2017.08.12 『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』@HTC有楽町
見たいと思って試写会応募しようと思ったんだけど、見つけたのは20時以降の遅い開始時間のしかなかったような? 公開直後はル・シネマと武蔵野館しかやってなくて、渋谷と新宿混んでるからな~💦 と躊躇してたらヒューマントラストシネマ有楽町で上映開始! 三連休中日に見に行ってきた~
ドキュメンタリー作品なのであらすじなし! ネタバレはしてるのかも?
19歳で世界三大バレエ団の一つ英国ロイヤル・バレエ団の史上最年少プリンシパルに昇格。その2年後電撃退団して世界を驚かせたセルゲイ・ポルーニンのドキュメンタリー作品。毎度のWikipediaは今作どころか本人自体もないっぽいし、公式サイトにもほとんど情報がない💦 私自身もそんなに詳しいわけではないので、ちょっと困った(´ェ`)ン-・・
スティーヴン・カンター監督についても触れておきたいと思うのだけど、これまた情報がほとんどない💦 どうやら過去作を見るとドキュメンタリー作品を撮られている感じなのかな? Pixiesのドキュメンタリーも撮っているのね? と、これくらいしか書けないな~💦
とりあえずセルゲイ・ポルーニンについてザックリとした説明を書いておこうかな。1989年ウクライナ生まれ。5歳から体操を始めるが、母親がバレエへの転向を決意。13歳で英国ロイヤル・バレエ学校に入学。18歳で英国ロイヤル・バレエ団のソリストとしてデビュー。1年後史上最年少の19歳でプリンシパルに昇格。絶大な人気を得るも、2年後「バレエ団は息苦しい」と電撃退団。このニュースはSNSでの過激な発言などもあり、スキャンダルとして扱われた。2013年YouTubeにUPした「Take Me To Church」が2,000万回を超える再生を記録。
ホントにザックリだけど、今作が作られた背景としてはやっぱりロイヤル退団と、「Take Me To Church」の2点が大きいのかなと思う。特別章などに分けて区切られていたわけではないけれど、前半は彼の生い立ちからプリンシパル昇格からの電撃退団。後半はそこからもがいてもがいて「Take Me To Church」と、その後という感じ。ドキュメンタリー作品なのでシーンごとに記述することもないので、ザックリとこの2点を中心に感想書いていこうかなと思う。
自分がセルゲイ・ポルーニンというダンサーを知ったのは『オペラ座の怪人 25周年記念公演 in ロンドン』(感想はコチラとコチラとコチラ)。パリ・オペラ座を舞台としたこのミュージカル作品には、劇中劇としてバレエシーンが2回登場する。このスペシャル公演でなんと英国ロイヤル・バレエ団プリンシパルのセルゲイ・ポルーニンが躍ってるということで、日本公開時に話題になってた。ポルーニンはこのバレエシーンと2幕最初の仮面舞踏会のシーンで登場。合計しても10分程度の出演だけど、素晴らしい踊りを見せた。本当になんという贅沢!
さて、本題! 今作は映像と本人及び家族や友人などのインタビューで構成されていて、ドキュメンタリーの手法としては王道だと思う。作り手側の視点としてはでフラットにしたいという印象だった。本人に寄り添い過ぎたり、英雄視して過剰に持ち上げることもなかったし、逆に貶めることもない。バレエ団との軋轢などがあったとしても、そういう部分は描かれていない。あくまで本人と家族のことに的を絞ろうとしている感じ。一応、退団により生じた障害などにも触れてはいたけど、その部分について詳しく知りたい人にとっては、その件についてのバレエ団側のインタビューは一切ないので、物足りなく感じる人もいるかもしれない。ただまぁ、見せたいのはそこではないということなのかなと思う。前述したとおり、セルゲイ・ポルーニンという人そのものを描きたかったのかも。そういう意味では良かったと思う。
お母様によると産婆さんが生まれたばかりのポルーニンの股関節がどこまでも開くことに驚いたらしい。5歳で体操を始めた。どうやら、彼が生まれた場所では男の子は体操を習う子が多かったらしい。お母様は息子の身体能力の高さを見抜き、地元のバレエ教室に通わせることにする。お母様はバレエを習っていたわけでもなさそうだし、特別詳しかったわけでもなさそうだけど、何故息子にバレエを習わせようと思ったんだろう。息子の将来を考えてと言っていたけど、何故バレエだったのかは語っていなかったような? 地元のバレエ教室の先生はとても優しくてよい先生だったようで、後にバレエ教室を訪ねて小さな舞台で踊るシーンがある。
