2018.03.30 『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』鑑賞@TOHOシネマズ日本橋
これは絶対見たいと思ってた! 試写会あったかね?記憶にないのだけど。同じ日に公開の『ペンタゴン・ペーパーズ』と迷ったけど、こちらを公開初日に見に行ってきた~
ネタバレありです! 結末にも触れています!
「ナチス軍の進撃が進む中、ナチスと融和政策を取ったチェンバレン首相が辞任を迫られる。後任として選ばれたのはウィンストン・チャーチル。以前の失策や激しやすい性格ゆえ敵の多いチャーチル。就任早々、ダンケルクに英国兵が大量にとりこ残されていることが判明する。徹底抗戦か、和平交渉か難しい選択を迫れる」という感じで、これは当然実話ベース。でも、知っているようで知らない事実が満載でとっても面白かった。そして、とても緊迫感があった。なんとなく信念に従って強いリーダーシップを発揮した人物というイメージがあったので、こんなに敵だらけで、意外にも迷っていたとは知らなかった。とっても興味深かった。
ジョー・ライト監督作品。監督の作品は『プライドと偏見』『つぐない』(感想はコチラ)『アンナ・カレーニナ』(感想はコチラ)『PAN ~ネバーランド、夢のはじまり~』を見ている。見てないのは2作だけかな? 『プライドと偏見』は母親も大好きで2人で繰り返し見ている。好きな監督の一人。
作品について毎度のWikipediaから引用しておくと、2017年のイギリス映画。首相に就任したばかりのウィンストン・チャーチルを主人公に、第二次世界大戦中の激動の時代を描いた。ジョー・ライト監督、ゲイリー・オールドマンがチャーチルを演じる。プレミア上映は2017年9月に第42回トロント国際映画祭で行われた。アメリカ合衆国では2017年11月22日、イギリスでは2018年1月12日に公開された。
2015年2月5日、ワーキング・タイトル・フィルムズが『博士と彼女のセオリー』の脚本家のアンソニー・マクカーテンが第二次世界大戦初期のウィンストン・チャーチルを描いた『Darkest Hour』の草案を購入したことが発表された。2016年3月19日、ジョー・ライトが監督交渉中であることが報じられた。4月14日、チャーチル役としてゲイリー・オールドマンと出演交渉中であることが報じられた。2016年9月6日、フォーカス・フィーチャーズ配給により2017年11月24日にアメリカ合衆国で封切られ、また ベン・メンデルソーン(イギリス王ジョージ6世役)とクリスティン・スコット・トーマス(クレメンティーン・チャーチル役)が出演することが報じられた。2016年11月3日、主要撮影が既に始まっていることが報じられた。同月、ダリオ・マリアネッリが音楽を手がけることが明らかとなった。オールドマンはチャーチルに扮するために撮影期間中に200時間以上をメイクアップに費やした。ネヴィル・チェンバレン役には当初はジョン・ハートがキャスティングされていた。しかしながらオールドマンによるとハートは膵癌の治療中のために読み合せに参加できなかった。ハートは2017年1月25日に亡くなり、代わりにロナルド・ピックアップがチェンバレン役に起用された。
主演のゲイリー・オールドマンはチャーチルに扮するにあたって辻一弘の手による特殊メイクを施している。辻は2012年に映画の仕事を引退しており現代彫刻家として知られるようになっていたが、本作ではオールドマンからの直々のオファーによりオールドマンの特殊メイクのみを担当した。この特殊メイクは高く評価され、辻は第90回アカデミー賞のメイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされた。辻のアカデミー賞ノミネートはこれが3回目である。辻は3月4日に同賞を受賞。日本人としてこの部門での受賞は初となった。
ゲイリー・オールドマン演じるチャーチルが着用するスーツは、ロンドン・サヴィル・ロウにある実際にチャーチルが贔屓にしていた仕立て屋の一つであるヘンリー・プールによるものである。特に、劇中でも登場するフランネル素材チョークストライプ柄のスーツは、ヘンリー・プールによるチャーチルを象徴するスタイルである。
北米では2017年11月22日に限定公開され、公開5日間で4劇場から24万6,761ドルの興行収入を記録し、週末の興行収入ランキング第21位となった。12月22日から『ダウンサイズ』『ピッチ・パーフェクト3』『ファーザー・フィギュアズ』と共に各地で公開され、週末には804の劇場で390万ドルの興行収入を記録した。観客の85%は年齢が25歳以上だった。翌週までに550万ドルの興行収入を記録し、2018年1月4日までに合計700万ドルを記録した。1月27日にオスカー賞の6部門にノミネートされた後、さらに210万ドルの興行収入を記録した。ゲイリー・オールドマンは続編について、フランクリン・ルーズベルトを含めたヤルタ会談を描く可能性について言及している。
とのことで、あらすじとキャスト以外ほぼコピペ。続編の構想があるのね? 辻さん映画引退しているのに、また担当するのかしら? イヤ、後述するつもりだけどホントにスゴイから! 辻さんじゃなきゃ無理だと思う!
