'10.06.19 『Short Shorts Film Festival Asia 2010』@Brillia Short Shorts Theater
migさんの弟さん片岡翔監督のショートフィルムがエントリーしているということで、rose_chocolatさんと見に行ってきた。
Wikipediaによりますと、Short Shorts Film Festivalとは、1999年別所哲也らが発起人となり、『American,Short Shorts Film Festival』としてスタート。25分以内の短編映画を対象としており、短編映画際としてはアジア最大級。『Short Shorts Film Festival Asia 』はアジア地域の作品を対象に、東京都と共催で2004年より開催している。米アカデミー賞の公認映画祭として認定されており、グランプリ受賞作品は、翌年のアカデミー賞短編部門の候補作品になるのだそう。スゴイ映画祭なんですね!
今回見たのは『Short Shorts Film Festival Asia 2010』 アジアインターナショナル&ジャパン部門 A&J-Gプロブラムの5作品。上映順にご紹介。
Brillia Short Shorts Theater
『焼肉』(上映時間 1:41) 「誰かの部屋で焼肉をする人々」 画面には上から映し出されたホットプレート。次々乗せられていくお肉の形に秘密がある。2枚目のお肉が乗せられた時点でもしやと思い、3枚目で確信。なるほどとニヤリ。最終的には焦げてしまうというオチもニヤリ。2分
『Mr.バブルガム』(上映時間 13:16) 「リストラされ借金を抱えた宇佐美は公園で遺書を書き始める。そこに不思議な少女ヒノコた現れて・・・ 」 リストラ、自殺、宇佐美のヒノコに対する欲情など、結構重くてドロドロした部分を、ポップな映像でサラリと描いている。この描き方は好き。小物がアメリカン・ポップな感じで、タイトルにあるバブルガムも、かなり大きくてショッキングピンクや、スカイブルーみたいな色。アメリカっぽい。体に悪いものしか入ってない感じ(笑) バブルガムで風船が膨らませない宇佐美。最終的に膨らませたのは・・・ というのも、シュールで好き。音楽の使い方も好き。導入部の「アルハンブラの想い出」はピアノの発表会で弾いたことがあるけど、哀愁たっぷりな曲。そして、2人が夢中になって遺書を書くシーンでは「ボレロ」 ラストのショパンの「別れの曲」にはニヤリ。舞台となっている公園もカワイイ! ブタの・・・ なんだろう? オブジェ? が、いい感じで配置されてる。2人がずっと座っているベンチも舟の形になっている。上映後、監督にうかがったところによると、このこの公園実際にあるのだそう。行ってみたい♪
*片岡翔監督&主演女優さんの舞台挨拶*
★作品について:リストラや自殺などの暗い題材を、ポップに描きたかったのだそう。
★撮影時間について:朝から日没まで
★演出について:舞台のような演技をして欲しかったので、主演女優さんは映像のお仕事は初めてだったけれど、舞台の経験があったのでよかったとのこと。
★バブルガムについて:撮影で使用した直径2cmくらいあるバブルガムは1個50円するそうで、かなりかみごたえがあるらしく、主演女優さんはアゴが痛くなってしまったのだそう(笑)
★観客からの質問に対して:ラストシーンで死にゆく男が、今まで1度もできなかった風船を、最後に少し膨らませたのは、生きているということですか? ⇒最期の一呼吸で膨らんだということですとの回答。このシーンの皮肉な感じはすごく好きだった。力を抜けば、もう少し生きやすかったのかも。
片岡翔監督にはロビーで裏話など聞かせて頂き、特製バブルガムをいただいた。 ありがとうございました!
