'07.04.29 『クィーン』@TOHOシネマズ 市川コルトン
世界で最も有名な人物の1人英国女王エリザベス2世。そしてこれまた未だに物議をかもしているダイアナ妃の事故死。その死から葬儀までの一週間を描いた映画。
トニー・ブレアが新首相となり女王から任命を受けに来るところから始まる。この若き首相は女王に会うため緊張している。自分が首相に任命するのは10人目で、最初はチャーチル(!)だったと余裕の発言の女王。チャールズ皇太子と同じ世代の首相を息子のように導く。でも、時にユーモアも交えて交わされる会話も威厳に満ち、人としての温かみは感じない。といって冷淡なわけではない。感じるのは孤独。
大英帝国という大国のトップにいる人々は、様々な情報を頭に入れて即座に決断を下していかなくてはならない。そしてその決断に則した態度や姿勢を貫かなくてはけない。女王は国家元首として生き、王室の伝統を守ることを自らに課してきた。26歳の若さで即位してから50年間そうして生きてきた。でもどこかにズレが生じていた。第2次世界大戦後、戦争自体はなくなっていないけど、主要な大国は自国が戦場になるようなこともなく、民主主義の下に自由を謳歌してきた。もちろんそれは良いことだけど、古い伝統や英国人(だけでなく)の美徳とされていた「悲しみや苦しみを自らの中で抑えることができる」人々は少なくなっていた。良い意味でも悪い意味でも自己主張をハッキリする人々。ダイアナ妃の事故死で、その「人々の変化」に気づくことになる。
王室には王室側の言い分もあるだろう。確かに伝統を重んじることに存在価値があると言っても過言ではない王室に嫁ぎながら、それらをことごとく打ち破ろうとするダイアナはやっかいな存在ではあっただろう。マーガレット王女が「ダイアナは生きていても死んでもやっかいだ」と言ったらしいけど、言葉だけ抜き出すとヒドイけど、そういった側面はあったのだろう。いくら私的な会話でも公人が口にする言葉ではないけど・・・。ダイアナ妃はチャールズ皇太子と離婚して王室からは離れていたけれど、国民の人気は絶大だった。むしろ離婚によりダイアナに同情が集まっていただろう。そして衝撃の事故死。国民の感情は必要以上にダイアナの悲劇に向かった感はある。でも、彼女は2人の王子の母親であり「人民のプリンセス」だったのだ。
女王の対応は間違ってはいなかったのだろう。鹿狩りばかりしているフィリップ殿下はどうかと思うし、2人の王子の気持ちを本当に考えれるのであれば、直ぐに母親の元に行かせるべきだったと思うけど。でも、王室の者としての処し方は国民の求めていたものではなかった。そのことを思い知らされた時の苦悩はすごい。そして、孤独。
ブレア首相があんなに尽力したとは知らなかった。映画のとおりだとすれば的確で見事な判断だった。そしてそれに応えた女王もすごい。映画の中で女王をあざけった側近に対して首相が怒りをあらわにするシーンがあるけど、その言葉どおりだと思う。公の人というのは時に自分の考えとは違っていてもそれを受け入れなくてはならず、さらに自らが間違っていたと認めなくてはならないのは辛いところだ。まぁ、女王じゃなくてもフツーのOLにだってある事だけど。でも、それが「責任」だから。
アカデミー賞を受賞したヘレン・ミレンは女王そのもの。まるで本物の女王を見ているようだった。それだけにドキュメンタリーを見ているようで「映画」を見たという感じはあんまりしない。狩りのシーンの自然や宮殿内部の装飾、衣装などは豪華。ファッションには定評のある女王の衣装は素敵。ダイアナ妃の件では悪役になりがちなチャールズ皇太子が意外にも(失礼)ダイアナを擁護していたり、女王に意見していたりしたのはびっくり。それにはある意図があるように描かれていたけど(笑) 女王自ら運転していたのもびっくり。鹿のシーンは美しくて良かった。その鹿によって命のはかなさや残酷さをかみしめるのも・・・(涙) その辺りはやっぱり「映画」的ではある。
あの一週間になにがあったのかが良く分かるし、ドキュメンタリーとして見ると面白い。
