'11.07.25 『ツリー・オブ・ライフ』(試写会)@よみうりホール
yaplog!で当選! いつもありがとうございます。これは見たかった! シネ通かSHOWBIZで紹介された時の映像、大好きな「モルダウ」が感動的に美しかったから。試写状届いた時はガッツポーズだった(笑)
*ネタバレありです!
「成功した実業家ジャックは人生の岐路に立ち、人生で最も辛かった時、両親がどうやって乗り越えたのか、思いをはせる。やがて思いは、少年時代に遡り…」という話で、これは美しかった。個人的には好き。見終わった後もよかったけれど、実は後からじわじわ来ている。ただ、これはダメという人は多いんじゃないかな…。
初めに書いてしまうけど、普段あまり映画は見ないけど、"ブラピ様"は大好きという人には、あまりオススメできない。これは間違いなく映画だけど、いわゆる普通の映画とはちょっと違う。そして、何よりブラピはカッコイイ役ではないので。このブラピの役柄は、劣等感があり、人生に悩み、息子達を愛しながらも、厳しく接してしまう不器用な父親。このブラピの演技は素晴らしいので、ファンなら必見だと思うけれど、どうファンかによると思う。ファンになり方は人それぞれだと思うので、どんなファンも否定していない。ただ、2時間18分と長いので、ちょっと心配になっただけ(笑) もちろん、"ブラピ様"目当てで見て、感動することもあると思う。
前置きが長くなったけど、ここから本題(笑) この試写会でも、本編終了後に大半の人が席を立ってしまったし、この日twitterで話た方によると、スコットランドでは40数名の観客中、8名が途中で席を立ったとか… 原因は何かと言えば、こちらの感性でとらえる作品というか、観念的というか宗教的というか… ちょっと説明が難しいんだけど、この映画には、いわゆるストーリーはない。いや、あるけど、起承転結のある明確なストーリーはない。なぜなら、これは大人になったジャックの回想と思考だから。
冒頭、中流家庭という感じの家に、郵便配達の少年が一通の手紙を運んでくる。彼はこの家の女主人にそれを手渡すと、悲し気に顔を背け帰って行く。女主人はミッドセンチュリーモダンな家具が並ぶリビングの窓辺で、手紙を読み泣き崩れる。そして、彼女の夫のもとにも知らせが届く。彼らの19歳の息子が亡くなったのだった。そこから一気に現代へ。スタイリッシュな高級住宅の寝室で目を覚ますジャック。美しい妻との会話はなく、暗い表情で起き出す。どうやら昔の夢を見ていたということらしい。そういう説明らしいセリフなどは一切無い。彼が社会的にどんな立場なのか、妻以外に家族はいるのかなどは不明。ただ、大きな会社でかなりの地位を得ているらしい感じではある。彼は何か悩んでいるらしい、それは例えば離婚とか具体的なきっかけがあってのことなのか、単に年齢的なことなのか、よく分からない。離婚についてのセリフがあった気がしたけれど・・・ 彼は夢に見たあの人生で最も辛かった日々、母親がどうやって乗り越えたのかと考える。そこから回想の世界へ。
ここからの数10分間が、この映画が好きか嫌いかの分かれ目だと思う。要するにタイトルどおり『THE TREE OF LIFE』=生命の系譜ってことを描いているのだけど、そこから?って、ところから思いをはせちゃっているので・・・ 天地創造からだからね(笑) 急に地球が画面いっぱいに映し出されて呆然となるけど、後から考えると納得して、じんわり心に落ちてくる。今、自分が生きているのは、ご先祖様達が命を継いでくれたからなんだけど、もっともっと辿っていけば、確かにそこに行き着く。でも、普通はそこまで考えないと思う(笑) まぁ、これはキリスト教圏の話なわけだから、神が天地創造してってなるのかな? でも、人間も生命であると考えれば、実はそこから繋がっているわけで、気が遠くなるくらい昔に、海の中で生まれた生命体が、自分の遠い遠い祖先とは考えにくいけれど、それと人間とは別だと無意識に思ってしまうのは、ちょっと傲慢なのかも・・・
