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【art】「オールドノリタケと懐かしの洋食器」鑑賞@東京都庭園美術館

2008-06-15 00:52:23 | art
'08.06.14 「オールドノリタケと懐かしの洋食器」@東京都庭園美術館

大好きな庭園美術館で開催中の展覧会。洋食器は大好き。気になっていたのに、ぼんやりしているうちに明日まで! ということで焦って行ってきた。

最終日前日ということでやや混んではいたけれど、見ずらいということもなく、ここで見た展覧会の中では、かなり見やすい方だったかも。陶磁器の展示ということで絵画ほど光に対して気を使わなくていいのか、普段は閉められている香水塔と大客室の間の扉が開いていたり、大食堂の円形出窓のカーテンが開いていたりしている。特に2階の若宮御寝室から玄関の車寄せを眺めていると、まるで自分がこの屋敷の住人になったよう。今にも黒塗りのクラシック・カーが車寄せに入ってくるのではないかと錯覚してしまう。

少し話がそれてしまった・・・。守屋知子氏の洋風陶磁器コレクション約200点を展示。おもにノリタケ(旧日本陶器)と、ノリタケから派生したメーカーの製品。「オールドノリタケ」の定義は難しいらしいけれど図録によると、明治37年(1904年)に森村組が日本陶器合名会社を創設し、愛知県の則武に工場を建設したことが「ノリタケ」の名前の由来。日本陶器と森村組は分業体制を敷き、大正元年(1912年)に日本陶器が一貫製造体制を整えるまで、森村組が画付けを担当。いわゆる「オールドノリタケ」と呼ばれる金盛装飾は森村組によるものが多い。「オールドノリタケ」という呼称は1990年代に雑誌などで呼ばれ始めたようで、おもにアメリカ向けに輸出された製品で、アメリカでは1970年代頃からブームになっていたらしい。

1階の大広間、大客間、大食堂の展示がいわゆるイメージしていた「オールドノリタケ」作品。第1展示室の大広間では洋食器に有田焼のような日本的な模様が描かれているものが多い。花瓶などはむしろ中国的な感じもする。「花鳥文ティーセットより砂糖入れ、ケーキ皿、碗皿」の淡いサクラ色の地に花と鳥がかわいらしい。ここでの見ものは「唐草文蓋物」明治12~22年ころの作品で、これはいわゆるスープなどをいれて食卓に置き、そこから給仕するというようなもの。細かい西洋風の花模様の画付けとは逆に、形はどこか分厚くて無骨な感じがする。それがいい。

続く、大客間、大食堂の作品群は見事! 一陳盛、盛り上げ、金盛り、ビーディングなど、さまざまな技法の作品が並び、その横に技法の説明が展示されている。使用されている部分の拡大写真もありとても分かりやすい。おそらく手描きで絵付けされたであろうそれらの技法や、西洋風、アラビア風、ギリシャ風などの図柄も素晴らしい。特に好きだったのは「風景文花瓶」中に描かれている風景も西洋風でありながら、どこか日本風でよいけれど、それを縁取る一陳盛とビーディングの装飾が見事。「レース文チョコレートポット」と「レース文ティーセット」もコバルトという紺地に金彩や金盛りを施した技法が素晴らしい。その紺地の深さと金盛りのレース模様が絶妙。「花文花瓶」の底と口の部分に盛り上げ技法で描かれた淡い色の花模様がかわいい。こんな服が欲しい! 「唐草文コーヒーセット」の図案の大胆さも好き。「幾何文皿」は単純に欲しい! 「おもたか文花瓶」の金盛り、一陳盛、ぼかしなど様々な技法を駆使しての気の遠くなるような細かい意匠にただただ感嘆。これはすばらしい。これだけいろいろな模様が描かれ、ふんだんに金を使っているにもかかわらず、華美になりすぎず趣味よくまとめているのはさすが日本人! おそらく巧みに使われた黒のおかげ。これは素晴らしい。「ひまわり文コーヒーセット」もかわいい。これらが明治20年代~大正時代の作品であることにビックリ。

第4展示室の喫煙室ではアール・デコへと移行し当時流行のラスター彩という虹色に輝く技法を用いた作品が並ぶ。ウェッジウッドなど海外の作品もある。ウェッジの「蝶文花瓶」は素敵だった。ちょっとアール・ヌーボーっぽい感じ。日本陶器の「オリーブ文鉢」もいい。いかにもアール・デコといったデザイン化されたオリーブの模様が素敵。モノトーンの図案に、金が趣味良く配されている。

