まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

邪恋のイケメン神父

2018-11-04 | イギリス、アイルランド映画
 「ローズの秘密の頁」
 西アイルランドにある精神病院で、グリーン医師は40年以上も入院している老女ローズを診ることになる。戦時中に産んだばかりの赤ん坊を殺したという罪を否認し続けているローズは、グリーン医師に事件の真相について語り始めるが… 
 ダニエル・デイ・ルイスが最初のオスカーを受賞した佳作「マイ・レフト・フット」等の名匠ジム・シェリダン監督作品です。舞台も同じアイルランド。アイルランドといえば、やはり宗教問題と反イギリスを抜きには語れません。そのキ◯ガイじみた憎悪や混沌が、悲しいロマンスを通して描かれています。アイルランドの悲劇を映画で知るたびに、ああ今の日本に生まれてよかったと心の底から思ってしまいます。宗教問題や国際紛争とはあまり縁がない日本人からすると、何でそこまで激しく憎み合ったり傷つけあったりするのだろう、と理解できず暗澹となってしまいます。この作品でも、とても近代の話とは思えぬど無法でアナーキーなんですよ。村八分とかリンチ殺人が日常茶飯事みたいで、それに血道をあげてる様子が狂気的。そのエネルギー、もっと違うことに活かせれば、アイルランドも豊かな国になれたのでは…と思わずにいられませんでした。美しい自然以外何もない、金も学もない、ので差別や偏見で争うしかやることが他になかった、みたいな悲劇でしょうか。

 宗教って、人間を本当に救うのものなのかな~と、あらためて疑問を抱いてしまいました。この映画でも、宗教の名のもとで非道、極悪が横行。信仰を利用して、偉い人や教会が反抗的な者、都合の悪い者、気に食わないものを地獄送り。ローズも、不道徳な色情狂のヤリマンと見なされて、精神病院にブチこまれて制裁、拷問みたいな治療を強いられたりと、人権なんてないに等しいし。アイルランドの闇、深すぎます。自然はあんなにも清らかで優しいのに、住んでる人々のどす黒さ、狭量さときたら。ローズとマイケル、さっさと外国にでも逃げればよかったのに。

 事件は長い時を経て意外な展開、結末を迎えるのですが。ラスト近くはかなり急展開というか強引というか、トントン拍子すぎてご都合主義な感じが否めませんでした。グリーン医師の亡父が手紙を遺していたことを知らず、ちょっと探したらそれがひょっこり出てくるとか。40年以上も入院してたローズが、あっさり退院するとか。脚本、もうちょっと練られなかったの?

 ローズ役は、「ドラゴン・タトゥーの女」と「キャロル」で2度もオスカー候補になったルーニー・マーラ。一見おとなしそうだけど過激で大胆な役や演技で魅せる彼女ですが、今回は別に彼女じゃなくてもいいようなヒロインでした。日本の女優でもできそうな役は、彼女にはもったいないです。でも、今まで見た彼女の中でいちばん美人だったかも。それにしても。ローズみたいに、その気は全然ないのに勝手に男たちが寄ってくるモテ女って、ある意味不幸で気の毒。
 この映画を観たのは、ゴーント神父役のテオ・ジェームズ目当てです(^^♪

 ローズに邪恋し、ストーカーのようにつきまとい、彼女を陥れる卑劣なイカレ神父役なのですが、これがもしブサイク男優だったらもう気持ち悪くて不愉快なだけになるところを、テオみたいなイケメンだと狂おしい片想いにもがく可哀想な男、に見えちゃって萌え萌え♡好きだけど信仰と男尊女卑思考のせいで、素直になれず上から目線な態度をとってしまう、でも気遣いたい、優しくもしたい、という不器用なツンデレ神父なテオが、めっちゃ可愛かったです。ローズを監視するテオの鋭くもジト~っとした嫉妬の目が素敵でした。あの役には、無駄にイケメンすぎるテオでした。

 老ローズ役は、英国の大女優ヴァネッサ・レッドグレイヴ。ルーニー・マーラとは似ても似つかないのが気になったが。ローズと恋に落ちるマイケル役のジャック・レイナーも、テオほどのイケメンではないけど私が好きなタイプの風貌。ちょっとクリス・プラットっぽくてイケてました。ローズに恋する村の青年役は、TVドラマ「ポルダーク」でファンも多いエイダン・ターナ。なかなかの美形ですね。グリーン医師役は、久々に見たエリック・バナ。彼もいい男。精神科医にしてはガタイがよすぎですが。テオを筆頭に、メインキャラがみんな男前なイケメン映画でした。

 ↑ テオの新作「バグダッド・スキャンダル」が近日日本公開

 ↑HUGO BOSSのモデルも務めているテオ、セクシイすぎてジュンときます♡
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呪いの少年

2018-09-23 | イギリス、アイルランド映画
 「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」
 医師のスティーヴンは、自分のミスで死なせた患者の息子である16歳の少年マーティンを気にかけ親身に接していた。しかし、自分と家族に近づきすぎるマーティンを、しだいにスティーヴンは疎んじるように。そんなスティーヴンに、マーティンは不吉で不気味な予言を告げる。それは現実のものとなり…
 奇妙でユニークな佳作「ロブスター」のヨルゴス・ランティモス監督作品。カンヌ映画祭で脚本賞を受賞するなど、前作に続いて高く評価されました。この作品もロブスター同様、なかなか面妖で珍奇でした。意味不明、不可解なシーンや展開なのですが、何でこーなるの?!どうなっちゃうの?と、予測不可能さととんでもないことが起きそうな期待で惹きこまれてしまいました。私のような低能で感性が鈍い者には解からない意味やメッセージが、きっと隠されているのでしょうけど、ゲージュツ映画を気取った鼻につく高尚さはなく、面白いワケワカメさが魅力になってます。

 静かで淡々とした中、うっすらと神経に障る不気味さ、不穏さが不協和音のように漂っていて、落ち着かない気持ちにさせる。そんなイヤミスな感じは、ぜんぜん作風は違うけど何となくミヒャエル・ハネケ監督の作品とカブります。冷たく息苦しく鬱々しいハネケ監督と違って、この映画は病院やスティーヴンの邸宅など、白々しいまでに明るく清潔な空間と色彩で、それによって返って不気味さや不安感、違和感が浮き彫りに。

 マーティンの予言(呪い?)が、まるで真っ白なシーツに落とされた血がシミになってじわじわと広がっていくように、静かにゆっくりとスティーヴン一家を浸食していく展開は、ほんと???の嵐なのですが、こうなのかな?ああなのかな?と想像をかきたてられ、判断を委ねられる面白さが。こんなのおかしいだろ!なんてツッコミを入れるような映画ではありません。とにかく、マーティンが怖い!キモい!ヤバい!

