出来るし、それは自分の出来ることを精一杯やってこそなのだということに改めて気づく。普通の人の普通の人生だって大切な人生。
結婚したことは秘密にしておこうという会話があったような気がするのだけど、それが何故だったのか失念 結婚って人生においてかなり重要な出来事だと思うのだけど、エイリッシュはその事実を母親にも伝えない。再会した親友は近々結婚することになっており、エイリッシュにも式に出て欲しいと言う。そのため少し滞在を延ばすことになる。彼女は婚約者の友人で、最近婚約破棄されて傷心のジム・ファレル(ドーナル・グリーソン)を紹介する。どうやら彼女は2人の仲をとりもとうとしている様子。4人で海に行ったり、食事をしたり出かけることが多くなる。エスコーシーの街を歩いている時も、4人で海に行った時も、エイリッシュの洗練された服装や振舞が目立つ。この演出も良かった。そんなエイリッシュに恋するジム。エイリッシュも穏やかなジムに惹かれている様子。イヤイヤ、結婚してるじゃないの!と思ったりもするのだけど、彼に惹かれていく気持ちは分かる。ジムは故郷を体現しているから。一方のトニーはアメリカを象徴している。この対比も良かった。2人とも好人物なのも悩ましい。まぁ、結婚しているわけだから、不倫になってしまうのだけど
エイリッシュが会計士の勉強をしているということで、姉亡き後事務処理が滞っていた会社から、会計処理を手伝って欲しいと要請がある。エイリッシュはこれを見事に処理し、上司の信頼を得て、このまま雇い入れたいとの申し出を受ける。希望していた仕事で、しかも姉の後を引き継ぐということで、エイリッシュの気持ちはますます揺れる。そんな中、ジムから両親に会って欲しいと言われたりする。ここでもまだ結婚の事実を隠して彼の両親に会いに行く感じがちょっと解せないのだけど、欧米では両親に会いに行くのは結婚の意志があるということでもないのかしら? まぁ、日本でも家に連れて行ったからと言って即婚約というわけでもないとは思うけれど・・・ 当然ながら両親の会話にはエイリッシュを嫁候補として気に入っているニュアンスが含まれていたりするわけで、その辺りをどう考えているのか? まぁ、2016年の首都圏に住むOLちゃんと、1950年代のアイルランドの田舎町に暮らすエイリッシュとでは、自分を取り巻く環境も違ってくるのだろうけれど・・・ ただ、その間エイリッシュの中に、アメリカのことや、夫であるトニーのことが、どのくらい心の中をしめていたのかが少し分かりにくかったかも。なので、見ている側はエイリッシュはこのままアメリカに戻らないのかも? でも、結婚しているのだからジムとは結婚できないよね? などと考える。
見ている側が不安になりはじめたころ、エイリッシュは以前働いていた食品店の意地悪女店主から呼び出される。行けないと断っているのに、使いに来た女性は絶対にあなたを連れて来いと言われているからと言う。何かと思って出かけて行くと、店によく来るご婦人の親戚がニューヨークの役所でアイルランド出身の若い女性に会った。その若い女性は結婚しに来ていたらしい。あなたの本名はなんなの?と意地悪くニヤリと笑う。彼女として最近公認になりつつあるジムとの関係を知って、これはスキャンダルと食いついて、エイリッシュをやり込めてやろうという魂胆なのでしょう。するとエイリッシュは静かに言う。忘れていたわ。またまた( ̄ー ̄)ニヤリの意地悪女。忘れていた自分が何故ここを離れてアメリカに行ったのか。ここはそういう土地だった。そこで、意地悪の顔色が少し変わる。そんな話をして一体何がしたいの? 自分でも分かっていないのね。驚愕する意地悪。自分には何もないこと思い知ったか(*`д´) まぁ、こういう人は何を言われても変わらないでしょうけれど。意地悪ババアに向かって一言「私の名前はエイリッシュ・フィオレロよ」という姿は威厳に満ちている。自分が何者であるかを理解し、自分を取り戻した瞬間。このシーンのシアーシャ・ローナンが素晴らしい。そして意地悪ババア役の女優さんも素晴らしい。
家に戻ったエイリッシュは早速アメリカ行きの船を予約。そして母親に自分がアメリカで結婚したこと、そしてアメリカに戻ることを告げる。エイリッシュがアメリカに戻ると思いつつも、ハッキリ言い出せなかった理由の中には、母親を一人で置いていかなければならないということがあったと思う。そして、母親がジムとの仲をよろこんでいた理由の中にも、エイリッシュにそばにいて欲しいという思いがあったはず。母親はエイリッシュの結婚と、彼女の決断を祝福してくれるけれど、それでもやっぱりショックが大きかったらしく、早々と寝込んでしまう。最後の夜なのにそれは悲しいと思うけれど、現代のようにインターネットもない時代、アイルランドとアメリカは今以上に距離があったに違いない。母親の気持ちも分からなくはない。きっとあれが精一杯だったのでしょう。