この先生の勧めでキエフのバレエ学校に入学。ポルーニンとお母様はキエフで暮らし、バレエ学校の学費を捻出するため、お父様とおばあ様は外国へ出稼ぎに行き家族は離れ離れになる。おばあ様はギリシャで家政婦の仕事をしていたと思うけれど、とても辛かったと語っている。インタビューに答えるおばあ様の横に、さらにお年を召した女性がおり、相づちを打ったりしていたのだけど、ひいおばあ様なのかしら? クレジットが出ていたのかもしれないけれど見落としたのかな? でも一緒に見た母親はこの方もおばあ様(どちらかが父方で、どちらかが母方)で同じく出稼ぎに行ったのだと思ったらしいので、特に説明がなかったのかも? この方はおそらく出稼ぎには行ってない。まぁどうでもいいのだけど、意外にそういう説明が少なかったように思ったので書いておく。
キエフの学校でもズバ抜けた才能を発揮。お母様はさらに道を開こうと英国ロイヤル・バレエ学校のオーディションを受けることにする。もちろん合格するけど、ビザは本人にしか下りないということで、お母様はキエフに残りポルーニンは1人で寄宿舎に入る。これにより家族はさらにバラバラになってしまう。ポルーニン家は裕福ではないけれど、個人的には特別貧乏にも思わなかった。中の下くらいかなという印象。なによりバレエ団の学費がどのくらいかかるものなのかの説明がないので、基準がよく分からない。ただ、ローザンヌなどにいわゆる白人系の出場が少ないのは、彼らは裕福な家庭の出身だからだと聞いたことがあるように思う。ローザンヌはそもそも奨学金を得るためのコンクールだからということだったような? ポルーニンはそういう手段はとらなかったのかしら? まぁ英国ロイヤルはそういう生徒は取らないのかもしれないし。詳しくないのでよく分からない。ただ、希望者全員にというのは無理にしても、これほどの逸材ならば奨学金制度や授業料無料などがあってもいい気がする。授業料が払えないばかりにせっかくの才能を諦めければならないのは辛すぎる。
ちょっと話が反れてしまうけれど、少し前からブームの英国俳優たち。彼らのほとんどが高い学歴を持ち、演劇学校などの出身。それは高い授業料を払える境遇にあったことを意味していて、要するに貧しい家庭に育った者には俳優という仕事が狭き門となっているという記事を読んだことがある。階級社会のイギリスではそういう傾向が強いのかな? まぁバレエ界と俳優業界では違うかもしれないけれど。ただ、前述したとおり才能がある者が、資金がないばかりに埋もれてしまうのは惜しすぎると思ったので、参考までに記載しておく。
さて、話を戻す! ロイヤル・バレエ学校に入学したポルーニンは、バレエダンサーになって家族がまた一緒に暮らせるようにと人一倍レッスンに励んだのだそう。バレエ学校時代の友人のインタビューによれば、いつも居残り練習をしていたとのこと。興味深いのは部屋で一緒に遊んでいても、気を失うように寝てしまうそうで、一度寝ると全く起きないためよく顔にイタズラ書きをされたそうで、仲間が撮った動画が残っていた。そういう体質なだけかもしれないけれど、なんだかいつも張りつめていたのかなと思ったりした。
バレエ学校時代の映像もいくつか紹介されるけれど、とにかくズバ抜けている。英国ロイヤルに入学を許されたのだから、同じクラスの生徒たちも選りすぐりであることは間違いないと思うけれど、そのスピード感、キレ、ジャンプの滞空時間、一つ一つの動作の美しさ、そして全体的に優雅で華があって、もう1人だけ全てのレベルが桁違い。それがありありと分かる。もちろん本人も努力しているのだけど、才能があるというのはこんなにも違うのかと驚愕する。これはもう本当に圧倒的な才能の差。
18歳でバレエ学校を卒業し、英国ロイヤル・バレエ団にファースト・ソリストとして入団。毎度のWikipediaから引用しておくと、英国ロイヤル・バレエ団は、バレエ・リュスで活躍したニネット・ド・ヴァロアが1931年にロンドンで始めたヴィック・ウェルズ・バレエが、サドラーズ・ウェルズ・バレエ団を経て1956年にマーガレット王女を名誉総裁とする王立バレエ団となった英国ロイヤル・バレエ団は、パリ・オペラ座バレエ団、ロシアのマリインスキー・バレエ団と共に世界三大バレエ団と呼ばれる。あれ?マリインスキーなんだ?てっきりボリショイだと思ってた😲