 まさに呪いの少年マーティン。顔を見ただけで呪われそう。呪いもだけど、呪う前のスティーヴンへのストーカーみたいな言動も、かなり不快指数が高くて気持ち悪かった。なぜかコソコソと密会でもしてるみたいに会うスティーヴンとマーティン、まるで援助交際カップルみたいな怪しさも薄気味悪かったです。二人が美形だったら、さぞや腐を反応させたでしょうけど。オーメンの悪魔の子ダミアンみたいな存在なのに、ずっと礼儀正しく人懐っこい良い子キャラなところも、マーティンの不気味さ、怖さ。マーティンの呪いは、父を殺された恨みからというより、慕っていたスティーヴンに冷たく拒絶されての愛憎から?マーティンのいきなりの自傷行為とか、ラストのスティーヴンの悲惨すぎる決断と決行とか、うげげ?!何で?!と、恐怖とか絶望を通り越して、お口ポカ~ン、そして笑ってしまうシュールさでした。ロブスターと同じく、この映画もシュールなコメディと言えるでしょうか。
 スティーヴン役は、大好きなコリン・ファレル「ロブスター」に続いてのランティモス監督作主演です。

 ロブスターほどではないけど、今回のコリンもかなりでっぷりと恰幅がいいおっさん風貌です。でも、よく見ると肌とかまだ若くて、おなじみの悲しそうな表情とか、美しい瞳とか、どんな役、どんな見た目になっても魅力は不変。コリンはもうハリウッドの大作よりも、ヨーロッパの鬼才、俊英監督の個性的な小品のほうが魅力と実力を発揮できることが明白。これからもユニークな映画に出演して、味わい深い役者に成熟してほしいです。
 スティーヴンの妻役は、コリンとは「ビガイルド 欲望のめざめ」でも共演してたニコール・キッドマン。相変わらず美しいけど、コリンよりは明らかに年上。異常とか奇怪といった言葉が似合うニコキさん、この映画でももうそこにいるだけで怖い、フツーじゃないです。大胆すぎるヘアヌードとか、色気とかエロさなどは微塵もなく、そこはかとなくグロテスク。きれいなだけの女優は絶対やらない、できない演技を平然とクールにしてのける怪女優ニコキさんが好きです。
 この映画はやはり何と言っても、マーティン役のバリー・コーガンの怪演。「ダンケルク」でも、何この子?!顔がヤバい!と思ったけど、今回はそれがよく活かされた役で、もうハンパないインパクトです。ほんと気持ち悪いです。たまに森三中の大島に似て見えたのは私だけ?観客まで毒されそうになるほど、関わる人をみんな不幸にする猛毒カルマでした。ほんとなら演技も上手なイケメン、美少年俳優が理想なんだけど、独特すぎる世界観にはやはり、それに相応しい独特すぎる俳優が必要なんです。

↑この頃のコリン、神ってるカッコカワイさでしたわ~。おじさんになった今も、もちろん素敵です。アンソニー・ホプキンス共演の「ブレイン・ゲーム」が近日日本公開。デンゼル・ワシントンがオスカーにノミネートされた「ローマンという名の男 信念の行方」は、日本では劇場公開されずDVDスルー。ダンボの実写版や、スティーヴ・マックイーン監督の新作“Widows”、メル・ギブソン共演作品など、新作目白押しな働き者コリンです

 ↑ギリシャ人のヨルゴス・ランティモス監督、なかなかの男前さんではないか。エマ・ストーンを主演に迎えた最新作の時代劇「女王陛下のお気に入り」は、ヴェネチア映画祭で大絶賛され、来年のオスカー最有力との呼び声も高い傑作だとか。日本公開は来年2月!早く観たい!
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奥さまは醜聞がお好き

2018-08-08 | イギリス、アイルランド映画
 残暑お見舞い申し上げます猛暑が続いてますが、皆さまつつがなくお過ごしでしょうか。
 わしは夏風邪を引いてしまいました~仕事を2日も休んでしまい、職場に大迷惑をかけてしまいましたこれが若い頃なら、ああヤバイマズイと気に病んでたことでしょうが、ああ年をとると本当に図太くなるものなのですね。仕事?ああもうどーなってもええわ!クビにしけりゃすればいい!なんて、開き直って平然と寝倒れてた自分が怖かったです。甚大な被害をもたらした豪雨も、こんな投げやりな気持ちの要因かもしれません。元通りに復旧すれば、私もちゃんと生きねばと思えるようになるでしょうか?
 冬の風邪より夏の風邪のほうが、苦しくて治りにくいみたいですね。こんなに暑いのに、くしゃみと鼻水が止まらずマスク着用、喉が痛くて冷たいものも飲めないなんて、いったい何の拷問。皆さまも、なにとぞご自愛遊ばして、試練のような猛暑を乗り切りましょう!秋の気配が待ち遠しい!
 
「ある公爵夫人の生涯」
 18世紀後半のイギリス。貴族の娘ジョージアナは、英国きっての名門で大富豪のデヴォンシャー公爵に嫁ぐ。社交界の人気者として華やぎながらも、親子ほど年が離れ後継ぎが欲しいだけの公爵との愛のない結婚生活に虚しさを感じていたジョージアナの前に、初恋の男性であるチャールズが現れて…
 大好きなドミニク・クーパー出演作ということで観ました~。2008年、つまり10年前の映画なので、ドミ公は当時30歳。まだ青年っぽく、ピチピチの男前盛り!いつ見ても美味しそうな男!ジューシーという言葉がピッタリな役者です。毒にも薬にもならん、薄っぺらい無味無臭な日本のイケメンCM俳優を見慣れてると、ドミ公のデミグラスソースのような濃厚さ、味わったら無傷ではすまなさそうな危険な甘さが、いっそうデリシャスに感じられます。