と、つらつら書いているけど、このシークエンスの映像は本当に美しい。まず地球が美しい。そして、どんどん時が経って、ジャックの父と母が出会い、ジャックが誕生する。この時、うれしそうに、こわごわと小さなジャックの足に触れるブラピの姿が、チラシやポスターになっているけど、このシーンは印象的。そして、家族が増え・・・と、この映画で主な舞台となるジャックの思春期へ。そして、ここで! 予告で心奪われたスメタナの「モルダウ」が流れる。これが素晴しい! 映し出される映像自体は、実は重要ではないけど、そこに「モルダウ」を使ったということに意味がある! モルダウというのはチェコを流れる川。実はこれはドイツ語名で、チェコ語ではヴルタヴァ川。プラハの街にも流れていて、有名なカレル橋はこの川に架かっている。プラハを旅した時に渡ったけれど、かなり大きな川。以下は毎度のWikipediaから、「モルダウ」はスメタナが作曲した6つの交響詩からなる連作交響詩「わが祖国」の中の1つ。チェコの国民音楽として記念碑的な作品を交響詩でと考えて作曲された。「モルダウ」は第2曲で、源流近くからプラハを流れ、エルベ川へ合流するまでを描く。第1曲「ヴィシェフラド」も組み込まれ、スメタナの故郷を思う気持ちが現れている。個人的にこの「モルダウ」の壮大で郷愁を誘う美しい旋律が大好き。日本にいるとあまり感じないけど、祖国とか民族とかを感じさせる。大好きなミュシャの「スラブ叙事詩」が浮かんできたりする。で、説明が長くなったけど、この曲の持つその感じと、そこまで見てきた映像、そして今見ている映像の意味がしっかりリンクして、心に湧き上がってくるものがあり、気づいたら泣いてた。これは素晴しい!
もう実は「モルダウ」のことさえ書ければ個人的にはOKという感じなのだけど、ここから先が本題だからね(笑) さっきも書いたけど、ここからはジャックの記憶。その時体験したことは、その時感じた気持ちや思いに紐づいている。でも、それを体験したのは、まだ少年だったジャックであるということがポイントになってくる。そして、いわゆる回想シーンとは違うけれど、回想なのだということ。上手く言えないけれど、あるエピソードを始点から終点までを回想するってことが、繰り返えされてジャックの少年時代を描いているとう感じ。きちんと流れはあるのだけど、見せられるのは回想シーンの繋ぎ合わせなので、混乱する人はいるかも。大人になったジャックに戻ることがほとんどないので、混乱してしまうのだけど、これはあくまでジャックの回想であって記憶だと考えると分かりやすいかも。自分が何かを考えて、それに連動して昔の記憶を思い出す時ってこんな感じで、次々別の記憶を思い出したりする。しかも、全てが重要なことばかりでもない。でも、何故かその時心を捉えた事を覚えていたりする。そして、その記憶と共に、当時の思いもよみがえる。でも、その思いはまだ視野が狭かった自分が、自分の感覚で捉えた思い込みもあって、実は見方を変えれば全然違っている場合も多かったりする。
この映画の主題である父子関係と母子関係。特にジャックは父との関係に悩んでいる。自分は負け組だと思っている父親は、子供達には明るい未来をと、厳しく接してしまう。ジャックの記憶には父が息子達をかわいがり、楽しく遊んでいる場面もちゃんとある。見ている側には彼が息子達を愛している事が、きちんと伝わってくるけど、ジャックには厳しくされた時の記憶が鮮明過ぎて、愛されていることに自信が持てない。その辺りの葛藤がしっかり伝わってくる。そして、その父の厳しさも、もしかすると記憶の捏造というか、ちょっと大げさに記憶している場合もあると思う。子供の頃、ある家の前で熊ぐらい大きな犬に吠えられてスゴイ怖い思いをした、後日その家の前を通ったら、実は思ったより大きな犬ではなかったという体験がある。記憶って意外と捏造しがち。ジャックにもそういう部分があったように思う。もちろん父は厳しかったのは事実で、それがトラウマとなったのも事実。見ている側としては、この父がジャックにだけ厳しかったわけではないということに、救われた。3人に厳しかったし、彼なりに3人を愛していることが分かるシーンがちゃんとある。でも、3人には疎まれてしまっている。それが切ない(涙) その辺りのことは、分かりにくくはないけど、あからさまには描いていないから、自分で拾わないとダメ。なので、そういう映画が苦手な人は、合わないかもしれない。
