'08.06.14 「オールドノリタケと懐かしの洋食器」@東京都庭園美術館
大好きな庭園美術館で開催中の展覧会。洋食器は大好き。気になっていたのに、ぼんやりしているうちに明日まで! ということで焦って行ってきた。
最終日前日ということでやや混んではいたけれど、見ずらいということもなく、ここで見た展覧会の中では、かなり見やすい方だったかも。陶磁器の展示ということで絵画ほど光に対して気を使わなくていいのか、普段は閉められている香水塔と大客室の間の扉が開いていたり、大食堂の円形出窓のカーテンが開いていたりしている。特に2階の若宮御寝室から玄関の車寄せを眺めていると、まるで自分がこの屋敷の住人になったよう。今にも黒塗りのクラシック・カーが車寄せに入ってくるのではないかと錯覚してしまう。
少し話がそれてしまった・・・。守屋知子氏の洋風陶磁器コレクション約200点を展示。おもにノリタケ(旧日本陶器)と、ノリタケから派生したメーカーの製品。「オールドノリタケ」の定義は難しいらしいけれど図録によると、明治37年(1904年)に森村組が日本陶器合名会社を創設し、愛知県の則武に工場を建設したことが「ノリタケ」の名前の由来。日本陶器と森村組は分業体制を敷き、大正元年(1912年)に日本陶器が一貫製造体制を整えるまで、森村組が画付けを担当。いわゆる「オールドノリタケ」と呼ばれる金盛装飾は森村組によるものが多い。「オールドノリタケ」という呼称は1990年代に雑誌などで呼ばれ始めたようで、おもにアメリカ向けに輸出された製品で、アメリカでは1970年代頃からブームになっていたらしい。
1階の大広間、大客間、大食堂の展示がいわゆるイメージしていた「オールドノリタケ」作品。第1展示室の大広間では洋食器に有田焼のような日本的な模様が描かれているものが多い。花瓶などはむしろ中国的な感じもする。「花鳥文ティーセットより砂糖入れ、ケーキ皿、碗皿」の淡いサクラ色の地に花と鳥がかわいらしい。ここでの見ものは「唐草文蓋物」明治12~22年ころの作品で、これはいわゆるスープなどをいれて食卓に置き、そこから給仕するというようなもの。細かい西洋風の花模様の画付けとは逆に、形はどこか分厚くて無骨な感じがする。それがいい。
続く、大客間、大食堂の作品群は見事! 一陳盛、盛り上げ、金盛り、ビーディングなど、さまざまな技法の作品が並び、その横に技法の説明が展示されている。使用されている部分の拡大写真もありとても分かりやすい。おそらく手描きで絵付けされたであろうそれらの技法や、西洋風、アラビア風、ギリシャ風などの図柄も素晴らしい。特に好きだったのは「風景文花瓶」中に描かれている風景も西洋風でありながら、どこか日本風でよいけれど、それを縁取る一陳盛とビーディングの装飾が見事。「レース文チョコレートポット」と「レース文ティーセット」もコバルトという紺地に金彩や金盛りを施した技法が素晴らしい。その紺地の深さと金盛りのレース模様が絶妙。「花文花瓶」の底と口の部分に盛り上げ技法で描かれた淡い色の花模様がかわいい。こんな服が欲しい! 「唐草文コーヒーセット」の図案の大胆さも好き。「幾何文皿」は単純に欲しい! 「おもたか文花瓶」の金盛り、一陳盛、ぼかしなど様々な技法を駆使しての気の遠くなるような細かい意匠にただただ感嘆。これはすばらしい。これだけいろいろな模様が描かれ、ふんだんに金を使っているにもかかわらず、華美になりすぎず趣味よくまとめているのはさすが日本人! おそらく巧みに使われた黒のおかげ。これは素晴らしい。「ひまわり文コーヒーセット」もかわいい。これらが明治20年代~大正時代の作品であることにビックリ。
第4展示室の喫煙室ではアール・デコへと移行し当時流行のラスター彩という虹色に輝く技法を用いた作品が並ぶ。ウェッジウッドなど海外の作品もある。ウェッジの「蝶文花瓶」は素敵だった。ちょっとアール・ヌーボーっぽい感じ。日本陶器の「オリーブ文鉢」もいい。いかにもアール・デコといったデザイン化されたオリーブの模様が素敵。モノトーンの図案に、金が趣味良く配されている。
2Fに移動。「花文ティーセットよりポット、砂糖入れ、ミルク入れ、ケーキ皿、カップ」がいい。水色の地に家紋のような花とそれを縁取るステッチのような模様。そして金の持ち手。なにより6角形の形がいい。アール・デコの影響で画付けはパターン化されてくる。ここでも西洋的な図案や風景を取り入れつつもどこか日本的な印象なのがいい。「水色角型チョコレートセット」もいい。四角の形もいいし、四隅に白い部分を入れているのもいい。そして全ての角に黒い線が引かれているものモダン。