『クィーン』official site
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トニー・ブレアが新首相となり女王から任命を受けに来るところから始まる。この若き首相は女王に会うため緊張している。自分が首相に任命するのは10人目で、最初はチャーチル(!)だったと余裕の発言の女王。チャールズ皇太子と同じ世代の首相を息子のように導く。でも、時にユーモアも交えて交わされる会話も威厳に満ち、人としての温かみは感じない。といって冷淡なわけではない。感じるのは孤独。
大英帝国という大国のトップにいる人々は、様々な情報を頭に入れて即座に決断を下していかなくてはならない。そしてその決断に則した態度や姿勢を貫かなくてはけない。女王は国家元首として生き、王室の伝統を守ることを自らに課してきた。26歳の若さで即位してから50年間そうして生きてきた。でもどこかにズレが生じていた。第2次世界大戦後、戦争自体はなくなっていないけど、主要な大国は自国が戦場になるようなこともなく、民主主義の下に自由を謳歌してきた。もちろんそれは良いことだけど、古い伝統や英国人(だけでなく)の美徳とされていた「悲しみや苦しみを自らの中で抑えることができる」人々は少なくなっていた。良い意味でも悪い意味でも自己主張をハッキリする人々。ダイアナ妃の事故死で、その「人々の変化」に気づくことになる。
王室には王室側の言い分もあるだろう。確かに伝統を重んじることに存在価値があると言っても過言ではない王室に嫁ぎながら、それらをことごとく打ち破ろうとするダイアナはやっかいな存在ではあっただろう。マーガレット王女が「ダイアナは生きていても死んでもやっかいだ」と言ったらしいけど、言葉だけ抜き出すとヒドイけど、そういった側面はあったのだろう。いくら私的な会話でも公人が口にする言葉ではないけど・・・。ダイアナ妃はチャールズ皇太子と離婚して王室からは離れていたけれど、国民の人気は絶大だった。むしろ離婚によりダイアナに同情が集まっていただろう。そして衝撃の事故死。国民の感情は必要以上にダイアナの悲劇に向かった感はある。でも、彼女は2人の王子の母親であり「人民のプリンセス」だったのだ。
女王の対応は間違ってはいなかったのだろう。鹿狩りばかりしているフィリップ殿下はどうかと思うし、2人の王子の気持ちを本当に考えれるのであれば、直ぐに母親の元に行かせるべきだったと思うけど。でも、王室の者としての処し方は国民の求めていたものではなかった。そのことを思い知らされた時の苦悩はすごい。そして、孤独。
ブレア首相があんなに尽力したとは知らなかった。映画のとおりだとすれば的確で見事な判断だった。そしてそれに応えた女王もすごい。映画の中で女王をあざけった側近に対して首相が怒りをあらわにするシーンがあるけど、その言葉どおりだと思う。公の人というのは時に自分の考えとは違っていてもそれを受け入れなくてはならず、さらに自らが間違っていたと認めなくてはならないのは辛いところだ。まぁ、女王じゃなくてもフツーのOLにだってある事だけど。でも、それが「責任」だから。
アカデミー賞を受賞したヘレン・ミレンは女王そのもの。まるで本物の女王を見ているようだった。それだけにドキュメンタリーを見ているようで「映画」を見たという感じはあんまりしない。狩りのシーンの自然や宮殿内部の装飾、衣装などは豪華。ファッションには定評のある女王の衣装は素敵。ダイアナ妃の件では悪役になりがちなチャールズ皇太子が意外にも(失礼)ダイアナを擁護していたり、女王に意見していたりしたのはびっくり。それにはある意図があるように描かれていたけど(笑) 女王自ら運転していたのもびっくり。鹿のシーンは美しくて良かった。その鹿によって命のはかなさや残酷さをかみしめるのも・・・(涙) その辺りはやっぱり「映画」的ではある。
あの一週間になにがあったのかが良く分かるし、ドキュメンタリーとして見ると面白い。
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