母子の感じはよかった。母はまだ娘のような人で、とっても純粋で愛に溢れている。厳し過ぎる父に対して、憤りを感じているけれど、どこか諦めている部分もある。この時代、アメリカでも女性の立場は、専業主婦で夫に従うって感じが多かったのでしょうか・・・ それが女性の美徳とは思わないけれど、クラシカルできちんとしているけれどフワリ感のあるワンピースを着て、儚げに微笑む母を、女性的だと感じて、少し憧れてしまうのは、自分に無い部分だからかな(笑) でも、この母の愛に包まれて、少し擬似恋愛みたいない感情を抱くのは思春期男子って感じがするし、やっぱり素足で洗濯物を干す姿や、ホースで足を洗う母になまめかしさを感じたりする。その映像が美しい。
ジャックの記憶なので、彼目線で描かれている。ジャックは長子なので、弟達が生まれた時、今まで自分のみに注がれていた愛情の一部が奪われるという、悲しみを味わっていて、実はそれが甘えベタとか、自信のなさに影響しているのだけど、その辺りも短い映像できちんと見せている。それを拾えたのは、自身が長子だからかもしれないけれど・・・ ジャックの両親は問題のある人達というわけではない。あまり裕福ではなかったけれど、厳格な父と優しい母という構図は、別にめずらしくないし、父は虐待しているわけじゃない。だから、これは大人になる過程で、誰もが通る道なのかもしれない。もちろん1人1人エピソードや振り幅は違うと思うけれど。だからジャックの気持ちはとっても分かるし、年齢的には親世代だから親の苦悩も分かる。誰だって親になったからって、急に完璧になれるわけじゃない。みな悩みながら成長していってるんだと思う。その感じが伝わってくる。そういう意味では『THE TREE OF LIFE』というのはダブルミーニングなのかな? 深読み?
キャストは良かった。少年ジャックのハンター・マクラケンは、思春期特有の潔癖さ、暗さ、反抗心、性の目覚め、そして母への思慕をきちんと表現していたと思う。次男のことがほとんど描かれなかったけど、19歳で亡くなってしまう三男のタイ・シェリダンがかわいい。ちょっとブラピ似。母のジェシカ・チャスティンが良かった。優しい愛に溢れていて、でも少女のように無邪気な部分もある。彼女が3人の息子達と遊ぶシーンは好き。女性らしい儚げな美しさが良かった。成年ジャックのショーン・ペンは、出演シーンはわずかながら、さすがの存在感。思えばこのジャックの記憶や思考なので、実はとっても重要。その辺りはすごく良かった。特にラストの演技は素晴しい。父のブラピが素晴しかった。もともとブラピは演技派ってことで世に出てきた気がするけれど、人気が先行してしまい、特に日本では"ブラピ様"って扱いになってしまって、演技に注目されることが少なくなってしまった気がする。でも、この演技は見事だったと思う。もちろん、人間だから感情で怒ってしまう時もある。そんな部分まで含めてきちんと表現していたと思う。切なくて、歯痒かった。
とにかく、映像が全て美しい。現代のシーンの林立する高層ビルや、高級感があるけど温かみのないジャックの家の殺伐とした感じや、天地創造からの圧倒的な映像美、ジャック達が少年期を過ごした家や町のノスタルジー感、そしてラストの情景。あれは境界とか、結界ってことなのかな? 多分、撮影場所はウユニ塩原じゃないかと思うんだけど・・・ あのラストの世界観もダメな人は多いと思うけれど、個人的には好き。『ラブリー・ボーン』好きな人は好きかも。そして、なんと言っても「モルダウ」! 音楽全部良かったけど、やっぱり「モルダウ」! その使い方が素晴しい!