若宮居間に展示されていた図案集がかわいい。そのまま絵本などの装丁に使えそうなかわいらしさ。製作年が昭和に入ると、パターン化された図案を使ったものがほとんどとなり、大量生産を思わせる作品が多い。「白地ティーセット」などはモダンな形と白地に赤いラインがすごくかわいい。これは普通に使いたい。「花小紋果物セット」ではパターンをつぎはぎして使ったと思われる切れ目が見られて、その試行錯誤ぶりもかわいらしい。「唐草文鉢」もかわいらしかった。
そして、大正末~昭和10年頃までに日本の洋食器技術はほぼ完成に至る。この頃の作品は今現在売られていても全然違和感がない。アール・デコっぽい縦長のティーポットも普通に欲しい。「梅文コーヒーセット」や「銀線文ティーセット」はホントに欲しい。なんてモダンで素敵! 「花文化粧セット」のバラのつぼみの付いた入れ物がかわいい。描かれたバラの大胆な構図もいいし、3本の猫足も素敵! バラの模様といえばハンガリーのヘレンドや、オーストリアのアウガルテンなどが有名だけど、そういう西洋的な感じじゃなくて、これは日本の女性の部屋にあるべきもののように思える。
でも2F最大の見ものは若宮寝室の「彩磁延壽文花瓶」 昭和前期の板谷波山の作品。これは素晴らしい。板谷波山の作品はその彩色が特徴。そのまるで一枚薄い布が被られているかのような、なんともいえない淡い色合いが素晴らしい。この彩色は波山以外にはできないと言われているのだそう。これは是非後ろに廻って背景も見て欲しい。前面ではつぼみだった花が、裏面では満開になっている。丸みを帯びた全体もいい。これは素晴らしかった! 波山の作品は数が少ないらしく、見れてホント良かった。
とにかく、全て洋食器でおもにアメリカに向けての輸出品として作られたものが多かったよう、どんなに西洋的だったり、アラビア的だったりの模様を取り入れても、どこかに日本的な感覚が入っているのがいい。もしかしたら意図していたのかもしれないけれど、やっぱり日本人だから、いつも見ている風景や草花、着物などの模様、そして使っている食器などの感覚がどこかで出たりするのかも。でも、その感じが日本趣味の影響を受けたアール・ヌーボーやアール・デコと見事に相まっている。そして「花文ディナーセット」「蔦文ティーセット」「花文蓋付鉢」(これ素晴らしい! これこそアール・デコ)などがこのアール・デコの邸宅にある感じがホントいい。
すべての作品のネームプレートに裏印が表示されているのが良かった。裏印とはお皿やカップなどの裏に記されているブランドマーク。それぞれの年代で使われている印が違うので、年代の特定に使われたりする。図録にはその一覧も載っている。展示自体も比較的ゆっくり見れたし、かなり良かった。しかし、なんというコレクション数・・・。うらやましい限り(笑)
⇒「オールドノリタケと懐かしの洋食器」東京都庭園美術館
大好きな庭園美術館で開催中の展覧会。洋食器は大好き。気になっていたのに、ぼんやりしているうちに明日まで! ということで焦って行ってきた。
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1階の大広間、大客間、大食堂の展示がいわゆるイメージしていた「オールドノリタケ」作品。第1展示室の大広間では洋食器に有田焼のような日本的な模様が描かれているものが多い。花瓶などはむしろ中国的な感じもする。「花鳥文ティーセットより砂糖入れ、ケーキ皿、碗皿」の淡いサクラ色の地に花と鳥がかわいらしい。ここでの見ものは「唐草文蓋物」明治12~22年ころの作品で、これはいわゆるスープなどをいれて食卓に置き、そこから給仕するというようなもの。細かい西洋風の花模様の画付けとは逆に、形はどこか分厚くて無骨な感じがする。それがいい。
続く、大客間、大食堂の作品群は見事! 一陳盛、盛り上げ、金盛り、ビーディングなど、さまざまな技法の作品が並び、その横に技法の説明が展示されている。使用されている部分の拡大写真もありとても分かりやすい。おそらく手描きで絵付けされたであろうそれらの技法や、西洋風、アラビア風、ギリシャ風などの図柄も素晴らしい。特に好きだったのは「風景文花瓶」中に描かれている風景も西洋風でありながら、どこか日本風でよいけれど、それを縁取る一陳盛とビーディングの装飾が見事。「レース文チョコレートポット」と「レース文ティーセット」もコバルトという紺地に金彩や金盛りを施した技法が素晴らしい。その紺地の深さと金盛りのレース模様が絶妙。