'08.02.20 『ラスト、コーション 色|戒』@シャンテシネ
久々に ちょっと緊張感のある悲恋モノが見たくなり行く。
「日本占領下の上海。女工作員のワンは特務機関の大物イー暗殺計画のため、彼の愛人になったが…」という話。アン・リー作品って実は初めて。話題の『ブロークバック・マウンテン』も見ていない。世の中的には巨匠ってことになるのでしょうか。これは…どうかな…。
冒頭の緊迫感はすごかった。4人の有閑マダムが麻雀をしている。ジョアン・チェン演じるイー夫人を中心に世間話をしながら麻雀に興じているようで、その目線や会話の端々で腹の探り合いをしている。その女同士の駆け引きが不安で、不気味でいい。皆、当時流行のパーマでウェーブを出した髪をまとめ、アイラインをしっかり引いた目元に細い眉、真っ赤な口紅、そして体のラインを強調したチャイナドレス。中洋折衷(って言うのかな?)の調度類もいい。この映画で1番好きだったのはこのシーン。このオープニングは良かった。マオ夫人と名乗るワンが麻雀を抜け出し、街のカフェへ向かう。当時を再現した上海の町並みも素晴らしい。カフェについてからのワンの行動も謎めいていて、ここまでは緊迫感があり目が離せない。そして一本の電話。一気に引き込まれるはずが、正直おもしろかったのはここまで。
そこから4年前に遡る。それが…。ワンがどういう経緯で工作員になったのかを見せるのはアリだと思うし、きっかけはどうあれ工作員になっているのだから悲劇的なんだろうとも思う。でも、なぜワンがあそこまでしなければならなかったのか説得力がない。要するに彼女の任務はイーに色を仕掛けろということ。女性としてそれを武器に使うには相当の覚悟がいるはず。だから見る前は悲劇的な生い立ちで工作員として生きるしかない悲しい女性か、理想に燃える女闘士かと思っていた。ネタバレしてしまうけど、大学生だったワンは演劇部の仲間に誘われて抗日をテーマにした劇に主演し大好評を得る。そこから仲間達は一気に活動に目覚めてイー暗殺を企てる。それがワンをマオ夫人に仕立て上げイーに近付くというもの。この計画自体が甘いし無謀なのは言うまでもないし、結果未遂に終わるにしても、そもそもフツーの学生達がいくら敵とはいえ人を殺す計画を簡単に思いついて、実行しようということに現実味がなさ過ぎて一気に興ざめ。
学生達というか若者がしばしば理想に燃え、その未熟とも言える純粋な無鉄砲さで暴走するのはよくあることで、それが革命のきっかけになることもある。でも、いくら正当化したとしても訓練された工作員でもない彼らが、人を殺す計画をするというのはどうか…。しかも、無謀に始めた結果ワンがあんな犠牲を払ってまで遂行しようというのもちょっと…。結果悲惨なことになるけど、それについても誰にも感情移入できないし、誰にも同情できない。例えば『白バラの祈り』だって学生達が理想に燃え、彼らなりに抗ナチ活動をした結果悲劇を迎える話だけど、あれは彼らの若さゆえの無謀な感じや、甘さなんかも含めてその純粋な清々しさに感動して心から泣けた。でもこれは…。まぁ、そういう「失敗」を経た上で話は続いて行くわけで、ここは彼らの過ちを描きたかったのかもしれないけど、ちょっと共感できず。
そして3年後、ワンは再び工作員としてイーに近づく事になる。今度こそプロとして。この展開も強引。そしてワンの心の揺れがイマヒトツ分からない。確かに幸せな状況ではないし気力を失っているようではあるけど、不幸のどん底というわけでもなさそう。例えかつて淡い恋心を抱いたクァンの誘いだとしても、何故愛人になること前提に工作員になるかのか。そんなにまでして倒さなければならない相手とも思えないのだけど…。
ただ、ここからのタン・ウェイの美しさ、妖艶さは見事。激しい性描写もさることながら、そんなシーンよりただ立っているだけでものすごい色気。イーが溺れる気持ちが良く分かる。周り中敵だらけで疑心暗鬼になっているイーの孤独は大変なものだろう。ワンを征服することで男として満たされたいと思うのかもしれない。まさに命懸けの色仕掛けだし(笑)
でも…。まるでAVかというくらい性描写が激しい。でもいやらしくはない。ボカシが笑える(笑) 要するに「心」と「体」を分けて考えることができるかってことがテーマで、男と女の究極の闘いってことなんだと思う。男は女の体を征服し心を手に入れたと思う。女は体を与えることで男の心を支配しようとする。愛の無い体の関係も、体の繋がりのない愛も自然ではないという事なのか…。結局ワンは負けたのか? でも、あれが女の「愛」という気もする。
タン・ウェイは素晴らしかった。この映画彼女じゃなかったらダメだったと思う。あと、ジョアン・チェンが良かった。老けてて初めは分からなかったけど(笑)買物と麻雀ばかりしている有閑マダムだけど、当時の女性はそれを甘んじてしていたのだろうし、おそらくイーとワンの関係にも気付いている。でも、全て飲み込んでる感じ。暗殺はともかく、2人がそういう関係になるように仕向けたんじゃないか?とすら思わせる存在感がすごい。全然入り込めずにいた中2人の演技が救ってくれた。逆にトニー・レオンが…。イーの人物像っていうか、どのくらい大物なのか説得力がないのは彼だけの責任じゃないけど、老けすぎ! しかも小さい(涙)彼にもう少し危険で妖しい魅力があったら、もうちょっと入り込めたかも。
町並みや美術は美しかったし、チャイナドレスも良かった。そしてタン・ウェイの美しさは見ごたえあり!
