'12.08.16 『最強のふたり』試写会@シネマート六本木
migちゃんのお誘い♪ 見たくて試写会応募してたけどハズレ。よろこんで行ってきた~♪ ちなみに、木曜日だけどバレエはお盆休み。←って、聞いてないか(笑)
*ネタバレありです!
「パリ。実業家のフィリップは事故で首から下を動かすことが出来ないため、介護士が必要。でも、気難しい彼と上手くいかず、次々辞めてしまう。介護士募集の面接にやってきたドリスは、失業保険欲しさに就活した事実が欲しいだけ。不採用を望んでいたが・・・」という話。後から知ったのだけど、これは実話ベース。どこまで、実話どおりなのかは不明だけど、これはなかなかよかった。正直、感動!!ってことはなかったけど、じんわり感動させてよかったと思う。
冒頭、すごいスピードで高級車を走らせるシーンから始まる。後部座席にはフィリップ。すごいテクニックでどんどん前の車を抜いていくドリス。当然、スピード違反でパトカーに追われてしまう。逃げ切れるか賭ける2人。かなり頑張って逃げるけれど、捕まってしまう。しかたなく車を止め、出て行くドリス。「先導するに200ユーロ」と言いニヤリ。相手がアフリカ系であることから、いきなり凶悪犯のような扱い。まぁ、あれだけ危険運転だから、仕方がない気もするけれど・・・ 当然、フィリップを病院に連れて行くところだったと言い訳するわけで、ここからはフィリップの熱演。ドリスの狙い通り、パトカー先導で病院へ向かうことになる。病院へ到着するも、担架を持って出てくる職員をよそに、どこかへ去ってしまう2人・・・ そして、場面は数ヶ月前に。このスピード感あふれるオープニングは良かった。大人がふざけている感じも、やっていることの是非は別として見ていて楽しい。なにより、二人の信頼関係が伝わってくる。そして、それぞれの性格も・・・
数ヶ月前、面接のシーン。志望動機に模範的な回答しかしない志願者達。まぁ、当然といえばそうなのだけど(笑) フィリップは一切心を打たれない様子。実業家であった彼は同情されることを嫌っているのだと思う。こんな言い方はなんだけれど、どこからどう見ても障害者である彼を、障害者であると見てしまうことは当然といえば当然。でも、それは辛いことなのでしょう。何でも自分で出来た人が、何一つ自分では出来なくなってしまうことは、想像以上に辛いことなのだと思う。同情して欲しくないのは、誰より自分が自分を憐れんでいるからかも・・・ そんな中現れたのがドリス。失業手当のための就活記録が欲しい彼は、面接などしなくていいから不採用のサインをしてくれと訴える。そんな彼に興味を示すフィリップ。明日までに書類をそろえておくと約束する。
ドリスの狭い家には、弟や妹たちがひしめいている。一家を支えているのは清掃の仕事をしている母親。後に、この一家の関係はかなり複雑であることが分かるけれど、お互い愛し合っていることは伝わってくる。実はドリスは窃盗容疑(だったかな?)で数ヶ月服役しており、この日の帰宅も数ヶ月ぶり。母親はもちろん事情を知っているけれど、どこで何をしていたのか激しくしかりつける。お前のような息子は出て行けと追い出す母親も、彼を思ってのこと。もちろん、生活苦のこともあると思うけれど・・・ 仕方なく、夜の街に出るドリス。不良仲間は暖かく彼を迎えるけれど、一人また一人と家に帰っていく。最後の一人になる前に、その場を去るドリス。大きく見せてはいるけれど、孤独には耐えられないという、ドリスの一面をサラリと見せる。そういうのが上手い。
翌日、不採用通知を貰いに来たドリスを、どんどん案内していく女性。まぁ、ありがちなシーンではある。ただ、フィリップの家ホントスゴイ!! ドリスの部屋だけでも、ドリスの家より広いし! 当然、バス・トイレつきだけど、猫足バスタブで豪華! こんな形で採用通知されたドリスだけど、意外にあっさり受け入れたような… まぁ、介護経験のない自分には勤まらないと思っているのかも? もちろん、はぁ!?とはなってたけども(笑)
