2015.某日 『猫なんかよんでもこない。』(試写会)@都内某所
某映画サイトにて当選。8月某日都内某所で開催された試写会。映画タイトルは伏せての募集だったため、当日まで何の映画か分からなかったのだけど、応募条件に合っていたので、楽しめるハズとワクワクしながら行ってきた
ネタバレありです! 結末にも触れています!
「ボクサーのミツオは漫画家の兄のもとに居候しつつデビュー戦を待っていた。ある日、兄が2匹の子猫を拾ってくる。忙しい兄に代わりミツオが世話をすることになるが、猫を飼うのは初めてで・・・」というのは、ホントに導入部。これはおもしろかった。原作が漫画であることは知ってたけど、内容自体は全く知らずに見た。タイトルから猫が出てくる映画であって、猫に翻弄される話なのかなとは思っていたけど、まさにその通り(笑) 猫好きなら絶対楽しめる作品になっていると思う。とにかく猫がカワイイ
元プロボクサーの漫画家杉作氏の同名漫画が原作。原作漫画は未読。どうやら10月からアニメ番組もスタートしたらしい。原作者の実体験ベースの漫画ということで、今作もプロボクサーのミツオが、猫との暮らしを描いた漫画を描き上げるまでが描かれる。って一言で言ってしまうとホントにそれだけ。でも、2匹の猫との出会いは主人公の人生を変える出会いでもあった。現在、"その4"まで出版されている原作では、その後の主人公と猫の姿が描かれているようだけれど、映画としてはこの終わりで良かったんじゃないかな?
実は、某試写会が開催されたのは8月初め。映画自体についての感想記事をUPするのはOKだけど、試写会自体には触れないで欲しいとのことだった。そのため、情報が解禁になる10月まで待って感想記事を書いた。何故、極秘なのかは不明だけど、参加した身としては分かるような? まぁ、大人の事情ということで ファンから映画化やアニメ化を望む声が上がる人気作品なのに、意外に情報が少ないため、作品に関する情報があまり書けない上に、見てから2カ月以上経ってしまったので、ちょっと忘れてしまった部分もある。なので、頑張るけど曖昧な部分があるかも? まぁ、別にいいか(笑)
プロボクサーの杉田ミツオ(風間俊介)は26歳。ボクシングのことが全く分からないので、ミツオの状況がよく分かっていないのだけど、タイトルホルダーではないし、挑戦者としてもタイトルマッチができる状態でもない。デビュー戦をむかえてないような感じ? 漫画家の兄(つるの剛士)の仕事を手伝ってはいるものの、いわゆる居候生活。元ボクサーが主人公なので、試合のシーンも出てくるし、トレーニングシーンなどもそれなりに出てくるけど、描きたいのはそこじゃないので、ボクシングファンの方が見たらどう感じるのかは不明。まぁ、ボクシング目当てで今作を見る人はいないと思うのでいいか(笑) 兄がどの程度売れている漫画家なのか不明だけど、風呂なしとはいえ、4畳くらいのキッチンと6畳くらいの部屋、そして6畳の部屋と続いてもう1つ畳の部屋があったような・・・ 家賃5万円って言ってなかったかな? お風呂がないのは辛いけど、これは安いなと思った気がする(笑) この間取りが原作どおりなのかは別として、台所から部屋まで襖などによる仕切りがないのは、子猫たちが駆け回る姿を映したいのかなと思った。そして、それは効果的だった
冒頭、住宅街をランニング中のミツオ。ふと鳴き声に足を止めると、2匹の猫が箱に入って捨てられているのを発見する。気にはなるけど通り過ぎるミツオ。後に2匹を飼うことになるのは分かっているので、このやり取りはちょっとニヤリ。後に兄が2匹を拾ってくる。拾ってきたものの、世話をする気はないらしい兄は、猫嫌いのミツオにやんわりと世話を押し付ける。こういう人いる(笑) 自分がメインだったハズなのに、のらりくらりといつの間にか脇役になってて、結局放っておけない人が面倒なことを引き受けることになる。まぁ、この兄弟の生活は兄の漫画にかかっているわけで、ミツオが簡単な仕事を手伝ってはいるものの、アシスタントもいない状態では、猫の世話どころではないのかもしれないけれど・・・ しばらくはエサの問題とか、トイレのしつけとかドタバタしたシーンが続くけれど、とにかく2匹がカワイイ 走り回る子猫たちがかわい過ぎた!
