2018.10.26 『華氏119』鑑賞@GAGAオンライン試写
GAGAオンライン試写に当選! 正直、そんなに興味があったわけでない😅 わざわざ出かける試写会は面倒だけど、オンライン試写なら自宅で見れるしいいかなくらいの感覚で応募。無欲の勝利で当選 ということで鑑賞。
ネタバレありです!
ドキュメンタリー映画なのであらすじはなし。突撃取材でおなじみのマイケル・ムーア監督がトランプ大統領に切り込むということで、今作が公開されたらトランプ王国崩壊との触れ込みだけど、そこまでの破壊力はないかなという印象。トランプ大統領誕生のからくりは興味深く、監督の故郷であるミシガン州フリントで起こったことには強い憤りを感じたし、監督のテーマの一つであるとも思われる銃規制についても十分問題提起している。そして、それらがトランプ批判につながっているとは思うけれど。
マイケル・ムーア監督作品は『ボーリング・フォー・コロンバイン』しか見ていない。特別好きな監督というわけでもないかな。毎度のWikipediaから作品の引用をしようと思ったのだけど無かった💦 公式サイトによると、作品のタイトルは監督の作品『華氏911』から引き継いだもので、119はトランプ大統領が勝利宣言をした日とのこと。アメリカのジャーナリストやキャスターなどがヒラリー・クリントン勝利を口にする中、ドナルド・トランプ勝利の可能性を示唆していた数少ない人物の一人だったのだそう。
トランプう勝利の可能性の理由としては、クリントン候補がペンシルベニア州、オハイオ州、ミシガン州、ウィスコンシン州というの選挙活動に積極的ではなかったこと。この4つの州は以前はイタリア、ロシア、東ヨーロッパからの移民が多く、以前は自動車産業で潤っていたが、現在は衰退し"ラスト・ベルト"と呼ばれている。長らく大統領を輩出してきた民主党はこれに対し何らの救済案も持たなかった。ヒラリー・クリントンは民主党の候補。トランプ候補はこの地で積極的に選挙活動を行ったそうで、その辺りが勝敗を分けると感じたとのこと。ちなみにマイケル・ムーアの出身地はミシガン州フリント。
とはいえニュースや新聞ではヒラリー・クリントン圧倒的勝利を予想しており、その様子が映像で見られるけれど、既に勝利しているかのような口調。この辺りも逆に働いたかなという気もしなくもない。特にどちらも支持していない人の中には、逆にこの風潮に違和感を覚える人もいたかもしれない。あえてそういう映像を集めているのでしょうけれど、涙を流してまでヒラリー・クリントン支持を訴える人々に恐怖を感じたりする。変な言い方だけど。自分はそこまで政治家を支持したことがないもので😅
ただ、トランプ陣営も勝利できるとは思っていなかったようで、開票当日クリントン陣営が大きな会場で勝利宣言を行う準備をしていたのに対し、トランプ陣営は質素なものだった。しかし、結果はトランプ勝利。これ自身は仕事中にBloombergで検索してたら、トランプ勝利を知ってビックリした覚えがある😲
とはいえ、どうやらヒラリー・クリントンが民主党候補に選出されたことにもからくりがあるらしい。どうやらクリントン候補はバーニー・サンダース氏にかなりの地区で負けていたとのこと。ただ、民主党としてはサンダース候補を政策が行き過ぎているということで、候補から外したという経緯があるらしい。民主党候補を発表する会場では、それぞれの地区がコールされると、その地区の代表者?がヒラリー・クリントンの勝利を叫ぶ。女性たちは歓喜の涙を流す。でも、ある1コマにサンダース候補がいくつか(数を失念)の州で勝利していたと書かれたメモを掲げた人がおり、これこそが真実だと言うのだった。恐ろしや😱
