10月15日、クライマックスシリーズの第4戦を京セラドームにて観戦。ここまで、アドバンテージを含めてバファローズが3勝1敗と日本シリーズ進出に王手をかけているが、前日の第3戦は千賀の好投もあり、ホークスが勝利。第4戦の先発はバファローズが山岡、ホークスが和田である。
本人の故障もあるが、山本、宮城といったところが台頭する中でやや影が薄れた感もあり、山岡のこの試合の先発に「大丈夫か?」というネットの声もあった。そのため、ビドル、山下といったところを登録し、ブルペンを厚くした。ただ、ここでかつてのエースの意地、細腕繁盛記を見せてもらいたいものだ。まず初回、2三振を奪うなど三者凡退の上々の立ち上がりである。
一方ホークスの先発は和田。バファローズとしても苦手なほうの投手である。大観衆の中、バファローズも三者凡退である。
序盤戦は両先発投手が持ち味を出した。山岡は3回までの一回りを一人のランナーも出さない好投を見せる。不安視された立ち上がり、最高の結果である。
3回裏、先頭の頓宮が四球で出塁。その後二死となって迎える福田がファウルで粘る。そして11球目、一塁ゴロに終わったかと思ったが一塁の中村がファンブル。福田の執念か、二死一・三塁とチャンスが広がる。ここで宗に回るが凡退、先制のチャンスを逃す。私が陣取ったエリアはちょうどバファローズファン、ホークスファンが混在するエリアで、ホークス側への歓声も大きい。ピンチをしのいだ和田への拍手が送られる。
4回表、一死から打席には周東。その打球が山岡の左足を直撃。打球は遊ゴロとなったが、山岡は治療のためにいったんベンチに下がる。中嶋監督が心配になってベンチ裏に向かうのも見える。
スタンドも不安の様子がただようが、数分後に再びマウンドに上がって大きな拍手となる。しかし、直後の牧原が両チーム通して初めてのヒットで出塁。柳田も続いて二死一・三塁となる。急に大ピンチとなったが、デスパイネを打ち取って何とか先制点を防ぐ。
そして4回裏、先頭の中川がチーム初安打で出塁し、打席には吉田正。その2球目を振り抜くと打球はセンターへ。そのまま伸びて、上段席に飛び込んだ。センターのあの位置となると、飛距離はどのくらいになるだろうか。これで2対0、勝てば日本シリーズ進出のバファローズに大きな先制点が入った。スタンドの盛り上がりは最高に。
通常の試合なら勝ち投手の権利を取りに5回表も山岡が登板しただろうが、こうした試合ということでバファローズは継投に切り替え、早くも宇田川が登板。山岡の4回無失点というのはチームにとっても大きかった。リリーフ陣が強固なだけに、逆算して5回からでも継投に切り替えられるのは大きい。宇田川も期待に応えて5回を簡単に三者凡退とする。
5回裏、先頭の紅林がヒットで出塁。続く若月がバントするも、和田が二塁へ送球してアウトとする。しかしここで和田がベンチに退く。守備の際に足を痛めたか。
結局和田はそのまま降板となり、大関が登板した。このシリーズでは苦しい投球が続く中、この場面でもあえて登板である。ここは福田、宗と打ち取り、追加点を許さない。
6回表、宇田川が回またぎでの登板。この回も2三振を奪うなどホークス打線を寄せ付けない。これで7回から山﨑颯、ワゲスパック、阿部(または平野)という流れができた。俄然、スタンドもバファローズ優位の雰囲気が強くなった。それにしても、シーズン後半になってここまでパワーボールを投げるリリーフ陣が揃い、計算が立つようになるとは。シーズン当初では考えられなかったことである。
追加点がほしいバファローズは6回裏、ホークス3人目の泉から中川、杉本(敬遠気味)が四球で出塁して一死一・二塁とチャンスを作る。
