「COLD WAR あの歌、2つの心」
1949年冷戦下のポーランド。ピアニストのヴィクトルと歌手志望のズーラは、音楽舞踊学校で出会い恋に落ちる。スターリン崇拝強制を嫌うヴィクトルは、ズーラと共に西側へ亡命しようとするが、ズーラはそれを拒絶。数年後、パリで暮らすヴィクトルの前に、公演のためフランスに来たズーラが現れるが…
去年のカンヌ映画祭で監督賞を受賞し、今年のオスカーでは外国語映画賞だけではく監督賞、撮影賞にもノミネートされ話題となったポーランド映画。傑作との評判もですが、大人の恋愛映画というが私が観たいと思った最大の要因です。もういい加減、漫画映画、学芸会演技には飽き飽き、辟易してるので(好きなイケメンが出てるので観ちゃうけど)。この映画のヴィクトルとズーラ、フランソワ・トリュフォー監督の秀作「隣の女」を私に思い出させました。離れていたら狂ってしまう、そばにいたら燃え尽きてしまう…そんな情熱的で破滅的な恋なんて、心が冷めてる情の薄い人や、常識からはみ出すことを恐れる小心な人(どっちも私やんけ)の目には、愚かな痴情としか映らない、けど同時に、強い憧れも抱いてしまうのです。
才能も地位も安全も、命さえ投げうってしまう誰かと出会える運命って、何という甘美な不幸でしょう。無味無臭な幸福よりも、生きてる実感を味わえそう。くっついたり離れたりを繰り返すヴィクトルとズーラが単なるバカップルに見えなかったのは、音楽と冷戦という特異でドラマティックな世界に二人が身を置いていたからでしょうか。とにかく劇中に流れる音楽が印象的で、物語に情感と哀感をもたらす素晴らしい効果。特に主題歌とも言える、邦題にも使われた「二つの心」のフレーズ、オヨヨ~♪が耳に残ります。デュエットのポーランド版も、ズーラがソロで歌うジャジーなパリ版も好き。
ワルシャワ、ベルリン、ユーゴスラビア、パリと、ヨーロッパ各地でのめくるめく展開もドラマティック。冷戦下の人々の生活や、スターリン崇拝強制の様子も興味深かったです。今どきあんなプロパガンタパフォーマンスしてるのは、将軍さまが支配するあの北国だけ?政治色はそんなに濃くなく、あくまで恋愛の障害の一つな扱い。当時の東欧、もっと過酷で息苦しい生活を余技なくさえてるのかと思ってたけど、ヴィクトルもズーラも結構自由に動き回ってたので意外。二人の、ていうかズーラの性格が最大の障害で、あれじゃあポーランドだろうがアメリカだろうが関係なく幸せな恋愛はできません。でもまあ、二人にとってはあれこそが幸せだったんだろうけど。
冷戦下の東欧、亡命、激しい女と優しい男、といえば大好きな映画「存在の耐えられない軽さ」とも共通します。ズーラのどこか荒んだニヒルなビッチさ、けだるげだけど内に秘めた熱情で男を翻弄し傷つけ虜にするファムファタールぶりは、往年のフランス映画のヒロインみたいで魅惑的でした。好感度の高い善い子ちゃんよりも好き。演じてるヨアンナ・クーリグは、ちょっとレア・セドゥ+ジェニファー・ローレンス、を地味にドライにした感じ?ヴィクトル役のトマシュ・コットは、物語が進むにつれいい男に見えてくるシブくてスマートな風貌。すごい長身。ちょっとスティング+ベッカム、を地味に濃ゆくした顔?
