まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

哀しみの性生活不一致!

2014-07-10 | イギリス、アイルランド映画
 ちょっと今さらな話題ですが…日本中を震撼?とさせた、あの号泣議員ののちゃんこと野々村竜太郎氏について…
 あの号泣会見、近年稀に見る衝撃的な映像でしたよね~。はじめ、私も多くの視聴者同様に、お笑いタレントのコントかと勘違いして、すげー何これ?!誰これ?めっちゃ笑える~!と、その狂態にショック&爆笑だったのですが、え?!これリアルなの?!しかも、本物の県会議員?!と判明した瞬間、爆笑は戦慄に代わったのでした…

 50前のおっさんが、恥も外聞もなく半狂乱で泣きわめいている姿は、醜悪を通り越してホラーですよ。精神を病んでるのかな、としか思えなかった。言い訳にも主張にもなってない、わけのわからない狂った発言なんか、いま流行りの脱法ドラッグの影響?!かと疑ってしまった。兵庫県民の方々にとっては、狂人キャラといい不正疑惑といい、こんな人を議員に選んでしまったという後悔と憤懣で、笑うに笑えないトンデモ人物ですよねえ。型破りで破天荒な人は大好きですが、ののちゃんみたいに他人にとって迷惑で不愉快で恐怖な人は、単なる異常者。私も気を付けたいです

 「ライアンの娘」
 20世紀初頭、独立運動の気運が高まるアイルランドの寒村。パブ経営者ライアンの娘ロージーは、年の離れた教師チャールズと結婚するが、彼女の若い肉体は満たされることはなかった。そんな中、村にドリアンというイギリス人青年将校がやって来る。ロージーとドリアンは強く惹かれ合い、やがて人目をしのぶ関係となるが…
 「アラビアのロレンス」や「ドクトル・ジバゴ」などの巨匠、デヴィッド・リーン監督の作品。美しくもシビアな不倫メロドラマです。壮大なスケールと格調の高さで、数々の名作を世に送り出したリーン監督。この作品も、3時間近い超大作です。集中力のない私でも、1回休憩だけで完観することができたほど、ドラマティックで流麗な展開にグイグイ惹きこまれました。
 お話じたいは…夫との夜の夫婦生活に満足できず悶々としてた若妻が、若い男とのセックスに溺れて…という、日本の昼ドラでやっても陳腐さを否めないもの。ハリウッド映画の凡百な監督なら、エロシーン満載のチープな映画になってただろうところを、さすが巨匠デヴィッド・リーン監督、悲痛で哀切なメロドラマに仕立てあげているのです。欲求不満の若妻、寝取られ夫、間男の、はたから見れば滑稽で、本人たち以外からするとどーでもいいような下半身スキャンダルも、演出しだいではこんな美しく哀しいラブストーリーに化けるものなんだなあ~と感嘆。

 この映画の素晴らしすぎる点は、やはり何と言ってもアイルランドの厳しくも美しい風景を、ドラマを盛り上げるために巧みに活かしているところでしょう。どのシーンも、ほんと絵画のような美しさです。蒼く荒涼とした海や、激しい波に打たれる岩、目も眩むような断崖、森の緑etc.特に、ロージーとドリアンが初めて結ばれる森のラブシーンは、こんなとこで青カンしたら気持ちいいだろーな!と思わせる夢幻的な美しさでした。自然の脅威でさえ、圧巻の壮麗さ。逆巻く嵐のシーンなど、どうやって撮影したのでしょうか。CGを見慣れた目には、驚異的な映像でした。いろんな映画の舞台になってるアイルランドですが、この映画ほど美しく撮られてる作品はないのではないでしょうか。アイルランド、ますます行ってみたくなりました。
 自然は美しいけど、住んでる人々の狭量さ、卑小さはドン引きものの醜悪さです。はっきり言って、八つ墓村より怖い村です。イギリスへの反発と抵抗感で心がささくれだって鬱屈してるだけでなく、仕事がなく貧乏で、教養もなく無知、ヒマと体力と偏狭なモラルを持て余している村人が、障害者のマイケルをいじめたり、レジスタンス活動に大興奮して総出で協力したり、不倫がバレたロージーをハブったりなぶったりする姿は、集団ヒステリーっぽい狂態で戦慄ものでした。あんな村、ぜったい住みたくない~!冷たく荒ぶる出口のない海に囲まれてると、あんな風に心が閉塞感と絶望で充満してしまうものなのでしょうか。

 ロージー、はじめは高慢で身勝手な欲求不満娘にしか見えず、チャールズが可哀想!とか思ってたのですが、性生活の不一致なんて、やっぱ深刻だよなあ、ガマンなんてできないよなあ、と同情も。いいタイミングで、若いイケメンが現れてよかったね!ヤるのが速攻すぎて笑えたが。セックスの相性がピッタリな相手って、ひと目見た瞬間でビビビ!ときちゃうものなのでしょうか?そんな経験、一度はしてみたいものです高すぎる不倫の代償を払うロージーですが、ニヒルなまでに毅然としてるところはカッコよかったです。時代と場所が違えば、自由奔放なトンでる女(死語)として、モテモテでブイブイなバラ色の青春を送ってたかもしれないロージーでした。演じてるサラ・マイルズの、強く理知的な、簡単には泣いたり弱さを見せたりしないヒロイン像は、いかにもイギリス女優って感じです。もうちょっと初々しい可憐さがあっても、とは思ったが。
 チャールズが可哀想すぎて…みじめだよなあ。迫ってきたのはロージーなのに、いざ結婚してみると、セックスがアレだからと絶望失望されるなんて。男のプライド、ズタズタじゃん。彼のセックスのどこがダメなのか、はっきりとした描写はなかったのが気になる。裏切られても非道い目に遭っても、ロージーを許し愛する彼の高潔さ、優しさが悲しかったです。愛する者は寛容で、愛される者は残酷、より愛したほうが負け、ということなのですねチャールズ役のロバート・ミッチャムは、見た目がたくましく男らしいし、精力も強そうだったので、もうちょっと文系優男の俳優のほうがよかったのでは。心と体に傷を負ったドリアンの刹那的なキャラも、悲劇のメロドラマによく合ってました。演じてるクリストファー・ジョーンズの、翳りのある悲しげな美男子ぶりも印象的です。
 キャストの中で最も強烈なのは、知的にも身体にも障害のあるマイケル役のジョン・ミルズです。

 え?!ちょっとヤバいのでは?!と怖くなるほど、リアルな見た目と演技です。ピュアで哀れな天使ではなく、どことなく不吉な疫病神っぽいキャラ。チョコマカと動き回って余計なことをして、悪意のかけらもなく不幸や悲劇を運んでくるマイケルに、無邪気も時には罪深いものなのだなあ、と暗澹となってしまいます。マイケルを台詞なしで怪演したジョン・ミルズは、アカデミー賞助演男優賞を受賞しています。
コメント (2)
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