ここで安達を迎えたところでスタンドからはタオルダンスのチャンステーマが流れる。ちょうどライトスタンドが正面なのでその様子を見ると、中央で音頭を取っている「TOKYO応援団 50」のいで立ちに目が行った。おお、あれはバファローズの東京応援団の「50番先生」ではないか。私はかつての東京勤務時代、バファローズ戦観戦は外野応援席に入ることが多かったのだが、スタンドで音頭を取り、時には自虐的な口上で(まあ、チームも弱かったので)観客の笑いを誘っていた団長さんである。その時と比べればだいぶお年を召した様子だが、ここでぜひ追加点を。
しかし安達は凡退、二死二・三塁となって打席には頓宮。「50番先生」も見守る中、頓宮の打球はセンターへ。これはセンター牧原の頭上を越したかに見えたが、牧原が飛び込み見事にキャッチした。追加点とならずがっかりだが、ホークスとしてはここでの追加点はほぼ終戦を意味するだけに、ビッグプレーである。周りのホークスファンからはもちろんだが、一塁側、ライト側含めたバファローズファンからも大きな拍手が送られた。その昔の「This is プロ野球!!」という名実況が頭の中によぎる。
7回表、バファローズはパターン通り山﨑颯が登板。打席には先ほどファインプレーを見せた牧原が入るが、空振り三振。しかし続く柳田には力が入ったか四球。打席にはデスパイネで、ここでファウルとなったが自己最速の160キロが表示され、スタンドがとよめく。
このままデスパイネを打ち取るかと思われたが、さすが百戦錬磨の打者。ストレートを弾き返した当たりはそのまま左中間スタンドへ。これで三塁側、レフト側からこの日一番の歓声があがる。2対2の同点となった。同点のまま引き分けでもバファローズの日本シリーズ進出が決まるが、ホークスがここから試合をひっくり返すかもしれない・・という気分が出てきたのも確かである。ただ、ここは山﨑が気を取り直して後続を退けた。
7回裏、ホークスは松本が登板。ホークスとしては勝ち越された時点でほぼ終戦となるため、勝ちパターンを投入する。それもあって三者凡退。
そして8回表は山﨑颯が回またぎの登板である。宇田川もそうだったが前日の第3戦は登板しておらず、またこのまま延長に入ることも想定してのことだろう。宇田川、山﨑颯とも1回限定の投手ではなく、複数回行けるのもすごい。これでワゲスパックは延長戦、または(行われるとして)第5戦に回す余裕ができる。8回は危なげなく三者凡退。
ぜひとも勝ち越したいバファローズだが、ホークスの8回裏のマウンドには藤井。もしホークスが優勝していればMVPに選出される可能性があった投手である。簡単に二死として、吉田を迎える。ここで一発が出れば勝ち越しの大きな1点で、スクリーンにはマッチョの姿をした男性ファンらしき方も映し出される。
その吉田に対して藤井は敬遠気味の四球、続く杉本へはフルカウントとしたが最後はボール球を見送って四球。安達もしぶとくつなぐヒットで二死満塁となった。もうこれ、勝ち越しでしょ。
ここで頓宮の代打に西野が登場。クライマックスシリーズでは得点にも絡んでおり、勝ち越しへの期待も高まったが・・・結局は力のないフライで三者残塁。うーん・・・。
9回表は阿部が登板。一死から牧原がヒットで出塁し、打席には柳田。第2戦の9回にも同じような場面があった。そしてこの打席でも柳田は渾身のスイングを見せ、打球はセンターへ。一瞬ヒヤリとしたが、あと一伸びが足りずにセンターフライ。
その後デスパイネも打ち取り、2対2のまま9回裏に入る。先発した山岡も笑顔で守備陣を出迎える。打球が当たったことの影響はほぼないように見受けられた。
9回裏のマウンドにはモイネロ。まあ、彼しかない。もし延長になったら森、津森、そして復帰直後の又吉といった顔ぶれになるのだろう。そのモイネロに対して「50番先生」が持つ旗のごとく「執念」を見せられるか・・。「まだ負けたわけじゃありません! ただ負けそうなだけです・・・」という9回の口上も昔のことである。
