大門実紀史さんの2018年作品『カジノミクス 「カジノ解禁」「アベ銀行」「年金積立金バクチ」の秘密』を読みました。本文中からいくつか引用させていただくと、
・1980年代後半、世界的に金融の自由化がすすみ、リスクの高い金融商品や半年後の天気を言い当てるような先物市場がつぎつぎとつくられました。
金融取引がじっさいの経済活動の何倍もの大きさにふくれあがり、イチかバチかのマネーゲームの世界に変質していくなかで、実体経済もそれにふり回され、経済全体がギャンブルのようになっていきました。
イギリスの経済学者、スーザン・ストレンジ（1923～98）は、マネーゲーム化する現代資本主義のすがたを「カジノ資本主義」とよびました。
90年代にはいり、「カジノ資本主義」はさらに膨張し、東アジアやロシアに通貨危機を仕かけ、2000年代に入るとITバブルを発生させたあげく、とうとう08年にはリーマン・ショックとよばれる世界的な金融危機を引きおこしました。
・マネーゲームの主催者である一握りの大投資家だけが大もうけする一方で、多数の人びとが富をうばわれ苦しむ━━胴元だけが太りつづける“とばく”の世界とよく似ています。
・新自由主義は、利潤追求のなにがわるい、強いものが勝ってなにがわるい、すべてを市場競争にまかせればうまくいく、「神の見えざる手」がはたらいて、効率的な経済社会が実現できるのだという考え方です。だから政府は経済に口を出すな、「規制緩和」だ、小さい政府だと主張してきました。
・新自由主義が信奉する「神の見えざる手」の正体とはなんでしょうか。（中略）
市場経済は「神の見えざる手」ではなく、どん欲な釣り師の「不道徳な見えざる手」によって支配されているというのです。
・アメリカや韓国の例をみても、カジノを誘致しても、お金が落ちるのはカジノだけで、周辺地域の経済には貢献しない。むしろ地域経済をさびれさせるものになっています。日本でもおなじ現象がおきることはまちがいありません。
・日本人をターゲットにカジノでもうけるため、アメリカのカジノ企業は「カジノ実施法」の策定にも介入してきました。
・島畑与一・静岡大学教授は、著書『カジノの幻想』のなかで、カジノの社会コストに加え、「カニバリゼーション」（共食い）という重要な視点を提起しました。
「カニバリゼーション」はビジネスの世界では、自社のある商品が売れることによって、自社のべつの商品の売り上げが減少するという「共食い」現象をさすことばとしてつかわれてきました。
島畑教授によれば、カジノ・ギャンブルは賭けをつうじたポケットからポケットへのお金の移動でしかなく、アメリカでは、カジノ開業により既存の宝くじなどのギャンブルの売上や周辺地域での消費減少といった「カニバリゼーション」が発生したとのこと。その経済圏内での所得の移転でしかなく、カジノの繁栄はその周辺の経済活動を犠牲にしたものにすぎないということです。
日本でも、カジノを誘致したある自治体の住民の所得がカジノに吸収された結果、地元での消費や税収が減少することは十分かんがえられます。
・通常、違法行為とみなされているものでも、特別な事情や正当な理由があることにより、違法行為とみなさないことを、違法性を阻却するといいます。（中略）
「カジノ実施法」は民営とばくを歴史上はじめて合法化しようというものですから、この論理がつかわれました。（中略）
違法性が阻却されるうえで、一番重視されたのは、（中略）「目的の公益性」、すなわち「収益の使途を公益性のあるものに限る」でした。
・「カジノ実施法」は、内閣府に設置された「IR推進会議」のとりまとめにもとづいて作成されました。（中略）
ところがこの「推進会議」のメンバーには、刑法の専門家が一人もおらず、こともあろうにカジノ業界から講演料や研究委託費など報酬を受けている人物まで入っていました。
さらに違法性の阻却について議論したのは、2017年7月18日の第8回「推進会議」のたった一回だけ。しかも一人の刑法学者の「個人的所見」を聞いただけで、まともな議論もせずに終わっています。
・先にカジノ解禁ありきでした。とばくは犯罪だと判定した最高裁判決（中略）、なぜいままでとばくを公的主体の公営ギャンブルだけに認めてきたのか（中略）、なぜ民営化議論のときに公的な主体を堅持したのか（中略）、「IR推進会議」はこれらの戦後の刑法解釈の蓄積をすべて無視して、民営カジノも合法化できるとの結論をくだしたのです。
（明日へ続きます……）
→サイト「Nature Life」（http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto）