実際、フィリップの介護は大変。首から下が動かないので、ベッドから車椅子に移動させても、直ぐに固定しないと倒れていっちゃう。医学的なことは分からないけど、人間の身体は動くことによって血の巡りを助けている部分があるらしい。バレエのレッスン後、特にトウシュースでのポワントレッスン後は、履いて来た靴がゆるくなったりする。ふくらはぎを動かしたことにより、ポンプのような役割をして、血行が良くなりむくみが取れるのだそう。フィリップは身体を動かすことが出来ないため、この作業をマッサージで行う。そして、フィリップは自力では排泄が出来ない。これにも介助が必要。この辺りを、不器用な手つきでドリスが習ったり、排泄補助は断固拒否したりする姿で、コミカルに描くことで、重くなり過ぎすに見れた。実業家でバリバリ働いていたであろうフィリップが、自分一人では何も出来ないという現状は、本当に辛いことでしょう。フィリップの介護はチームが組まれていて、それぞれ担当がいるけど、メインで担当するのはドリスということになる。
このメインがドリスになったことで、今までの常識が破られていく。例えば、フィリップが外出する際には、専用の車を使う。この車が実際どうなっているのかは、紹介されなかったので不明だけど、ドリスは荷物を運ぶみたいでイヤだと拒否。冒頭で無謀運転をしていた高級車に乗せる。実際、フィリップの身体にとって、どちらが負担が少ないのかは分からないけど、例え助手席であっても、愛車に乗れるのはうれしいことかも。他にもドリスはフィリップの車椅子を改良して、スピード上げちゃったり、いろいろ型破りなことをする。フィリップがドリスを採用した理由は、彼が自分を障害者だからと同情していないからだけど、ここまで型破りなことをして楽しませてくれるとは思ってなかったでしょう。でも結果、ドリスのおかげで生きる喜びを得たことになる。
ドリスは恋のキューピット役まで務めちゃう(笑) フィリップはある女性と文通している。芸術のこと、音楽のこと、とっても趣味の合う二人。手紙を秘書に口述筆記させるけれど、あまりに堅苦しい内容に辟易するドリス。でも、それはドリスの世界であって、フィリップの世界ではこれが普通。ただ、自分の障害のことがあるので、積極的になれないのは事実。ドリスが指摘したかったのはそこ。お互いの写真を交換しましょうと言われ躊躇するフィリップ。ありのままの姿を見せればいいと言うドリス。でも、結局写真を差し替えてしまう。気持ちはよく分かる。そして、これは伏線。
フィリップが受身な分、どうしてもドリスから受ける部分が大きいけれど、もちろんフィリップがドリスに与える影響も大きい。アフリカ系移民で、叔母夫婦の養子となったドリス。叔母はその後、数人の"父親"の間に次々子供をもうける。つまり、ドリスの弟や妹たちは、いとこでもあるということ。弟の一人は不良グループの手先にされている。彼の世界は狭かった。その彼に絵画やオペラの楽しみを教える。楽しみ方は型破りだけど(笑) フィリップのおかげで絵も売れたし(o゚c_゚o) パラグライダーも体験出来た! このシーンはよかった
夜、実際は感じないはずの体の痛みや、痒みに悩まされるフィリップ。足を切断した人が、実際にはない足の痛みや痒みを感じる幻肢痛と同じなのかな? 実際には失われていても、脳の足を担当していた脳細胞は生きているわけで、そこが誤作動してるってことらしい? 調べたけど今ひとつ理解し切れず。ただ、これ本当に辛いらしく、治療法もないため、時間が解決するのを待つしかないけれど、人によってては10年以上苦しむ人もいるらしい… フィリップの体調変化が分かるように、彼の部屋の音声がドリスには聞こえるようになっている。異変に気づいたドリス。特別何も出来ないけれど、彼が来てくれたことで安心するフィリップ。このシーン、ドリスが去った後の伏線にもなっている。フィリップの排泄も手伝えるくらい、自覚と信頼関係を築いたドリスだけど、おそらく彼の将来を思い、彼を解雇してしまう。弟のこともあったので、この辺りちょっと唐突で分かりにくくはあるのだけど… でも、新たに雇った介護士は、仕事に徹しているけれど、物足りない。幻肢痛(厳密には違うけど)の苦しみも、逆にイライラが増すばかり。