チャーチル自身についてもWikipeidaから引用したいところだけど、さすがの情報量。とりあえず、チャーチルが首相になる経緯と、ダンケルクについての記載だけ引用しておこうかと思う。ガリポリの戦い以来の惨敗にチャーチルも海相失脚を覚悟したが、5月7日から8日にかけて庶民院で行われたノルウェー作戦についての討議では、その批判はチャーチルではなく、首相チェンバレンに向かった。5月9日にチェンバレンはチャーチルとハリファックス子爵の両方を召集した。チェンバレンはハリファックス子爵を首相にしたがっており、チャーチルに「ハリファックス卿の内閣で働く意思はあるか」と聞いたが、チャーチルは沈黙していた。そこへハリファックス子爵が「貴族院議員の私が首相になるのは望ましくないでしょう」と述べたことでチャーチルの首相就任が決まった。
海外派遣軍は英仏海峡に到達したドイツ軍によって南フランスのフランス軍主力と切り離されて、ダンケルクに追い込まれた。チャーチルは彼らの全滅も覚悟したが、なぜかヒトラーはグデーリアンらドイツ軍装甲部隊指揮官たちに追撃を許さなかったため、海外派遣軍とフランス軍部隊の一部を加えた33万8000人は5月29日から5日間にわたって行われたイギリス本土への撤退作戦に成功した(ダンケルクの撤退)。この謎の奇跡にイギリス国内はまるで勝利したかのように喜びに湧きあがった。ってなんだかアッサリしているね? 映画としてはこの部分が山場になっているのだけど、チャーチルの人生としてはほんの一部ってことになっちゃうのかな。
冒頭、荒れた国会。イギリスの国会って与党と野党(っていうのかな?)が向かい合った階段状の席に座って、真ん中の通路のような所に設けられたテーブルのような所で意見を言うって感じなのかな? その奥にそれぞれの座席と直角になるような形で議長席がある感じ。議長や書記?は、宮廷時代みたいなヅラを被っている。映画などでよく見かける風景。現首相であるネビル・チェンバレン(ロナルド・ピックアップ)が辞任を迫られている。一応知識としてチェンバレンが辞任して、チャーチルが首相になったのは知っていたけど、ここからやるんだとちょっと驚く。
その後、党首脳だけで別室で集まり、チェンバレン辞任後の後継者選びを行う。そもそもが選挙ではなくこんな感じで選ばれるのか、非常時だからなのかは不明。首脳陣としてはハリファックス卿(スティーヴン・ディレイン)を推したいようだけれど、本人としては自分ではダメだとの答え。野党側からも賛同を得られる人物でなければならないってことで、それは1人しかいないとのこと。見ている側はもちろんチャーチルだ分かっているわけだけど、どうやら彼らは本意ではない様子? 前述したとおりチャーチルについて詳しく知らないので、あくまでイメージとしてカリスマ性のある人物で、望まれて首相になったのかと思ったけど違うのかしら? Wikipediaによれば世論はチャーチルを求めていたってことだから、あくまで政治的な理由かしらね?