『ラスト、コーション 色|戒』Official site
久々に ちょっと緊張感のある悲恋モノが見たくなり行く。
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冒頭の緊迫感はすごかった。4人の有閑マダムが麻雀をしている。ジョアン・チェン演じるイー夫人を中心に世間話をしながら麻雀に興じているようで、その目線や会話の端々で腹の探り合いをしている。その女同士の駆け引きが不安で、不気味でいい。皆、当時流行のパーマでウェーブを出した髪をまとめ、アイラインをしっかり引いた目元に細い眉、真っ赤な口紅、そして体のラインを強調したチャイナドレス。中洋折衷(って言うのかな?)の調度類もいい。この映画で1番好きだったのはこのシーン。このオープニングは良かった。マオ夫人と名乗るワンが麻雀を抜け出し、街のカフェへ向かう。当時を再現した上海の町並みも素晴らしい。カフェについてからのワンの行動も謎めいていて、ここまでは緊迫感があり目が離せない。そして一本の電話。一気に引き込まれるはずが、正直おもしろかったのはここまで。
そこから4年前に遡る。それが…。ワンがどういう経緯で工作員になったのかを見せるのはアリだと思うし、きっかけはどうあれ工作員になっているのだから悲劇的なんだろうとも思う。でも、なぜワンがあそこまでしなければならなかったのか説得力がない。要するに彼女の任務はイーに色を仕掛けろということ。女性としてそれを武器に使うには相当の覚悟がいるはず。だから見る前は悲劇的な生い立ちで工作員として生きるしかない悲しい女性か、理想に燃える女闘士かと思っていた。ネタバレしてしまうけど、大学生だったワンは演劇部の仲間に誘われて抗日をテーマにした劇に主演し大好評を得る。そこから仲間達は一気に活動に目覚めてイー暗殺を企てる。それがワンをマオ夫人に仕立て上げイーに近付くというもの。この計画自体が甘いし無謀なのは言うまでもないし、結果未遂に終わるにしても、そもそもフツーの学生達がいくら敵とはいえ人を殺す計画を簡単に思いついて、実行しようということに現実味がなさ過ぎて一気に興ざめ。
学生達というか若者がしばしば理想に燃え、その未熟とも言える純粋な無鉄砲さで暴走するのはよくあることで、それが革命のきっかけになることもある。でも、いくら正当化したとしても訓練された工作員でもない彼らが、人を殺す計画をするというのはどうか…。しかも、無謀に始めた結果ワンがあんな犠牲を払ってまで遂行しようというのもちょっと…。結果悲惨なことになるけど、それについても誰にも感情移入できないし、誰にも同情できない。例えば『白バラの祈り』だって学生達が理想に燃え、彼らなりに抗ナチ活動をした結果悲劇を迎える話だけど、あれは彼らの若さゆえの無謀な感じや、甘さなんかも含めてその純粋な清々しさに感動して心から泣けた。でもこれは…。まぁ、そういう「失敗」を経た上で話は続いて行くわけで、ここは彼らの過ちを描きたかったのかもしれないけど、ちょっと共感できず。
そして3年後、ワンは再び工作員としてイーに近づく事になる。今度こそプロとして。この展開も強引。そしてワンの心の揺れがイマヒトツ分からない。確かに幸せな状況ではないし気力を失っているようではあるけど、不幸のどん底というわけでもなさそう。例えかつて淡い恋心を抱いたクァンの誘いだとしても、何故愛人になること前提に工作員になるかのか。そんなにまでして倒さなければならない相手とも思えないのだけど…。
ただ、ここからのタン・ウェイの美しさ、妖艶さは見事。激しい性描写もさることながら、そんなシーンよりただ立っているだけでものすごい色気。イーが溺れる気持ちが良く分かる。周り中敵だらけで疑心暗鬼になっているイーの孤独は大変なものだろう。ワンを征服することで男として満たされたいと思うのかもしれない。まさに命懸けの色仕掛けだし(笑)
でも…。まるでAVかというくらい性描写が激しい。でもいやらしくはない。ボカシが笑える(笑) 要するに「心」と「体」を分けて考えることができるかってことがテーマで、男と女の究極の闘いってことなんだと思う。男は女の体を征服し心を手に入れたと思う。女は体を与えることで男の心を支配しようとする。愛の無い体の関係も、体の繋がりのない愛も自然ではないという事なのか…。結局ワンは負けたのか? でも、あれが女の「愛」という気もする。
タン・ウェイは素晴らしかった。この映画彼女じゃなかったらダメだったと思う。あと、ジョアン・チェンが良かった。老けてて初めは分からなかったけど(笑)買物と麻雀ばかりしている有閑マダムだけど、当時の女性はそれを甘んじてしていたのだろうし、おそらくイーとワンの関係にも気付いている。でも、全て飲み込んでる感じ。暗殺はともかく、2人がそういう関係になるように仕向けたんじゃないか?とすら思わせる存在感がすごい。全然入り込めずにいた中2人の演技が救ってくれた。逆にトニー・レオンが…。イーの人物像っていうか、どのくらい大物なのか説得力がないのは彼だけの責任じゃないけど、老けすぎ! しかも小さい(涙)彼にもう少し危険で妖しい魅力があったら、もうちょっと入り込めたかも。
町並みや美術は美しかったし、チャイナドレスも良かった。そしてタン・ウェイの美しさは見ごたえあり!
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