で、いろいろあって冒頭のシーンへ。外の空気を吸いに行こうと連れ出したドリス。例のチェイスの後、向かったのは海。そこで楽しい時を過ごした二人。ランチを取るため高級レストランへ。予約した席に、一人フィリップを残し去ってしまうドリス。現れたのは文通していた彼女。一度、会う約束をしていたけれど、待ち合わせに遅れた彼女を、会うのが怖かったフィリップは待つことができなかった。ドリスは彼女にフィリップの真実を写した写真を送り、計画したらしい。示唆する場面が出てくるだけで、実際そういうシーンはない。ない方がいい。どこまでドリスが話したかは不明だけど、彼女がやって来たからには、フィリップを受け入れたということ。映画はここで終わり、実際の二人が結婚したこと、ドリス(本名は別)は現在会社経営していることなどがクレジットされた。実話って知らずに見たからビックリ!
キャストが素晴らしかった。フィリップの介護スタッフさんたちもよかったし、ドリスの母親役の人もよかったけど、もう主役の二人につきるという感じ。ドリスのモデルとなったAbdel Yasmin Sellouさんは、何系の方なのかな? アフリカ系ではなさそう。ただ、映画とするならフィリップとの違いを際立たせるためにはアフリカ系とした方が、分かりやすかったと思う。型破りなくらい前向きに突進しちゃう感じも、ステレオタイプとは思いつつも、やっぱりアフリカ系方々のイメージではある。そういう意味で、この変更はよかったと思うし、オマール・シーで大正解! 前向きといえばそうだけど、型破りであるということは、常識的ではないということで、となると周りだけでなく、見ている側にも眉をひそめさせちゃうことになりかねない。でも、そうはなっていないのは、ドリスがこの状況を楽しみつつも、フィリップや周りのことも気遣っているのが伝わってくるから。そして、ドリスの寂しさや悲しみも、声高ではないけど伝わってくる。体全体で大げさ演技をしている時でもあざとく感じない。寂しさを表現する時の目の演技が絶妙!
そして、首から上だけで演じきったフランソワ・クリュゼがスゴイ! 前述したけど、全身麻痺しているため、自力で体を支えることも出来ない。固定してくれないと倒れてしまう。そういうシーンなので当然だけど、それ以外のシーンでも本当に全身不随の人にしか見えない。体が使えない分、表情で演技するわけだけど、あえての大芝居にしていないところがよかった! それだと見ていて辛い… あくまで自然の表情でありつつ、喜怒哀楽の他にも、障害者であることの負い目なども表現。恋の悩みは熟練のパリジャンにもあること。そこに加わる自信のなさ… ドリスを去らせたのは自分だけど、後任に満足できなくてイライラしちゃう感じもよく分かる。ただの偏屈な人になってなかったのはフランソワ・クリュゼのおかげ。ハリウッド・リメイクの話しがあるそうだけど、この二人だからよかったと思うんだけどなぁ…
感想書きながら、もし自分がフィリップのような状況になってしまったとしたら、当然介護士なんて雇えないから、家族に頼るしかないよね… では、家族のいない人は? などと考えてちょっと暗くなった。やっぱりフィリップは介護士を自由に選べたりできる余裕はあるってことなんだよね。でも、この映画はあくまで境遇や性格が全く違うふたりの友情の話。なので、見ている間は楽しめる。ちょっと後から考えさせらせる。良い映画だと思う。
夜のパリの街並みがキレイ。改良した車椅子でセーヌ川渡るシーンも好き。
友情モノ好きな方、オススメ!!