そして! 今作品『Mr.バブルガム』が観客賞を受賞! おめでとうございます
特製バブルガム ピンボケ
『撮影禁止!』(上映時間15:07) 許可なく写真撮影したとして逮捕された女性。見張り役の警官もカメラ好きで… イランの作品。これも好きだった。若干尋問シーンが長いかなという気はした。結局、彼女が何を撮影してしまったのかは不明のまま。命じられて化粧を落とすと、目の下にアザ。何故、化粧を落とすように言われたのか、どうしてアザができたのかも謎。でも、彼女はいわゆる"進歩的"なのでしょう。殴ったのはおそらく父親。きっと彼女が進歩的だから。でも、そう感じるのは、彼女がスカーフのようなもので髪を隠しているイスラム教徒だから。尋問にも気丈に答える彼女が日本人なら、せいぜい気が強いなくらいの印象でしょう。そういう効果もあるかなと… この写真好きな若い警官が繊細な感じでいい。彼が撮ったのは逮捕された人々なのだけど、みなそれぞれの個性が現れている。あまりよく見えなかったのが残念だけど… でも、この写真は彼の人柄も表している。勝ち気で進歩的な彼女の気持ちをほぐす。一度は隙を見て逃げた彼女が、戻ってくるラストは想像がついたけど、2人の間に何かが始まる予感を感じさせて終わるのはいい感じ。
『ミッドナイトバー』(上映時間16:25) 行きつけのバーで飲む売れない俳優。いつもと違う様子を不思議がる店員に、末期ガンの宣告を受けたと告げる… 実は意外なオチがあって、そのオチ自体は特別新しくはなかったけれど、そこに向かって行く独特の緊迫感があった。ガン告知されたと嘆く俳優に、命の期限が分かったのだから、残された人生を充実させたらいいじゃないかと語る客の女性。ずいぶんだなと思うけれど、確かにそういう側面はあるなと思ったりする。ただ、自分が俳優の立場だったら、言われている瞬間はとても素直に聞ける状態じゃないと思うけど。この女性のビックリ発言は、彼女の辛い体験によるもの。それは辛いとは思うけど、もう少し言いようもあるだろうにと、思ったりする。ただ、もう一人の女性客の存在や、店員の感じなどに何となく違和感がある。店員の反応は正しいんだけど、どこか舞台のお芝居的で大袈裟で違和感。この違和感はオチの伏線。そのオチのためにあえて舞台っぽい演出なんだとは思うんだけど、何となく乗りきれない。オチもなるほどとは思うものの、スカッするには至らず。二重オチになっているけど、そんなにいらなかったかも。
『宿題(Familyship)』(上映時間 3:44) 悲壮な顔で宿題をする少年。彼には銃口が向けられている。銃を握っているのは母親… これはおもしろかった! 緊迫感がスゴイ。いきなり少年のアップから始まって、手元には計算問題。母親いわく、この前のテストで前回と同じようにミスしたとのこと。もう同じミスは許さないということで、銃口を向けているらしい。素晴らしいのはこのありえない状況にリアリティがあること。この母親はヒステリーのような感じで、もはやまともとは思えない。だから今にも引き金を引きそうな緊迫感がある。短いながらも、この母親の狂気からくる緊張感をしっかり描いているから、急展開して、意外なオチのエンディングにもリアリティがある。モノクロでアップ多様なのも緊迫感と狂気が増長されて良かった。ビックリしたのは、これ女性監督の作品だった。カッコイイ
*監督舞台挨拶*
★作品について:家族は温かいもの、愛し合い支え合うものとして描かれることが多いけれど、家族は残酷な面もあるということを描いているとのこと。
★上映時間と撮影時間について:上映時間は3分で撮って欲しいと言われたそうで、撮影時間は12時間。
★タイトルについて:韓国語のタイトルは『ホロジャシ』だけれど、『ホロビッチのために』という、ハートフルなファミリー映画をもじったものになっているとのこと。
★観客の質問に対して:コメディーが続いていたが? ⇒どんなジャンルであっても、自分らしさを出していきたいとの回答。カッコイイ