2Fに移動。「花文ティーセットよりポット、砂糖入れ、ミルク入れ、ケーキ皿、カップ」がいい。水色の地に家紋のような花とそれを縁取るステッチのような模様。そして金の持ち手。なにより6角形の形がいい。アール・デコの影響で画付けはパターン化されてくる。ここでも西洋的な図案や風景を取り入れつつもどこか日本的な印象なのがいい。「水色角型チョコレートセット」もいい。四角の形もいいし、四隅に白い部分を入れているのもいい。そして全ての角に黒い線が引かれているものモダン。

若宮居間に展示されていた図案集がかわいい。そのまま絵本などの装丁に使えそうなかわいらしさ。製作年が昭和に入ると、パターン化された図案を使ったものがほとんどとなり、大量生産を思わせる作品が多い。「白地ティーセット」などはモダンな形と白地に赤いラインがすごくかわいい。これは普通に使いたい。「花小紋果物セット」ではパターンをつぎはぎして使ったと思われる切れ目が見られて、その試行錯誤ぶりもかわいらしい。「唐草文鉢」もかわいらしかった。

そして、大正末~昭和10年頃までに日本の洋食器技術はほぼ完成に至る。この頃の作品は今現在売られていても全然違和感がない。アール・デコっぽい縦長のティーポットも普通に欲しい。「梅文コーヒーセット」や「銀線文ティーセット」はホントに欲しい。なんてモダンで素敵! 「花文化粧セット」のバラのつぼみの付いた入れ物がかわいい。描かれたバラの大胆な構図もいいし、3本の猫足も素敵! バラの模様といえばハンガリーのヘレンドや、オーストリアのアウガルテンなどが有名だけど、そういう西洋的な感じじゃなくて、これは日本の女性の部屋にあるべきもののように思える。

でも2F最大の見ものは若宮寝室の「彩磁延壽文花瓶」 昭和前期の板谷波山の作品。これは素晴らしい。板谷波山の作品はその彩色が特徴。そのまるで一枚薄い布が被られているかのような、なんともいえない淡い色合いが素晴らしい。この彩色は波山以外にはできないと言われているのだそう。これは是非後ろに廻って背景も見て欲しい。前面ではつぼみだった花が、裏面では満開になっている。丸みを帯びた全体もいい。これは素晴らしかった! 波山の作品は数が少ないらしく、見れてホント良かった。

とにかく、全て洋食器でおもにアメリカに向けての輸出品として作られたものが多かったよう、どんなに西洋的だったり、アラビア的だったりの模様を取り入れても、どこかに日本的な感覚が入っているのがいい。もしかしたら意図していたのかもしれないけれど、やっぱり日本人だから、いつも見ている風景や草花、着物などの模様、そして使っている食器などの感覚がどこかで出たりするのかも。でも、その感じが日本趣味の影響を受けたアール・ヌーボーやアール・デコと見事に相まっている。そして「花文ディナーセット」「蔦文ティーセット」「花文蓋付鉢」(これ素晴らしい! これこそアール・デコ)などがこのアール・デコの邸宅にある感じがホントいい。

すべての作品のネームプレートに裏印が表示されているのが良かった。裏印とはお皿やカップなどの裏に記されているブランドマーク。それぞれの年代で使われている印が違うので、年代の特定に使われたりする。図録にはその一覧も載っている。展示自体も比較的ゆっくり見れたし、かなり良かった。しかし、なんというコレクション数・・・。うらやましい限り(笑)


「オールドノリタケと懐かしの洋食器」東京都庭園美術館

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【music】THE BIRTHDAY LIVE @ZEPP TOKYO

2008-06-14 23:56:46 | music
'08.06.13 THE BIRTHDAY LIVE @ ZEPP TOKYO

また行っちゃった・・・。絶対、何か違うとか思ったり書いたりしちゃうくせに・・・。でも、やっぱりチバやキュウちゃんを見たいんだよな・・・。

というわけではるばるZEPP TOKYOまで行く。すでに開場してる時間だけど小腹が空いたのでヴィーナス・フォートのフード・コートで坦々麺&チャーハンセットやスンガリーの水餃子など食べていたら遅刻。まぁ、遅刻するとは思っていたけど(笑) 19:30開演だったけど、20分は始まらないだろうし。ってことで20:00頃会場入り。後方結構余裕ある。そもそも、このチケットも最近入手したし。一応、TOUR FINALらしいけど大丈夫なんだろうか?