これは叙事詩なんだと思う。叙事詩のことが実はあんまり分かってないんだけど(笑) 好き嫌いが分かれる作品だと思うので、手放しでオススメしにくいけれど、見て欲しいなぁ・・・ 「モルダウ」好きな方は是非!
『ツリー・オブ・ライフ』Official site
yaplog!で当選! いつもありがとうございます。これは見たかった! シネ通かSHOWBIZで紹介された時の映像、大好きな「モルダウ」が感動的に美しかったから。試写状届いた時はガッツポーズだった(笑)
*ネタバレありです!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1f/03/fb12196d31c76d31c18874bc2eb87bd8.jpg)
初めに書いてしまうけど、普段あまり映画は見ないけど、"ブラピ様"は大好きという人には、あまりオススメできない。これは間違いなく映画だけど、いわゆる普通の映画とはちょっと違う。そして、何よりブラピはカッコイイ役ではないので。このブラピの役柄は、劣等感があり、人生に悩み、息子達を愛しながらも、厳しく接してしまう不器用な父親。このブラピの演技は素晴らしいので、ファンなら必見だと思うけれど、どうファンかによると思う。ファンになり方は人それぞれだと思うので、どんなファンも否定していない。ただ、2時間18分と長いので、ちょっと心配になっただけ(笑) もちろん、"ブラピ様"目当てで見て、感動することもあると思う。
前置きが長くなったけど、ここから本題(笑) この試写会でも、本編終了後に大半の人が席を立ってしまったし、この日twitterで話た方によると、スコットランドでは40数名の観客中、8名が途中で席を立ったとか… 原因は何かと言えば、こちらの感性でとらえる作品というか、観念的というか宗教的というか… ちょっと説明が難しいんだけど、この映画には、いわゆるストーリーはない。いや、あるけど、起承転結のある明確なストーリーはない。なぜなら、これは大人になったジャックの回想と思考だから。
冒頭、中流家庭という感じの家に、郵便配達の少年が一通の手紙を運んでくる。彼はこの家の女主人にそれを手渡すと、悲し気に顔を背け帰って行く。女主人はミッドセンチュリーモダンな家具が並ぶリビングの窓辺で、手紙を読み泣き崩れる。そして、彼女の夫のもとにも知らせが届く。彼らの19歳の息子が亡くなったのだった。そこから一気に現代へ。スタイリッシュな高級住宅の寝室で目を覚ますジャック。美しい妻との会話はなく、暗い表情で起き出す。どうやら昔の夢を見ていたということらしい。そういう説明らしいセリフなどは一切無い。彼が社会的にどんな立場なのか、妻以外に家族はいるのかなどは不明。ただ、大きな会社でかなりの地位を得ているらしい感じではある。彼は何か悩んでいるらしい、それは例えば離婚とか具体的なきっかけがあってのことなのか、単に年齢的なことなのか、よく分からない。離婚についてのセリフがあった気がしたけれど・・・ 彼は夢に見たあの人生で最も辛かった日々、母親がどうやって乗り越えたのかと考える。そこから回想の世界へ。
ここからの数10分間が、この映画が好きか嫌いかの分かれ目だと思う。要するにタイトルどおり『THE TREE OF LIFE』=生命の系譜ってことを描いているのだけど、そこから?って、ところから思いをはせちゃっているので・・・ 天地創造からだからね(笑) 急に地球が画面いっぱいに映し出されて呆然となるけど、後から考えると納得して、じんわり心に落ちてくる。今、自分が生きているのは、ご先祖様達が命を継いでくれたからなんだけど、もっともっと辿っていけば、確かにそこに行き着く。でも、普通はそこまで考えないと思う(笑) まぁ、これはキリスト教圏の話なわけだから、神が天地創造してってなるのかな? でも、人間も生命であると考えれば、実はそこから繋がっているわけで、気が遠くなるくらい昔に、海の中で生まれた生命体が、自分の遠い遠い祖先とは考えにくいけれど、それと人間とは別だと無意識に思ってしまうのは、ちょっと傲慢なのかも・・・