→FACEBOOK（https://www.facebook.com/profile.php?id=100005952271135）
・1980年代後半、世界的に金融の自由化がすすみ、リスクの高い金融商品や半年後の天気を言い当てるような先物市場がつぎつぎとつくられました。
金融取引がじっさいの経済活動の何倍もの大きさにふくれあがり、イチかバチかのマネーゲームの世界に変質していくなかで、実体経済もそれにふり回され、経済全体がギャンブルのようになっていきました。
イギリスの経済学者、スーザン・ストレンジ（1923～98）は、マネーゲーム化する現代資本主義のすがたを「カジノ資本主義」とよびました。
90年代にはいり、「カジノ資本主義」はさらに膨張し、東アジアやロシアに通貨危機を仕かけ、2000年代に入るとITバブルを発生させたあげく、とうとう08年にはリーマン・ショックとよばれる世界的な金融危機を引きおこしました。
・マネーゲームの主催者である一握りの大投資家だけが大もうけする一方で、多数の人びとが富をうばわれ苦しむ━━胴元だけが太りつづける“とばく”の世界とよく似ています。
・新自由主義は、利潤追求のなにがわるい、強いものが勝ってなにがわるい、すべてを市場競争にまかせればうまくいく、「神の見えざる手」がはたらいて、効率的な経済社会が実現できるのだという考え方です。だから政府は経済に口を出すな、「規制緩和」だ、小さい政府だと主張してきました。
・新自由主義が信奉する「神の見えざる手」の正体とはなんでしょうか。（中略）
市場経済は「神の見えざる手」ではなく、どん欲な釣り師の「不道徳な見えざる手」によって支配されているというのです。
・アメリカや韓国の例をみても、カジノを誘致しても、お金が落ちるのはカジノだけで、周辺地域の経済には貢献しない。むしろ地域経済をさびれさせるものになっています。日本でもおなじ現象がおきることはまちがいありません。
・日本人をターゲットにカジノでもうけるため、アメリカのカジノ企業は「カジノ実施法」の策定にも介入してきました。
・島畑与一・静岡大学教授は、著書『カジノの幻想』のなかで、カジノの社会コストに加え、「カニバリゼーション」（共食い）という重要な視点を提起しました。
「カニバリゼーション」はビジネスの世界では、自社のある商品が売れることによって、自社のべつの商品の売り上げが減少するという「共食い」現象をさすことばとしてつかわれてきました。
島畑教授によれば、カジノ・ギャンブルは賭けをつうじたポケットからポケットへのお金の移動でしかなく、アメリカでは、カジノ開業により既存の宝くじなどのギャンブルの売上や周辺地域での消費減少といった「カニバリゼーション」が発生したとのこと。その経済圏内での所得の移転でしかなく、カジノの繁栄はその周辺の経済活動を犠牲にしたものにすぎないということです。
日本でも、カジノを誘致したある自治体の住民の所得がカジノに吸収された結果、地元での消費や税収が減少することは十分かんがえられます。
・通常、違法行為とみなされているものでも、特別な事情や正当な理由があることにより、違法行為とみなさないことを、違法性を阻却するといいます。（中略）
「カジノ実施法」は民営とばくを歴史上はじめて合法化しようというものですから、この論理がつかわれました。（中略）
違法性が阻却されるうえで、一番重視されたのは、（中略）「目的の公益性」、すなわち「収益の使途を公益性のあるものに限る」でした。
・「カジノ実施法」は、内閣府に設置された「IR推進会議」のとりまとめにもとづいて作成されました。（中略）
ところがこの「推進会議」のメンバーには、刑法の専門家が一人もおらず、こともあろうにカジノ業界から講演料や研究委託費など報酬を受けている人物まで入っていました。
さらに違法性の阻却について議論したのは、2017年7月18日の第8回「推進会議」のたった一回だけ。しかも一人の刑法学者の「個人的所見」を聞いただけで、まともな議論もせずに終わっています。
・先にカジノ解禁ありきでした。とばくは犯罪だと判定した最高裁判決（中略）、なぜいままでとばくを公的主体の公営ギャンブルだけに認めてきたのか（中略）、なぜ民営化議論のときに公的な主体を堅持したのか（中略）、「IR推進会議」はこれらの戦後の刑法解釈の蓄積をすべて無視して、民営カジノも合法化できるとの結論をくだしたのです。
（明日へ続きます……）
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