バレエ団には階級があり、それぞれ担うパートが違う。英国ロイヤル・バレエ団の場合は上からプリンシパル(主役)、ファースト・ソリスト(準主役)、ソリスト(役名のある主要な役を踊る)、ファースト・アーティスト(群舞の中の主要な役を踊る)、アーティスト(群舞)となっている。ファースト・ソリストで入団だから、いきなりの準主役! でも、バレエ団の方のインタビューによると、実力はすでにプリンシパルだったけれど、まずはファースト・ソリストからデビューということだったらしい。各ポジションにはそれぞれの役割がある。群舞を踊る人たちは主役を踊る技量がないということかもしれないけれど、皆で同じ動きとポジションができなければならないわけで、そこに才能ある者を押し込めるわけにはいかない。逆に群舞が乱れてしまう。これは納得という感じ。
デビュー時から評価と人気を得て、翌年バレエ団史上最年少の19歳でプリンシパルに昇格。これも彼の踊る映像を見れば当然と納得してしまう。とにかく圧倒的。ただ、この頃からSNSなどでの奔放な言動が見られるようになる。鬱になったりもしたんだっけ? コカインの使用もあったとか? 原因はいろいろあったと思われるけれど、映画としてはあくまで家族の問題ということになっている。自分の学費を稼ぐためバラバラになってしまった家族を1つにしたい一心でレッスンに励んできたけれど、なんと両親が離婚してしまったのだった💦 離婚原因については語られないけれど、お母様の方から申し出たことや、お父様の含みのある発言などから、お母様側に何かしらの要因があるらしい。離婚のことだけが原因とは思わないけれど、ポルーニン自身もお母様に対して複雑な思いを抱いている描写もある。
うーん。これはかなり辛いと思う。もちろんまだ10代の若者にとって両親の離婚はショックだと思うけれど、自分のために家族が犠牲になっていると感じていて、家族がまた一緒に暮らせるためにひたすら走り続けてきたのに、それがもう叶わないのだと知ってしまったら目標を見失ってしまう。しかも、既にバレエ界のトップに立ってしまった。モチベーションが保てなくなっても仕方がないかも。さらに上を目指してトップを走り続けるという目標に切り替えられればよかったのかもしれないけれど、そう簡単ではないと思う。
今作では少年ポルーニンの意思について言及されてなかったように思うのだけどどうだったかな? まだ幼いうちにお母様によりバレエの道へ進まされた。踊ることは楽しかったようだし、嫌いではなかったと思うけれど、自分の意思で始めたことではないわけで、しかもずっと家族のために頑張ってきたわけだし。何のために踊ってるんだろうと自分を見失ってしまうのも分かる気はする。
今作が公開されるにあたり、いくつか紹介記事を読んだ。その中にバレエダンサーの待遇についての記事があって興味深く読んだ。(【ELLE】セルゲイ・ポルーニン:バレエ界の反逆児が起こす革命|エル・オンライン)という記事で、プリンシパルになっても契約は更新制で、プロ野球選手の最低年俸にも満たず、ビザも英国ロイヤルで踊っていることを条件に発給されているので、ケガなどで契約解雇となれば即国外退去ということもあり得る状況なのだそう。具体的な金額の記載はなかったので、別途調べてみたところによると、プリンシパルの年俸は1200万円程度ということだったので、普通のOLちゃんからしたらうらやましい金額ではあるけれど、肉体的にも精神的にも酷使する状況で、ましてや世界三大バレエ団と呼ばれる、英国ロイヤルのプリンシパルがその金額だとすると、バレエダンサーの厳しい現実が感じられる。パリ・オペラ座バレエ団は定年(女性40歳、男性45歳)があるように、いつまでも踊れるわけじゃないし。
この記事を先に読んでいたため、今作でこの辺りのことが描かれるのかと思っていたのだけど一切語られず。まぁ、友人たちの証言などから、チラチラ感じられる部分があったりもするけれど、具体的なことが語られることはなかった。ポルーニンがロイヤルを辞める理由の中には、おそらく待遇面での不満や不安も少なからずあったと思うのだけど、前述したとおりあくまで家族を取り戻せなかったことによる意欲喪失という形にしたいらしい。まぁそれが一番大きな理由なのだとは思うけれど、ポルーニンが対談の理由を「バレエ団は息苦しい」と言ったことの真意には触れて欲しかったかなと思う。