 チャールズ役のドミ公、濃ゆくてワイルドなところが非英国的ですが、イケメン、美男でセレブでも庶民臭、品のなさをごまかせないアメリカ人俳優と違い、優雅な身のこなし、美しいブリティッシュイングリッシュなど、やはりイギリスの香り高き俳優。スラっとスレンダーな長身に、18世紀上流社会の衣装が似合うこと!時代劇だけでなく、ラブシーンも得意なドミ公。優しくてエロいキスと愛撫、ヒロインじゃなくてもうっとりします。脱ぎ男なドミ公、今回も引き締まった細マッチョ裸体を披露してます。恋人、というより愛人、情夫、ジゴロって感じがするところもまた、ドミ公の魅力で独自の個性です。

 カツラもイケてましたが、カツラをとった時の短髪が、何だか東映やくざ映画の下っ端やくざ風で、サラシ巻いて右手にチャカ、左手にドス、な姿も似合いそうで可愛かったです。ファンは必見な、スウィートで情熱的な恋人ドミ公ですが、ヒロインの夫役とか彼氏役ばかりでは物足りなさも。ドミ公一枚看板な主演作が観たいです。

 とまあ、ドミ公しか眼中になかったので、他に語ることが思い浮かばない💦あえて感想を述べるとしたら、ヒロインであるジョージアナには1ミリも好感や共感が抱けず、その身勝手で自由すぎる言動や生き方に反発や不快感を覚えました。非道い夫の仕打ちや貴族社会の因習に耐える悲しみのヒロイン、みたいに思ってほしかったのでしょうけど、全然そんな風には見えなかった。生半可に計算高くて狡猾な悪女よりも怖い、自分に酔ってる自分大好き女。悲劇のヒロインぶってるところが片腹痛かったわ。忍従とか貞淑とかいった、日本人が好きな女性の美徳とは無縁で、ギャーギャーとヒステリックにやりたい放題でしたし。彼女の産んだ子供たちが可哀想でした。みじめな最期を迎えるどころか、結局は大したダメージもなくめでたしめでたしみたいな、お気楽すぎる美味しい生涯には呆れてしまいました。でも、おしんみたいな辛気臭い女よりも、ジョージアナみたいなしたたかな女のほうが、見ていて面白くはあります。そして、モラルなさすぎで贅沢ざんまいな貴族生活には、ちょっと憧れますちなみにジョージアナは実在の人物で、あのダイアナ元妃のご先祖さまに当たるそうです。スキャンダラスな血筋なのですね~。

 ジョージアナ役のキーラ・ナイトレイは、かなり苦手な女優。美人ですが、女性的な優しさや柔らかさ、潤いがなく、圭角があってギスギスしてます。たまに顔が男に見えるし。めちゃくちゃ勝気そうで、意地悪そうなところも怖い。でも、クニャクニャしたブリっこ女優じゃない、キリっと毅然としたところが彼女の良さかも。デヴォンシャー公爵役のレイフ・ファインズは、フェミニストの敵みたいなトンデモ亭主役でしたが、優しそうで哀れな感じのおかげで悪い男には見えず、我が強すぎる若妻に苦労してるおじさんって感じでした。

 ジョージアナの母役はシャーロット・ランプリング。絵に描いたような打算的なママながら、シブくて怜悧な雰囲気がランプリングおばさまならでは。ジョージアナの親友ながらデヴォンシャー公爵の愛人になるリズ役は、「キャプテン・アメリカ」シリーズでおなじみのヘイリー・アトウェル。彼女も男顔ですね~。とんだ食わせ者なのか、それとも哀しい女なのか、どっちでもあるリズのキャラは興味深かったです。
 アカデミー賞の衣装賞を受賞しただけあって、きらびやかに派手ではないけど、清らかに華やかなコスチュームが美しく目に楽しいです。ロケに使用された実際の古城や館、庭園なども、ゆかしくも壮麗でした。デヴォンシャー公爵の本邸や別荘など、広大さといい整然さといい、管理や手入れが大変そうだった。

 ↑ マンマミーアの続編が近日日本公開となるドミ公の新作“The Escape”は、主婦が生活に疲れて現実逃避する話みたい。つまんなさそう。ドミ公はヒロインの夫役、といういつものパターン。しょーもないハリウッドアクション映画の脇役とか、だんだんB級俳優のにおいがし始めてることを危惧。そろそろオスカー狙えるような役を!実力や魅力は、エディ・レッドメインやバッチさんにも遜色なしなので、チャンスさえあればなんだけどね
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君と羊とBL

2018-02-20 | イギリス、アイルランド映画
 「ゴッズ・オウン・カントリー」
 イギリスのヨークシャーにある辺鄙な土地で、脳梗塞で身体に障害が残った父の代わりに牧羊をしている青年ジョニーは、孤独で荒んだ日々を送っていた。そんな中、手伝いに雇ったルーマニア人の季節労働者ギョルゲと、ジョニーは衝動的に肉体関係を結ぶ。戸惑いながらも、しだいに心優しいギョルゲに心を開くようになるジョニーだったが…
 農場が舞台のBLといえば、「ブロークバック・マウンテン」」や「トム・アット・ザ・ファーム」を思い出しますが、この作品は狂気とか悲劇モードはなく、どちらかといえばビタースウィートでロマンティックでもある、王道に近いBL映画でした。でも、荒涼とした自然や厳しい生活環境が、甘さよりも苦みを強くしています。あんな環境では、フツーの男女でもまともな恋愛は難しいでしょう。そしてこの映画、BLそのものよりも、ヨークシャーの厳しくも美しい自然と、過酷な牧羊のリアルな描写が見どころかもしれません。

 子羊の出産シーンや、死んだ子羊の皮を剥ぐシーンなどは、実録だったんだろうな~。石塀のフェンスを作る作業も、大変そうだった。酪農って、相当な体力気力がないとできない仕事だな~と、あらためて思いました。あと、現代の話とは信じがたいほど、原始的な暮らしぶりも興味深かったです。ネットも携帯もない、まるで世界から孤絶しているような寂寥や不毛の空気は、人や物で溢れた大都会よりも返って息苦しく、ジョニーの閉塞感がよく理解できました。田舎暮らしには憧れるけど、ジョニーみたいな生活は1日たりとも耐えられないでしょう。

