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西加奈子『しずく』

2007-10-28 16:10:58 | ノンジャンル
 今日の日本時間の午前中に行われたMLBのワールド・シリーズ第3戦。松坂は投手として5回を1点で押さえ、打者としては2点タイムリーを打つ活躍を見せました。しかし岡島はスリーランホームランを打たれましたが、試合はレッドソックスの圧勝でした。このままだとコロラドで優勝が決まってしまいそうです。ロッキーズ頑張れ!

 そして今日は映画監督のマキノ雅弘さんの命日にも当たります。今一度、彼の映画の記憶を思い出すのもいいかもしれません。あまりマキノ監督のことを知らないという方は、このサイトの「Favorite Movies」の「マキノ雅弘」の項をぜひご覧ください。

 ところで、西加奈子さんの初の短編集『しずく』を読みました。すべて「女どうし」を描いた短編です。
 第一話「ランドセル」は、小学生の時の友人が、大人になって久しぶりに再会し一緒に海外旅行する話。
 第二話「灰皿」は、小説家を夢見ていた夫に死なれた年老いた妻が、自分達の暮らした家を女性の小説家に貸し、二人の交流から年老いた妻が夫と新しい関係を築いていくという話。
 第三話「木蓮」は、離婚した恋人の子供を預かるはめになった子供嫌いの女性が、恋人に気に入られるために子供に好かれようとするが、馬鹿馬鹿しくなり本音を子供に言い始めることによって、かえって子供と仲良くなるという話。
 第四話「影」は、男性関係で会社を辞め、南の島に一人でやって来た女性が、嘘ばかりつき、頭がおかしいと島の人から思われている若い女性に出会い、その女性から自分らしく生きていくことを学ぶ話。
 第五話「しずく」は、小説家に飼われている雌猫とイラストレータに飼われている雌猫が、若い飼い主が同棲することで一緒に暮らすことになり、2匹は蛇口から垂れるしずくを見、なめるのが大好きになるのですが、飼い主達は仕事で成功を収めていくに従って、邪険になり、飼い主同志のケンカも頻繁になり、汚れた食器があふれて蛇口にも近付けなくなります。やがて、飼い主は別れ、2匹は別々になりますが、忘れやすい彼らは、何か柔らかい毛があるやつがいなよな、と思い、飼い主が彼らを抱いて流す涙を体に感じ、しずくを思い出して、ああ、確かにいた、と思うという話。
 第六話「シャワーキャップ」は、男と同棲するために引越しの準備をしている女性が、男が別の女性と親し気に歩いているのを目撃して疑心暗鬼になるのですが、上京してきた、おおらかで素直で可愛い母と接しているうちに、母の強さをもらい、前向きに生きて行く気持ちになるという話。

 私が一番好きだったのは、「木蓮」でした。西加奈子さんの小説のいいところというのは、登場人物の感情がストレートに伝わって来るところだと思います。この短編では、主人公の女性の気持ちが活き活きと描かれていて、また嫌味な子供との掛け合いも楽しめ、最後のハッピーエンドもとても気持ちのいいものでした。
 それから、「影」も好きな作品です。嘘ばかりつく女性が、実は宿の息子が若くして亡くなった時の恋人で、未だに彼の死を受け入れられない人だというのが最後に宿の女将さんによって明らかにされ、ラストシーンでの浜で右往左往して泣き続ける彼女の姿に胸が痛くなりました。
 他に気になったのは、「シャワーキャップ」の母の天真爛漫さに惹かれました。また「しずく」は、絵本の語り口で、ネコの面白い会話が中心に語られていて、面白い試みだと思いました。
 西さんの短編、良かったと思います。これからも期待したいです。
 なお、詳しいあらすじは、「Favorite Novels」の「西加奈子」の項に掲載しておきましたので、興味のある方はご覧ください。