「花文花瓶」の底と口の部分に盛り上げ技法で描かれた淡い色の花模様がかわいい。こんな服が欲しい! 「唐草文コーヒーセット」の図案の大胆さも好き。「幾何文皿」は単純に欲しい! 「おもたか文花瓶」の金盛り、一陳盛、ぼかしなど様々な技法を駆使しての気の遠くなるような細かい意匠にただただ感嘆。これはすばらしい。これだけいろいろな模様が描かれ、ふんだんに金を使っているにもかかわらず、華美になりすぎず趣味よくまとめているのはさすが日本人! おそらく巧みに使われた黒のおかげ。これは素晴らしい。「ひまわり文コーヒーセット」もかわいい。これらが明治20年代~大正時代の作品であることにビックリ。
第4展示室の喫煙室ではアール・デコへと移行し当時流行のラスター彩という虹色に輝く技法を用いた作品が並ぶ。ウェッジウッドなど海外の作品もある。ウェッジの「蝶文花瓶」は素敵だった。ちょっとアール・ヌーボーっぽい感じ。日本陶器の「オリーブ文鉢」もいい。いかにもアール・デコといったデザイン化されたオリーブの模様が素敵。モノトーンの図案に、金が趣味良く配されている。
2Fに移動。「花文ティーセットよりポット、砂糖入れ、ミルク入れ、ケーキ皿、カップ」がいい。水色の地に家紋のような花とそれを縁取るステッチのような模様。そして金の持ち手。なにより6角形の形がいい。アール・デコの影響で画付けはパターン化されてくる。ここでも西洋的な図案や風景を取り入れつつもどこか日本的な印象なのがいい。「水色角型チョコレートセット」もいい。四角の形もいいし、四隅に白い部分を入れているのもいい。そして全ての角に黒い線が引かれているものモダン。
若宮居間に展示されていた図案集がかわいい。そのまま絵本などの装丁に使えそうなかわいらしさ。製作年が昭和に入ると、パターン化された図案を使ったものがほとんどとなり、大量生産を思わせる作品が多い。「白地ティーセット」などはモダンな形と白地に赤いラインがすごくかわいい。これは普通に使いたい。「花小紋果物セット」ではパターンをつぎはぎして使ったと思われる切れ目が見られて、その試行錯誤ぶりもかわいらしい。「唐草文鉢」もかわいらしかった。
そして、大正末~昭和10年頃までに日本の洋食器技術はほぼ完成に至る。この頃の作品は今現在売られていても全然違和感がない。アール・デコっぽい縦長のティーポットも普通に欲しい。「梅文コーヒーセット」や「銀線文ティーセット」はホントに欲しい。なんてモダンで素敵! 「花文化粧セット」のバラのつぼみの付いた入れ物がかわいい。描かれたバラの大胆な構図もいいし、3本の猫足も素敵! バラの模様といえばハンガリーのヘレンドや、オーストリアのアウガルテンなどが有名だけど、そういう西洋的な感じじゃなくて、これは日本の女性の部屋にあるべきもののように思える。
でも2F最大の見ものは若宮寝室の「彩磁延壽文花瓶」 昭和前期の板谷波山の作品。これは素晴らしい。板谷波山の作品はその彩色が特徴。そのまるで一枚薄い布が被られているかのような、なんともいえない淡い色合いが素晴らしい。この彩色は波山以外にはできないと言われているのだそう。これは是非後ろに廻って背景も見て欲しい。前面ではつぼみだった花が、裏面では満開になっている。丸みを帯びた全体もいい。これは素晴らしかった! 波山の作品は数が少ないらしく、見れてホント良かった。
とにかく、全て洋食器でおもにアメリカに向けての輸出品として作られたものが多かったよう、どんなに西洋的だったり、アラビア的だったりの模様を取り入れても、どこかに日本的な感覚が入っているのがいい。もしかしたら意図していたのかもしれないけれど、やっぱり日本人だから、いつも見ている風景や草花、着物などの模様、そして使っている食器などの感覚がどこかで出たりするのかも。でも、その感じが日本趣味の影響を受けたアール・ヌーボーやアール・デコと見事に相まっている。そして「花文ディナーセット」「蔦文ティーセット」「花文蓋付鉢」(これ素晴らしい! これこそアール・デコ)などがこのアール・デコの邸宅にある感じがホントいい。
すべての作品のネームプレートに裏印が表示されているのが良かった。裏印とはお皿やカップなどの裏に記されているブランドマーク。それぞれの年代で使われている印が違うので、年代の特定に使われたりする。図録にはその一覧も載っている。展示自体も比較的ゆっくり見れたし、かなり良かった。しかし、なんというコレクション数・・・。うらやましい限り(笑)
⇒「オールドノリタケと懐かしの洋食器」東京都庭園美術館