 過酷な牧羊だけでなく、親父が厳格なだけでなく寝たきりになってしまい、その介護まで背負わされるとか、どんだけ~(死語)な気の毒すぎる、不運すぎるジョニーの青春無縁さですが、決して地獄な日々には見えなかったのが不思議。それはおそらく、目を洗うような自然の美しさのおかげかも。華やかさ派手さなどかけらもない、寂しく陰鬱な風景はとてつもなく清らかで静謐で、私たちの生活や人生には余計なもの、不必要なものが多すぎるんだよな~と、ジョニー一家のシンプルな清貧生活を見ながら思い知りました。
 羊の世話、羊の出産や死など命の貴さも、感動しろしろな動物映画やドラマと違い、ドキュメンタリータッチのリアルな描写で伝わってきました。ギョルゲが生まれたばかりの子羊を、人間の赤ちゃんのように大切に扱う姿に、ほっこり心温まりました。子羊が超可愛い!大きくならないなら、犬じゃなくて羊を飼いたいです。
 英国BL映画といえば、「モーリス」や「アナザー・カントリー」など耽美で優雅な美青年や上流社会がお約束ですが、この映画のカップルはごくフツーな見た目で、特別な才能があるわけでも数奇な運命の中にいるわけでもなく、貴族やブルジョアとは真逆な身分なのですが、切なくも微笑ましく、生々しくも優しいBLを奏でていました。

 ジョニーは、青春を犠牲にして家業の牧羊、そして父の介護と、本当に可哀想でいじましいのですが、不器用というかかなりのダメ男でもあって、見ていてイラっとします。ブサイクじゃないけど、これといって特徴や魅力のないフツーのルックス。ギョルゲが放っておけない、優しくせずにはいられない見た目とキャラにしてほしかったかも。逆に、ギョルゲは見た目もキャラも、なかなかの男前。濃ゆく男くさく寡黙でワイルドな風貌の彼が、ダメ男のジョニーを静かに優しく支えるのを見ながら、こんな恋人、夫がいたらいいな~と心底思いました。何でそこまで?と首を傾げたくなるほどの、ギョルゲのジョニーへの献身と忍耐に感銘。ジョニーを乙女扱いするのが萌え~でした。ジョニー役のジョシュ・オコナー、ギョルゲ役のアレック・セカレアヌの大胆かつ繊細なBL演技も、日本の自称俳優のCMタレントには不可能な素晴らしさでした。 

 男同士だとやはり、愛とか恋とかよりも先に性欲、なんでしょうか。ジョニーとギョルゲも、え?もうヤるの?なスピード合体、しかも明るい朝の屋外で。あんな寒そうな中、全裸で激しく絡み合う男ふたり。アソコが縮まないほどの強く衝動的な欲望(笑)。ヤった後、ぎこちなくもゆっくり心も近づいていく過程が、微笑ましくハートウォーミングでした。それにしても。行きずりの男相手に性欲処理したり、外国人と恋に落ちたり、あんな田舎でゲイ同士が出会う確率が高いのが不思議だった。私が気づかないだけで、周囲には結構BLが繰り広げられてるのかしらん?

 ↑ルーマニア出身のアレック・セカレアヌ、男前でした!他の出演作の彼にも会いたいものです
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スパイボーイ、スパイジェントルマン2

2018-02-02 | イギリス、アイルランド映画
 「キングスマン:ゴールデン・サークル」
 秘密スパイ組織キングスマンのメンバーとなったエグジーは、同じ訓練生だったチャーリーに襲撃される。謎の麻薬組織ゴールデン・サークルがチャーリーの背後にいることを突き止めた矢先、キングスマンは急襲を受け壊滅に陥ってしまう。生き残ったエグジーとマーリンは、アメリカのスパイ組織ステイツマンの本部で、死んだはずのハリーと再会するが…
 ブリティッシュ・スパイアクションコメディの快作「キングスマン」待望の続編!前作は飛行機の中で観たせいか、こういう映画はやっぱ映画館で観なきゃな~と、あらためて実感いたしました。第2弾も、ノリノリでキレッキレなアクション、大人向けの笑いに満ちたゴキゲンな仕上がりになってました。

 とにかくこのシリーズ、すべてが目まぐるしいんですよ。まるでカメラが踊ってるみたいな感じ。グルグル回ってビュンビュン跳ぶカメラワークなので、車酔いする人やジェットコースターが苦手な人が観ると、気分が悪くなってしまうかも。私は大好き!ハチャメチャだけど創意工夫を凝らしたアクションの数々は、相変わらずスタイリッシュでおよそ目を驚かすものですが、前作でたっぷりその斬新さを味わったためか、今回はお約束的が出た!な楽しさでした。おなじみのハイテク装置や武器、秘密兵器も漫画チックで楽しかったです。セットや小道具に金かけてるな~と今回も感嘆。でも、スパイ版マイフェアレディな味わいもあった前作に比べると、ブリティッシュテイストがちょっと薄まってたような。英国ファンには、そこが物足りないかも。

 キャストはスケールアップ!お馴染みのイギリスのスターに加えて、アメリカの大物俳優たちが参戦してます。英米あわせて4人もオスカー俳優が出演してます。ぶっちゃけ2017年版「オリエント急行殺人事件」より豪華かも。
 主人公エグジー役のタロン・エガートン、すっかり主役が板についてました。自信と余裕が感じられました。英国男子といっても、高学歴で名門出身の美青年じゃなくて、どう見ても高卒な下町の不良少年っぽいところが、返って個性的です。以前より逞しくなって、前作では七五三みたいだった英国高級スーツが、今回ははちきれそうなほどピチピチ!ガタイが良くなりすぎ?すごいガッチビ男子(ガッチリしたチビ)。イケメンではないけど、愛嬌ある童顔で可愛いです。たま~に、顔が丸くなって可愛くなった高橋由伸監督に見えた…のは目の錯覚?それにしてもエグジー、凄腕エリートスパイになっただけでなく、本物の王女さまと恋人同士になって、ラストには文字通りのシンデレラボーイに。すごい出世!高級スーツ姿やプリンスファッションよりも、下町ストリートボーイな時の彼がいちばんイケてました。ノシノシしたイカツい歩き方も、男らしくて好き。

 エグジーの師匠、ハリー役はもちろんコリン・ファース。彼なしの続編は考えられなかったけど、でもどうやって再登場させるの?な前作だったので、まさに驚喜な復活でした。ちょっと強引な気もしたけど、まあキングスマンの世界はナンデモアリですから記憶を失って、まるでボケ老人のような風貌と言動が、笑えたけどすごい切なくもあった。覚醒後も、ブランクのせいで鈍ったままなのが滑稽かつ痛ましくて。素敵な英国熟年だったハリーが、すっかり衰えた老人な感じになってたのも、エグジーの若さと成長とは対照的でした。大物ぶらずに主役を立てサポートに徹していたようなファース氏は、やはりハリウッドの強欲で目立ちたがりなスターとは違うな~と好感が増しました。マーリン役のマーク・ストロングも再登板。シブくてカッコいい彼がオチャメな演技、というギャップが素敵です。

