朝日新聞の特集記事の中で池上冬樹さんが紹介していた、伊坂幸太郎さんの'12年作品『残り全部バケーション』を読みました。第一章「残り全部バケーション」は、'08年刊行のアンソロジー『Re-born はじまりの一歩』に収録された同名の短編に加筆修正されたものです。
第一章「残り全部バケーション」 離婚を明日に控える両親とその娘。父の携帯に見知らぬアドレスから「適番でメールしてみました。友達になろうよ。ドライブとか食事とか」というメールが届きます。友達がほしいと言う父は「友達になりましょう。こちらは、47の男です。妻45歳、娘16歳も一緒ですが、それでもいいですか?」と返事を出すと、若い男・岡田が現れ、彼らをドライブに連れていき、豪華な食事も奢ります。岡田は溝口という年配の男の有能な相棒で、頼まれて人から金を脅し取る仕事をしていたのですが、人を怖がらせるのではなく、喜ばせて金を得る仕事をしたいと溝口に言い、溝口は仕事を離れる条件として、さきほどのメールを送り、友達ができたら許すと言うのでした。岡田が3人を家に送っていると溝口から携帯に電話がかかります。実は溝口はそれまで毒島(ぶすじま)という男の下請けとして働いていたのですが、勝手に独立し、それに怒った毒島が部下を溝口の元へ送ると、溝口は独立を言い出したのは岡田だと言って、すべての責任を岡田に押し付け、今、毒島の部下たちが岡田を探していると言うのでした。毒島は恐ろしい男で、自分を裏切った者は今まで必ず残虐に殺してきたことを岡田は知っていました。しばらくすると、岡田は自分の車を尾行してくる車があるのに気付きます。コンビニの駐車場に車を停めた岡田は親子に車のキーを託し、30分経っても自分が戻ってこなかったら、車をあげると言って、尾行してきた車に乗って去っていくのでした。
第二章「タキオン作戦」 岡田は父親のDVに遭っている小学生とたまたま知り合いになります。その子の父は外回りの営業をしている男で、ストレスがたまると躾の名目で妻やその子に言葉や肉体的暴力を働いているのでした。岡田は父親にそれを止めさせるため、作戦を立てます。父親が喫茶店で暇をつぶしている時に、わざと近くに座ってる客がタイムマシンの話をしているのを聞かせ、息子に『ターミネーター』のビデオを家で再生させて父親に見せ、溝口との仕事で知り合った文房具屋に協力してもらい、偽の回覧板「近くの閉店したスーパー内で爆発音がし、全裸の男が目撃された」と、偽の新聞「過去へのタイムマシンが可能となる超光速素粒子タキオンが発見された」を父親に読ませ、父親にそっくりの文房具屋が未来から来た父親本人に扮して、父親に会いに行き、成長した息子に暴力を振るわれている写真を渡し、こうならないようにやり直せと言うのでした。写真を見て途方に暮れる父親。芝居が終わった後、ファミレスで、岡田は、「溝口さんが言ってたんですけど、ああいう男は他人を見下しているから、他の人間の忠告には耳を貸さない。唯一、認めているのは自分自身だから、ということは自分の話には耳を貸すかも」と文房具屋に話すのでした。
第三章「検問」 毒島の下請けに戻った溝口は、岡田の後釜として太田という男と組みますが、太田はまったく仕事ができません。ある日、仕事で指定されたわたしを車で拉致し、指定された場所へ運ぶ途中に、検問の渋滞に捕まります。しょうがないのでわたしの口と手首のガムテープを剥がす太田。溝口はお前の住所も名前も分かっているのだから下手なことはするなとわたしに言います。自分をさらうとしたら、自分の不倫相手の男かも、と言うわたし。やがてラジオで国会議員の暗殺未遂事件が起こったことを私たちは知ります。警官に「これは盗難車だ」と素直に言う溝口。警官はトランクを開けさせ、中を見ると、行っていいと溝口に言います。わたしにガムテープを貼り直そうとして、それを失くしたことに気づく太田。溝口はしょうがないので、わたしをトランクに入れようとしますが、そこには大金の入ったカバンが入っていました。なぜさっきの警官はこれを見逃したのか? 溝口は今日行なわれている大量のブツの取引に、さっきの警官が関わっていると推理し、この車もGPSで位置を把握されているのではないかとわたしが言うと、本当にトランクからスマートフォンが出てきます。わたしは不倫相手が暗殺未遂で意識を失っている国会議員なので、もう溝口たちは仕事をしなくてもいいだろうから、金を山分けにしようと言うと、溝口はわたしに大金の3分の1を渡して、わたしを車から降ろし、去るのでした。(明日へ続きます‥‥)
