'06.08.19 KTとユナイテッド93@池袋HUMAXシネマズ4
「9.11」テロでハイジャックされた4機のうち、唯一建物に激突することなく墜落した1機をドキュメンタリータッチで描いた映画。管制塔責任者など数人は本人が演じている。
描かれている内容の悲劇性やテロの是非を考えなければ、よくできた映画だと思う。テロリストが準備を始め、乗客達や管制塔の職員達がいつもどおりの朝を迎えるところから始まる。特定の主人公がいるわけではないので、わざとらしい幸せ演出がないのがいい。管制塔職員がアメリカン11便の機内での「飛行機を制圧した」という会話を傍受したとこから事件が広まっていく。ハイジャックの疑いありとの情報が次々と伝えられる中、30分遅れでユナイテッド93便が離陸する。その僅か4分後アメリカン11便はワールド・トレード・センターに激突する。
後から考えると軍の対応が遅かったなどの問題は多々あったようだけど、この段階で管制塔の人達の対応は素早かったと思う。音声分析から複数の飛行機が対象であることが分かる。その時間全米の上空を飛行中の飛行機は約4,500機! それぞれの管轄が分かれているにしても、それらすべてをコントロールしてるのかと驚く。
この辺りもいろいろ場面が切り替わるけど分かりにくくはない。ユナイテッド93の機内では犯人グループのリーダーが躊躇している。乗り込む前からずっと躊躇しているように見えた。明らかに他の犯人達に比べてインテリに見える彼は、他の犯人達のように単純にテロ=正義と割り切れないものを感じているようにも見える。だとしたら辛い。止めることはできなかったのか…。その間、乗客は思い思いの時を過ごす。その対比は犯人達だけでなく、機内以外の状況との対比にもなっていて切ない。
後半はほぼ機内に絞られる。犯人達が行動を起こしてからの緊迫感はすごい。コックピットを乗っ取り操縦桿を握るまでは敵ながら天晴れというくらい鮮やか。その後、乗客たちの葛藤や決断は素晴らしい。結局、ユナイテッド93は10:03 ペンシルバニア州シャンスヴィルに墜落する。その間、乗客たちは携帯電話などで他のハイジャック機の命運を知り、自分たちは何とか阻止しようと努力する。その姿はやっぱり感動する。乗客たちが実際どうテロリストに立ち向かったかについては携帯電話で話していた遺族の証言をもとに描かれているそう。他の犠牲者を出すまいということよりも単純に「生きたい」という気持ちの方が強かったにしても、立ち向かった勇気は素晴らしいと思う。
正直、なぜ「9.11」のことだけそんなに?と思う気持ちもある。もちろんテロは絶対にいけないことだし、あの悲劇の衝撃は大きかった。でも他にも悲惨なことは起きたし起こってる。亡くなった人たちは本当に気の毒だけど、アメリカは自国の悲劇ばかり言い過ぎな気がしていた。この映画は声高にテロに対する抗議をするわけでもなく、誰か一人を英雄扱いしているわけでもないところが良かった。淡々と描いたことで「あの日」が浮き彫りになる。それが押し付けがましくなくていい。
最期の瞬間に乗客たちもテロリスト達も神にすがる。キリスト教の神とアラーの神。祈る対象が違うことがすべての問題の根っこ。やるせない…。
『ユナイテッド93』公式サイト
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描かれている内容の悲劇性やテロの是非を考えなければ、よくできた映画だと思う。テロリストが準備を始め、乗客達や管制塔の職員達がいつもどおりの朝を迎えるところから始まる。特定の主人公がいるわけではないので、わざとらしい幸せ演出がないのがいい。管制塔職員がアメリカン11便の機内での「飛行機を制圧した」という会話を傍受したとこから事件が広まっていく。ハイジャックの疑いありとの情報が次々と伝えられる中、30分遅れでユナイテッド93便が離陸する。その僅か4分後アメリカン11便はワールド・トレード・センターに激突する。
後から考えると軍の対応が遅かったなどの問題は多々あったようだけど、この段階で管制塔の人達の対応は素早かったと思う。音声分析から複数の飛行機が対象であることが分かる。その時間全米の上空を飛行中の飛行機は約4,500機! それぞれの管轄が分かれているにしても、それらすべてをコントロールしてるのかと驚く。
この辺りもいろいろ場面が切り替わるけど分かりにくくはない。ユナイテッド93の機内では犯人グループのリーダーが躊躇している。乗り込む前からずっと躊躇しているように見えた。明らかに他の犯人達に比べてインテリに見える彼は、他の犯人達のように単純にテロ=正義と割り切れないものを感じているようにも見える。だとしたら辛い。止めることはできなかったのか…。その間、乗客は思い思いの時を過ごす。その対比は犯人達だけでなく、機内以外の状況との対比にもなっていて切ない。
後半はほぼ機内に絞られる。犯人達が行動を起こしてからの緊迫感はすごい。コックピットを乗っ取り操縦桿を握るまでは敵ながら天晴れというくらい鮮やか。その後、乗客たちの葛藤や決断は素晴らしい。結局、ユナイテッド93は10:03 ペンシルバニア州シャンスヴィルに墜落する。その間、乗客たちは携帯電話などで他のハイジャック機の命運を知り、自分たちは何とか阻止しようと努力する。その姿はやっぱり感動する。乗客たちが実際どうテロリストに立ち向かったかについては携帯電話で話していた遺族の証言をもとに描かれているそう。他の犠牲者を出すまいということよりも単純に「生きたい」という気持ちの方が強かったにしても、立ち向かった勇気は素晴らしいと思う。
正直、なぜ「9.11」のことだけそんなに?と思う気持ちもある。もちろんテロは絶対にいけないことだし、あの悲劇の衝撃は大きかった。でも他にも悲惨なことは起きたし起こってる。亡くなった人たちは本当に気の毒だけど、アメリカは自国の悲劇ばかり言い過ぎな気がしていた。この映画は声高にテロに対する抗議をするわけでもなく、誰か一人を英雄扱いしているわけでもないところが良かった。淡々と描いたことで「あの日」が浮き彫りになる。それが押し付けがましくなくていい。
最期の瞬間に乗客たちもテロリスト達も神にすがる。キリスト教の神とアラーの神。祈る対象が違うことがすべての問題の根っこ。やるせない…。
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