 アメリカ側のスパイ組織ステイツマンの面々は、ジェフ・ブリッジズ、チャニング・テイタム、ハル・ベリーと華やかで濃ゆいメンツ。でも3人とも、そんなに出番も見せ場もありません。踊り病?に罹ったチャニングが、下着姿で踊る姿が笑えた。パンツのもりあがりのスゴさが平常時であれってステイツマンの秘密兵器は、カウボーイのムチや野球のバット&ボール爆弾、というのがアメリカンでした。イギリスがスコッチ、アメリカがウィスキーというのも初めて知りました。悪役である麻薬組織の女王ポピー役のジュリアン・ムーアは、極悪で狂ってるんだけどウフフ~ラララ~なフワフワな、すごく楽しそうな演技。彼女の60年代のアメリカンガールなファッションがインパクトあり。人間ミンチハンバーグとかロボット狂犬とかも狂ってるけど笑えた。

 並み居る大物たちよりも、まだ世界的にはそんなに知名度が高くない俳優たちのほうが、美味しい役、目立つ役を与えられていたような。中でも私の目を惹いたのは、前作でエグジーと同じスパイ候補生だったチャーリー役のエドワード・ホルクロフト。訓練で脱落して外道落ち、ポピーに改造人間?にされて、悪の手先になり果てたチャーリーですが、なかなかの活躍ぶりでした。「ロンドン・スパイ」での好演も忘れがたいホロクロフトくん、今後が楽しみな英国俳優です。ステイツマンの一員ウィスキー役のベドロ・パスカルも、かなり美味しい役でした。でも、最も強烈だったのは、ポピーに誘拐された英国の超大物歌手…

 エルトン・ジョンが、ご本人役!ド派手な橋田壽賀子?!まるで大阪のおばちゃんなキャラや、おネエ丸だしな設定など、よく引き受けたな~と感嘆。ちょこっカメオ出演なのかなと思いきや、ステイツマンの面々より出番も見せ場も多かった!めちゃくちゃ口が悪いのも笑えた。最終決戦シーンでは、ハリーを助けて大暴れ!エルトン御大、はっちゃけすぎ!私の大好きな名曲「ダニエル」を、ちょこっとだけ歌ってくれて嬉しかったです。
 パート3はあるのかな?トゥービーコンティニュードな終わり方だったけど。次はフランスのスパイ組織あるいは悪組織がいいな!ピエール・ニネとかタハール・ラヒムを起用して!
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男前の聖剣!

2017-11-09 | イギリス、アイルランド映画
 「キング・アーサー」
 イングランド王ユーサーの弟ヴォーティガンは、謀反を起こし王座に就く。城を逃れたユーサーの息子アーサーは、拾われた娼婦館で逞しく育つ。ヴォーディガンはアーサーを探し出し抹殺しようとするが…
 これまで何度も映画化された、有名なアーサー王のエクスカリバー伝説。恥ずかしながら、どれも未見な私。なので、この最新版アーサー王映画は、予備知識や比較対処なしで観たのですが、すごく面白かったです!史実じゃなくて、ファンタジー冒険劇?日本でいうと、ヤマトタケルの神話と同系列でしょうか。悪い魔術師や魔物、湖中の妖精など、ヴィジュアル的にも目に楽しかったです。基本的にLOTRとかハリポタとかファンタジーは苦手な私が、どうしてこんなにも楽しめたのでしょう。それは恐らく、内容よりもガイ・リッチー監督の演出センスが好きだから。時代劇なのに現代劇風なところが、リッチー監督らしかったです。最近はあまり評価されていないリッチー監督ですが、私はどの作品も好きだな~。荒れくれた粗削りさの中にも、才気あるスタイリッシュさがあるところが好き。野郎どもの小粋な会話もいい感じ。実はこーなっていた的巻き戻し解説とかも、いつものリッチー節。あと、女がほとんど出てこない、男祭り映画なところも。アーサーをはじめ、みんな癖があるけど男気あふれていて(子どもでさえ)、個性的ないい男ぞろい。男くさく軽妙なテイストが、私には美味しかったです。
 アーサー役のチャーリー・ハナムが、いい男!

 初めて彼の出演作を観たのですが、噂通りの男前ですね~。いかつくゴツく見えるけど、すごいスタイルの良さ!足、長っ!そして、すごい肉体美!あれは、脱いで見せるためのカラダですよね~。男らしいけど、胸焼けしそうな濃いフェロモンむんむんではなく、色白でブロンドなため薄口なところとか、ワイルドだけど粗野じゃないところなどは、さすがイギリス男。

 ふんがー!!と上半身裸でシャドーボクシングするシーンが、脳みそまで筋肉男っぽくて好き。強靭な体もですが、アクションもキレがあって迫力あり、格闘家みたいに屈強そう。頑張って鍛えました!肉体改造しました!と日本のイケメン俳優がよく自慢そうに上半身裸になるけど、チャーリー・ハナムとかに比べたら貧相な子猿です。それにしても、あのカラダをキープするのって大変なんだろうな~。演技の稽古よりも鍛えるほうに時間がとられてそう。

 類まれな肉体美と、熱く激しいファイティングシーンで魅せてくれたチャーリー。クールで無骨だけど、笑うと少年のように可愛いところも素敵です。イギリス人で、イカついけど薄い風貌、荒っぽい男らしい役、といえば。ちょっとトム・ハーディとカブるチャーリー。第二のトムハ路線も狙えそうなチャーリーですが、小柄なゴリマッチョなトムハと違って、チャーリーは長身スマートで引き締まったルックスなので、トムハが好むイケメン崩しのイカレた役ではなく、正統派のカッコいいアクションや恋愛ものに出てほしいものです。
 アーサーの仲間役、ジャイモン・フンスーも相変わらずカッコよかった。雄々しくて威厳があります。いつも脇役なのがもったいないほど。アーサーの敵であるヴォーディガン役は、リッチー監督の「シャーロック・ホームズ」シリーズでワトソン役を演じてるジュード・ロウ。美男の名残はあるけど、すっかりおじさんになりましたね~。M字な頭髪が相変わらず寂しかった。英国美男の名をほしいままにし、数々の主演作が作られたジュード・ロウも、最近は脇役が専らみたいですね。隔世。アーサーの父ユーサー役のエリック・バナもいい男でした。でも彼、時代劇で同じような役が多いような?あと、リッチー監督の友人である元人気サッカー選手が、「コードネームU.N.C.L.E」に続いてゲスト出演してます。チョイ役ですが、前作よりも映ってる時間も長く、台詞も多かったです。イケメンだけど、やっぱ俳優のようなスクリーンで輝く魅力やオーラはないですね。

 ↑チャーリー・ハナム、my 英国イケメンのベストテン入り!TVドラマ「サン・オブ・アナーキー」も観よっかな~。チャーリーの新作“'Papillon'”は、スティーヴ・マックウィーン主演の「パピヨン」のリメイクです
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車上生活の迷惑老婆!