と、つらつら書いているけど、このシークエンスの映像は本当に美しい。まず地球が美しい。そして、どんどん時が経って、ジャックの父と母が出会い、ジャックが誕生する。この時、うれしそうに、こわごわと小さなジャックの足に触れるブラピの姿が、チラシやポスターになっているけど、このシーンは印象的。そして、家族が増え・・・と、この映画で主な舞台となるジャックの思春期へ。そして、ここで! 予告で心奪われたスメタナの「モルダウ」が流れる。これが素晴しい! 映し出される映像自体は、実は重要ではないけど、そこに「モルダウ」を使ったということに意味がある! モルダウというのはチェコを流れる川。実はこれはドイツ語名で、チェコ語ではヴルタヴァ川。プラハの街にも流れていて、有名なカレル橋はこの川に架かっている。プラハを旅した時に渡ったけれど、かなり大きな川。以下は毎度のWikipediaから、「モルダウ」はスメタナが作曲した6つの交響詩からなる連作交響詩「わが祖国」の中の1つ。チェコの国民音楽として記念碑的な作品を交響詩でと考えて作曲された。「モルダウ」は第2曲で、源流近くからプラハを流れ、エルベ川へ合流するまでを描く。第1曲「ヴィシェフラド」も組み込まれ、スメタナの故郷を思う気持ちが現れている。個人的にこの「モルダウ」の壮大で郷愁を誘う美しい旋律が大好き。日本にいるとあまり感じないけど、祖国とか民族とかを感じさせる。大好きなミュシャの「スラブ叙事詩」が浮かんできたりする。で、説明が長くなったけど、この曲の持つその感じと、そこまで見てきた映像、そして今見ている映像の意味がしっかりリンクして、心に湧き上がってくるものがあり、気づいたら泣いてた。これは素晴しい!
もう実は「モルダウ」のことさえ書ければ個人的にはOKという感じなのだけど、ここから先が本題だからね(笑) さっきも書いたけど、ここからはジャックの記憶。その時体験したことは、その時感じた気持ちや思いに紐づいている。でも、それを体験したのは、まだ少年だったジャックであるということがポイントになってくる。そして、いわゆる回想シーンとは違うけれど、回想なのだということ。上手く言えないけれど、あるエピソードを始点から終点までを回想するってことが、繰り返えされてジャックの少年時代を描いているとう感じ。きちんと流れはあるのだけど、見せられるのは回想シーンの繋ぎ合わせなので、混乱する人はいるかも。大人になったジャックに戻ることがほとんどないので、混乱してしまうのだけど、これはあくまでジャックの回想であって記憶だと考えると分かりやすいかも。自分が何かを考えて、それに連動して昔の記憶を思い出す時ってこんな感じで、次々別の記憶を思い出したりする。しかも、全てが重要なことばかりでもない。でも、何故かその時心を捉えた事を覚えていたりする。そして、その記憶と共に、当時の思いもよみがえる。でも、その思いはまだ視野が狭かった自分が、自分の感覚で捉えた思い込みもあって、実は見方を変えれば全然違っている場合も多かったりする。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/b5/4190ca43664319646025d811d0b1bca5.jpg)
