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田嶋陽子『愛という名の支配』その4

2020-08-01 19:04:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。

・「男らしさ」にあって、「女らしさ」にないもの、それは「自分」です。学生が言っていました。男の学生は、「男らしさ」と「自分らしさ」とが重なると。女の学生は、「女らしさ」を生きることと「自分らしさ」を生きることとが重ならないと。

・女の子も期待されれば、男の子とおなじように、あるいはそれ以上に伸びていけます。

・女は勉強したところで、手に職をつけたところで、結婚してしまえば家族優先の人生になりがちで、なかなかそれを生かせません。世間から「女のしあわせは結婚」と決められ、夢をもったところでそれを実現するチャンスもないまま、結婚しか残されていないなら、いっそのこといい男をつかまえるために化粧やファッションに時間をかけたほうがいい、ということにまでなるわけです。

・岡本氏の本によれば、纏足は、通常三歳から六歳くらいまでの幼女にほどこされ、纏足が完了するまでには三年くらいかかり、そのあいだ激痛に襲われつづけ、それはまさに生殺しの苦しさで、母親は見るに見かねて親戚の女性に自分の娘の纏足をたのむほどだったとあります。

・すなわち、女の服装は、女の自由を束縛しながら、同時に、男たちが接近しやすいように開放的かつ無防備にもつくられているということです。西洋の女の下着のコルセットや、日本のむかしの着物の帯にも、女を縛りつけて女の行動力を奪い、自分たちより小さくしておきたいという男の願望があらわれています。

・そう考えると、中学校や高校の女子の制服が一律にスカートに決められているというのもおかしな話だということに気づきます。小学校まではズボンをはこうと、スカートをはこうと自由だったのに、中学校や高校で、校則で強制的にスカートをはかせられるというのは、どういうことでしょう。要するに、「女らしく(かわいく)」せよ、ということですよね。「女らしく」すること自体、精神の去勢であることはすでに見てきました。

・では、ハイヒールを履いたり、スカートをはいたりするのが女らしいとか美しいとか思う美意識はだれがつくるのかと言えば、それは王侯貴族である男たちであり、男たちの視線であり、その視線を媒介する男性主体のマスコミです。マスコミの世界はテレビから雑誌にいたるまで、主導権を握っているのはそのほとんどが男性です。私たちは、そこから発信される彼らの美意識を内面化して、私たち個人の美意識だと思いこみ、それを生きようとします。自分をしっかりもっていない人ほど、その美意識に踊らされることになります。

・そのファッション業界の中心をなしているのもまたほとんど男性です。女性がいたにしても、その人たちも、男性が主体の社会で生きのびていくためには、男性たちの美の規範に従わなければなりません。ですから、女性のデザイナーがかならずしも、女性の自由のための服装をつくっているとはかぎらないのです。デザイナーといえども商売ですから、売るためには男の視線を自分のなかに内面化して、その美意識で女の服をつくっている人たちがほとんどではないでしょうか。

・若い人たちが好きなミニスカートは、女性の活動性を主張して売りだされたはずです。実際、腰に短い布を巻いているだけなので、足は自由に開くし、とても活発に動けそうですが、どう見てもいちばん犯されやすい服装です。(中略)着ている人は、楽しんでいる一方、大変なストレスをも感じているはずです。

・ゆがめられたいのちよりも、ゆったりとラクにしていて、しかも生き生きと美しければ、そのほうがいいんじゃないでしょうか。つらいときにはなにがつらいのかよく考えて、自分につらい思いをさせているものを脱ぎ捨てていく。そのためには、たとえば、ガードルをとって垂れジリになろうと、ブラジャーを脱ぎ捨てて垂れチチになろうと、自分で選んだことだから、その結果をひきうける。そうやってお仕着せの美意識それ自体を変えていかないと、女の人は自由になれません。からだの解放は、そのまま心の解放にもつながるからです。

・美意識というのは、生まれ育った生活環境のなかでしぜんに心のなかに住みついたもので、その意味では、とても古いものです。新しいものを学んだとき、頭では納得しても、心がついていかないことがあるのはそのせいです。(中略)ですから、美意識を変えるのは不可能にも思えますが、それでも自分史をひもとけば、子どものころから現在にいたるまで、自分の美意識もさまざまに変わっていることに気づきます。

・差別的な文化の束縛から解き放たれて自由に生きたければ、まず自分の美意識のチェックからはじめることです。お仕着せの美意識ではなく、自分なりの美意識を見つけて育て、それを生きるほうがはるかに個性的で現代風でステキだと思います。

(また明日へ続きます……)

 →サイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto