'13.04.07 『プリズナーズ』(試写会)@松竹試写室
cocoで当選! いつもありがとうございます! ちょっと重そうだけど、ヒュー・ジャックマン×ジェイク・ギレンホールということで気になった。まぁ、特別ファンではないのだけど・・・(o´ェ`o)ゞ でも、2人演技上手いし! ということで、楽しみに行ってきたー![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/yl/dc/deco~otomedojo~2418.gif)
ネタバレありです!犯人は伏せますが、結末に触れています!
「ペンシルヴェニア州で工務店を営むケラーは、感謝祭を祝うため家族で友人宅を訪問する。6歳の娘アナは、友人の娘ジョイと忘れ物を取りに家に向かい、そのまま2人は行方不明となってしまう。アナがいたずらしたバンの持ち主が怪しいのではないかという息子の言葉を信じたケラーは、事件を担当するロキ刑事の制止も聞かず、バンの持ち主であるアレックスを執拗に追うが・・・」という話。これはスゴイ! 犯人探しのサスペンスとしても面白いけれど、もっと深い人間ドラマというか、倫理観というか・・・ 後から知ったのだけど、これ『灼熱の魂』(感想は
コチラ)のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品だった。なるほど!納得(笑)
映画の感想を書く時には、一応その映画が作られた背景というか、監督や製作者側の意図したところなどを知りたいと思い、公式サイトや、Wikipediaなどを読んで、残しておきたいと思った部分について、レビュー内に記載している。レビューは自分の感じたことを書くものだけど、感じたことについての背景を知りたいし、せっかく調べたなら残しておきたいから。今作についても同様に調べたけれど、Wikipediaは見つけられず、公式サイトもあまり詳しい裏話的な記載はなかった。記事を書く前に他の人のレビューを読むことは、普段はあまりしないのだけど、今回はNAVERのまとめ記事(
映画『プリズナーズ』あらすじと解説|NAVERまとめ)があったので見てみた。
ザックリまとめると、主人公のケラー(keller)という名前には、地下室・倉庫という意味がある。彼はPreppersと呼ばれる、来るべき災害に対し準備をしている人であり、彼の名前はそのことを印象付ける意図がある。彼は敬虔なクリスチャンで、自分の家族は自分で守るべきという強い信念を持っている。これに対し、事件を担当するロキ刑事の指には直角定規とコンパスが描かれた、フリーメイソンの指輪がはめられている。これらの意味するところとしては、有事の際にPreppersが独自の判断で行動し、より事を複雑にするべきではなく、フリーメイソンが働く政府や警察に任せるべきであり、フリーメイソン(イルミナティ)だけが、問題を解決できるということで、今作の言わんとしている事なのだそう。
ロキ刑事が大きな指輪をしていることには気づいていたけど、自身はフリーメイソンの指輪であることは全く分からなかった。世界を動かしているのはイルミナティ=ユダヤ資本だというのは、チラリと聞いたことがあったけれど、フリーメイソンの指輪に気づいていない以上、そこに思い至るはずもない。Preppersというのは今作で初めて知ったし、ましてや主人公の名前にそんな意図があるなどとは、そもそもの英単語を知らないのだから気づく由もない・・・
この辺りのことは、普通のアメリカ人なら気づくことなのかな? でも、世界をユダヤ資本が回していることとか、フリーメイソンについて詳しくないと気づけないよね? 自分の周りにクリスチャンの人がいないので、主人公の行動が敬虔なクリスチャンが取りがちなのかも不明。この辺りも、アメリカ人だったら分かることなのかな? 長々何が言いたいかと言えば、この映画が本当に言いたいことについて、十分理解できたとは言えないけれど、やっぱり自分の中ではそれに近い感情が芽生えたということ。ということは、この映画の誘導にまんまと嵌ったということ? そして、その感情が自分でも正しかったのかどうか判断できなかった以上、もしこの映画がそういう意図を持って誘導しているのだとしたら、ちょっと怖いなと思ったので。
NAVERまとめ記事が正解なのかどうかは分からない。多少こじつけのようなものを感じなくもないけど、少なくともロキ刑事の指輪の件は意図的にされたものだと思う。ただ、そういう部分を全く無視しても、映画として面白かったし、良く出来ている作品だと思う。幼女誘拐事件の謎を追うサスペンス映画としても惹き込まれるし、娘を助けたいあまり常軌を逸した行動に出てしまう父親の話としても良く出来ている。そして、これはやっぱり犯人探しのサスペンスではなく、後者の方を語りたい映画なのだと思う。
全米で児童が行方不明となる件数は年間約80万人。これは1分で1.5人が行方不明になっている計算になるのだそう。アメリカは州によって法律が異なるので、全州に適用されているのか不明だけど、子供が1人で家にいる状態にしてしまうことは基本ダメなんじゃなかったかな? 最近、離婚問題で話題の元アイドルの方も、フランスでは夫婦のどちらかが子供と一緒にいなければならないという法律があると語っていたような・・・ ケラーがPreppersであるというだけでなく、幼い娘たちだけで行動することを、夫婦そろって極度に心配している様子なのは、この辺りのことも関係しているかもしれない。
友人宅のある住宅街は、映画などでよく見るアメリカの一般家庭の住宅街。辺りには子供たち以外に誰もいない。日本の迷路のような細い路地の住宅街も危険だけれど、アメリカの住宅街も塀のない前庭のある家が並び見通しは良いものの、昼間でも誰も通らない時間帯であれば、幼い子供を簡単に誘拐してしまえる状況であることに気づく。幼いアナとその友達ジョイだけで遊ぶのは危険と、兄とジョイの姉に子守につけるけれど、はしゃいだアナたちは路上に止められていたキャンピングカーに興味を示し、車に触ったり屋根に登ろうとしてしまう。兄が必死で止めると余計にやる。子供のこういう部分は仕方ないとは思うけれど、やられた方に迷惑がかかったのは間違いない。これが彼女たちの運命を変えることになる。
替え歌を歌ったり大騒ぎしていた娘たちがいないことに気づいてからは一気に見てしまった。友人宅の家中を探すけどいない、忘れ物を取りに行ったに違いないと家に戻ってみるもいない、そして兄が不審なキャンピングカーのことを思い出す。激しい雨の振る中、キャンピングカーを探すけれど姿はどこにもない・・・ 彼らと同じ目線で、一緒に探しているかのような映像で見せるので、緊迫感がある。どうしてダメだと言っているのに2人で出かけちゃうんだ!(*`д´) と思うけど、それが子供だからねぇ・・・ 2人だけで家に戻ることも、彼女たちなりの冒険でありワクワクすることなので、それを取り上げてしまうのは、本来はかわいそうなこと。子供が安心して遊べない状況の方がおかしいわけで・・・
事件の担当になったのはロキ刑事。今まで担当した事件は全て解決してきた。この事件も解決すれば栄転間違いなしと上司に言われている。でも、こういうキャラにありがちな思い上がった人物ではない。理不尽な部分があれば相手が上司であっても、食って掛かる時もあるけれど、実際は冷静に対処し、真摯に事件に取り組んでいる。ただ、警察という組織にいる以上、例え不服であっても上司の決定に従わざるを得ないし、法律を犯すことは出来ない。その辺りが被害者家族としては歯痒く思うことも事実で、それは見ている側の思いも同じ。ただし、見ている側は被害者側の目線だけれども、当然ながら被害者ではないので、彼らよりも冷静でいられる。その辺りが、上記の誘導部分に作用していることもある。
警察はキャンピングカーの持ち主であるアレックスという青年を容疑者として拘束する。でも、アレックスには知的障害があり、子供のような言動を繰り返すのみ。彼が犯人であるという確たる証拠がない以上、拘束しておくことが不可能なのは、それほど法律に詳しくなくても分かること。でも、ケラーには彼が事件に関わっているという思いがあった。それは、釈放される時に彼の口から出たある言葉により確信に変わる。こういう場合の常として、残念ながらこのセリフはケラーしか聞いていない。そして、興奮して彼に暴力を振るってしまっては、誰もケラーの言葉を信じなくなってしまうのも仕方がない。この辺りも自然で上手い。ケラーは確かに暴力的であって、全ての被害者家族がこのような行動に出るとは限らないけれど、気持ちとしては同じだと思う。藁にもすがる思い。
捜査方法を見ていれば、少ない情報で遅々として進まないながらも、確かにロキは優秀できちんと捜査していることが分かる。一見関係なさそうな牧師の死と床下の白骨遺体、そして20年以上前に起きた少年の誘拐事件。それらをコツコツと当たっていく。でも、当事者であるケラーはいてもたってもいられない。そして、とうとう彼は一線を越えてしまう。アレックスを現在空家となっている、以前住んでいた家に監禁してしまったのだった。これこそが、この映画が描きたかった部分。アレックスが犯人であるという絶対的な証拠はない、でも自分は彼が犯人であると確信している。そんな相手が野放しになっているとしたら、どうする?
見ている側にもアレックスが愛犬を虐待するような面があることなどが提示され、彼が実は知的障害を装っているのではないかということを匂わせる。だから、多少手荒なことをしても、アレックスから本当の事を聞きだしたいと思うケラーの気持ちは理解できる。実際怪しいし・・・ でも、その手法がどんどん常軌を逸してくる。詳しくは書かないけれど、殴る蹴るの暴行はもちろん、狭いスペースに監禁してしまう。顔が見る影もなく腫れ上がっても、何も知らないと言い張るアレックスに、見ている側の思いは揺らぐ。ここまでしても言わないのは何故なのか? 彼は本当に知らないのではないか? アナを見たかもしれないけれど、それが何を意味するのか分かっていないのではないか? もし、アレックスが本当に知的障害があり、彼が見たものを理解できていないとしたら、ケラーがここまでしてしまうのはどうなのか・・・ 見ている側としては、当然感情移入すべき被害者の父親が、加害者になる瞬間を目撃しているのではないか?
ここで注目したいのが、もう1組の被害者家族。同じく娘が行方不明となっているバーチ家。ケラーは1人ではアレックスを監視し続けられないため、父親のフランクリンに協力を頼む。最初こそ協力できないと言い、ケラーを止めていたフランクリンだけど、娘を思う気持ちや、ケラーの熱意に押されて手伝ってしまう。夫の行動を不審に思った妻のナンシー・バーチが、アレックス監禁現場を見つけてしまう。一度はアレックスを逃がそうとしたナンシーも、結局はこの監禁を容認する。しかも、責任はケラーに押し付ける形で協力しろと、夫に言う始末。友情すら崩れて行きそうなこの展開に、暗い気持ちになるけれど、果たして自分がこの立場に置かれたらどうか? NAVERまとめ記事の隠しメッセージは置いておけば、製作者側の言いたかったことはこの部分なんだと思う。もし自分に同じことが起きたらどうする?
ロキ刑事はアナたちの捜査をしつつ、ケラーをも監視しなければならない状況になる。この辺りで、ケラーの行為は例えアレックスが犯人だったとしても、犯罪行為になるであろうということは置いておいても、ロキ刑事の捜査を邪魔しているのじゃないかと思っていた。これがNAVERまとめ記事にあったとおり、製作者側の本当に意図した部分なのであれば、まんまと誘導に乗ったということになるのかな? その答えは今も出ない。結果、ロキが担当を外されたりと実害も出たことは間違いないわけだし・・・
アレックスは両親を幼い頃に亡くし、叔母夫婦に引き取られた。叔父は既に亡くなっており、現在は叔母と2人暮らし。ロキ刑事もケラーもこの叔母とは何度か面会し、家に入ったこともある。慎ましやかな生活をしている叔母は、アレックスが容疑者となったことで、加害者側の人間とも言えるけれど、アレックスに知的障害があることにより、ある意味被害者なのではないかと思わせる。この辺りも上手い。
ここまで書いてしまうと真犯人や、あの人物が本当は誰なのか分かってしまうかもしれない。自身も見ている途中で気づいたけれど、それは特別勘が鋭いわけではなく、きちんと伏線が張られているので、サスペンス好きなら見ているうちに分かると思う。そして、実はこの作品の本当の面白さは、あの人物が誰であるかが分かってから。その人物が誰か気づいてしまった時の、やり切れなさと言ったら
さすが『灼熱の魂』の監督。
ロキ刑事よりも1歩先に真犯人にたどり着いたケラー。ここにアナがいることを確信しているのに、逆に彼女を人質にされて犯人の言うとおりにするしかない。犯人に言われるがままに体が麻痺する薬を飲み、命ぜられるままに裏庭に掘られた穴に自ら入るケラー。穴を塞ぎその上に車を止めてしまう犯人。これは発見されるのは奇跡に近い・・・
一方、ロキ刑事も真犯人が誰であるか気づく。書き忘れたけど一緒に行方不明になっていたジョイは、犯人に解放されて無事保護される。彼女の証言から2人が誘拐されたことが決定的になるのだけど、それ以前にも彼女たちの衣服が発見されるなど、誘拐されて殺害されたのではないかと思わせるシーンもあり緊迫感がある。犯人宅に侵入したロキは間一髪アナを殺害しようとしていた犯人と撃ち合いになり、これを射殺する。頭に怪我を負いつつ、アナを病院に連れて行くため、血が目に入り視界がきかない中、朦朧とする意識を奮い起こしつつ、猛スピードで車を飛ばすロキ刑事。カッコイイ!
ロキ刑事の必死の搬送により、アナは一命を取り留め、母親と再会する。そして、母親からケラーが戻っていないことを告げられる。犯人宅の庭の遺体発掘作業を見守っていたロキ刑事は、今日の作業を終え帰っていく鑑識たちを見送りつつ、庭に佇む。すると、かすかな笛の音が・・・ 映画はここで終わる。要するに、アレックスをプリズナーとした、ケラー自身もプリズナーとなっていたっていうことで、なのでタイトルが『プリズナーズ』であるということだよね?もちろん、アナたち被害者も、あの人物を含めてプリズナーズってことなのでしょう。原題『PRISONERS』をそのまま日本語表記にした邦題は良かった。って、これしかあり得ないけど(笑)
とにかくキャストたちの演技がスゴイ! ロキ刑事のジェイク・ギレンホールは『ミッション8ミニッツ』(感想は
コチラ)も良かったけど、この役良かった! 同じ刑事役でちょっと『ゾディアック』と被っている気がしなくもないけど、熱い男だけど基本冷静。静かに燃えてる人好きだからロキ刑事はタイプ(笑) 静かに燃えてる感じと、そして感情を爆発させるところが良かった。今まで経験のない失態を繰り返してしまうけれど、ロキ刑事が能力のある人物であることが伝わってくる。犯人と撃ち合いからの、アナ搬送シーンはかっこよかった! ファンにはなってないけど(笑) 妻役のメリッサ・レオは「TOUCH」でも同じ様な役だったので、自分の中での評価はちょっと不利だったかも?(;´・ω・`)ゞごめんなさい。友人夫婦のテレンス・ハワードとヴィオラ・デイヴィスもさすがの演技。きっちり脇役に徹しつつ、存在感を残す。主人公の行動に疑問を感じつつも、引きずられる夫、そしてケラーを利用しようとしてしまう妻。でも、彼らを責められない。それは2人の演技のおかげ。
叔母のマリア・ベロがスゴイ!ちょっと詳しく書けないのだけど、結局は狂っているってことなんでしょう。イヤ、正気なんだけど、彼女の中の基準というか信念というか、核となる部分が狂っている。その辺りを、狂気を感じさせつつ、でも正気なんだと思わせる怖さがスゴイ! ポール・ダノがもう本当に大変なことに・・・
アレックスは彼が犯人じゃないかと思わせなきゃダメで、でもケラーにヒドイ目に合わされることにより、彼が犯人じゃなかったらどうする?と見ている側に思わせなきゃならない。アレックスは知的障害があるけれど、それも装っているのじゃないかとも思わせる必要もある。その辺り見事だったと思う。ほぼ、顔を腫らしたメイクで熱演! そして何と言ってもケラー役のヒュー・ジャックマン! よくあの『レ・ミゼラブル』(感想は
コチラ)の後にコレを選んだね? でも、正義って何だろう?という意味では共通する部分がある。家族を守りたいという一心で、犯罪に手を染めてしまうという部分も共通してる。ケラーのしたことはやっぱり犯罪であって、それを認めてしまったらダメなのだと思う。でも、顔を真っ赤に腫らしたアレックスを、さらに殴り続ける彼を呆然とした気持ちで見てしまうけれど、嫌悪するまでには至らない。共感とも違うのだけど、止めることが出来ない。それはやっぱりヒュー・ジャックマンのおかげ。
とにかく、冒頭から不穏な感じ。ケラーはいつもイライラしてる。Preppersというのは、来るべき災害に対して常に準備をしておく人だから、神経質なところはあるのかも。もちろん準備しておくことは大切なことだけど、そんなに裕福な暮らしとも思えないのに、家の地下室に食料品店かと思うくらい食料が備蓄してあって、ちょっとビックリもする。アメリカも自然災害の多い国だし、大きな国だから日本のように物資が届くまで時間がかかる部分はあるのかもしれないけれど・・・ でも、NAVER記事の意図があるのだとしたら、Preppersであることを強調する必要があるわけで、意図が全く伝わっていない自身にとっても、ケラーの神経質でキレやすい感じ、家族を守るということが、家族愛という温かい響き以上のものを感じてしまったのは、きっと狙いどおりなんだと思う。上手く言えないけど・・・(o´ェ`o)ゞ
『ショーシャンクの空に』、『ファーゴ』、『ノーカントリー』(感想は
コチラ)などで撮影を担当し、2011年にアメリカ映画撮影監督協会の生涯功労賞を受賞した、ロジャー・ディーキンスの画がイイ! 寒々とした空気感。いつもどんよりとしている。それが見ている側の不安感を煽る。この作品でアカデミー賞ノミネートされたそうだけれど納得!
「胸の張り裂けるような映画」とヒュー・ジャックマンが語ったとおり、見せられた事実は重い。犯人が射殺されても、アナが無事に助かっても、おそらくケラーが助かっても、モヤモヤしたものが残る。でも、やっぱり見てよかったと思う。153分とちょっと長いし、事件がテンポ良く解決するわけでもないけれど、サスペンス要素と俳優の演技に惹き込まれて飽きてしまうことはない。
重厚なサスペンス&人間ドラマが見たい方オススメ! ヒュー・ジャックマンは完全に正義の人ではないので、正義のヒューを求めている人には辛いかも? 役者ヒュー・ジャックマン好きな方、ジェイク・ギレンホール好きな方必見!
『プリズナーズ』Official site
cocoで当選! いつもありがとうございます! ちょっと重そうだけど、ヒュー・ジャックマン×ジェイク・ギレンホールということで気になった。まぁ、特別ファンではないのだけど・・・(o´ェ`o)ゞ でも、2人演技上手いし! ということで、楽しみに行ってきたー
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映画の感想を書く時には、一応その映画が作られた背景というか、監督や製作者側の意図したところなどを知りたいと思い、公式サイトや、Wikipediaなどを読んで、残しておきたいと思った部分について、レビュー内に記載している。レビューは自分の感じたことを書くものだけど、感じたことについての背景を知りたいし、せっかく調べたなら残しておきたいから。今作についても同様に調べたけれど、Wikipediaは見つけられず、公式サイトもあまり詳しい裏話的な記載はなかった。記事を書く前に他の人のレビューを読むことは、普段はあまりしないのだけど、今回はNAVERのまとめ記事(
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ザックリまとめると、主人公のケラー(keller)という名前には、地下室・倉庫という意味がある。彼はPreppersと呼ばれる、来るべき災害に対し準備をしている人であり、彼の名前はそのことを印象付ける意図がある。彼は敬虔なクリスチャンで、自分の家族は自分で守るべきという強い信念を持っている。これに対し、事件を担当するロキ刑事の指には直角定規とコンパスが描かれた、フリーメイソンの指輪がはめられている。これらの意味するところとしては、有事の際にPreppersが独自の判断で行動し、より事を複雑にするべきではなく、フリーメイソンが働く政府や警察に任せるべきであり、フリーメイソン(イルミナティ)だけが、問題を解決できるということで、今作の言わんとしている事なのだそう。
ロキ刑事が大きな指輪をしていることには気づいていたけど、自身はフリーメイソンの指輪であることは全く分からなかった。世界を動かしているのはイルミナティ=ユダヤ資本だというのは、チラリと聞いたことがあったけれど、フリーメイソンの指輪に気づいていない以上、そこに思い至るはずもない。Preppersというのは今作で初めて知ったし、ましてや主人公の名前にそんな意図があるなどとは、そもそもの英単語を知らないのだから気づく由もない・・・
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NAVERまとめ記事が正解なのかどうかは分からない。多少こじつけのようなものを感じなくもないけど、少なくともロキ刑事の指輪の件は意図的にされたものだと思う。ただ、そういう部分を全く無視しても、映画として面白かったし、良く出来ている作品だと思う。幼女誘拐事件の謎を追うサスペンス映画としても惹き込まれるし、娘を助けたいあまり常軌を逸した行動に出てしまう父親の話としても良く出来ている。そして、これはやっぱり犯人探しのサスペンスではなく、後者の方を語りたい映画なのだと思う。