母子の感じはよかった。母はまだ娘のような人で、とっても純粋で愛に溢れている。厳し過ぎる父に対して、憤りを感じているけれど、どこか諦めている部分もある。この時代、アメリカでも女性の立場は、専業主婦で夫に従うって感じが多かったのでしょうか・・・ それが女性の美徳とは思わないけれど、クラシカルできちんとしているけれどフワリ感のあるワンピースを着て、儚げに微笑む母を、女性的だと感じて、少し憧れてしまうのは、自分に無い部分だからかな(笑) でも、この母の愛に包まれて、少し擬似恋愛みたいない感情を抱くのは思春期男子って感じがするし、やっぱり素足で洗濯物を干す姿や、ホースで足を洗う母になまめかしさを感じたりする。その映像が美しい。
ジャックの記憶なので、彼目線で描かれている。ジャックは長子なので、弟達が生まれた時、今まで自分のみに注がれていた愛情の一部が奪われるという、悲しみを味わっていて、実はそれが甘えベタとか、自信のなさに影響しているのだけど、その辺りも短い映像できちんと見せている。それを拾えたのは、自身が長子だからかもしれないけれど・・・ ジャックの両親は問題のある人達というわけではない。あまり裕福ではなかったけれど、厳格な父と優しい母という構図は、別にめずらしくないし、父は虐待しているわけじゃない。だから、これは大人になる過程で、誰もが通る道なのかもしれない。もちろん1人1人エピソードや振り幅は違うと思うけれど。だからジャックの気持ちはとっても分かるし、年齢的には親世代だから親の苦悩も分かる。誰だって親になったからって、急に完璧になれるわけじゃない。みな悩みながら成長していってるんだと思う。その感じが伝わってくる。そういう意味では『THE TREE OF LIFE』というのはダブルミーニングなのかな? 深読み?
キャストは良かった。少年ジャックのハンター・マクラケンは、思春期特有の潔癖さ、暗さ、反抗心、性の目覚め、そして母への思慕をきちんと表現していたと思う。次男のことがほとんど描かれなかったけど、19歳で亡くなってしまう三男のタイ・シェリダンがかわいい。ちょっとブラピ似。母のジェシカ・チャスティンが良かった。優しい愛に溢れていて、でも少女のように無邪気な部分もある。彼女が3人の息子達と遊ぶシーンは好き。女性らしい儚げな美しさが良かった。成年ジャックのショーン・ペンは、出演シーンはわずかながら、さすがの存在感。思えばこのジャックの記憶や思考なので、実はとっても重要。その辺りはすごく良かった。特にラストの演技は素晴しい。父のブラピが素晴しかった。もともとブラピは演技派ってことで世に出てきた気がするけれど、人気が先行してしまい、特に日本では"ブラピ様"って扱いになってしまって、演技に注目されることが少なくなってしまった気がする。でも、この演技は見事だったと思う。もちろん、人間だから感情で怒ってしまう時もある。そんな部分まで含めてきちんと表現していたと思う。切なくて、歯痒かった。
とにかく、映像が全て美しい。現代のシーンの林立する高層ビルや、高級感があるけど温かみのないジャックの家の殺伐とした感じや、天地創造からの圧倒的な映像美、ジャック達が少年期を過ごした家や町のノスタルジー感、そしてラストの情景。あれは境界とか、結界ってことなのかな? 多分、撮影場所はウユニ塩原じゃないかと思うんだけど・・・ あのラストの世界観もダメな人は多いと思うけれど、個人的には好き。『ラブリー・ボーン』好きな人は好きかも。そして、なんと言っても「モルダウ」! 音楽全部良かったけど、やっぱり「モルダウ」! その使い方が素晴しい!
これは叙事詩なんだと思う。叙事詩のことが実はあんまり分かってないんだけど(笑) 好き嫌いが分かれる作品だと思うので、手放しでオススメしにくいけれど、見て欲しいなぁ・・・ 「モルダウ」好きな方は是非!
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