『変わりゆく地、プーケット』(上映時間32:00) バカンスでプーケットを訪れた韓国のスター女優。誰にも煩わされず静かに過ごしたいのに、ホテルにはファンがつめかけ、コーディネーターの女性はキリキリムード。そんな時、運転手の初老の男性と心が通い始め… と、あらすじを書いてしまうと、2人がまるで恋に落ちるみたいだけど、そうではない。これは限りなく親子に近い友情の話。2人の適度な距離感と、普段イメージする南国リゾートとは違う、少し淋しいプーケットの風景が、とっても切なくてよかった。最初は女優のけだるく、何を考えているのか分からない感じに、イライラまではしないけど、入り込めずにいた。たぶん、この時点ではコーディネーター目線なんだと思う。このコーディネーターも、仕事をきちんとしたいのだとは思うけど、多分スター達は扱いにくい方が多いのでしょう。全く感情を見せない女優を、高飛車で気まぐれだと思ってキリキリしている。誰もいないビーチに行きたいという、女優のリクエストに応えたのは運転手。このビーチ、女優が5歳の時、家族と来た場所だった。予定外の展開にイライラするコーディネーターをよそに、控えめながら誠実に対応するこの初老の運転手に女優は心を開く。翌日、こっそりホテルを抜け出した2人は、のんびり話をしながら観光する。その翌日には、運転手プロデュースで地元漁師の漁船に乗り込む。リゾート旅行では味わえない体験。彼女は抱えていた心配事を運転手に打ち明ける。そして、1人になった時、静かに流す涙が印象的。その悩みは、人気女優としてのものではなく、1人の女性としてのもの。ある年齢になると、自分だけの幸せを考えてばかりはいられない。それは女優もフツーのOLちゃんも同じ。その感じは良かった。この女優役のイム・スジョンの透明感があって、どこか悲しげな雰囲気も良かったけど、やっぱり運転手役のソーラポン・チャートリーの穏やかな佇まいが素晴らしい。若い頃はいろいろあったみたいだけど、今では運転手だとおどけるけれど、その1歩引いたスタンスがいい。大人の余裕を感じる。そして、それが女優の心をリラックスさせていく感じがすごく伝わった。タイトルにもあるとおり、運転手ポンは"変わりゆくプーケット"を寂しく思っている。いかにも南国のリゾートという感じに撮っていないのがいい。少し曇っているような色調で映し出される景色からは、暑さを感じなくて、ゆったりとした時間の流れが、女優だけでなく見ている側も癒していく。でも、どこか悲しげなのが、人の別れを感じさせる。とてもゆったりと美しい作品だった。
*監督舞台挨拶*
★作品について:プーケットの宣伝映画を撮ってほしいという依頼があったのだそう。
★撮影時間:8日間
★キャストについて:ポン役のソーラポン・チャートリーはタイの国民的俳優で、若い頃は王様役を演じることが多かったそう。女優役のイム・スジョンは友人のプロデューサーに英語が得意な女優とリクエストして探してもらった。女優はあまり英語が得意じゃない設定なので、上手な人でないと下手には演じられないという理由だそう。
★観客からの質問について:1)何故韓国人女優を起用すたのか? ⇒タイでは今、韓国の映画、ドラマ、音楽が人気で、プーケットからの依頼で撮った作品なので、タイの人に受け入れやすいようにとのこと。
2)船で女優が泣いているシーンがあったけれどその意図は?(rose_chocolatさんの質問!) ⇒ 泣いていること自体には直接の理由も意図もないけれど、エンディングで読まれるポン宛ての手紙を書くことにつながり、エンディングが美しくなると思ったのだそう。映画を撮っていると、脚本を書いている時には、あまり意味がないように思っても、美しいシーンになるということがあるとのこと。なんだかとっても納得。
アディットヤ・アサラット監督には、ロビーでサイン&握手していただいた。とっても気さくで、エネルギッシュな方だった。
というわけで、どの作品も良くて、とっても楽しかった♪ アンケートに答えると、読み応え満点の公式パンフがもらえる。PJ(ピーター・ジャクソン監督)のインタビューも載っててうれしい
パンフ&チラシ&バブルガム
『Short Shorts Film Festival Asia 2010』Official site
migさんの弟さん片岡翔監督のショートフィルムがエントリーしているということで、rose_chocolatさんと見に行ってきた。
Wikipediaによりますと、Short Shorts Film Festivalとは、1999年別所哲也らが発起人となり、『American,Short Shorts Film Festival』としてスタート。25分以内の短編映画を対象としており、短編映画際としてはアジア最大級。『Short Shorts Film Festival Asia 』はアジア地域の作品を対象に、東京都と共催で2004年より開催している。米アカデミー賞の公認映画祭として認定されており、グランプリ受賞作品は、翌年のアカデミー賞短編部門の候補作品になるのだそう。スゴイ映画祭なんですね!