チェンバレンの彼しかいないのセリフとともにシーンが変わって、どうやらチャーチルの家。家と言っても以前テレビで見たけどお城。チャーチルは貴族出身。そうそう! チャーチルの母親はアメリカ人で、その辺りのことは以前テレビで見た感想を記事(コチラ)にしてある。でも、お城自体が映されることはなかったし、いわゆるプライベート空間が映されることはほとんどなかった。この辺りはチャーチルの人生や人となりを描く作品ということではないということなのでしょう。あくまで原題の『DARKEST HOUR』を描きたいということで、その中心にいたのがチャーチルであるということなのかなと。
どうやら新しい秘書が雇われたようで、チャーチル家の執事?が足早に歩きながら、チャーチルの発音は聞き取りにくいから注意しろとか、タイプは2行送りにしろなどと説明している。説明が終わったところでチャーチルの書斎?に到着。書斎?としたのは、こじんまりとした部屋にはどーんとベッドが置いてあり、チャーチルはその上で朝食中だったから。でも、秘書がタイプする机はあったし、事実チャーチルは秘書の名前を聞く前に、口述を始めてしまうので、彼はここで仕事をしているということなのでしょう。早口でまくしたてては訂正の嵐。これタイピングするのは大変だな。この秘書はエリザベス・レイトン(リリー・ジェームズ)で、この後タイピングミスや2行送りにしていなかったことで激怒され、クビになったとばかり飛び出してしまう。
彼女と入れ違いに入ってきたのがクレメンタイン・チャーチル(クリスティン・スコット・トーマス)でチャーチルの妻。彼女は瞬時に状況を察し、チャーチルに癇癪を起すのはよくないと諭す。チャーチルの妻はこの後、度々出てくる。特別何かチャーチルにヒントを与えるとかいうことはないけれど、時には叱咤しつつしっかりと彼を支える妻で、ユーモアもある。クリスティン・スコット・トーマスの演技が素晴らしく、とっても魅力的で、この通りの人物なのだとしたら素敵な女性だったのだと思う。
ミス・レイトンが屋敷から出ると、郵便配達が通りかかり、電報が届いていると渡されてしまう。差出人を見て驚き急いでチャーチルの元へ。チャーチルの部屋には妻の他に息子も来てたんだっけ? とにかく複数人で話しているところにミス・レイトンが現れて電報ですと告げるも、全く興味を示さない。そこで宮殿からですと言うとピタリとおしゃべりが止む。
シーン変わってバッキンガム宮殿。現エリザベス女王の父君ジョージ6世(ベン・メンデルソーン)。『英国王のスピーチ』(感想はコチラ)の方だね。この時話してたのはハリファックス卿だったっけ? ちょっと忘れてしまったけど、後にハリファックス卿は親友だと語っていたので、その影響もありチャーチルをあまりよく思っていない様子。そこにチャーチル到着の知らせ。要するに王がチャーチルを首相に任命するわけで、これは2人きりの部屋で面と向かって立ち、王が首相に任命すると告げて終了。その後、チャーチルは王の手にキスをするけど、王がそれをそっと背中で拭いてるのが笑える。そして、後ずさって部屋を出て、そこで向き直って去って行く。これでチャーチル首相が誕生した。チャーチルが来る前に話していた時、ちょっと吃音があったけど、その後はそんなに目立った吃音演技はしていなかったように思う。まぁいいけど。そうそう、王と首相は定期的にランチをしているようで、その日程もチャーチル主導で取り決めたりと、なかなか豪傑。こういうさりげないエピソードで人となりを説明するのが上手い。
どうやらチャーチルが首相になった背景には、貧乏くじ的な要素があったらしい。ドイツがヨーロッパに侵攻して来ており、国の舵取りは非常に困難で、誰が何をしても失敗するような状況。本人もそれを自覚している。そして、自分に敵が多いことも。同じ党だとは思うけれど、政敵であるチェンバレンやハリファックス卿を閣僚から外すわけにはいかず、これが後に自分の首を絞めることになる。とはいえ、この辺りは仕方がないことなのでしょうね。今作ではチェンバレンはともかく、ハリファックスが悪役的な描かれ方をしているけれど、実際はどうだったのかしら? チェンバレンとハリファックスはチャーチルを失策させて引きずり下そう的な話までしていたけれど?
