'07.07.14 「歌川広重 名所江戸百景のすべて」鑑賞@東京藝術大学大学美術館
「金刀比羅宮 書院の美」展のチケットでこちらの展示も見れた。藝大が所有している歌川広重のコレクション展。広重晩年のシリーズもので2代目も手がけているが、ほぼ初代の作品。1点1点はあまり大きくないけれども、とにかく点数がスゴイ。120点! もちろん有名どころもあるけれど、ほとんどは初めて見るものが多い。
江戸百景というわりに2点市川を描いたものが! 「鴻の台とね川風景」と「真間の紅葉手児那の社継ばし」がそれ。利根川とは江戸川のことで、鴻の台とは国府台のこと。崖が描かれているけれど、この辺りは国府台の高台か? ここは中学時代をすごした所。もう一枚の手児那というのは万葉集にも登場する伝説の美女、複数の求婚者の間で悩み身投げしてしまったという悲劇のヒロイン。今では手児那霊堂として安産祈願やほおずき市などで有名。この絵がすばらしいのは広重お得意の、手前に絵を象徴する何かを大きく描き、遠景に小さく主題を描くという手法を使い、手前に真間山こと弘法寺の大楓を描き、遠景に手児那霊堂を描いている点。実際はそんなに離れていない。でもこの美しい楓に目を奪われてから手児那霊堂に目を移すと、砂洲に浮かぶように描かれた霊堂がまるで天国のような幽玄な印象に見えること。
この手前に大きく何かを描く手法は確か、いわゆる西洋式の遠近法ではない独自の遠近法だったはず。「深川洲崎十万坪」では画上に大きく羽を広げた鷲を描いているし、「水道橋駿河台」では中央に鯉のぼりが描かれている。これは斬新。さんざんこの手法は見たけれど、この鯉のぼりの勢いと美しさがスゴイ。鷲の方はまるで夜景を包み込むように羽を広げて、むしろ西洋的な抽象的なイメージ。これはおもしろい。「浅草川大川端宮川」と「四ツ谷内藤新宿」は同じ手法でも変り種。「浅草~」は大山参の人々を描いているけど、参詣を終えた人々の頭のみを手前に描いていてなんともかわいらしい。「四ツ谷」はなんと馬のおしりがドアップ! しかもポロポロと馬糞まで(笑) これはかなりの遊び心?
構図もさることながら画全体として美しかったのが「亀戸天神境内」と「浅草金龍山」 「亀戸~」は手前に描かれたしだれる藤の美しさと、奥に描かれた太鼓橋の曲線と色合いが美しい。「浅草金龍山」は手前に今の雷門を描いている。右上に大きな提灯の下端が描かれている。当時はまだ「雷門」ではなかったようだ・・・。その後ろに雪景色の浅草寺。なんと仲見世がない。こういう変化も楽しい。そして雪景色が美しい。「上野山内月のまつ」も大胆。実際に上野にあったぐるっと円に枝が曲がっている松を描き、その円から向こうを覗く構図。これは確かに描いて見たくなる構図ではある。
そして有名な3枚。「猿わか町よるの景」はゴッホの「夜のカフェテラス」に影響を与えている。それまで西洋画には夜を描くという習慣がなかったが、この絵を見てゴッホが夜を描きたいと描いたらしい。「大はしあたけの夕立」「亀戸梅屋舗」もゴッホが模写したことで有名。「大はし~」の夕立の躍動感はすごい。その他直接的ではなくてもゴーガンにも影響を与えている。やっぱり広重はすごい! 北斎の方が好きだけど(笑)
図録によると藝大所蔵のものは初版ではないものが多いらしく、どこかの段階で簡略化されていき、やや劣るというような評があった。初版と見比べていないのでよく分からないけど、やっぱりこの点数を一挙に見られるのは貴重かも。
★7月7日(土)~9月9日(日)まで
東京藝術大学大学美術館HP
「金刀比羅宮 書院の美」展のチケットでこちらの展示も見れた。藝大が所有している歌川広重のコレクション展。広重晩年のシリーズもので2代目も手がけているが、ほぼ初代の作品。1点1点はあまり大きくないけれども、とにかく点数がスゴイ。120点! もちろん有名どころもあるけれど、ほとんどは初めて見るものが多い。




図録によると藝大所蔵のものは初版ではないものが多いらしく、どこかの段階で簡略化されていき、やや劣るというような評があった。初版と見比べていないのでよく分からないけど、やっぱりこの点数を一挙に見られるのは貴重かも。
★7月7日(土)~9月9日(日)まで