真の理由はともかく、バレエ団を飛び出す形で辞めてしまったポルーニンを受け入れる場所はなかった。本人はアメリカで踊りたいと考えていたようだけれど、どこも入団を拒否されたとのこと。あれだけの実力と名声があっても、そんな感じなのか。バレエ界は結構保守的というか閉鎖的なのね。本人もここまで大事になるとは思ってなかったのじゃないかな。どうやらポルーニンはロシアで勝ち抜け方式のテレビ番組に出演していたらしい。結構大きめのホールのような場所での公開録画っぽい映像。男女の司会者がいて、応募者たちがそれぞれ芸を披露して、何週間が勝ち抜いていくというようなシステムっぽい。それぞれの得意分野で競う感じなので、バレエダンサーだけというわけではなく、民族衣装を着た男女ペアなどの姿も。他の人たちのレベルが分からないけれど、元ロイヤルのプリンシパルのする仕事じゃないことはよく分かる。でも、それだけ道が閉ざされてしまったということなのかな。
当然ながら優勝。ちょっと忘れてしまったのだけど、この番組を見てだったか、ポルーニンに声を掛けた人がいて、その人の元でバレエ団にゲスト出演する形になったのかな? ちょっとこの辺りの経緯がよく理解できていなかったのか、忘れてしまった。この方がとってもいい人で、とても親身になってくれる。冒頭のシーンは、この頃の楽屋風景だったのだと分かる。心臓の薬など数種類を流し込んで舞台に向かう姿は、痛々しいというより少し狂気のようなものを感じる。それだけ追い込まれていたのかもしれない。舞台から戻ったポルーニンの姿も印象的。全身汗だくで疲れて切っている様子。でも、テンションが高いみたいな。別にはしゃいでるわけでも、怒っているわけでもないのだけど、やっぱりそれだけエネルギーを使うということなんだろうなと思う。全身を襲う虚脱感と、興奮する神経。いろんなタイプの人がいると思うので、舞台を降りたらキッパリ切り替えられちゃう人もいると思うし、ズッシリ引きずっちゃう人もいると思う。ポルーニンはやや後者よりなのかな?と思った。切り替えがしにくいタイプでもないと思うけど、スカッとしちゃうタイプでもないような?
この頃のポルーニンの立ち位置的なもの、例えばゲストダンサーとして出演しているとか、どのバレエ団に出演しているのかとか、収入はどんな感じなのかについて詳しく描かれていなかったと思うので、その辺りがモチベーションにどのように作用していたのかが分かりにくかったのだけど、自ら選んだ道とはいえこの不安定さはちょっと辛いかもとは思う。
退団当時、ポルーニンがどこまで先のことを考えて辞めたのか不明なのだけど、アメリカで踊りたいと思っていたと言っていたので、こういう状況になってしまうとは思っていなかったのかも。結局本当に煮詰まってしまったようで、振付師をしているバレエ学校時代の友人に、引退するので「Take Me To Church」を使って振付をして欲しいと依頼する。
2人はデビッド・ラシャペルに撮影を依頼。撮影場所はハワイの森の中の廃屋?に決定する。監督の考えとしてはとにかくポルーニンを撮ること! 当然のことなのだけど、出来上がった映像を見ればその意味が分かる。内面を映したいという精神論的な部分もそうだけれど、単純に顔ばかり映してイライラするというようなことが全くない! さすが優れた監督だなと思った。当たり前のことなんだけど、とにかくテレビのカメラマンとか多いのよ! まぁ、テレビで見せたいのは人物そのものだってことなのかもしれないし、表情を映すことも大事ではあるけれど、上半身ばかり映して足元が全く映らないとか平気であるから! 足元の映らないダンスシーンなんてあり得ないわ!(*`д´) ダンスは体全体で踊るものだからね。顔で踊ってるんじゃないんだよ!(*`д´) と、日ごろのイライラが爆発してしまって申し訳ない🙇
この動画はYouTubeでアップされて、自身も見たことがあり記事(コチラ)にもしている。その時には引退作品のつもりで撮ったとは知らなかったけれど、感想に「この怒りなのか、憤りなのか、自分の中の感情をぶつけた舞踊がスゴイ!」と書いている。怒りの表情で踊っているわけではないし、振付けもそのような表現はない。でも、そう感じた。爆発しそうな思い。跳躍の高さや、回転の速度の速さなどのテクニック的なことや、全てのポジションの美しさなどもさることながら、そのことに衝撃を受けた覚えがある。コンテンポラリー苦手な自分が、本当に魅了された。ハワイの白い光の中で踊るポルーニンは、その爆発しそうなエネルギーを発しながら、浄化されて光り輝いていくようだった。