2017-10-27 | イギリス、アイルランド映画
 「ミス・シェパードをお手本に」
 新居に越した劇作家のアランは、長年車上生活をしている老女、ミス・シェパードと出会う。住民に煙たがられながらも、自由に我が道を行くミス・シェパードに辟易しつつ、いつしかアランは彼女の生活を支えるように。ミス・シェパードには誰にも言えない過去があった…
 高齢化と迷惑住人、という身近で深刻な社会問題について、いろいろ考えさせられました。ミス・シェパードもアランの老母も、悪い意味で元気すぎます。足腰がきかなくなった、ボケ始めた、でもなかなか死なない、死ねないんですよ。医療の発達と福祉の充実のおかげで、本来ならとっくに来てるはずのお迎えが来ない。ミス・シェパードも、昔なら行き倒れ、野垂れ死にして無縁仏になるはずが、周囲の人や社会の気遣いや手厚いケアのおかげで、長寿をまっとうしちゃうし。でもそれって、お年よりにとっては極楽なのか、それとも生き地獄なのか。ミス・シェパードの尊厳を失うほどの老醜や、社会への迷惑を見ていて、長生きなんてちっとも幸せなことじゃない、とあらためてゾっとしました。心身ともに苦痛なだけでなく、周囲にとって忌むべき存在となってまで長く生きたくない。けど、多くの人間にとっては避けられない人生の終着。どーすりゃいいんだろ、と怖くて夜も眠れなくなります。

 ヒロインのミス・シェパードですが。彼女のどこをお手本にすればいいのでしょうか。こうはなりたくない!なってはいけない!な、むしろ反面教師にしたいような、常識もモラルも通用しない迷惑老人っぷりでした。勝手に強引に他人の家の前、庭に入り込んで車上生活。ゴミや糞尿も撒き散らす不潔さ、言動の憎々しさ頑なさ、厚かましさには、老人だからと許せないものがありました。周囲の親切や小心さにつけこむ狡賢さにも腹立ったわ~。自由に生きる=他人に迷惑をかける、じゃダメだと思うのです。精神的に疾患がある、という設定だったので納得。そして、ミス・シェパードの図々しさ同様、アランを筆頭とする近隣住人の寛容さにも呆れた。イギリス人って、あんなに人が善いの?!ボケた実母は施設に入れて、ミス・シェパードはそばで面倒をみるアランに違和感を覚えましたが、作品のネタとしてミス・シェパードを必要としていた部分もあったのでしょうか。作家はやっぱ、業が深くないとできない職業なんですね。
 ミス・シェパード役は、英国の至宝的名女優のマギー・スミス。もともと舞台で好評を博した役を、そのまま映画版で再演したとか。実に憎々しい意地悪ばあさんっぷりなのですが、周囲が従ってしまうのも理解できるような凛とした威厳が、単なる老女優ではないことを証明しています。40そこそこで引退する某人気歌手を、多くの人は潔いとかカッコいいとか賞賛してるけど、私は高齢になっても映画やTV、舞台で活躍し続けているマギー・スミスのほうが、偉大で尊敬に値すると思います。ミス・シェパードに負けず、元気に仕事を続けてほしいものです。

 ゲイであるアランが新居に次々と引っ張り込む若い男たちの一人として、大好きなドミニク・クーパーがカメオ出演してます。超チョイ役ですが、やっぱ色男!ドミ公、ゲイにもモテそうだもんね。70年代の髪型、ファッションも似合って、何しても絵になる男です
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空でも海でもBOMB BOMB BOMB!

2017-09-13 | イギリス、アイルランド映画
 「ダンケルク」
 第二次世界大戦下のフランス北部ダンケルクで、40万人の連合軍がドイツ軍の猛攻により追いつめられていた。彼らを救うべく、イギリス空軍の戦闘機や民間の船がダンケルクへと向かうが…
 話題の作品をやっとこさ観ることができました~(^^♪
 今や新作が最も待ち望まれているクリストファー・ノーラン監督。やっぱノーランだよね、と言えば意識高い系の映画ファンとして認知される昨今ですが、悲しいかな私は意識低い系…決してつまんないとかワケワカメとは思わないし、ユニークで斬新だな~と感嘆しつつも、もてはやされぶりにピンとこないんですよね~。なので、この新作を観れば今度こそ意識高い系のノーラン信者になれる?と期待してたのですが。やはりいつもと同じで、面白かったけどスゴさがいまいち理解できない、という感想でした。どんだけ私、意識低いのよ。ノーランやっぱ最高~♪とか言える映画ファンになりたい~。
 この新作も、「ダークナイト」や「インセプション」同様に独特な映像、カメラワークで、圧倒されるやら惹きこまれるやら、これぞ映画!TVドラマの延長とは違う!な迫力とスタイリッシュさでした。これ、どーやって撮影したんだろ?な驚異に満ちていました。CGや特殊効果もふんだんに駆使したんだろうけど、昔と違ってそれがバレバレじゃなく、ほんとに爆撃したり撃沈してるとしか思えないリアルさに感嘆。