一死から若月がヒットで出塁。そして福田も四球で続く。一打サヨナラのチャンスに期待の宗だが、一塁へのゴロ。二死ながら一・三塁となった。
打席には中川。引き続きサヨナラのチャンスということでバファローズベンチも身を乗り出そうという選手、一方で手を合わせて祈る選手、さまざまである。この日一番の緊張感がただよう。これまで再三のチャンスをつぶしてきたが、それも9回裏へのお膳立てだった・・となればいいのだが・・・。
そして2ボールから2ストライクとなり、5珠目。決して当たりは良くなかったが、中川の打球は三塁の横を抜けてレフト前へ。サヨナラタイムリーとなり、グラウンド、そしてスタンドは興奮の塊となった。まさかこんな形で試合が、そして日本シリーズ出場が決まるとは。
一通り盛り上がり、バファローズの選手たちがいったんベンチに下がった後で、三塁側ベンチからホークスの選手たちがグラウンドに登場した。今季最後の試合となったことで、ファンへのお礼の挨拶である。三塁側からレフト側に手を振り、一礼した後でそのままライト側、一塁側にも向かう。公式戦をまったく同じ成績となり、直接対戦の結果でバファローズ優勝となったが、クライマックスシリーズでも接戦を繰り広げた。今季通しての名勝負にスタンド全体から惜しみない拍手が送られた。また来年もいい勝負を見せてほしいし、私もチャンスがあれば福岡にも行きたい。
準備ができて、中嶋監督のクライマックスシリーズ制覇のインタビュー。吉田正の本塁打、中川のサヨナラタイムリーに対して「よく決めてくれた」として、2年連続の日本シリーズでの対戦となるスワローズに対して、「今年何とかやり返したい」と強い決意を示した。一塁側ベンチに戻ると、出迎えていた選手、スタッフたちを前にガッツポーズも見せていた。
そして表彰式。当初は予定されていなかったそうだが、やはり大阪のファンの前でクライマックスシリーズ制覇を決めたことで、改めて中嶋監督の胴上げが行われた。昨年、今年を通じて直接胴上げを見るのは初めてで、感激する。
まずは中嶋監督にクライマックスシリーズ制覇の優勝額が贈呈される。この後はMVPの発表で、第1戦、第2戦で活躍した杉本が表彰・・・と思いきや、第1戦、そして第4戦で本塁打を放った吉田正が受賞。杉本ががっくりとするのにスタンドからも笑いが起こる。
そして敢闘賞というべきパーソル賞には、「お前やろ」と選手たちから背中を押されて前に出かけていた宇田川・・・と思いきや、第1戦で好投した山本が受賞。こちらに対しては、宇田川を推すファンも結構いたようだが、まあ、日本シリーズでMVPを狙える活躍を期待しよう。
この後は選手たち、そして宮内オーナーをはじめとしたフロント陣、球団スタッフも交えての記念撮影。今季での勇退が決まっている宮内オーナー、ここは日本一での花道を飾ってほしいものだ。
最後にはクラッカーが一斉に鳴らされての祝砲で締める。球場内でこうした祝福の余韻に浸るのも何年ぶりだろうか。よきめぐり合わせに感謝、感謝。
まだ興奮冷めやらぬ中、ドームを後にする。さすがに大阪、東京とも日本シリーズの生観戦の予定はなく、今季ドームに来るのもこれが最後となった。この日の宿泊は西九条ということで阪神なんば線で移動。「ビジネスホテルアーバンティ西九条」はアットホームな感じの宿。線路とは反対側の部屋だが、大阪環状線の高架を行く列車の音が響く。線路側だとトレインビューの部屋だが、さすがに音が大きすぎるかな。改めて、テレビやネットのスポーツニュースを見て、この熱戦を振り返る。
翌16日は神仏霊場めぐりのため早朝から京都に移動する。その様子はまた改めて・・・。