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【art】 「仏像 一木にこめられた祈り展」鑑賞@東京国立博物館 平成館

2006-12-05 01:00:41 | art
'06.12.03 「仏像 一木にこめられた祈り展」鑑賞@東京国立博物館 平成館

10月3日のスタート時には仏友MJ&SI(みうらじゅん&いとうせいこう)のトークイベントも開催された特別展。もちろんMJファンの私とTはイベントチケをゲトすべくプレオーダーしたものの抽選もれ(涙) もちろんMJの影響によるところ大だけど仏像やお寺などはもともと好き。この特別展自体も気になっていた。行こう行こうと思いつつ最終日になってしまった。

国立博物館平成館に到着したのは3時過ぎ。入場規制がされており20分待ちとのこと。実際はそんなに待たずに入場できた。一木彫りの仏像が約140体一挙に見られるという画期的な展覧会。一木彫りというのは文字通り1本の木から彫られた仏像。実際には頭部のみ一木で彫り、首から下はまた別の一木というものも含まれるらしい。なので大きさも様々。一木から掘り出すのだから大きければ巨木が必要になるだろうし、彫る労力も大変だろうけれども、小さいものでもその造作の見事さは負けてはいない。完全に悟りを啓いた如来像よりも、人々を導くために悟りの一歩手前で踏みとどまっておられる菩薩の像が多い。菩薩の方が造形がハデということもあるだろうけれども、そもそもは信仰のために造られたものだということが良く分かる。みな美しいお顔をされている。

素晴らしいものは何体もあったけれども今回のスーパースターは滋賀・向源寺の「国宝 十一面観音菩薩立像」完全に別格扱いで6角形に柱を組んだ特設ステージに立っておられる。その姿の優美なこと。観音菩薩なので女性を模している。腰を優雅にやや左に曲げわずかに前に突き出した優雅なポーズ。わずかに前に出された右足の突き出し方。全身にかかるドレープの美しさ。ふくよかなお顔。わずかに口角を上げたアルカイックスマイル。お顔や頭に頂く11面の観音様。後頭部で口を開けて怒りの笑いを浮かべる面の迫力。これは素晴らしく美しい。市原悦子による音声ガイドの白洲正子、土門拳、井上靖らが絶賛したというくだりよりも、織田信長に攻め入られた時に民衆が土に埋めてこの菩薩様をかくまったというエピソードに涙。仏像は本来そういうものだったのだ。

京都 宝菩提院願徳寺「国宝 菩薩半跏像」もお顔の美しさや衣装のドレープの美しさが素晴らしい。ある僧の素顔を見ようとしたところ、僧がおもむろに顔を割き中から仏の顔が出現したという逸話を掘り出した京都 西往寺の「宝誌和尚立像」も不思議な魅力。この像などは彫られた当時から信仰対象というよりも芸術色が強くなってきているのかも知れない。この頃になると彫り跡をわざと残すなど彫り方に流行も生まれていたりするのも芸術色が強くなっている証拠かも? と勝手に想像。

最後はスーパースター仏師円空の作品群と、円空の影響を受けて独自の作品を作り出した木喰の作品群。木喰の作品も愛嬌があってよかったけど、私は断然円空派! 今までの作品とは完全に一線を画したその独特の作品たちは、素朴というか大胆でかつ繊細。思うに任せて掘り出していったように見えて計算されつくした造形。ただ線のみで現されたお顔のなんとも優しい表情。高木ブー似のそのお顔がなんとも愛おしい。仰ぎ奉るだけではなく身近に感じることもまた信仰なのだと思う。

約2時間じっくりと見ることができた。点数の多さもさることながら作品の内容の素晴らしさも堪能。すばらしい展覧会だった。ギリギリ見れてよかった! 市原悦子の音声ガイドも分かりやすくてよかった、でも耳に心地よすぎて眠くなるけど(笑) 仏像自体もすばらしいけれどそれを彫った名もない仏師たちの素晴らしさ。それを守ってきた人々の気持ちも感じられる展覧会だった。


特別展 仏像 一木にこめられた祈り 公式サイト

追記:平成館からの帰りには是非常設展を見てから本館へ抜けて帰るべき。本館の常設展も見れるし、何と言っても本館エントランスの階段がアールデコで素晴らしい!

コメント (2)
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