→「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)
第一章「残り全部バケーション」 離婚を明日に控える両親とその娘。父の携帯に見知らぬアドレスから「適番でメールしてみました。友達になろうよ。ドライブとか食事とか」というメールが届きます。友達がほしいと言う父は「友達になりましょう。こちらは、47の男です。妻45歳、娘16歳も一緒ですが、それでもいいですか?」と返事を出すと、若い男・岡田が現れ、彼らをドライブに連れていき、豪華な食事も奢ります。岡田は溝口という年配の男の有能な相棒で、頼まれて人から金を脅し取る仕事をしていたのですが、人を怖がらせるのではなく、喜ばせて金を得る仕事をしたいと溝口に言い、溝口は仕事を離れる条件として、さきほどのメールを送り、友達ができたら許すと言うのでした。岡田が3人を家に送っていると溝口から携帯に電話がかかります。実は溝口はそれまで毒島(ぶすじま)という男の下請けとして働いていたのですが、勝手に独立し、それに怒った毒島が部下を溝口の元へ送ると、溝口は独立を言い出したのは岡田だと言って、すべての責任を岡田に押し付け、今、毒島の部下たちが岡田を探していると言うのでした。毒島は恐ろしい男で、自分を裏切った者は今まで必ず残虐に殺してきたことを岡田は知っていました。しばらくすると、岡田は自分の車を尾行してくる車があるのに気付きます。コンビニの駐車場に車を停めた岡田は親子に車のキーを託し、30分経っても自分が戻ってこなかったら、車をあげると言って、尾行してきた車に乗って去っていくのでした。
第二章「タキオン作戦」 岡田は父親のDVに遭っている小学生とたまたま知り合いになります。その子の父は外回りの営業をしている男で、ストレスがたまると躾の名目で妻やその子に言葉や肉体的暴力を働いているのでした。岡田は父親にそれを止めさせるため、作戦を立てます。父親が喫茶店で暇をつぶしている時に、わざと近くに座ってる客がタイムマシンの話をしているのを聞かせ、息子に『ターミネーター』のビデオを家で再生させて父親に見せ、溝口との仕事で知り合った文房具屋に協力してもらい、偽の回覧板「近くの閉店したスーパー内で爆発音がし、全裸の男が目撃された」と、偽の新聞「過去へのタイムマシンが可能となる超光速素粒子タキオンが発見された」を父親に読ませ、父親にそっくりの文房具屋が未来から来た父親本人に扮して、父親に会いに行き、成長した息子に暴力を振るわれている写真を渡し、こうならないようにやり直せと言うのでした。写真を見て途方に暮れる父親。芝居が終わった後、ファミレスで、岡田は、「溝口さんが言ってたんですけど、ああいう男は他人を見下しているから、他の人間の忠告には耳を貸さない。唯一、認めているのは自分自身だから、ということは自分の話には耳を貸すかも」と文房具屋に話すのでした。
第三章「検問」 毒島の下請けに戻った溝口は、岡田の後釜として太田という男と組みますが、太田はまったく仕事ができません。ある日、仕事で指定されたわたしを車で拉致し、指定された場所へ運ぶ途中に、検問の渋滞に捕まります。しょうがないのでわたしの口と手首のガムテープを剥がす太田。溝口はお前の住所も名前も分かっているのだから下手なことはするなとわたしに言います。自分をさらうとしたら、自分の不倫相手の男かも、と言うわたし。やがてラジオで国会議員の暗殺未遂事件が起こったことを私たちは知ります。警官に「これは盗難車だ」と素直に言う溝口。警官はトランクを開けさせ、中を見ると、行っていいと溝口に言います。わたしにガムテープを貼り直そうとして、それを失くしたことに気づく太田。溝口はしょうがないので、わたしをトランクに入れようとしますが、そこには大金の入ったカバンが入っていました。なぜさっきの警官はこれを見逃したのか? 溝口は今日行なわれている大量のブツの取引に、さっきの警官が関わっていると推理し、この車もGPSで位置を把握されているのではないかとわたしが言うと、本当にトランクからスマートフォンが出てきます。わたしは不倫相手が暗殺未遂で意識を失っている国会議員なので、もう溝口たちは仕事をしなくてもいいだろうから、金を山分けにしようと言うと、溝口はわたしに大金の3分の1を渡して、わたしを車から降ろし、去るのでした。(明日へ続きます‥‥)
→「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)