余裕があるとはいえチビッコなのでほとんど見えず(涙) 少し引き気味で人の頭の間にチバ&キュウをなんとか視界に入れて見るも、前に人が来てしまえば何も見えない。悲しいけれど仕方なし・・・。早く来ない自分が悪いんだし。

後ろにいたお兄さん達が話していたところによると、けっこう新曲を披露していたもよう。スローな感じの曲が多い印象。導入部はどうだったのか分からないけど、曲と曲の間の間合いも結構ある。年・・・(涙) まぁ、チバも40だしね。音も決して小さくはないけど、耳がおかしくなるほどの爆音ではない。切なくなるような激しいリズムも、”苺のなる木”なんていう不思議で、ストレートな歌詞もない。でも、これはこれでいいのかもしれない。若い観客に向けて余裕を持って自分達の演奏をしているように見えた。大人になったということか。なんだかとってもさびしいけど・・・。客に歌うように促してみたりと、なんだか全く自分の好みとは違うBANDがいた。相変わらずギターが好きになれない。

アンコール前にドリンクを引き換えに行く。アンコールが始まったので前の方の扉からチラ見。この辺りは激混みで、人があふれている。お兄さん2人がドアを開けて押さえたまま人垣の後ろから見ていたので、私達もその後ろで便乗。すごい! 近い! これは感動。やっぱりカッコイイ。

ごめん・・・(笑) やっぱり間近でみたらスゴイし、かっこよかったッス! そのまま2回目のアンコールも見る。いや、良かった。近くで見てよかった! 今回、これだけで4500円元取れたと言っても過言ではありません(笑)


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【cinema / DVD】『私のちいさなピアニスト』

2008-06-08 21:24:07 | cinema / DVD
公開時気になっていたのでDVDにて鑑賞。

「ピアニストの夢を諦め、小さな町でピアノ教室を開いたジス。なかなか思うように気持ちの整理が付かず、生徒も集まらない。ある日、見知らぬ少年が無断で入ってきてピアノを弾き始める。彼に非凡な才能を感じたジスは、ピアノを教え始めるが・・・」という話。これはなかなかよかった。

ジスは20代後半~30代半ばくらいの女性。一見すると気が強くてプライドばかり高くてギスギスした人に見える。でも、もう若くはないことは自覚しつつも、まだ簡単に夢は捨てきれない。でも、生活のためには、お遊び感覚の子供相手にピアノを教えなければならない。同級生の中には教授として成功している人もいる。年齢的なものや、今ある状況からくる焦りとか、苛立ちみたいな感じはすごくよく分かる。10代~20代前半の女性や、男性にはもしかすると分かりにくい感覚かもしれない。教授になった同級生の態度からジスは、おそらくある程度のレベルに達していた生徒だったのだろう。本人にもその自覚がある。だから、初めからピアニストになる夢など見ていなかった同級生のように、結婚相手を探すという方向転換(それが正しいかは別として・・・)をする気にはなれない。それはプライドのようにも見えるし、本人もそう思っている。私もそうだと思っていた。でも、それは実は葛藤なのであって、本当のプライドはそれを乗り越えたところにあるのかもしれない。

ジスの家は特別貧乏だったわけではなさそうだけど、彼女を音大に通わせるため兄は大学進学を諦めたようだ。でも、望んでいた留学はできなかった。だから自分は認められないと思っている。たぶんそれは言い訳。自分でも留学が原因でないことは分かっているけど、それを認めたくはない。今までの自分を全否定してしまう気がするから。そして自分には才能がないということだから。実際に音大を出てピアニストもしくは教授として成功する人はほんの一握りだろう。だから大多数の人は実は挫折している。でも、だからといってそれを認めるのは辛い。まして他の人にそう思われるのは辛い。たとえ実の母親や兄であっても。だから言い訳をしてしまう。それはまだ自分の中で葛藤しているから。大人になりきれていないとも言えるかもしれない。でも、生きていくうえで葛藤しない人なんていないと思う。

そんな時キョンミンと出会う。キョンミンは母親を事故で亡くし心を閉ざしてしまった。彼のピアノは心の叫び。技術は努力でなんとかなる。でも、自分の気持ちを込めて表現できるというのは、やっぱり才能なのかもしれない。伝えたい気持ちがあっても、それをそのまま表現したからといって、人に伝わるわけではない。「分かって欲しい」と過剰にアピールしたら、見ている側は多分重い。彼は誰かに分かって欲しいと意図してるわけじゃないけど、ピアノを弾いている時は心を開放しているのだと思う。彼がほとんど話さない演出はいい。それが後の感情を爆発させた際のいい効果になっている。ジスと出会って、彼は母親の姿を重ねたのかもしれない。最初の段階でのジスのキョンミンに対する興味は、キョンミンを利用して自分を認めさせようというもの。だから、コンクール会場でのアクシデントで、ピアノを弾くことが出来なかった彼を、理由を聞きもせずに切り捨ててしまう。裏切られたと思ってしまったジスの気持ちも分かる。そしてまた夢がついえたと失望してしまった気持ちも理解できる。でも、バス停に1人取り残されたキョンミンの姿は悲しい。