トランプ大統領誕生後のアレコレについては特に糾弾したりしていなかったけれど、監督として言いたかったことはトランプ大統領の人種差別発言によって、アメリカ国内に人種差別が広がっているということらしい。SNSに投稿されたと思われるレイシストたちの罵声や暴力の映像は恐怖を覚える。トランプ大統領の真意は不明だけど、人種差別が公認された、もしくは正しいことだと勘違いする人々が出てしまう可能性はあるし、事実出てしまっているということなのだとしたら恐ろしい😱
一方で、トランプ大統領について疑問を呈する政治家やキャスターたちも、犯罪者だとも糾弾する。それぞれの映像が映り、性犯罪者としての罪状が映し出されたりする。男性は名声とお金を手に入れると、何でもしてOKと思ってしまうのかしらね。特に性的なことに関して。女性蔑視も甚だしい😠
このままトランプ大統領周りのことで突き進むのかと思ったら、意外な方向へ向かう。ここからテーマが2つ現れる。1つはマイケル・ムーアのテーマとも言える銃問題。フロリダ州マージョリー・ストーンマン・ダグラス高校で起きた銃乱射事件の被害者である学生たちが立ち上がる様子を描く。先生に止められても銃廃止を訴えて高校生だけでなく中学生までデモに参加した。その人数がスゴイ。大きな舞台を組んでの集会も学生たちだけで企画したのだそう。かなりの規模。これはスゴイ。被害者エマ・ゴンザレスはトランプ大統領がいくら献金を貰っているのだと糾弾する。真偽のほどは分からないけれど、トランプ大統領が銃規制に対して反対の意見を示しているのは事実。
もう一つの問題については自分としてはショックを受け、強い憤りを感じた。監督の出身地であるミシガン州フリントで現在も起きていること。トランプ大統領と懇意にしているスナイダー知事が就任。フリントは五大湖に近く湖から水源を引いており水は豊かだった。しかし、スナイダー知事は水源をフリント川に変えてしまう。ハッキリ示されていたか忘れてしまったけれど、おそらく利権とか癒着なのでしょう。嬉々としてフリント川に水源を変える知事と関係者の姿に嫌なものを感じる。
しばらくすると子どもたちの体調が悪化。体内から鉛が検出された。鉛は一度体内に入ると生涯抜けることがないそうで、このまま鉛を摂取してしまうと脳にも障害が出てしまうレベルだという。病院で働いていたある女性は、ジェシー郡の保険局からデータの改竄を強要されたと告白。鉛の数値が3.5以上は危険だが、子どもたちの中には14などという数値の子も。でも、それを全て3.5以下に改竄し、何の問題もないとフリント川からの水源を変えなかった。しかし、ゼネラルモーターズの工場で自動車に異常がでると、GMの水源のみ変更したのだそう! ひどい😠
その後、レジオネラ症で亡くなる人が出て来る。これは水質汚染が原因と考えられる。いくらデモをしたり抗議をしても水源を変えることをしない。水質汚染が問題となっている土地を買う人はおらず、引っ越しすることも出来ない。そうだよね。何故、引っ越さないのかというのは、余裕のある人の言葉で、日々の生活にも困窮している人々にとって、引っ越し資金などないということ。
そんな中、バラク・オバマがやって来る。住民たちは熱狂的に迎える。オバマ元大統領ならば自分たちを救ってくれるはずだ。ところが、演説中に喉が乾いたから水を持ってきて欲しいとオバマが言い出した辺りから、住民たちの表情が変わる。パフォーマンスではなくて本当に喉が渇いたのだと言うオバマだけれど、運ばれてきたコップの水で唇を濡らしはしたが、飲み込むどころか口に含むこともしなかった。住民たちは失望する。これは酷い😡
マイケル・ムーアはスナイダー知事宅を訪れ、知事に面会を求めるけれどもちろん出て来るはずもない。すると、マイケル・ムーアは給水車から水を知事宅へ向けて放水を始める。これはまぁ、見ている側もこの知事には腹が立ったから胸のすく思いもあったし、笑える感じではあったものの。これをしたから何かが変わるわけでもないし、突撃取材がおなじみの監督としては、こういう方向ではないパフォーマンスを期待するところではある。