 主人公の兵士が、次々と襲いかかってくる危機から逃げ惑い、決死で難を回避する姿が、まるで戦争もののRPGみたいだった。絶体絶命の状況でも、ナンダカンダでスルっと助かって生き延びる主人公の強運にも驚嘆。平和な日本でバナナの皮で足を滑らせて頭打って死ぬ人もいれば、この映画の主人公のように爆弾が降ってこようが沈む船に閉じ込められようが、ぜったい死なない人もいるんですよね~。
 映像的、演出的には才気がほとばしってましたが、人間ドラマ的にはめっちゃ薄かったです。ただ単に逃げて戦うだけ、みたいな。感動とか衝撃はとほとんどなかったのが残念。人間ドラマよりも、映像重視なところがノーラン監督らしい。同じ第二次世界大戦映画なら、「ハクソー・リッジ」のほうがテーマが痛烈で、戦時下の人間の描写にもインパクトがありました。イギリス人が観たら愛国心をくすぐられるのかな?でも、鼻につくような英国万歳!なテイストもなかったです。反戦的なメッセージ色も特に感じられなかった。名誉ある撤退、みたいな描き方にはちょっと鼻白んでしまいました。過酷な戦場をサバイバルすることも立派だとは思うけど、やっぱ負けて逃げる姿はカッコよくは見えなかった…
 この映画を観に行ったのは、もちろんノーラン監督作だからではなく、トム・ハーディが出演してたから(^^♪

 ノーラン監督のお気に俳優であるトムハ、今回も英雄的な活躍をする戦闘機のパイロット、という美味しい役をもらってました、が。「ダークナイト ライジング」同様に、ずっとマスクかぶっていて顔がほとんど隠れてるせっかくの男前が、もったいない~。ほぼ目と声だけの演技なのですが、いい男であることは隠せません。目だけでも、兵士役のエキストラたちとの顔面偏差値の違いがわかります。

 スピルバーグ監督の「ブリッジ・オブ・スパイ」でオスカーを受賞したマーク・ライランスが、イギリスからダンケルクまで兵士を救うために海を渡ってくる民間船の船長さんを好演。海の男というより、古書店の店長って感じの風貌でしたが。これまたノーラン監督のお気に俳優であるキリアン・マーフィや、「オリエント急行殺人事件」リメイクも楽しみなケネス・ブラナなど、映画ファンにはお馴染みの英国俳優も顔を見せてます。あと、英国の人気アイドルグループ、ワンダイレクションのメンバーだったハリー・スタイルズの映画デビュー作としても話題に。でも私、途中までどれがハリーくんなのか全然わかんなくて特別なきらめきとか存在感、カリスマ的魅力とかは感じなかったです。アイドルのハリーくんよりも、パイロット役のジャック・ロウデンのほうが目を惹くイケメンでした。

 女っけが全然ない男祭り映画なのですが、まったく男くさくない、どこか冷たくて乾いた感じなのも、ノーラン監督らしかったです。せっかく男だらけなのに色気がない映画ばかりだから、ノーラン監督にそんなに魅力を感じないのかな。

 ↑マッドマックス続編など、新作目白押しなトムハ。TVシリーズの「TABOO」がスカパーで放送!み、観たい!
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美しき遺産争族の館

2017-09-04 | イギリス、アイルランド映画
 「ハワーズ・エンド」
 20世紀初頭のイギリス。文化的な中産階級のシュレーゲル家の次女ヘレンは、裕福なウィルコックス家の息子と浮名を流してしまう。そんな妹を気遣う姉マーガレットは、ウィルコックス家の当主であるヘンリーの妻ルースと親しくなる。病で余命いくばくもないルースは、マーガレットに愛着ある別荘ハワーズ・エンドを贈ろうとする。しかしルースの死後、彼女の遺言書はヘンリーや子どもたちによってもみ消されてしまい…
 「眺めのいい部屋」「モーリス」に続き、ジェームズ・アイヴォリー監督がE・M・フォースターの小説を映画化。前2作以上に高く評価され、アカデミー賞でも主要数部門でノミネートされ、主演女優賞、脚色賞、美術賞を受賞しました。

 最近、こういう格調高い文芸作品、作られなくなりましたね。ララランドとかムーンライトとかも悪くないのだけど、たまにでいいので庶民には縁のないリッチでハイソな世界を描いた映画も観たい。TVシリーズの「ダウントン・アビー」が大人気でしたが、やっぱ何かTVよりも映画のほうが芳醇で奥が深いんですよね~。そして、同じお金持ちの話でも、アメリカの大富豪や成金セレブと、英国の貴族や上流社会とでは、まるで違います。この映画の人々は、まったく贅昧三昧じゃない、むしろ吝嗇なんだけど、生活のためにあくせく働いたり、家事や育児に追われたりといったドメスティックな苦労など気配もなく、みんな優雅にキチンとした趣味の高い日々を送ってるんですよ。ああいった生活、本当に憧れます。私も贅沢はできなくてもいいので、きれいな屋敷で大勢の召使いにかしずかれて、生計を立てていくことを気にせず暮らしてみたいです。

 この作品は、「眺めのいい部屋」や「モーリス」のような恋愛映画ではなく、どちらかといえばイギリスの階級社会の中にある格差や軋轢に右往左往したり、お金や土地のことで揉める人間模様をメインに描いてる映画です。階級差は古今東西ですが、イギリスのそれは歴史的にもお国柄的も、とりわけドラマになりやすい面白さを孕んでますよね~。露骨でありながら慇懃でもあるところが、ほんと英国って感じ。この映画では、シュレーゲル姉妹と関わりをもつレオナルド・バストという青年が、労働階級であるがために翻弄されたり辛酸をなめたり屈辱を味わうのですが、階級差ってほんと理不尽で不公平だよな~と、みじめな彼を見ていて同情せずにいられませんでした。「モーリス」の森番アレックもそうでしたが、頭も性格も良くても、逃れることができない、あきらめることのほうが圧倒的に多い身分の悲しみに暗澹となります。私も似たような身分だし…あと、同じ中産階級でも、文化的なシュレーゲル家と現実的なウィルコックス家の価値観の相違も興味深かったです。
 アイヴォリー監督の文芸作はいつもキャストが素晴らしいのですが、この作品はとりわけ行き届てる感じ、集大成的な顔ぶれとなっています。ヘンリー役はアンソニー・ホプキンス、ヘンリーの後添えとなるマーガレット役はエマ・トンプソン。

 ホプキンスおじさまは、何かもうレクター博士にしか見えなくてでも、ハリウッドの大御所俳優にどんな高い演技力があっても、ハワーズ・エンドの主人役はできないでしょう。英国的な雰囲気、貫禄、品格はさすがイギリス名優です。ちょっとズルくて裏表があるところなど、英国人っぽい人間臭さもホプキンスおじさまならでは。最も美味しい役マーガレットを好演し、その年の主演女優賞を総なめにし、オスカーにも輝いたエマ・トンプソンの、大真面目なんだけどちょっと笑えるユーモラスな味わいが秀逸。彼女のテキパキシャカシャカした動きとか、ひとが善すぎて板挟みになってオロオロな表情とか、かなりコミカルです。知的な才媛だけど、それをひけらかすことがない慎ましさも、英国女性らしい魅力。顔も演技も、ちょっと高畑淳子に似て見えたのは気のせい?
 アイヴォリー監督作品の常連だったヘレナ・ボナム・カーターが、ヘレンをチャーミングに演じてました。