YouTubeを見た人たちも衝撃を受けたようで、再生回数が爆発的に伸びて行く。今作製作時には1300万件だったようだけれど、現在は2100万回以上再生されている。メディアなどで取り上げられたこともあるかと思うけれど、やっぱり見た人の心に響くものがあったのだと思う。バレエのテクニックなど難しいことは分からなくても、彼が素晴らしいダンサーであることは素人でも分かる。そして思いのたけをぶつけていることも分かる。それが怒りなのか、憤りなのか、悲しさなのか、喜びなのか。何を感じるかは見る人によって違うかもしれないけれど、言葉にならない気持ちをぶつけていることが伝わって来る。多くの人の心を動かすのは、そういうものなんだと思う。発信する側が真摯に向き合って、もがいて生み出されたもの。単純に人に負けたくないとか、こう思われたいとかそんな欲を超えた何か。それを見事に表現できた時に、それが何であれ芸術に昇華するのだと思う。それは奇跡の瞬間であり、そう何度も訪れるものじゃない。だから、そういう瞬間を求めて劇場に足を運ぶのだと思う。少なくとも自分はそう。現在はそれを映像で残しておける。初めて見た時の感動は味わえなくても、素晴らしいものは何度見てもいい。これを残せたことはポルーニンにとっても、見る側にとっても幸せなことだと思う。
この動画が多くの人の支持を得たことにより、ポルーニンは再び踊り始める。ウクライナ時代の恩師の元を訪ねる姿が印象的。とても穏やかな表情をしていた。講堂のような場所で小さな舞台がある。狭いのでポルーニンが本気で踊ることはできないけれど、軽く踊って見せる。目をキラキラ✨させて見つめる子供たちの姿に救われる。
今まで家族に見られることを嫌い、決して招待しなかったポルーニンが、家族を招待したのは、再び踊り始めてからだったよね? お父様とおばあ様と抱き合う姿が印象的。異国で学費を稼ぐため働いてくれた2人。お母様には複雑な思いがあるようで、後日訪ねるシーンがある。自分を支配したと言うポルーニンに、そうしなければ道が拓けなかった、生まれ変わっても同じことをするというようなことを語るお母様。うがった見方をすれば、この母によりポルーニンは少年時代を奪われ、家族も奪われたことになる。複雑な思いはあると思う。でも、お母様が自分の才能を見つけて、それを伸ばしてくれたことで今の自分があるわけで、それは決して辛いばかりではなかったのではないかな。最後に踊ることは好きだと語っているしね
何が幸せかは分からない。普通の人の普通の暮らしにも波風は立つし、山も谷もある。そもそも普通がなんだかよく分からないし。まぁ、19歳で世界的な名声を得る人生が普通でないことは確かで、奪われた少年時代も帰っては来ない。でも、凡人が決して見ることができない世界を見ているわけで、それはきっと凡人が思っている以上に、辛く厳しい道なのだとは思うけれど、でもその先に見える世界も凡人には絶対見ることができない。バレエ以外に何もないと思うかもしれないけれど、凡人にはそれすらない。だから選ばれし者に憧れるし、自分の夢を託してしまう。それがまた重荷になったり励みになったりするのだろうけれど・・・
なんだかまとまらなくなってきたけど、見ながら思っていたのはそういういこと。天才ダンサーだろうが凡人OLちゃんだろうが人生は一度きり。迷いながら生きていくしかない。壁の大きさは人それぞれ、壁を超えるのか、回避して新たな壁にぶつかるのか。それでも超えて行くしかない。一観客としてはポルーニンが壁を超えて戻って来てくれてよかったと心から思う。
今作では触れていなかったように思うけれど、現在ポルーニンはドイツのバレエ団のゲストダンサーをしているらしい。俳優業にも意欲を示しており、12月に公開される『オリエント急行殺人事件』にも出演している。たしか伯爵役だったはず。端正な顔立ちで品があるからピッタリ。これはとっても楽しみにしているので見に行こうと思っている。
公開から1ヵ月くらい経ってから見たし、感想書くのも時間がかかったから、もう上映終わっちゃったかな? やや踏み込みに欠ける部分もある気がするけれど、バレエ界の抱える問題を描きたいわけではなく、あくまでセルゲイ・ポルーニンという人物を描きたいということなんだと思う。そういう意味ではとてもキレイにまとまっていたと思う。見ていて楽しい作品ではないけど、見終わった後スッキリとしたものを感じる。バレエシーンが本当に美しく、1つ1つは短いシーンながらポルーニンの素晴らしさが伝わる見せ方が良かった。とはいえバレエがメインではないので、普段見ない人でも楽しめると思う。
今行き詰っている人にオススメ。バレエ好きな方是非! セルゲイ・ポルーニン好きな方必見! って言われなくても見てるか(o´ェ`o)ゞ
そうそう! お腹や背中にかなりタトゥーがあったけど、左腕に『ダークナイト』(感想はコチラ)のヒース・レジャーのジョーカーが入れてあったの印象的! 右腕もヒースかな?
これね