そんな中、ミツオは比較的大きな試合に出場。見事勝利し、一躍期待の星とまではいかないまでも、認められる存在となる。しかし体に異変が。病院に行ったところ網膜剥離のためボクシングは諦めるように言われてしまう。いきなり、夢と職を失ってしまったミツオに、兄はお金を渡し、今日は好きなものを食べてこいと言う。兄弟っていいなと思っていると、翌日もまた兄はおごってくれる。そして、衝撃発言! なんと結婚して田舎に帰るというのだった。おいしいものを食べさせてくれたのは、ミツオをなぐさめるためではなく、彼女を家に呼ぶためだった。まぁ、なぐさめる意味もあったと思うけれど(笑) そんなわけで、一気に窮地に追い込まれてしまうミツオ。おそらく、杉作氏ご本人の体験としては、非常に辛く大変だったのだと思うけれど、映画ではコミカルにサラリと描いているので、悲壮感漂う感じにはなっていない。それはよかったと思う。
さて、2匹の猫と共に残されてしまったミツオ。まぁ、兄はほとんど世話をしていなかったので、猫たちに関しては変わりはない(笑) 2匹はオスとメスの兄妹で、兄は黒いのでクロ、妹は小さいから(だったかな?)でチン子と名付けられた。とにかく、子猫の頃がカワイイ! そして自然。ミツオの家がセットなのか不明だけど、本当にこの家に飼われているかのように自然に遊んでいる。当然、猫たちも所属の事務所があって、専属のスタッフさんがついているのだとは思うけれど、それでもこの自然な感じはスゴイと思う。監督はじめスタッフさんたちは全員猫好き? 全体として、この猫たちの成長と一生を通してミツオの成長も描かれていく。
無職のミツオは就活を開始するけどなかなか思うようにいかない。結局、幼稚園(だったっけ?)の給食センターのスタッフとしてアルバイトを始める。料理の経験がないミツオは戸惑うものの、次第に溶け込んでゆく。このセンターの主任のウメさん(松岡茉優)は、以前猫たちが行方不明になった際に見つけてくれた人。ウメさんというとおばあちゃんかおじいちゃんのようだけど、実際は若い女性。フルネームが分からないので、なぜウメさんなのかは不明。梅田さんとか?別にいいけど(笑) このウメさん、とっても真面目な人。そんな彼女が頑張りを見せて、ミツオに手作り弁当を持参するシーンはかわいくて好きだった。彼女との恋も並行して描かれるのだけど、それも自然な感じで良かった。で、このウメさんが大の猫好き。現在、猫を飼っているのかは不明だけど、ミツオにいろいろアドバイスしてくれる。猫の先生でもあり、ミツオが彼女を好きになるきっかけでもある。ただ、初めて会った日に彼女が言った「避妊手術をして下さい」というアドバイスを実行しなかったため、ミツオは後に激しく後悔することになる。
この辺り猫を飼っていた者からすると、なんとも歯がゆいのだけど、初めて飼う時っていろいろ失敗するよね・・・ 一応、兄から猫の飼い方の本が送られて来たりするけど、生き物を飼うって大変なこと。チンは雌猫なので、交尾しそうになっているところを見つけて慌てて避妊手術を受けさせたけど、クロは雄猫だからとそのまま放置。チンは活発な猫で、地域猫ヒエラルキーの上位にいたのに、避妊手術を受けた途端誰からも相手にされなくなってしまった。そんな姿を見ていたこともあるかもしれないけれど、おとなしくて引きこもりがちだったクロが突如として行動を起こし、夜な夜なケンカをして傷だらけになって帰って来るようになると、動物病院の先生から避妊を勧められても無視してしまう。自分の果たせなかったチャンピオンの夢をクロに託してしまったから。その気持ちは分かるのだけど、猫がケンカして傷を負うことの恐ろしさを知らないからできた行動でもある。結局クロは猫エイズになってしまう。治療法はない
ミツオは自分を責めて、泣きながらバイクを走らせる。避妊手術をしたからといって、絶対に猫エイズにならないという保証はない。予防接種をしていてもなる可能性はある。ケンカによる傷から感染する率が高いことは間違いないけれど、だからといって100%エイズになるとも限らない。でも、やっぱり飼い主として最低限できることはしてあげなきゃいけないとは思う。自分の猫はもちろんだけど、誰かの大切な猫ちゃんを病気にしてしまう可能性はあるわけだから・・・ その辺りのことはミツオが一番身にしみていることだから、責めることはできないけれど、見ている間は辛かった 特にミツオが自分の夢を託しているという部分ついては、エゴと言えばエゴだし。ただ、ウメさんがミツオをなぐさめるために、クロはクロらしく生きられて幸せだったと思うと言ったセリフには、少しだけ同意する気持ちがなくもない。家猫を飼うならば責任があるので、繁殖するにしても管理は必要だと思う。ただ、猫の人生と見た場合、人間の都合で彼らの権利を奪うのはどうなのかと考えてしまう時もある。これだけ人間と密接な関係にある場合、地域猫であってもある程度の管理は必要なのかな?と思ったり、それでは猫本来の生態系を壊してしまうのではないか?と思ったり。難しい問題・・・
