まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

ブラック介護の女!

2022-06-26 | 北米映画 15~21
 「パーフェクト・ケア」
 表向きは高齢者を手厚く介護し裁判所の信頼も厚いマーラだが、その正体は高齢者から合法的に全財産を搾取する悪徳法定後見人だった。身寄りのない資産家の老女ジェニファーからすべてを奪うマーラだったが、ジェニファーにはある恐るべき秘密が…
 「ゴーンガール」で激ヤバな悪女を怪演しオスカー候補にもなったロザムンド・パイクが、またまた稀代の悪女に。今度は高齢者を食い物にするブラック後見人役として、よりいっそう悪質かつ激烈に。年よりはただの金づる、人間として見なさない非情さ冷酷さで、そのエゲツない悪辣さはまさに外道、鬼畜。まったく共感も好感も抱けないモノホンのワルなのですが、すごくクールでカッコいいんですよね~。常に威風堂々、毅然としてて何があっても動じず、ブレない信念と野望でもって悪の道を邁進する姿は颯爽としてて。

 マフィアにも一歩も引かず、殺されても死なないとはまさにこれ!な驚異の生命力。度胸と悪知恵で百倍返しをするパイク姐さんの猛者っぷりは、悪女というよりヒーローのカッコよさでした。こんな悪い女ありえんわ~許せんわ~と思いつつ、本音も欲望も押し殺しながら、誰にでもいい顔をして顔色うかがって迎合して生きてる気弱な私からしたら、ヒロインのガッツとタフネス、行動力は自分にないものばかりで憧れてしまいます。

 それにしても。あの肝っ玉、不屈さ、才覚、そして強靭さを、介護詐欺なんかじゃなくてもっといい形で活かせばいいのに、と思った。終盤の逆襲作戦なんか、ほとんどスパイか軍人なみのミッション遂行でしたし。もはや世界屈指の悪女女優なパイク姐さん、性を超越したような見た目とキャラが独特かつ魅力的です。美人なんだけど、オンナオンナしてないシャープさ。長身も、スタイルがいいというよりデカい!って感じ。鮮やかにシンプルなファッションも、おしゃれとかエレガントとかサバサバ系とかとは違うスタイリッシュさ。男受け狙いなど笑止、男の目など歯牙にもかけない、男を蔑み男性社会に牙をむくような、新時代の毒ヒロインなパイク姐さんに拍手喝采です。クズ男ゲス男どもには容赦ないけど、愛する恋人♀には優しく彼女を命がけで守るヒロインは、フツーなら人気男優が演じるような役を女優が、みたいな感じでもありました。

 クールで豪快なヒロインはカッコよかったけど、高齢者を騙して全財産を搾取、逆らう老人には虐待に近い扱いという悪事には、やはり眉をひそめてしまいます。お年寄りにはあまり優しい気持ちになれない冷血人間な私ですが、さすがにヒロインの所業は許しがたい。赤の他人があんなに簡単に後見人になれてしまう法制度、その盲点に戦慄。どこの世界でも、弱者が持つ甘い汁をかぎつけてたかってくる害虫みたいな悪人がいるものですね。私も老後が心配になったけど、よく考えたらお金ないので狙われないですね
 
 ヒロインの前に立ちふさがるマフィアの親分役、ドワーフ名優ピーター・ディンクレイジも強烈な存在感。シブくて哀愁があって、見た目がいいだけの俳優にはない男のコク深さが。ヤバい人だけど悪人って感じではなく、囚われの母を何とか救い出そうとする息子のいじらしさが切なかった。マーラを事故に見せかけて殺すため手間ひまかけるところが、同じ反社でも韓流やくざと違うスマートさでした。仕返しされて、夜の車道に全裸で放置される姿が痛ましかったです。ディンクレイジ氏が最後に敗れて終わりな敵役なわけがなく、マーラと意外な関係になるところも面白かったです。

 マーラの毒牙にかかる老女ジェニファー役は、ウディ・アレン監督作で二度のオスカーに輝いた名女優ダイアン・ウィースト。久々に見たけど、ずいぶんどっしりした感じのおばあちゃんになりましたね~。彼女がただの可哀想な老人役なわけがなく、かなりワケアリな事故物件ならぬ事故人物みたいな食わせ者で、人がよさそうに見えて時おり不穏で不吉なものをギラリと見せるところが、さすが名女優の老練さでした。マフィアの顧問弁護士役のクリス・マッシーナが、胡散臭いダンディな男前でした。
 
コメント (2)
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