国会で所信表明をするチャーチル。画面向かって右側が野党で左側が与党なのかな? 要するに左側がチャーチル側。左側の上の方の席では何やらコソコソ話している。1人は新人議員なのか先輩っぽい方がチェンバレンに注目しろと教えている。彼がハンカチを振ったらチャーチルを称賛しろと。前日、必死で口述してミス・レイトンがタイピングした原稿を力強く読むチャーチル。しかしチェンバレンのハンカチは振られることなく、冷ややかに迎えられることとなった。これは後のシーンとの対比となっている。
うーんと、ちょっと記憶が曖昧。前は1度見たらほとんどのシーンを覚えていたのだけど、最近はダメだね💦 ということで、順番が違っていたり、抜けてるシーンもあるかと思う。あと、例えばチャーチルの子供たちがそろっての団欒シーンについては、妻がチャーチルとのなれ初めを語ったりしているものの、あえて入れなくてもいいかと思うので、省いたりしております🙇 毎回どうでもいいと思うけれど、一応断り書きとして入れておく。
ミス・レイトンはある場所に案内される。これがどこなのか説明がなかったように思うのだけど、どうだったかな? 男性が彼女を案内することで、見ている側もここがどういう施設なのか分かる仕組み。この手法2度目は2度目。要するにミス・レイトンが見ている側の視線になっているということかな。彼女の目を通してチャーチルの人となりや、裏側なども知って行く感じ。彼女のモデルがいるのか不明だけど、チャーチル自身が新人議員なわけではないから、こういう視点があるのは分かりやすかった。
ミス・レイトンが案内されたのは、地下にある秘密基地的な場所。主要な閣僚たちが集まっての会議も行われるし、タイピスト集団の部屋があったり、首相専用のトイレもある。このトイレは後にあるシーンで登場する。実際もこうだったのか不明だけど、そうだったのでしょう。戦時下だからこその部署もあっただろうし、現在でも同じような部署もあるだろうけれど、地下にあるのは戦時下だからなのかな? 防空壕的な。おそらく日本の国会とかにもそういう施設はあるのでしょう。戦時下や災害時にも執務できるような。この紹介シーンはちょっとコミカルで楽しかった。でも、今後はとっても苦しい場面で登場することになる。
一方、王とのランチも定期的に行われている様子。とはいえ、登場するのは1回のみ。宮殿の1室で2人掛けくらいのテーブルで向かい合って食べる。実際もこうだったのか不明だけど、ちょっと意外。ジョージ6世はほとんど飲んでいなかったと思うけれど、チャーチルはお酒をどんどんおかわりする。お酒を飲んでいるシーンは度々出てきた。あとは葉巻。とにかく葉巻を吸っているシーンが多い。太っているし健康に悪そう。とはいえ、どちらもストレスゆえなのかなと思ったりもする。王はこの時、チャーチルの不遜ともいえる態度に辟易していたようだし、事実彼のことが怖いと言ってもいた。これは後の感動的への伏線となっている。
戦局が悪化し、ナチスのヨーロッパ侵攻が止まらない。チェンバレンとハリファックスはイタリアのムッソリーニを介して、ヒトラーと和平交渉に入るべきだと主張。そもそもチェンバレンはそういう方針だったから辞任に追い込まれたわけだけど、映画としては悪役が必要だったようで、強硬姿勢を見せたのはハリファックスとなっている。実際もそうだったのかは不明。チャーチルはヒトラーは信用できないとこれに反対。そんな中、30万人を超すイギリス兵が、ドイツ軍に包囲されダンケルク海岸に取り残されていることが分かる。ますますヒートアップする和平交渉組。どうするチャーチル
ダンケルク近くに4千人のイギリス部隊がいることが判明。その部隊にドイツ軍を引き付けている間に、ダンケルクから撤退させることにする。しかし、どう撤退させるかが難しい。いろいろ考えるもいい案は出ず、チェンバレンやハリファックスは当然ながら非協力的。八方塞がりの中、首相専用のトイレに篭もる。トイレ内は結構広い。便座の他に椅子があり、なんと電話がある。そして、米国大統領ルーズベルトに電話をする。フランクリン、ウィンストンと呼び合う仲だけど、残念ながら米国としては協力できないということを遠回しに言われてしまう。このルーズベルトの声はデヴィッド・ストラザーンが演じているけど、実際こんな感じの会話がなされたのかは不明。まぁ、文言は違っていたとしても、こういうやり取りはあったのでしょうね。