全米で児童が行方不明となる件数は年間約80万人。これは1分で1.5人が行方不明になっている計算になるのだそう。アメリカは州によって法律が異なるので、全州に適用されているのか不明だけど、子供が1人で家にいる状態にしてしまうことは基本ダメなんじゃなかったかな? 最近、離婚問題で話題の元アイドルの方も、フランスでは夫婦のどちらかが子供と一緒にいなければならないという法律があると語っていたような・・・ ケラーがPreppersであるというだけでなく、幼い娘たちだけで行動することを、夫婦そろって極度に心配している様子なのは、この辺りのことも関係しているかもしれない。
友人宅のある住宅街は、映画などでよく見るアメリカの一般家庭の住宅街。辺りには子供たち以外に誰もいない。日本の迷路のような細い路地の住宅街も危険だけれど、アメリカの住宅街も塀のない前庭のある家が並び見通しは良いものの、昼間でも誰も通らない時間帯であれば、幼い子供を簡単に誘拐してしまえる状況であることに気づく。幼いアナとその友達ジョイだけで遊ぶのは危険と、兄とジョイの姉に子守につけるけれど、はしゃいだアナたちは路上に止められていたキャンピングカーに興味を示し、車に触ったり屋根に登ろうとしてしまう。兄が必死で止めると余計にやる。子供のこういう部分は仕方ないとは思うけれど、やられた方に迷惑がかかったのは間違いない。これが彼女たちの運命を変えることになる。
替え歌を歌ったり大騒ぎしていた娘たちがいないことに気づいてからは一気に見てしまった。友人宅の家中を探すけどいない、忘れ物を取りに行ったに違いないと家に戻ってみるもいない、そして兄が不審なキャンピングカーのことを思い出す。激しい雨の振る中、キャンピングカーを探すけれど姿はどこにもない・・・ 彼らと同じ目線で、一緒に探しているかのような映像で見せるので、緊迫感がある。どうしてダメだと言っているのに2人で出かけちゃうんだ!(*`д´) と思うけど、それが子供だからねぇ・・・ 2人だけで家に戻ることも、彼女たちなりの冒険でありワクワクすることなので、それを取り上げてしまうのは、本来はかわいそうなこと。子供が安心して遊べない状況の方がおかしいわけで・・・
事件の担当になったのはロキ刑事。今まで担当した事件は全て解決してきた。この事件も解決すれば栄転間違いなしと上司に言われている。でも、こういうキャラにありがちな思い上がった人物ではない。理不尽な部分があれば相手が上司であっても、食って掛かる時もあるけれど、実際は冷静に対処し、真摯に事件に取り組んでいる。ただ、警察という組織にいる以上、例え不服であっても上司の決定に従わざるを得ないし、法律を犯すことは出来ない。その辺りが被害者家族としては歯痒く思うことも事実で、それは見ている側の思いも同じ。ただし、見ている側は被害者側の目線だけれども、当然ながら被害者ではないので、彼らよりも冷静でいられる。その辺りが、上記の誘導部分に作用していることもある。
警察はキャンピングカーの持ち主であるアレックスという青年を容疑者として拘束する。でも、アレックスには知的障害があり、子供のような言動を繰り返すのみ。彼が犯人であるという確たる証拠がない以上、拘束しておくことが不可能なのは、それほど法律に詳しくなくても分かること。でも、ケラーには彼が事件に関わっているという思いがあった。それは、釈放される時に彼の口から出たある言葉により確信に変わる。こういう場合の常として、残念ながらこのセリフはケラーしか聞いていない。そして、興奮して彼に暴力を振るってしまっては、誰もケラーの言葉を信じなくなってしまうのも仕方がない。この辺りも自然で上手い。ケラーは確かに暴力的であって、全ての被害者家族がこのような行動に出るとは限らないけれど、気持ちとしては同じだと思う。藁にもすがる思い。
捜査方法を見ていれば、少ない情報で遅々として進まないながらも、確かにロキは優秀できちんと捜査していることが分かる。一見関係なさそうな牧師の死と床下の白骨遺体、そして20年以上前に起きた少年の誘拐事件。それらをコツコツと当たっていく。でも、当事者であるケラーはいてもたってもいられない。そして、とうとう彼は一線を越えてしまう。アレックスを現在空家となっている、以前住んでいた家に監禁してしまったのだった。これこそが、この映画が描きたかった部分。アレックスが犯人であるという絶対的な証拠はない、でも自分は彼が犯人であると確信している。そんな相手が野放しになっているとしたら、どうする?