しかし、フリントに起きた悲劇はこれだけでなかったのだった! なんとフリントの市街地を舞台に軍事演習が行われたのだった。実弾を使用。市民たちには事前に一切通達なしで行われたそうで、その映像を見る限り戦場にしか見えなかった。もちろん銃口が市民に向けられることはないでしょうけれど、流れ弾に当たることはあるだろうし、何よりその恐怖といったら。アメリカって想像以上に酷いね。
さんざん酷い状況を見せられて来たわけだけど、最後は少し希望が持てる感じになっている。現実を嘆いてばかりはいられないとばかり、女性たちが立ち上がっている。その中の1人、ヒスパニック系のアレクサンドリア・オカシオ・コルテスは立候補。各家を一軒一軒回る地道な選挙活動に同行。明るく前向きに語る彼女は力強く魅力的。この方、ニューヨーク中間選挙の予備選で民主党のベテラン候補を抑えて当選を果たしたのだそう。
映画は銃乱射事件の犠牲者エマ・ゴンザレスのスピーチで終わる。犠牲者の名前を上げ、彼らはもう友達にデブと言えないというような、〇〇はもう××出来ないという内容の演説。これは胸を打つ。でも、全く響かない人も大勢存在することも事実。感動したからといって、では即銃廃止とならないところに根深い問題があるわけだし。
まだまだ、細かいことでいろいろ書いていないことはあるけど、映画を見て自分が強く感じたことはこの辺り。とにかく、銃規制を訴える少年少女たちの姿と、ミシガン州フリントで起きていることの印象が強く。トランプ大統領の問題とあまり結びつかなかった。ただ、ブッシュ大統領辺りから歴代大統領が、こんな政策を取ったからこうなった的な描写があったので、トランプ大統領だけではなく、アメリカ全体の問題を浮き彫りにしたかったのかなとは思う。
とはいえ、トランプ大統領はヒトラーに言動が似ているという分析を専門家の方がしていたから、反トランプであることは間違いないと思う。
ただ、結構展開速度が速く、銃規制問題とフリント問題が交互に描かれたりするので、ちょっと頭の切り替えや整理が必要。自宅の小さなパソコンで、お酒を飲みながら見てしまったので、ちょっと集中力が切れたりしてついて行けてない部分がある。映画館で集中して見た方がいいかも。そしてある程度知識があった方がいいのかもしれない。
自身は大統領選挙の方法が複雑だなと思ってはいたけれど、選挙人制度(選挙人(せんきょにん)とは - コトバンク)についてもよく知らなかった。そもそもの選挙人制度は奴隷制度のある州のためのものだったそうで、マイケル・ムーア監督としてはこれを廃止すべきだと考えているのだそう。とはいえ、今回の大統領選挙では全米で1億人の人々が選挙に行かなかったそうで、その辺りも問題だったりするのかな。日本も選挙に行かない人多いし。
いろいろ興味深く見たけれど、この映画が公開されたからと言って、トランプ王国が崩壊するということはないかなという印象。ただ、女性たちや若者たちが気づき始めていること、そして立ち上がっていることが、今後どう働いていくのかということは示唆していると思う。良い方向に向かうのか、悪い方向に向かうのか。
前述したとおりマイケル・ムーア監督作品は今作と、『ボーリング・フォー・コロンバイン』しか見ていないので、これがいわゆるマイケル・ムーア節なのか分からない。『ボーリング・フォー・コロンバイン』についても記憶が薄れてしまっているし。でもまぁ、いろいろ知れたことは収穫だったなと思う。
内容が内容だけに憤りを感じる部分は多いけれど、スピード感があって見ていて苦ではない。トランプ政権のアレコレが見たいと思うと肩すかしかな? でも、見て損はないと思う。