ジムに直接会って話すべきなのか判断が難しいけれど、エイリッシュは彼の家のドアに手紙を残したらしい。ジムが手紙を見つけて読み始める描写しかないので、内容については不明。思えばジムってとってもかわいそう。婚約破棄されてやっと立ち直った頃、エイリッシュと出会い、彼女に恋をして結婚を考えていたのにこれって。・゚・(ノД`)・゚・。 ドーナル・グリーソンが演じているだけによりかわいそう
アメリカに向かう船上、デッキで佇んでいると声を掛けられる。化粧っ気のない若い娘。期待に胸を躍らせつつ、少し不安気な表情。アイルランド系が多く住むブルックリンに住む予定で、あなたも住んでいるのか聞かれる。住んでると答えるエイリッシュ。自分の居場所はブルックリンなのだと改めて確信している様子。そして、アドバイスを始める。部屋に入ったらトイレのドアを塞いで、隣の部屋の客と交渉すること。今日の夕食は食べないこと。きちんとお化粧をして、入国審査では威厳を持って対処すること。そう、初めてアメリカに渡る時、同室の女性にアドバイスしてもらったこと。このシーンは( ̄ー ̄)ニヤリ エイリッシュが大人の女性になったことが分かる。入国審査の列に並ぶ女性と微笑みあって、扉を開けて出ていく姿が印象的。
シーン変わって壁に寄りかかり誰かを待つエイリッシュ。上に載せたチラシ画像がこのシーン。視線の先には仕事を終えて出てきたトニー。エイリッシュに気づいて、よろこびとホッとした思いが混ざった表情をするトニー。この表情がイイ。駆け寄って抱き合うシーンで終了。このシーンは良かった。あのチラシの続きはこんな素敵な場面だったのかと感動 この選択が正しかったのかどうかは、今後の人生で答えが出る。これから先も大なり小なり選択と決断を繰り返すことになる。あの時を悔やむこともあるかもしれないけれど、それでも人生は続く。納得いく人生を歩みたいと改めて思う。この終わりは良かったと思う。エイリッシュの選択については、いろいろ意見があると思うけれど、自分はこれで良かったのではないかなと思う。まぁ、前述したとおりジムがかわいそう過ぎるけれど・・・ でも、やっぱり希望がある人生の方がいい。
キャストはみな良かった。一家の大黒柱として家族を支え、でもしなやかに生きていた姉のフィオナ・グラスコットの抑えた演技が良かった。アメリカで恋をして生き生きと暮らすエイリッシュからの手紙を読んで、思わず号泣してしまう姿が印象的。妹の幸せを喜びつつ、自分の境遇を思う感じ。良かった。神父のジム・ブロードベントはエイリッシュを見守る父親のような存在。その包み込む優しさと正しさが良かった。ジムのドーナル・グリーソンが繊細で物静かな青年を好演。彼が体現するのは故郷。彼とならば穏やかに暮らせるけれど、刺激的ではない。その感じは良かった。下宿のキーオ夫人のジュリー・ウォルターズが素晴らしい。一歩間違えると口うるさいオバサンになってしまうけれど、エイリッシュをはじめとした下宿人たちの肝っ玉かあさんぶりが軽妙。クスッと笑えて、ピリリと締まった。さすがの演技。
トニーのエモリー・コーエンは初めて見たけど、とってもかわいらしくて良かった。恋するトニーがかわいくてかわいくて(笑) ホントにキラキラしてた。エイリッシュを失いたくなくて結婚を急いじゃう感じとか、まだつき合っていないのに毎日学校に迎えに来ちゃうとか、ストーカー((( ;゚Д゚)))とか思うけど、そうはなっていないのは、エモリー・コーエンのかわいさのおかげ。これは武器になるのでは? そして、何といっても主演のシアーシャ・ローナンが素晴らしい。前から演技が上手いと思っていたけど、普通の人の普通の人生を演じて飽きさせず、きちんと共感させるのはさすが 学校に通い、恋をして充実した人生を送ることで自信をもって、どんどんあか抜けてきれいになっていく感じも的確に表現。素晴らしかった。
画が良かった。エイリッシュの気持ちに合わせて、背景もどんよりしたり、キラキラしたり、落ち着いたカラーになったり。その感じも良かった。アイルランドの街並みもとブルックリンの街並み、アメリカの海岸とアイルランドの海岸など、それぞれの対比が良くて、どちらも良かった。地味で野暮ったかったエイリッシュの衣装が、どんどんあか抜けて行くのも良かったし、ここぞという時にはアイリッシュ・カラーのグリーンを着るのも良かった。
人の数だけ人生があって、それぞれのドラマがある。エイリッシュの人生はまだ途中だし、アメリカに渡った以外は普通の人の普通の人生。その人生の大きな決断を下すまでを、じっくりと見せる。その感じがとっても良かった。
女性の成長と自立の物語に興味がある方オススメ。ドーナル・グリーソン、エモリー・コーエン好きな方是非。シアーシャ・ローナン好きな方必見です!
『ブルックリン』Official site