見ている側にもアレックスが愛犬を虐待するような面があることなどが提示され、彼が実は知的障害を装っているのではないかということを匂わせる。だから、多少手荒なことをしても、アレックスから本当の事を聞きだしたいと思うケラーの気持ちは理解できる。実際怪しいし・・・ でも、その手法がどんどん常軌を逸してくる。詳しくは書かないけれど、殴る蹴るの暴行はもちろん、狭いスペースに監禁してしまう。顔が見る影もなく腫れ上がっても、何も知らないと言い張るアレックスに、見ている側の思いは揺らぐ。ここまでしても言わないのは何故なのか? 彼は本当に知らないのではないか? アナを見たかもしれないけれど、それが何を意味するのか分かっていないのではないか? もし、アレックスが本当に知的障害があり、彼が見たものを理解できていないとしたら、ケラーがここまでしてしまうのはどうなのか・・・ 見ている側としては、当然感情移入すべき被害者の父親が、加害者になる瞬間を目撃しているのではないか?
ここで注目したいのが、もう1組の被害者家族。同じく娘が行方不明となっているバーチ家。ケラーは1人ではアレックスを監視し続けられないため、父親のフランクリンに協力を頼む。最初こそ協力できないと言い、ケラーを止めていたフランクリンだけど、娘を思う気持ちや、ケラーの熱意に押されて手伝ってしまう。夫の行動を不審に思った妻のナンシー・バーチが、アレックス監禁現場を見つけてしまう。一度はアレックスを逃がそうとしたナンシーも、結局はこの監禁を容認する。しかも、責任はケラーに押し付ける形で協力しろと、夫に言う始末。友情すら崩れて行きそうなこの展開に、暗い気持ちになるけれど、果たして自分がこの立場に置かれたらどうか? NAVERまとめ記事の隠しメッセージは置いておけば、製作者側の言いたかったことはこの部分なんだと思う。もし自分に同じことが起きたらどうする?
ロキ刑事はアナたちの捜査をしつつ、ケラーをも監視しなければならない状況になる。この辺りで、ケラーの行為は例えアレックスが犯人だったとしても、犯罪行為になるであろうということは置いておいても、ロキ刑事の捜査を邪魔しているのじゃないかと思っていた。これがNAVERまとめ記事にあったとおり、製作者側の本当に意図した部分なのであれば、まんまと誘導に乗ったということになるのかな? その答えは今も出ない。結果、ロキが担当を外されたりと実害も出たことは間違いないわけだし・・・
アレックスは両親を幼い頃に亡くし、叔母夫婦に引き取られた。叔父は既に亡くなっており、現在は叔母と2人暮らし。ロキ刑事もケラーもこの叔母とは何度か面会し、家に入ったこともある。慎ましやかな生活をしている叔母は、アレックスが容疑者となったことで、加害者側の人間とも言えるけれど、アレックスに知的障害があることにより、ある意味被害者なのではないかと思わせる。この辺りも上手い。
ここまで書いてしまうと真犯人や、あの人物が本当は誰なのか分かってしまうかもしれない。自身も見ている途中で気づいたけれど、それは特別勘が鋭いわけではなく、きちんと伏線が張られているので、サスペンス好きなら見ているうちに分かると思う。そして、実はこの作品の本当の面白さは、あの人物が誰であるかが分かってから。その人物が誰か気づいてしまった時の、やり切れなさと言ったら
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ロキ刑事よりも1歩先に真犯人にたどり着いたケラー。ここにアナがいることを確信しているのに、逆に彼女を人質にされて犯人の言うとおりにするしかない。犯人に言われるがままに体が麻痺する薬を飲み、命ぜられるままに裏庭に掘られた穴に自ら入るケラー。穴を塞ぎその上に車を止めてしまう犯人。これは発見されるのは奇跡に近い・・・
一方、ロキ刑事も真犯人が誰であるか気づく。書き忘れたけど一緒に行方不明になっていたジョイは、犯人に解放されて無事保護される。彼女の証言から2人が誘拐されたことが決定的になるのだけど、それ以前にも彼女たちの衣服が発見されるなど、誘拐されて殺害されたのではないかと思わせるシーンもあり緊迫感がある。犯人宅に侵入したロキは間一髪アナを殺害しようとしていた犯人と撃ち合いになり、これを射殺する。頭に怪我を負いつつ、アナを病院に連れて行くため、血が目に入り視界がきかない中、朦朧とする意識を奮い起こしつつ、猛スピードで車を飛ばすロキ刑事。カッコイイ!