チャーチルが和平交渉を望まないのは、もちろんヒトラーが信用できないから。イギリスに有利なように交渉したとしても、事実上は降伏したことになってしまう。約束など守られるはずがない。そして、戦って負けたのなら立ち上がれるけれど、そういう形で征服されてしまったら再建は不可能だという考えから。言っていることはとても分かる。どうしても和平交渉支持派を政敵として描いているから、どうしても悪役的な見方をしてしまうけど、一般市民を戦火から守るということを最優先すれば和平交渉という選択もあるわけで、それを間違っているとは言い切れない。見ている側は和平交渉をしなかった事実を知っているから、チャーチルが正しいと思ってしまうけれど、どう転ぶかは全く分からないわけで、そいういう中で国の運命を握るというのは本当に大変なことだなと思う。予告などで流れている責任を取る覚悟があるからここにいると椅子をガタガタさせるシーン。実際に行ったのかは別として演出としては分かりやすくて良かったと思う。
とはいえ、具体的な案はなく、フランス大統領に会いに行ってみるも、徹底抗戦はこちらも迷惑的な対応で、協力は取り付けられず、ベルギーも降伏してしまうなど、ますます首脳陣は和平交渉へと傾いていく。信頼していた側近からも賛同が得られなくなるに至り、チャーチルとしても和平交渉を視野に入れざるを得なくなる。抱いていたイメージと違う部分を見てちょっと驚くけど、これは仕方がないかな。どれが正しいかなど誰にも分らないし。これだけ賛同が得られないとどうにもならない。
そんな中、チャーチルを意外な人物が訪ねてくる。ジョージ6世。実は国王一家はカナダに亡命するよう進言されていた。カナダから統治すればいいじゃないかというのだけれど、当然ながら国民を見捨てて逃げることになるわけで、国民の士気は下がるに違いない。国王は悩んでいた。そして、チャーチルのラジオ放送を聞いて(だったかな?)宮殿に残り、国民とともに戦う決意をしたのだった。そして、これからは君を全力で支援すると伝えてくれたのだった。国王の訪問が実際にあったのか、場所はともあれこういうやり取りがあったのかは不明だけど、孤立無援状態のチャーチルにとってこれは大変に心強い味方。
国王が国内に残る決意をしたことについては『英国王のスピーチ』に描かれていたよね? 実際も、ラジオ放送かなにかで王女たちが話す声が流れ、王女たちが国内にいるならまだ大丈夫なのだと英国民は安心したのだそう。やっぱり国民にとって王室というのは、心の支えになるのだなと思ったりする。
話をチャーチルに戻す。ちょっといろいろ順番は忘れてしまったのだけど、チャーチルはあくまで徹底抗戦を貫くべく、ダンケルク付近で戦う部隊の隊長に電報を打つ。敵を引き付けて戦うこと、ただし救出は行われない。要するに捨て石になれということ。隊長はこの電報を負傷した兵士たちを見舞いながら読んでいる。そして最後の一文を読んだとき、彼は天を仰ぐ。そのままカメラが引いていくと戦闘機が飛んできてミサイルを落とす。部隊は全滅した。このシーンは辛かった😢
『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』の感想(コチラ)にも書いたけれど、より大きな被害を防ぐために、犠牲を払うということは戦闘ゲームならば迷わず取る戦略だろうけれど、これは実戦だからね。確実に命が失われるわけで。国を守るということは時に残酷な決断を下さなきゃならないこともあるということかしらね。でも、犠牲になった本人は無念だろうし、遺族も許せないだろう。その恨みを一身に受ける覚悟も必要ということ。決断自体には今でも賛否あると思うけれど、その苦悩は伝わって来た。
戦況はますます悪化し、チャーチルとしても和平交渉に踏み切らざるを得なくなる。チェンバレンとハリファックスにムッソリーニに和平交渉の仲立ちを頼み、和平交渉に向けての草案を考え始める。目に見えて覇気がなくなるチャーチル。ある日、執務室に向かう途中、車窓からロンドンの街を眺める。人々が必死に生きる姿があった。そして、チャーチルは車を降りる。チャーチルが消えたという報告を受け、色めき立つハリファックス。和平交渉を進めるよう指示する。
チャーチルは地下鉄に乗っていた。この老人が首相であることに気付いた市民たち。初めは緊張して不審そうに挨拶したり、遠巻きに見たりしている。隣に座られて席を立ってしまう人も。しかし、そのうち場が和んでくる。チャーチルは人々に尋ねる。和平交渉と徹底抗戦とどちらを選ぶか? 人々は口々に徹底抗戦だと答える。その顔はイキイキしている。もし自分が聞かれたら何と答えるだろう? 戦争は絶対に避けるべきだと思うけれど。強い信念をもって答えている人もいるだろうし、周りの雰囲気に流されている人もいるでしょう。このシーンは実際にあったわけではないと思うけれど、チャーチルの背中を押すきっかけとなっている。