 実際にも貴族出身のヘレボナさんですが、しがらみや因習に縛られない自由奔放なお嬢さまを演じさせたら、やはり右に出る者はいません。めっちゃ勝気でアグレッシヴなところも彼女らしい。いつもに増して、眼光鋭いヘレボナさんでした。時代劇の衣装が誰よりも似合うところも、彼女ならでは。この映画では仲良し姉妹だったけど、後にヘレボナったらエマ・トンプソンからケナス・ブラナを略奪しちゃうんですよね~。映画よりも面白い私生活でのドロドロ関係です。
 ヘンリーの妻ルース役は、大女優のヴァネッサ・レッドグレイヴ。前半だけの出演でしたが、アンソニー・ホプキンスが可愛く見えてしまうほどの存在感の強さ。哀れなレオナルド・バスト役は、エマ・トンプソン主演の「キャリントン」でも典型的な英国美青年だった、最近はドミニク・クーパー主演のドラマ「フレミング」などバイプレイヤーとして活躍してるサミュエル・ウェスト。モーリスことジェームズ・ウィルビーが、ヘンリーの長男役。モーリスとは打って変わって、スノッブでセコい役でした。

 この映画の主役は、やはりハワーズ・エンドでしょうか。決して壮大なる館ではないのですが、優美さと安らぎに満ちていて、こんなところで引きこもりたい~と、心の底から思ってしまいました。オスカーを獲っただけあって、ハワーズ・エンド内やシュレーゲル姉妹の家とかの室内装飾、ティータイムのセットでさえ、趣深い美しさです。 
 ジェームズ・アイヴォリー監督は、とんと新作を発表しなくなりましたね。亡くなったわけではないようだけど、ご高齢なのでもう引退状態なのでしょうか。
コメント (3)
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女に参政権があって悪い?!

2017-08-24 | イギリス、アイルランド映画
 「未来を花束にして」
 20世紀初頭のロンドン。夫と幼い息子がいるモードは、家事と洗濯工場での苦役に明け暮れる日々を送っていた。折しも世間では、女性の参政権を求める運動が活発化しており、モードも活動家のイーディスに誘われ運動に参加するようになるが…
 女性の参政権を求める運動“サフラジェット”を描いた作品。ここまで超直球なフェミニスト映画、久々に観ました。当時の女性の生きづらさに胸を傷めたり、理不尽で不公平な社会に憤ったりするより、女ってやっぱ怖い!と戦慄してしまう映画でした何だろう、豊田真由子氏に感じたザワザワ感に似てるというか…もちろん、女性の権利を求めて苦闘するヒロインたちは、他人を見下し貶め虐げる豊田まゆゆのような醜さ、歪みはまったくありません。でも、尋常ではないヒステリックさ、常軌を逸した過激な言動、混沌とした狂気的な思考など、豊田まゆゆとうっすらカブってしまって

 参政権を求める運動が、ほとんどテロ行為なんですよ。店に投石してウィンドウぶち割ったり、郵便ポストに爆発物仕掛けたり、政治家の別荘を爆破したり、これしか方法がない!と妄信して暴走する女たちに、感動や共鳴どころか恐怖しか覚えませんでした。腐った世の中を良くしたい!という理想は立派なのですが、手段が暴力なのが日本赤軍とかと同じなんですよね~…過激な活動の極めつけが、国王への直訴。あれ、ほとんど暗殺未遂じゃん?!自爆テロと同じ。王さま、大丈夫だったの?!王さまが可哀想だった。とにかく、必死すぎるフェミニズムにはドン引き。「エル ELLE」のほうが、よっぽど女性のほうが男よりすぐれている!女性万歳!と思える映画でした。
 でもまあ、女たちが追いつめられて暴走するのも解かるような、社会と男たちの非道さです。女なんか、家畜同然な扱い。出てくる男どもが、そろいもそろって卑劣で非情。あんなクズ、ゲスばかりではなかっただろうけど。デモする女たちを殴る蹴るとか、紳士のイメージな英国男性が!とショッキングでした。諸悪の根源は男!と言わんばかりの内容には、田島ヨーコ先生も拍手喝采でしょう。過激な女たち同様、外道すぎる男たちも怖かったです。

 参政権がなくても、男に大事にされ守ってもらえる上流社会に生まれてたら、モードも女性運動なんかに関わらなかったんだろうな~。とにかく当時のサフラジェットのおかげで、女性の地位は向上し、男と対等に渡り合える世の中になったのですね。ありがたいことですが、せっかく女性が権利や権力を得ても、豊田まゆゆや稲田トモちゃんみたいな人たちも後を絶たない。いつまで経っても、これだから女は…と嗤われそうですね
 モード役は、英国の若き演技派女優キャリー・マリガン。男たちにモテモテな華やかでセレブなヒロイン役だと違うだろー!!by 豊まゆ だけど、こういった地味で暗い情念ある貧乏女役はドンピシャ。見た目は小柄で弱弱しいけど、鋼の精神を秘めたタフネスも彼女の魅力でしょうか。
 モードの夫役は、大好きなベン・ウィショー。

 ベン子さん、珍しく男らしい役ゲイ役やらせれば右に出る者なしなベン子さんですが、奥さん子どもがいるストレートな男役も違和感ありません。全然ゲイゲイしくありませんでした。ベン扮する夫、女性運動にのめり込むモードを理解せず、家から追い出したり子どもから引き離したりするのですが。そんなに悪い男じゃなかったような。最初の頃は、ちょっと亭主関白だけど妻子に優しい旦那だったし。当時の常識や因習の中でしか生きられない狭量で無知な男の愚かさ、切なさが、ベン子さんのイライラ顔、悲しそうな狼狽顔から伝わってきました。

 イーディス役のヘレナ・ボナム・カーターは、サフラジェットを弾圧してた英国首相のひ孫に当たるとか。因縁なキャスティングですね。女性運動の指導者役で、メリル・ルトリープが登場。メインキャスト扱いされてますが、超チョイ役です。

 ↑ ベン子さんの新作は、パディントン続編、そして名作メリーポピンズの続編です🎥
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