『最強のふたり』Official site
migちゃんのお誘い♪ 見たくて試写会応募してたけどハズレ。よろこんで行ってきた~♪ ちなみに、木曜日だけどバレエはお盆休み。←って、聞いてないか(笑)
*ネタバレありです!
「パリ。実業家のフィリップは事故で首から下を動かすことが出来ないため、介護士が必要。でも、気難しい彼と上手くいかず、次々辞めてしまう。介護士募集の面接にやってきたドリスは、失業保険欲しさに就活した事実が欲しいだけ。不採用を望んでいたが・・・」という話。後から知ったのだけど、これは実話ベース。どこまで、実話どおりなのかは不明だけど、これはなかなかよかった。正直、感動!!ってことはなかったけど、じんわり感動させてよかったと思う。
冒頭、すごいスピードで高級車を走らせるシーンから始まる。後部座席にはフィリップ。すごいテクニックでどんどん前の車を抜いていくドリス。当然、スピード違反でパトカーに追われてしまう。逃げ切れるか賭ける2人。かなり頑張って逃げるけれど、捕まってしまう。しかたなく車を止め、出て行くドリス。「先導するに200ユーロ」と言いニヤリ。相手がアフリカ系であることから、いきなり凶悪犯のような扱い。まぁ、あれだけ危険運転だから、仕方がない気もするけれど・・・ 当然、フィリップを病院に連れて行くところだったと言い訳するわけで、ここからはフィリップの熱演。ドリスの狙い通り、パトカー先導で病院へ向かうことになる。病院へ到着するも、担架を持って出てくる職員をよそに、どこかへ去ってしまう2人・・・ そして、場面は数ヶ月前に。このスピード感あふれるオープニングは良かった。大人がふざけている感じも、やっていることの是非は別として見ていて楽しい。なにより、二人の信頼関係が伝わってくる。そして、それぞれの性格も・・・
数ヶ月前、面接のシーン。志望動機に模範的な回答しかしない志願者達。まぁ、当然といえばそうなのだけど(笑) フィリップは一切心を打たれない様子。実業家であった彼は同情されることを嫌っているのだと思う。こんな言い方はなんだけれど、どこからどう見ても障害者である彼を、障害者であると見てしまうことは当然といえば当然。でも、それは辛いことなのでしょう。何でも自分で出来た人が、何一つ自分では出来なくなってしまうことは、想像以上に辛いことなのだと思う。同情して欲しくないのは、誰より自分が自分を憐れんでいるからかも・・・ そんな中現れたのがドリス。失業手当のための就活記録が欲しい彼は、面接などしなくていいから不採用のサインをしてくれと訴える。そんな彼に興味を示すフィリップ。明日までに書類をそろえておくと約束する。
ドリスの狭い家には、弟や妹たちがひしめいている。一家を支えているのは清掃の仕事をしている母親。後に、この一家の関係はかなり複雑であることが分かるけれど、お互い愛し合っていることは伝わってくる。実はドリスは窃盗容疑(だったかな?)で数ヶ月服役しており、この日の帰宅も数ヶ月ぶり。母親はもちろん事情を知っているけれど、どこで何をしていたのか激しくしかりつける。お前のような息子は出て行けと追い出す母親も、彼を思ってのこと。もちろん、生活苦のこともあると思うけれど・・・ 仕方なく、夜の街に出るドリス。不良仲間は暖かく彼を迎えるけれど、一人また一人と家に帰っていく。最後の一人になる前に、その場を去るドリス。大きく見せてはいるけれど、孤独には耐えられないという、ドリスの一面をサラリと見せる。そういうのが上手い。
翌日、不採用通知を貰いに来たドリスを、どんどん案内していく女性。まぁ、ありがちなシーンではある。ただ、フィリップの家ホントスゴイ!! ドリスの部屋だけでも、ドリスの家より広いし! 当然、バス・トイレつきだけど、猫足バスタブで豪華! こんな形で採用通知されたドリスだけど、意外にあっさり受け入れたような… まぁ、介護経験のない自分には勤まらないと思っているのかも? もちろん、はぁ!?とはなってたけども(笑)