チャーチルは徹底抗戦を宣言する。電車で会った人々の名前を上げて、これは民意であると告げるのだった。この人たちは誰だったんだっけ?新聞記者?若手議員?とにかく彼らは盛り上がり、チャーチルは高々とピースサインを掲げる。これは予告でも使われているシーン。チャーチルといえばピースサインだけど、映画の中では最初に裏ピースをしてしまい、その意味をミス・レイトンに教えてもらって大笑いするシーンがあるけど、最初は裏ピースしちゃったのかしら? 時々こういうコミカル要素を入れて来るので重くなり過ぎずに見れた。
チャーチルは国中から官民問わず船を集めダンケルクに向かわせることを指示。この指示を受けて作戦がスタートするわけだけど、作戦には名前が必要ってことで、この時の電話相手が視界に入った扇風機?にあったロゴからダイナモ作戦と命名。これWikipediaによると実際は、イギリス海軍中将バートラム・ラムゼイが本作戦を計画し、イギリス首相ウィンストン・チャーチルにダイナモ・ルーム(ダイナモすなわち発電機があるドーバー城地下の海軍指揮所の一室)にて概要を説明したことから名づけられた。ということらしいけど、分かりやすくてよかったんじゃないかと思う。
この作戦自体はチラリと船団が映るくらいで詳しくは描かれないけど、『ダンケルク』(感想はコチラ)で描かれた救出劇が繰り広げられたのかと思うと胸が熱くなりじんわりと涙😢
ダイナモ作戦成功を受け、チャーチルは国会でスピーチする。これWe shall never surrenderで検索すると、ものすごい数がヒットするから超有名な演説なのね? 予告編やCMでもとっても印象的だったので、てっきりこのセリフで締めかと思ったら続きがあった 実際はどんな感じだったのか謎だけど、演説が進むにつれて国会の右半分はどんどんヒートアップ。左半分も賛同したくてジリジリしているのが伝わって来る。そして、ついにチェンバレンがハンカチで額をぬぐうと、左半分が大喝采 これは所信表明演説の時と対比となっていてニヤリ😀
映画のラストにチャーチル政権のその後がクレジットされて映画は終わる。意外に失脚して終わってたんだね? 戦争を起こすことは絶対にダメだと思うけれど、では巻き込まれてしまった時にどう対処するのかっていうのはとても難しい。徹底抗戦すれば兵士だけでなく一般市民にも多くの犠牲が出てしまう。和平交渉に失敗してしまえば占領されてしまい国民にとって辛い状況になるかもしれない。イギリスは第二次世界大戦の戦勝国となった。だからこそチャーチルの政策は正しかったということになっているけど、これが負けたら失敗ということになるわけで、結局歴史は勝者のものということになるのだね。そんなことをツラツラ考えていたので、その辺りの難しさが描かれており、十分伝わってきたのだと思う。
キャストは皆よかった。ミス・レイトンのリリー・ジェームズは彼女の目を通して観客がチャーチルの人柄を知ることになるので、そういう意味で良かったと思う。邪魔な存在にならず上手く作用していたと思う。ジョージ6世のベン・メンデルソーンは登場時はちょっと気品が足りないかな?と思ったけれど、迷いながらも王として必死に立ち向かおうとする姿が印象的で、どんどん威厳が感じられるようになって良かった。
クレメンタイン役のクリスティン・スコット・トーマスが良かった! 気品があって、威厳もありつつユーモアがあり、時には破産しそうだと愚痴りながらも、チャーチルを支える妻を好演。なんだかとっても老けていたけど、これは役作りなのよね?きっと。そこも含めて良かった。衣装の着こなしも素敵✨
そして、何と言ってもチャーチル役のゲイリー・オールドマン。辻一弘さんの完璧なメーキャップに助けられたとはいえ、さすがのカメレオン俳優ぶりを発揮。実際のチャーチルのことはよく知らないけど、こういう人だったのだろうと思わざるを得ない。ガンガン強気な人だと思ったら、意外な弱さも見せる。皮肉屋で横暴だったりするのに憎めないチャーミングさも感じさせる。素晴らしい演技
衣装やセットも豪華! バッキンガム宮殿とかはどこで撮影したのかな? 素晴らしく豪華だった。そして、辻一弘さんのメイクが圧巻! 本当の皮膚にしか見えない。もうホントにドアップになるのだけど、毛穴まで再現されていて驚愕 皮膚のたるみの表現もすごくて、動くとぷるんぷるんしている。これはゲイリーが辻さんのメイクがなければ出来ないと言ったの分かるし、アカデミー賞受賞も納得!
チャーチルの人生を見せる作品ではないので、ウィンストン・チャーチルについて知りたい人には肩すかしかも? 『ダンケルク』や『英国王のスピーチ』が好きだった人は、その裏側を見ることができて楽しめるんじゃないかな? 見てから1ヶ月近く経ってしまったけど、まだ上映中なので是非! 辻一弘さんのメイクは是非是非劇場で! ゲイリー・オールドマン好きな方必見です!!
『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』公式サイト