クロは日に日に弱っていく。心配そうに見守るチン。そして、最期の時を迎える。すると、あんなに心配そうにしていたチンが、クロに見向きもしなくなる。「クロが物になってしまった瞬間だった」とミツオのナレーションが被る。そのことが、クロが死んでしまったという事実以上に悲しくて泣いた 今年の初めに飼い猫を亡くした身としては、本当に辛かった。さっきまでクロだったのに、もうクロじゃない。ただ、アガサが死んでいこうとしていた時、その姿を見守りながら、死ぬとはこういうことなのかと思っていた。死ぬことを教えてくれているのだなと・・・ いい年をして恥ずかしいけれど
ミツオは一念発起して漫画家を目指す。無謀な気がしなくもないけど、兄のアシスタントのようなことをしていたので、全くの素人というわけでもない。それでもコマ割りなど一から勉強し始める。漫画のテーマはボクシング。アルバイトをしながら必死で描くけど、なかなか採用されない。そんなに甘くはない。ボクシング漫画を何本か描いて不採用になった後、クロとチンを題材とした漫画を描くことを思いつく。この辺り、直ぐに成功してしまうこともなく、引っ張り過ぎることもなく、適度でよかったと思う。これが「猫なんかよんでもこない」ということなのだろうから、当然採用される。
映画は、ミツオの漫画が連載決定になり、ずっと引きこもりだったチンが再び外に出かけるようになったところで終わる。病気のこともあるし、家猫を外に出すのは反対派なので、ドキュメンタリーだと少し違った思いもあったかもしれないけれど、映画としてはこの終わりでよかったと思う。希望のある終わり。ほっこりした。主人公の挫折と再起を、猫たちの成長と絡めて描いていて、重くなることなく見れた。子猫の頃のかわいさには頬がゆるみっぱなし。クロの死を通して飼い猫の問題も描いているし、チンのエピソードで猫社会のことも描いている。それらがバランスよく配置られていて、ほのぼのしつつも、いろいろ考えさせられた。
キャストはみな良かった。兄役のつるの剛士の演技を見るのは初めて。本職は俳優でいいんだよね? バラエティーの印象が強くて不安だったけれど、弟思いなのかどうなのか、ひょうひょうとした人物を好演していたと思う。ウメさん役の松岡茉優は『桐島、部活やめるってよ』(感想はコチラ)の役の印象が強くて、あまり良いイメージじゃなかったのだけど、控えめでおとなしいながらも、芯のしっかりした女性という、『桐島~』の時とは真逆の役を好演。全くの別人でビックリ! ウメさんは一歩間違えると不思議ちゃんになってしまうのだけど、そうはなっていない。さじ加減が上手い。
ミツオ役の風間俊介はジャニーズの人なの? ジャニーズ詳しくなくて 名前と顔は知っていたけど、演技を見るのは初めて。26歳の設定だけど、少し幼く見える容姿が、ミツオの頼りなさと合っていて、なるほど良いキャスティングだなと思った。ボクサーイメージはなかったけれど、ボクシングシーンもこなしていたし、体は鍛えられていた。ミツオが猫たちに振り回されながら、ふらふらしつつも新たな夢を見つけるまでを的確に演じていたと思う。
そして! なんといってもチンとクロがカワイイ 特に子猫の頃の奔放さは猫好きにはたまらない! 子猫も成猫も、とにかく2匹が自然。本当にそこで飼われている猫たちに見える。風間俊介は空き時間も猫たちに接していたそうだけれど、いい関係が築けている感じが画面から伝わってくる。それぞれテーマもアプローチも違うので、他の作品と比べるのは違うと思うけれど、猫のシーンということでは、最近見た『猫侍 南の島へ行く』(感想はコチラ)や、『先生と迷い猫』(感想はコチラ)よりも多かったし、"猫"を堪能できた。
ミツオが暮らしている部屋が、いわゆる貧乏男子の感じでよかった。兄と暮らしていたので、それなりの広さもあり適度な感じ。ミツオと猫の行動範囲内で話が展開するのもよかった。チンとクロ以外の猫たちもカワイイ
原作未読だから分からないけど、ファンの方も納得できる作品じゃないかと思う。風間俊介ファンの方是非。そして、とにかく猫がかわいくて自然なので、猫好きの方必見です!
『猫なんかよんでもこない』Official site