実際、フィリップの介護は大変。首から下が動かないので、ベッドから車椅子に移動させても、直ぐに固定しないと倒れていっちゃう。医学的なことは分からないけど、人間の身体は動くことによって血の巡りを助けている部分があるらしい。バレエのレッスン後、特にトウシュースでのポワントレッスン後は、履いて来た靴がゆるくなったりする。ふくらはぎを動かしたことにより、ポンプのような役割をして、血行が良くなりむくみが取れるのだそう。フィリップは身体を動かすことが出来ないため、この作業をマッサージで行う。そして、フィリップは自力では排泄が出来ない。これにも介助が必要。この辺りを、不器用な手つきでドリスが習ったり、排泄補助は断固拒否したりする姿で、コミカルに描くことで、重くなり過ぎすに見れた。実業家でバリバリ働いていたであろうフィリップが、自分一人では何も出来ないという現状は、本当に辛いことでしょう。フィリップの介護はチームが組まれていて、それぞれ担当がいるけど、メインで担当するのはドリスということになる。
このメインがドリスになったことで、今までの常識が破られていく。例えば、フィリップが外出する際には、専用の車を使う。この車が実際どうなっているのかは、紹介されなかったので不明だけど、ドリスは荷物を運ぶみたいでイヤだと拒否。冒頭で無謀運転をしていた高級車に乗せる。実際、フィリップの身体にとって、どちらが負担が少ないのかは分からないけど、例え助手席であっても、愛車に乗れるのはうれしいことかも。他にもドリスはフィリップの車椅子を改良して、スピード上げちゃったり、いろいろ型破りなことをする。フィリップがドリスを採用した理由は、彼が自分を障害者だからと同情していないからだけど、ここまで型破りなことをして楽しませてくれるとは思ってなかったでしょう。でも結果、ドリスのおかげで生きる喜びを得たことになる。
ドリスは恋のキューピット役まで務めちゃう(笑) フィリップはある女性と文通している。芸術のこと、音楽のこと、とっても趣味の合う二人。手紙を秘書に口述筆記させるけれど、あまりに堅苦しい内容に辟易するドリス。でも、それはドリスの世界であって、フィリップの世界ではこれが普通。ただ、自分の障害のことがあるので、積極的になれないのは事実。ドリスが指摘したかったのはそこ。お互いの写真を交換しましょうと言われ躊躇するフィリップ。ありのままの姿を見せればいいと言うドリス。でも、結局写真を差し替えてしまう。気持ちはよく分かる。そして、これは伏線。
フィリップが受身な分、どうしてもドリスから受ける部分が大きいけれど、もちろんフィリップがドリスに与える影響も大きい。アフリカ系移民で、叔母夫婦の養子となったドリス。叔母はその後、数人の"父親"の間に次々子供をもうける。つまり、ドリスの弟や妹たちは、いとこでもあるということ。弟の一人は不良グループの手先にされている。彼の世界は狭かった。その彼に絵画やオペラの楽しみを教える。楽しみ方は型破りだけど(笑) フィリップのおかげで絵も売れたし(o゚c_゚o) パラグライダーも体験出来た! このシーンはよかった
夜、実際は感じないはずの体の痛みや、痒みに悩まされるフィリップ。足を切断した人が、実際にはない足の痛みや痒みを感じる幻肢痛と同じなのかな? 実際には失われていても、脳の足を担当していた脳細胞は生きているわけで、そこが誤作動してるってことらしい? 調べたけど今ひとつ理解し切れず。ただ、これ本当に辛いらしく、治療法もないため、時間が解決するのを待つしかないけれど、人によってては10年以上苦しむ人もいるらしい… フィリップの体調変化が分かるように、彼の部屋の音声がドリスには聞こえるようになっている。異変に気づいたドリス。特別何も出来ないけれど、彼が来てくれたことで安心するフィリップ。このシーン、ドリスが去った後の伏線にもなっている。フィリップの排泄も手伝えるくらい、自覚と信頼関係を築いたドリスだけど、おそらく彼の将来を思い、彼を解雇してしまう。弟のこともあったので、この辺りちょっと唐突で分かりにくくはあるのだけど… でも、新たに雇った介護士は、仕事に徹しているけれど、物足りない。幻肢痛(厳密には違うけど)の苦しみも、逆にイライラが増すばかり。