今回見たのは『Short Shorts Film Festival Asia 2010』 アジアインターナショナル&ジャパン部門 A&J-Gプロブラムの5作品。上映順にご紹介。
Brillia Short Shorts Theater
『焼肉』(上映時間 1:41) 「誰かの部屋で焼肉をする人々」 画面には上から映し出されたホットプレート。次々乗せられていくお肉の形に秘密がある。2枚目のお肉が乗せられた時点でもしやと思い、3枚目で確信。なるほどとニヤリ。最終的には焦げてしまうというオチもニヤリ。2分
『Mr.バブルガム』(上映時間 13:16) 「リストラされ借金を抱えた宇佐美は公園で遺書を書き始める。そこに不思議な少女ヒノコた現れて・・・ 」 リストラ、自殺、宇佐美のヒノコに対する欲情など、結構重くてドロドロした部分を、ポップな映像でサラリと描いている。この描き方は好き。小物がアメリカン・ポップな感じで、タイトルにあるバブルガムも、かなり大きくてショッキングピンクや、スカイブルーみたいな色。アメリカっぽい。体に悪いものしか入ってない感じ(笑) バブルガムで風船が膨らませない宇佐美。最終的に膨らませたのは・・・ というのも、シュールで好き。音楽の使い方も好き。導入部の「アルハンブラの想い出」はピアノの発表会で弾いたことがあるけど、哀愁たっぷりな曲。そして、2人が夢中になって遺書を書くシーンでは「ボレロ」 ラストのショパンの「別れの曲」にはニヤリ。舞台となっている公園もカワイイ! ブタの・・・ なんだろう? オブジェ? が、いい感じで配置されてる。2人がずっと座っているベンチも舟の形になっている。上映後、監督にうかがったところによると、このこの公園実際にあるのだそう。行ってみたい♪
*片岡翔監督&主演女優さんの舞台挨拶*
★作品について:リストラや自殺などの暗い題材を、ポップに描きたかったのだそう。
★撮影時間について:朝から日没まで
★演出について:舞台のような演技をして欲しかったので、主演女優さんは映像のお仕事は初めてだったけれど、舞台の経験があったのでよかったとのこと。
★バブルガムについて:撮影で使用した直径2cmくらいあるバブルガムは1個50円するそうで、かなりかみごたえがあるらしく、主演女優さんはアゴが痛くなってしまったのだそう(笑)
★観客からの質問に対して:ラストシーンで死にゆく男が、今まで1度もできなかった風船を、最後に少し膨らませたのは、生きているということですか? ⇒最期の一呼吸で膨らんだということですとの回答。このシーンの皮肉な感じはすごく好きだった。力を抜けば、もう少し生きやすかったのかも。
片岡翔監督にはロビーで裏話など聞かせて頂き、特製バブルガムをいただいた。 ありがとうございました!
