まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

変なおじさん!脳内どろドロン

2023-03-05 | フランス、ベルギー映画
 お松のフランス大女優映画祭③
 「真夜中のミラージュ」
 アル中の中年男ロベールは、列車のコンパートメントで出会った女ドナシェンヌと関係を持つ。ドナシェンヌについて列車を降り、嫌がる彼女の家まで押し掛けたロベールは、そこに次々と現れる人々と奇妙な騒動を起こすが…
 60・70年代に日本で絶大な人気を誇ったアラン・ドロンですが、美男の代名詞と言われたその美貌や、出演した巨匠や名匠の秀作佳作は称賛されても、彼の演技が高く評価されることはそんなになかったようです。美しい俳優や女優が否応なくたどる道、加齢とともに衰退する美貌とキャリア…あの人は今なスターになりかけていた80年代のドロン氏が、セザール賞の主演男優賞を受賞し再注目され、俳優としても再評価された作品です。そう聞くと、さぞかしシリアスな役と熱演を?と思うし、映画ポスターや邦題は大人のラブサスペンス?だと思わせるものですが、ノンノンノン!そんなんじゃ全然ありませんでした!不条理コメディ?いい意味で予想も期待も裏切る珍作、怪作でした!

 「バルスーズ」のベルトラン・ブリエ監督作と知り、納得の珍妙さでした。とにかく独特、ていうか意味不明でシュールです。これは現実の世界なのか、そうでないのか、定かではない不可思議な展開と場面に、観客は困惑させられます。わけわからん~だけど、何か笑えます。人生と愛の危機に瀕した中年男の魂の彷徨、混沌とした深層心理の世界だと思うのだけど、そんな小難しさでウンザリさせるお高くとまった映画ではなく、酔っ払いのドンチャン騒ぎを見ているような愉快奇怪な映画でした。この映画の台詞や内容を理解できる人を尊敬、そして心配します

 かつて一世を風靡した稀代の美男、アラン・ドロンのうらぶれた姿、イカレっぷりは往年のファンにはショックかもしれませんが、確かにキャリア最高の演技と言われてるだけはあるインパクトです。その名の通りドロンとした、視線が定まってない目。若い女を追っかけ回すストーカーおやじで、意味不明な言動を繰り返し時に大暴れするなど、完全にヤバい人。ファンが愛するイメージをブチ壊すリスキーな役ですが、そんな悲壮感はまったくなくて、変なおじさんをノリノリで演じてるドロン氏です。インタビューによると、若い頃からコメディに出たかったけど、ファンが喜ばないから断念することが多かったとか。そんなドロン氏のコメディへの意欲が、この映画で炸裂してます。まさに中年の狂い咲き!

 ストーカーおやじ、変なおじさんだけど、どこかトボけてて可愛いドロン氏です。滑稽なシーン満載ですが、私が特に笑えて好きなのは、崩れた本棚の下敷きになっちゃってるシーン。ほとんどコントでした。初老に近いけど、やっぱ美男なドロン氏。くたびれたスーツも似合ってて、小粋に見えてしまう。ドロン氏みたいな見た目はダンディなイケオジでなければ、確実に通報される役ですし。
 ドナシェンヌ役は、大好きな素敵女優ナタリー・バイ。

 当時35歳ぐらいのナタリーおばさま、さすがに若い!美人っていうより、いい女。常に無表情で冷ややか、時に激しくプッツン、おじさんにトゲトゲしいドSな女を、クールにミステリアスに演じてます。冷たい役でも、優しそうで柔らかな感じがするところが好きです。80年代の髪型も、いま見るとカッコいい。ラストでソファに座ってるナタリーおばさまの美脚!まさにザ・女優な足でした。
コメント (6)
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