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【cinema】『キャンディ』

2007-10-20 02:34:08 | cinema
'07.10.17 『キャンディ』@シャンテ・シネ

ホントは同じ劇場でやってた『オフサイド・ガールズ』を見る予定だった。決算処理などでなかなか行けず、既に公開終了してしまっていた(涙) 急遽調べて『パンズ・ラビリンス』と悩んだけどこちらにすることに。

「ジャンキーで定職のないダンは、画家志望のキャンディと出会う。厳格な母から逃れたかったキャンディもドラッグにはまっていく。2人は結婚するがその日暮らしの生活。売春婦にまで身を落としたキャンディは精神のバランスを崩し・・・」という話。もうホントに絵に描いたようなダメ生活。ダンという男がホントにダメ。最悪なのは極道な男ではないこと。ジャンキーなことを除けばどこにでもいる、やる気のない男なのだ。

誰だって面倒なことはしたくない。何もしないで自分の欲しいものが手に入るなら、こんなにうれしいことはない。でも、そうは行かないから皆何かしら努力をしたり、苦しいことをしたりしながら生きているのだ。でも、彼は楽しいことしかしたくないのだ。キャンディのことも本当に愛しているのであれば売春なんてさせるハズがない。でも、彼女の体で稼いだお金でドラッグを買い平気でいる。問題なのは「考えたくない」と言って深く考えないこと。まだ、女に貢がせてやろうという極道の方が見ていて楽。でも、こういう人って男も女も増えているんだと思う。分かりやすくジャンキーにしてるけど、別にジャンキーじゃなくても同じこと。

キャンディは売春婦にまで身を落とし、ダンを責めるけれども取り合ってもらえない。感情を爆発させて彼に怪我させてしまった夜、心を添わせて愛を確かめ合う。その結果妊娠。妊娠を機にドラッグを止めようとするも流産。そのショックから再びドラッグ漬けの日々。彼女の身に起こった事は女性として辛いしかわいそうだと思うけど、自分が悪いしね。確かに彼女はまだ若かったし、口うるさそうな母親と暮らすのは窮屈だったと思う。ダンみたいな男は表面上は優しいので恋愛が始まったばかりのころは楽しいだろう。「愛されてる」と思わせてくれると思う。でも、それはダンが甘えたいだけ。でも、女としてそこに甘えてしまう部分は分かる気もする。でも、ドラッグに手を出すことは別。

ダンの生い立ちや過去などが語られないので、何故彼がドラッグ中毒になってしまったのかは不明。「親に見捨てられた」という冒頭のナレーションのみ。ただ、彼の言動からは特別家庭環境がひどかった様子は感じられない。割と普通の家庭に育った気がする。でも、何の目標も見つけられず、面倒くさいことはしたくないと、流されて生きてるという感じがする。人生で辛い時にはそこから脱出しようともがいたりする事が多い。むしろ目標などがなくて、漠然とした不安がある時の方が現実逃避したくなる。このままじゃいけない気がするけど、一歩踏み出す気力も勇気もない。ダンはそういう状態だったのではないか。

ダン役はヒース・レジャー。このダメ男をどうにか見ていられたのは彼のおかげかもしれない。好みの問題だけどイケメンではない。でも、キャンディが夢中になるほどには魅力があったのだ。それはなんとなく分かる。まぁ、この手のタイプの男って一見魅力的ではあるけど。その割中身の薄っぺらい感じや、優しく見えるけど実はものすごく自分勝手な感じ。それを嫌悪感ギリギリで「でも、こういう人多いよな」って思える感じに演じているのがスゴイ。キャンディのアビー・コーニッシュが魅力的。多分、自由に生きてるように見えたダンに憧れて夢中になり、気付いたらどん底に堕ちていた。そんな役を可憐に演じた。売春婦になっても美しかった。ジェフリー・ラッシュがダンの父親のような存在で登場。この人は本当にダメ男。確信があるだけにダメ。でも、彼の死がダンにある変化をもたらす重要な役。ジェフリー・ラッシュはやっぱり上手い。

彼らは彼らなりに試練を乗り越えて一つ大人になる。ハッピーエンドではない。見ていて気持ちのいい映画ではない。彼らより年上の私としては、彼らの抱えている問題や悩みに対しての対処の仕方を少しは知っている。ドラッグに走ってはダメですよってことは言われなくても分かっているし、そんな気もそもそもない。でも、彼らと同じ年齢くらいの子達には何か感じるところがあるかもしれない。

何だかあんまり褒めてないけど、どこか寒々とした色合いの風景とか、街の感じとか映像は良かった。あとキャンディの描く絵は好きだった。もう少し2人の芸術家気質というかそういう面を出せば、繊細で傷つきやすい面が強調されたかも。まだ画家や詩人の「卵」ですらない2人のそういう面より、堕落の方に重きを置いた感じなので、若い2人の甘えに見えてしまったのが残念な気がする。まぁ、そういう風に描きたかったのかもしれないけど・・・。


『キャンディ』Official site

コメント
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