外国語映画賞を争った「ROMA」同様、モノクロ映像が清冽で美しいです。「イーダ」でアカデミー賞外国語映画賞を受賞したパヴェウ・パヴリコフスキ監督(名前覚えるのにしばらく時間がかかりそう)は、イギリスで育って映画の世界に入ったとか。そのせいか、どことなく英国映画っぽさが感じられました。最後に、この映画で最も感嘆し称賛したい点は、上映時間が1時間半しかないこと。最近は無駄に長い映画が多いので、これは本当にありがたい。ヴィクトルとズーラが離れている間どんな日々を送っていたとかほとんど描かれておらず、見事なまでに説明的なシーンも台詞も排除されてます。
1949年冷戦下のポーランド。ピアニストのヴィクトルと歌手志望のズーラは、音楽舞踊学校で出会い恋に落ちる。スターリン崇拝強制を嫌うヴィクトルは、ズーラと共に西側へ亡命しようとするが、ズーラはそれを拒絶。数年後、パリで暮らすヴィクトルの前に、公演のためフランスに来たズーラが現れるが…
去年のカンヌ映画祭で監督賞を受賞し、今年のオスカーでは外国語映画賞だけではく監督賞、撮影賞にもノミネートされ話題となったポーランド映画。傑作との評判もですが、大人の恋愛映画というが私が観たいと思った最大の要因です。もういい加減、漫画映画、学芸会演技には飽き飽き、辟易してるので(好きなイケメンが出てるので観ちゃうけど)。この映画のヴィクトルとズーラ、フランソワ・トリュフォー監督の秀作「隣の女」を私に思い出させました。離れていたら狂ってしまう、そばにいたら燃え尽きてしまう…そんな情熱的で破滅的な恋なんて、心が冷めてる情の薄い人や、常識からはみ出すことを恐れる小心な人(どっちも私やんけ)の目には、愚かな痴情としか映らない、けど同時に、強い憧れも抱いてしまうのです。
才能も地位も安全も、命さえ投げうってしまう誰かと出会える運命って、何という甘美な不幸でしょう。無味無臭な幸福よりも、生きてる実感を味わえそう。くっついたり離れたりを繰り返すヴィクトルとズーラが単なるバカップルに見えなかったのは、音楽と冷戦という特異でドラマティックな世界に二人が身を置いていたからでしょうか。とにかく劇中に流れる音楽が印象的で、物語に情感と哀感をもたらす素晴らしい効果。特に主題歌とも言える、邦題にも使われた「二つの心」のフレーズ、オヨヨ~♪が耳に残ります。デュエットのポーランド版も、ズーラがソロで歌うジャジーなパリ版も好き。
ワルシャワ、ベルリン、ユーゴスラビア、パリと、ヨーロッパ各地でのめくるめく展開もドラマティック。冷戦下の人々の生活や、スターリン崇拝強制の様子も興味深かったです。今どきあんなプロパガンタパフォーマンスしてるのは、将軍さまが支配するあの北国だけ?政治色はそんなに濃くなく、あくまで恋愛の障害の一つな扱い。当時の東欧、もっと過酷で息苦しい生活を余技なくさえてるのかと思ってたけど、ヴィクトルもズーラも結構自由に動き回ってたので意外。二人の、ていうかズーラの性格が最大の障害で、あれじゃあポーランドだろうがアメリカだろうが関係なく幸せな恋愛はできません。でもまあ、二人にとってはあれこそが幸せだったんだろうけど。
冷戦下の東欧、亡命、激しい女と優しい男、といえば大好きな映画「存在の耐えられない軽さ」とも共通します。ズーラのどこか荒んだニヒルなビッチさ、けだるげだけど内に秘めた熱情で男を翻弄し傷つけ虜にするファムファタールぶりは、往年のフランス映画のヒロインみたいで魅惑的でした。好感度の高い善い子ちゃんよりも好き。演じてるヨアンナ・クーリグは、ちょっとレア・セドゥ+ジェニファー・ローレンス、を地味にドライにした感じ?ヴィクトル役のトマシュ・コットは、物語が進むにつれいい男に見えてくるシブくてスマートな風貌。すごい長身。ちょっとスティング+ベッカム、を地味に濃ゆくした顔?
外国語映画賞を争った「ROMA」同様、モノクロ映像が清冽で美しいです。「イーダ」でアカデミー賞外国語映画賞を受賞したパヴェウ・パヴリコフスキ監督(名前覚えるのにしばらく時間がかかりそう)は、イギリスで育って映画の世界に入ったとか。そのせいか、どことなく英国映画っぽさが感じられました。最後に、この映画で最も感嘆し称賛したい点は、上映時間が1時間半しかないこと。最近は無駄に長い映画が多いので、これは本当にありがたい。ヴィクトルとズーラが離れている間どんな日々を送っていたとかほとんど描かれておらず、見事なまでに説明的なシーンも台詞も排除されてます。