そして! 今作品『Mr.バブルガム』が観客賞を受賞! おめでとうございます
特製バブルガム ピンボケ
『撮影禁止!』(上映時間15:07) 許可なく写真撮影したとして逮捕された女性。見張り役の警官もカメラ好きで… イランの作品。これも好きだった。若干尋問シーンが長いかなという気はした。結局、彼女が何を撮影してしまったのかは不明のまま。命じられて化粧を落とすと、目の下にアザ。何故、化粧を落とすように言われたのか、どうしてアザができたのかも謎。でも、彼女はいわゆる"進歩的"なのでしょう。殴ったのはおそらく父親。きっと彼女が進歩的だから。でも、そう感じるのは、彼女がスカーフのようなもので髪を隠しているイスラム教徒だから。尋問にも気丈に答える彼女が日本人なら、せいぜい気が強いなくらいの印象でしょう。そういう効果もあるかなと… この写真好きな若い警官が繊細な感じでいい。彼が撮ったのは逮捕された人々なのだけど、みなそれぞれの個性が現れている。あまりよく見えなかったのが残念だけど… でも、この写真は彼の人柄も表している。勝ち気で進歩的な彼女の気持ちをほぐす。一度は隙を見て逃げた彼女が、戻ってくるラストは想像がついたけど、2人の間に何かが始まる予感を感じさせて終わるのはいい感じ。
『ミッドナイトバー』(上映時間16:25) 行きつけのバーで飲む売れない俳優。いつもと違う様子を不思議がる店員に、末期ガンの宣告を受けたと告げる… 実は意外なオチがあって、そのオチ自体は特別新しくはなかったけれど、そこに向かって行く独特の緊迫感があった。ガン告知されたと嘆く俳優に、命の期限が分かったのだから、残された人生を充実させたらいいじゃないかと語る客の女性。ずいぶんだなと思うけれど、確かにそういう側面はあるなと思ったりする。ただ、自分が俳優の立場だったら、言われている瞬間はとても素直に聞ける状態じゃないと思うけど。この女性のビックリ発言は、彼女の辛い体験によるもの。それは辛いとは思うけど、もう少し言いようもあるだろうにと、思ったりする。ただ、もう一人の女性客の存在や、店員の感じなどに何となく違和感がある。店員の反応は正しいんだけど、どこか舞台のお芝居的で大袈裟で違和感。この違和感はオチの伏線。そのオチのためにあえて舞台っぽい演出なんだとは思うんだけど、何となく乗りきれない。オチもなるほどとは思うものの、スカッするには至らず。二重オチになっているけど、そんなにいらなかったかも。
『宿題(Familyship)』(上映時間 3:44) 悲壮な顔で宿題をする少年。彼には銃口が向けられている。銃を握っているのは母親… これはおもしろかった! 緊迫感がスゴイ。いきなり少年のアップから始まって、手元には計算問題。母親いわく、この前のテストで前回と同じようにミスしたとのこと。もう同じミスは許さないということで、銃口を向けているらしい。素晴らしいのはこのありえない状況にリアリティがあること。この母親はヒステリーのような感じで、もはやまともとは思えない。だから今にも引き金を引きそうな緊迫感がある。短いながらも、この母親の狂気からくる緊張感をしっかり描いているから、急展開して、意外なオチのエンディングにもリアリティがある。モノクロでアップ多様なのも緊迫感と狂気が増長されて良かった。ビックリしたのは、これ女性監督の作品だった。カッコイイ
*監督舞台挨拶*
★作品について:家族は温かいもの、愛し合い支え合うものとして描かれることが多いけれど、家族は残酷な面もあるということを描いているとのこと。
★上映時間と撮影時間について:上映時間は3分で撮って欲しいと言われたそうで、撮影時間は12時間。
★タイトルについて:韓国語のタイトルは『ホロジャシ』だけれど、『ホロビッチのために』という、ハートフルなファミリー映画をもじったものになっているとのこと。
★観客の質問に対して:コメディーが続いていたが? ⇒どんなジャンルであっても、自分らしさを出していきたいとの回答。カッコイイ