でもキョンミンを大切に思い始めていること、そして彼の存在が自分の支えになっていたことに気付く。彼の祖母が病に倒れたため2人の生活が始まる。ここからの2人の姿は微笑ましい。本当の親子のよう。特に、ハウス・コンサート(?)で彼の才能が認められた後、雪の中2人が楽しそうにはしゃいで帰るシーンがいい。でも、そんな生活も長くは続かない。彼女はキョンミンのためにある決断をする。彼女は今の自分に、自分をピアニストにするため情熱を注いだ亡き父の姿を重ねたのかもしれない。だからこそ自分の気持ちを優先させてはいけないと思えたのかも。そしてラスト。ここでのキョンミンの姿こそがジスの本当のプライドなんだと思う。真のプライドとは自分で自分を誇れることなんじゃないだろうか。他人の評価は関係なく、自分が誇りに思えたらそれでいいのかも。

ジスのオム・ジョンファは良かった。映画の中でもオバちゃん呼ばわりされているけど、ちょっと緩めの体型(これは役作りかな?)も含めて良かったと思う。キョンミンのシン・ウィジェのピアノがすごい! 演技は特別上手いとは思わなかったけど、彼の悲しげな表情は良かったと思う。自分を受け入れてくれる存在を求めつつも、素直になれない感じも良かった。ジスに恋するピザ屋の店長グァンホは・・・。これはグァンホ役パク・ヨンウのせいだけではないと思うけど、韓国映画はどうしてドタバタを入れたがるんだろう。インド映画の踊りとかみたいに、入れないと観客は納得しないのかしら? グァンホの空回り振りは必要ない気がする。ラストでは温かくジスを見守る感じが良かったので、ずっとそういう感じでもいい気がする。恋する青年の空回りとしても、ちょっと感情移入しずらいドタバタ感・・・。これは祖母のキャラにも言える気がした。ジスとキョンミンのやり取りでもドタバタを取り入れてて、それは2人の心の距離が縮まる感じが伝わるから、それだけにした方がむしろ際立ってよかった気がする。

プライドってなかなか難しいけどジスの葛藤を見ていて気付かされた。プライドが傷つけられたと思って悲しんだり、苦しんだり、相手を憎く思ったりしてしまう時ってある。その時の感情を「プライドが許さない」とか「譲れないプライドだ」と思っていた。でも、実はそれを自分の中で消化して乗り越えて一歩前進できた時に、「自分は間違っていなかった」と思えたら、そう思えたことが自分のプライドになるのかもしれない。相手が正しかったかどうかは関係ない。「自分」がそう思えればいい。それは、もちろん最近問題になっている「根拠のない自信」とは違う。

ジスの葛藤や彼女がきちんとそれを乗り越えた様子がちゃんと伝わってきたからそう思えたのだと思う。ドタバタ部分で少し感情移入しにくいところがあったのが残念だけど、良かったと思う。


『私のちいさなピアニスト』Official site

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【cinema】『ミラクル7号』(試写会)

2008-06-05 01:15:51 | cinema
'08.06.02 『ミラクル7号』(試写会)@中野サンプラザ

yaplogの試写会プレゼントで見事当選! 『少林サッカー』『カンフー・ハッスル』のチャウ・シンチー監督・主演作品。

「借金を抱え工事現場で働くティーと有名私立小学校に通う息子ディッキーは貧乏だけど仲良く暮らしている。学校で貧乏をからかわれいじめられたディッキーをなぐさめるため、ティーは不思議な生物を拾ってくるが・・・」という話。これは、おもしろかった。前2作では本人も気付かないすごい能力の持ち主ながら、その気ままな性格から社会から少し外れている男を演じたチャウ・シンチー。今回も同様に貧乏ではあるけれど、いたって真面目。そして良きお父さん。そして今回は息子ディッキーが主役で、あくまで脇というようなスタンス。でも、しっかり主演ですが(笑)

CGを駆使したアクション・シーンや、貧乏ぶりの描写も相変わらずバカな感じでいい。冒頭、泥だらけの顔で小学校に登校してくるディッキー。イケメン気取りの教師はディッキーを目の敵。汚いから自分には触るななんて問題発言でしょう(笑) でも、どこまでも明るくくじけないディッキーのおかげで笑える感じになっている。教師がボールペンを落とす、それをディッキーが拾おうとする、それを阻止しようとする教師。それをスローモーションとカット割で見せたりとか、そういうこのシーンにこんな演出?というようなシーンが満載。そしていちいちおかしい。