ロキ刑事の必死の搬送により、アナは一命を取り留め、母親と再会する。そして、母親からケラーが戻っていないことを告げられる。犯人宅の庭の遺体発掘作業を見守っていたロキ刑事は、今日の作業を終え帰っていく鑑識たちを見送りつつ、庭に佇む。すると、かすかな笛の音が・・・ 映画はここで終わる。要するに、アレックスをプリズナーとした、ケラー自身もプリズナーとなっていたっていうことで、なのでタイトルが『プリズナーズ』であるということだよね?もちろん、アナたち被害者も、あの人物を含めてプリズナーズってことなのでしょう。原題『PRISONERS』をそのまま日本語表記にした邦題は良かった。って、これしかあり得ないけど(笑)
とにかくキャストたちの演技がスゴイ! ロキ刑事のジェイク・ギレンホールは『ミッション8ミニッツ』(感想は
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叔母のマリア・ベロがスゴイ!ちょっと詳しく書けないのだけど、結局は狂っているってことなんでしょう。イヤ、正気なんだけど、彼女の中の基準というか信念というか、核となる部分が狂っている。その辺りを、狂気を感じさせつつ、でも正気なんだと思わせる怖さがスゴイ! ポール・ダノがもう本当に大変なことに・・・
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とにかく、冒頭から不穏な感じ。ケラーはいつもイライラしてる。Preppersというのは、来るべき災害に対して常に準備をしておく人だから、神経質なところはあるのかも。もちろん準備しておくことは大切なことだけど、そんなに裕福な暮らしとも思えないのに、家の地下室に食料品店かと思うくらい食料が備蓄してあって、ちょっとビックリもする。アメリカも自然災害の多い国だし、大きな国だから日本のように物資が届くまで時間がかかる部分はあるのかもしれないけれど・・・ でも、NAVER記事の意図があるのだとしたら、Preppersであることを強調する必要があるわけで、意図が全く伝わっていない自身にとっても、ケラーの神経質でキレやすい感じ、家族を守るということが、家族愛という温かい響き以上のものを感じてしまったのは、きっと狙いどおりなんだと思う。上手く言えないけど・・・(o´ェ`o)ゞ
『ショーシャンクの空に』、『ファーゴ』、『ノーカントリー』(感想は
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「胸の張り裂けるような映画」とヒュー・ジャックマンが語ったとおり、見せられた事実は重い。犯人が射殺されても、アナが無事に助かっても、おそらくケラーが助かっても、モヤモヤしたものが残る。でも、やっぱり見てよかったと思う。153分とちょっと長いし、事件がテンポ良く解決するわけでもないけれど、サスペンス要素と俳優の演技に惹き込まれて飽きてしまうことはない。
重厚なサスペンス&人間ドラマが見たい方オススメ! ヒュー・ジャックマンは完全に正義の人ではないので、正義のヒューを求めている人には辛いかも? 役者ヒュー・ジャックマン好きな方、ジェイク・ギレンホール好きな方必見!
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