で、いろいろあって冒頭のシーンへ。外の空気を吸いに行こうと連れ出したドリス。例のチェイスの後、向かったのは海。そこで楽しい時を過ごした二人。ランチを取るため高級レストランへ。予約した席に、一人フィリップを残し去ってしまうドリス。現れたのは文通していた彼女。一度、会う約束をしていたけれど、待ち合わせに遅れた彼女を、会うのが怖かったフィリップは待つことができなかった。ドリスは彼女にフィリップの真実を写した写真を送り、計画したらしい。示唆する場面が出てくるだけで、実際そういうシーンはない。ない方がいい。どこまでドリスが話したかは不明だけど、彼女がやって来たからには、フィリップを受け入れたということ。映画はここで終わり、実際の二人が結婚したこと、ドリス(本名は別)は現在会社経営していることなどがクレジットされた。実話って知らずに見たからビックリ!
キャストが素晴らしかった。フィリップの介護スタッフさんたちもよかったし、ドリスの母親役の人もよかったけど、もう主役の二人につきるという感じ。ドリスのモデルとなったAbdel Yasmin Sellouさんは、何系の方なのかな? アフリカ系ではなさそう。ただ、映画とするならフィリップとの違いを際立たせるためにはアフリカ系とした方が、分かりやすかったと思う。型破りなくらい前向きに突進しちゃう感じも、ステレオタイプとは思いつつも、やっぱりアフリカ系方々のイメージではある。そういう意味で、この変更はよかったと思うし、オマール・シーで大正解! 前向きといえばそうだけど、型破りであるということは、常識的ではないということで、となると周りだけでなく、見ている側にも眉をひそめさせちゃうことになりかねない。でも、そうはなっていないのは、ドリスがこの状況を楽しみつつも、フィリップや周りのことも気遣っているのが伝わってくるから。そして、ドリスの寂しさや悲しみも、声高ではないけど伝わってくる。体全体で大げさ演技をしている時でもあざとく感じない。寂しさを表現する時の目の演技が絶妙!
そして、首から上だけで演じきったフランソワ・クリュゼがスゴイ! 前述したけど、全身麻痺しているため、自力で体を支えることも出来ない。固定してくれないと倒れてしまう。そういうシーンなので当然だけど、それ以外のシーンでも本当に全身不随の人にしか見えない。体が使えない分、表情で演技するわけだけど、あえての大芝居にしていないところがよかった! それだと見ていて辛い… あくまで自然の表情でありつつ、喜怒哀楽の他にも、障害者であることの負い目なども表現。恋の悩みは熟練のパリジャンにもあること。そこに加わる自信のなさ… ドリスを去らせたのは自分だけど、後任に満足できなくてイライラしちゃう感じもよく分かる。ただの偏屈な人になってなかったのはフランソワ・クリュゼのおかげ。ハリウッド・リメイクの話しがあるそうだけど、この二人だからよかったと思うんだけどなぁ…
感想書きながら、もし自分がフィリップのような状況になってしまったとしたら、当然介護士なんて雇えないから、家族に頼るしかないよね… では、家族のいない人は? などと考えてちょっと暗くなった。やっぱりフィリップは介護士を自由に選べたりできる余裕はあるってことなんだよね。でも、この映画はあくまで境遇や性格が全く違うふたりの友情の話。なので、見ている間は楽しめる。ちょっと後から考えさせらせる。良い映画だと思う。
夜のパリの街並みがキレイ。改良した車椅子でセーヌ川渡るシーンも好き。
友情モノ好きな方、オススメ!!
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