2人が暮らす家がいい。半分壊された建物の1室に住んでいる。かろうじて火や、電気は通じているようだけど、生活空間は多分3畳くらい(笑) 1畳分のスペースが1段高くなっており、そこに座って折りたたみ式のテーブル(?)を壁から引き出して食事、窓から折りたたみ式の台を外に出して勉強。そしてテーブルをパタパタさせて出てきたゴキブリ退治ゲーム。そして全てを収納したら畳の上で重なって眠る。この小さなスペースで親子はいろんなことをする。もちろん料理も裁縫も。台所だって、収納スペースだってある。これは素晴らしい! まぁ、ここで暮らしたくはないけど(笑)

生活用品のほとんどはティーがゴミ捨て場から拾ってくる。学校で話題のミラクル1号をねだられ、お金がなくて買えなかった代わりに、不思議な球体を拾ってくる。それは宇宙からやってきたミラクル7号(愛称ナナちゃん)だった。このナナちゃんのデザインがいい! ゆるすぎます。謎の球体からナナちゃんが出てくるシーンもいい。無駄に壮大。ナナちゃんの力でスーパー小学生になるディッキーの夢がかわいい。自作パロも出てきます! チャウ・シンチーは大のドラえもんファンだそうで、この夢のシーンにはその影響が出ていると思う。夢での大活躍に比べると、実際のナナちゃんは一見ダメだけど、実はすごい力を秘めている。ナナちゃんの表情がいい。表情豊かだけど、作り物っぽさをあえて残した感じがいい。

本当に描きたいのは「親子愛」まさに親子愛。前述の家で2人が時にケンカしながらも仲良く暮らしている姿は微笑ましい。どうやらディッキーの母親は病気で亡くなったらしく、その入院費などの借金があるらしい。ティーが必死で働いても極貧暮らし。でも「貧しくてもウソをつくな」と説くティーは立派な父親。ディッキーに大きな愛情を注ぐ。ディッキーもそれが分かっているから、どんなにからかわれても、いじめられてもくじけない。明るくかわしたり、時には立ち向かっていく。いじめの描写もいわゆる今問題になっている陰湿なものではないので、ディッキーのように明るく立ち向かえばいいとは気軽に言えないけれど、彼のその姿に見ている側が救われるのは確か。

チャウ・シンチーはいい。いつもは少し作りすぎの役を淡々とした表情で演じ、それがおかしいという感じ。でも、今回は出演シーンで笑える場面はたくさんあるけど、彼自身が笑いを取ることはほとんどない。意外なところでお得意のアクション・シーンもあるけど、あくまで普通の父親役に徹していたのがいい。ディッキーを唯一かわいがってくれる女の先生キティ・チャン(←これ狙いか?)は美女! スタイルもスゴイです。演技は普通だったけど(笑) でも、彼女とティーがお互いをちょっと気にするシーンがいい。最初はティーが、次に会ったときは先生がチラッと振り返る。そういうシーンがいい。口は悪いけど気は優しい現場のボスと、やたらズボンをずり上げる岸部シロー似の体育教師は『少林サッカー』にも出ていた。相変わらずの大袈裟演技がいい。巨漢女子小学生がイイ!

何といってもディッキー役のシュー・チャオ。なんと女の子だった! 全く分からなかった・・・。それにしてはずいぶんムチャさせてたけど大丈夫だったのだろうか? どうやらチャウ・シンチーの養女になったらしいのでOKってことでしょうか(笑) 彼女の演技はよかった。細い体で明るく立ち向かう姿が健気。ちょっとネタバレになってしまうけど、ティーが現場で事故に合った時の彼女の演技は素晴らしい。その後の展開は読めていたのに泣いてしまった。セリフも泣けた。最近『つぐない』『パンズ・ラビリンス』と子役の名演技に泣かされている。全部女の子。やっぱり少女の頃から女優ってことでしょうか(笑)

「親子愛」という真面目な素材を、ゆるキャラ宇宙生命体、無駄なCGアクション(無駄じゃないんだけど)とバカ演出、バカキャラクター、そしてしっかりと見せるシーンと緩急が利いている。それらすべてがチャウ・シンチー節という感じ。感動!という終わりにならずに、ゆるく落とす感じもいい。

地上何十mという高さでコの字型になってみんなでハンマーをコンクリートの床に打ちつけてるシーンとか、その先端に座ってお弁当を食べるシーンとかすごく好き! おもしろかった。


『ミラクル7号』Official site

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