『変わりゆく地、プーケット』(上映時間32:00) バカンスでプーケットを訪れた韓国のスター女優。誰にも煩わされず静かに過ごしたいのに、ホテルにはファンがつめかけ、コーディネーターの女性はキリキリムード。そんな時、運転手の初老の男性と心が通い始め… と、あらすじを書いてしまうと、2人がまるで恋に落ちるみたいだけど、そうではない。これは限りなく親子に近い友情の話。2人の適度な距離感と、普段イメージする南国リゾートとは違う、少し淋しいプーケットの風景が、とっても切なくてよかった。最初は女優のけだるく、何を考えているのか分からない感じに、イライラまではしないけど、入り込めずにいた。たぶん、この時点ではコーディネーター目線なんだと思う。このコーディネーターも、仕事をきちんとしたいのだとは思うけど、多分スター達は扱いにくい方が多いのでしょう。全く感情を見せない女優を、高飛車で気まぐれだと思ってキリキリしている。誰もいないビーチに行きたいという、女優のリクエストに応えたのは運転手。このビーチ、女優が5歳の時、家族と来た場所だった。予定外の展開にイライラするコーディネーターをよそに、控えめながら誠実に対応するこの初老の運転手に女優は心を開く。翌日、こっそりホテルを抜け出した2人は、のんびり話をしながら観光する。その翌日には、運転手プロデュースで地元漁師の漁船に乗り込む。リゾート旅行では味わえない体験。彼女は抱えていた心配事を運転手に打ち明ける。そして、1人になった時、静かに流す涙が印象的。その悩みは、人気女優としてのものではなく、1人の女性としてのもの。ある年齢になると、自分だけの幸せを考えてばかりはいられない。それは女優もフツーのOLちゃんも同じ。その感じは良かった。この女優役のイム・スジョンの透明感があって、どこか悲しげな雰囲気も良かったけど、やっぱり運転手役のソーラポン・チャートリーの穏やかな佇まいが素晴らしい。若い頃はいろいろあったみたいだけど、今では運転手だとおどけるけれど、その1歩引いたスタンスがいい。大人の余裕を感じる。そして、それが女優の心をリラックスさせていく感じがすごく伝わった。タイトルにもあるとおり、運転手ポンは"変わりゆくプーケット"を寂しく思っている。いかにも南国のリゾートという感じに撮っていないのがいい。少し曇っているような色調で映し出される景色からは、暑さを感じなくて、ゆったりとした時間の流れが、女優だけでなく見ている側も癒していく。でも、どこか悲しげなのが、人の別れを感じさせる。とてもゆったりと美しい作品だった。
*監督舞台挨拶*
★作品について:プーケットの宣伝映画を撮ってほしいという依頼があったのだそう。
★撮影時間:8日間
★キャストについて:ポン役のソーラポン・チャートリーはタイの国民的俳優で、若い頃は王様役を演じることが多かったそう。女優役のイム・スジョンは友人のプロデューサーに英語が得意な女優とリクエストして探してもらった。女優はあまり英語が得意じゃない設定なので、上手な人でないと下手には演じられないという理由だそう。
★観客からの質問について:1)何故韓国人女優を起用すたのか? ⇒タイでは今、韓国の映画、ドラマ、音楽が人気で、プーケットからの依頼で撮った作品なので、タイの人に受け入れやすいようにとのこと。
2)船で女優が泣いているシーンがあったけれどその意図は?(rose_chocolatさんの質問!) ⇒ 泣いていること自体には直接の理由も意図もないけれど、エンディングで読まれるポン宛ての手紙を書くことにつながり、エンディングが美しくなると思ったのだそう。映画を撮っていると、脚本を書いている時には、あまり意味がないように思っても、美しいシーンになるということがあるとのこと。なんだかとっても納得。
アディットヤ・アサラット監督には、ロビーでサイン&握手していただいた。とっても気さくで、エネルギッシュな方だった。
というわけで、どの作品も良くて、とっても楽しかった♪ アンケートに答えると、読み応え満点の公式パンフがもらえる。PJ(ピーター・ジャクソン監督)のインタビューも載っててうれしい
パンフ&チラシ&バブルガム
『Short Shorts Film Festival Asia 2010』Official site