ジェフリー・ディーヴァー『眠れぬイヴのために（下）』

　死体の近くには「専制者には死を！」と叫ぶルーベックがいて、逃げていきます。そして今、ルーベックは雨の中、自転車を草むらに投げ、民家からバイクを奪って、そして車を盗んで進んだ。その家では家政婦が首をかき切られて死んでいた。アドラーはルーベックによる死者が出たことで事がマスコミに知られることを覚悟し、責任をすべてルーベックの主治医コーラーに押し付けるべく工作する。オーエンはルーベックを発見し射殺しようとするが、警官に邪魔され、ルーベックにも逃げられてしまう。オーエンはルーベックを追おうとするが、前のタイヤがパンクしていた。ルーベックの車は不注意でコントロールを失い、木立に突っ込み、何回も横転する。オーエンは破壊された車を発見し、そこから森へ足跡をつけて行くと、ヘックと出会い、二人で一緒にルーベックを追う事にする。その時、ルーベックは独り住まいの女性の家で夕食を食べていた。ヘックが彼女に尋問すると、彼は列車に乗るので50ドルもらいたいと言ったと言う。ヘックは最寄りの駅に向かい、自分のせいで女性が１人殺されていることに関してはオーエンが無料で弁護してやると言う。二人は別れる。ルーベックは駅ではなくリズのもとへ行くと分かっていたコーラーは待ち伏せし、ルーベックを捕まえるが、裏切りのイヴに会いに行くと言ってきかず、コーラーが隠し持っていた麻酔薬入りの注射器を奪い、コーラーに突き刺す。オーエンは自宅へ向かうが途中でルーベックの車に体当たりされ、崖を車ごと落ち、左手に負傷する。リズと妹のポーシャは車が水浸しになり、家から出られなくなる。保安官助手は早くパトカーでここから脱出した方がいいと言うが、リズが夫のオーエンが帰るまでここにいると言い、保安官助手は説得するのを諦めてパトカーに戻る。そこへヘックがやってきて、事情を話すと、リズはオーエンを探しに雨の中へ出て行くと言うが、ヘックは自分は人探しのプロだからと言って、自分が出て行く。ルーベックはジープに乗る男を脅迫し、リズの家に着く。ヘックはルーベックを発見するが、ルーベックは逃げ出し、ヘックが背中を向けると背中に２発の銃弾を喰らう。銃声を聞いたリズとポーシャは屋外に出て、ヘックを家の中に入れる。リズはパトカーで助けを求めるように言い、射殺された保安官助手をパトカーから引きづりだし、嫌がるポーシャを無理矢理乗せて、発進させる。温室に隠れたリズの目の前にルーベックが現れた‥‥。
　と、こんな感じで後半が進んでいきます。最後にはディーヴァーの特徴であるどんでん返しがありますが、この小説では並みの小説のどんでん返しと同様の意外性しかありません。そもそも目的地が分かっている１人の脱走犯を複数の人々が追い掛けるという単純な話なので、面白くしようにも限界があると思いました。もちろんディーヴァーの作品ですから、退屈はしませんが、リンカーン・ライム・シリーズの面白さを期待すると期待外れに終わるかもしれません。最後のハッピーエンドも本当にルーベックにとってハッピーエンドなのか、疑問です。そうした話の内容よりも雨の描写の見事さなどで楽しむべきなのかも知れません。
　なお、詳しいあらすじは「Favorite Novels」の「ジェフリー・ディーヴァー」の項に載せておきましたので、興味のある方はご覧ください。