ローレンス・ブロック編の2019年作品『短編画廊』を読みました。まずブロックによる「序文 はじめるまえに……」を一部転載させていただくと、
エドワード・ホッパーは1882年7月22日にニューヨーク州アッパー・ナイアックで生まれ、1967年5月15日にニューヨーク市ワシントン・スクエア近くの自らのアトリエで死んだ。それまでの85年にわたる彼の人生はなかなか興味深いものだが、それをここで詳しく語るのは私の仕事ではない。(中略)
話は脱線するが(中略)いかに本書編集のアイディアが浮かび、なぜこれほど著名な多くの作家が賛同してくれたのか、少し書いておきたい。
(中略)気づいたときにはもうそこにアイディアが━━土台もタイトルも何もかもそろったアイディアが━━あった。私はほとんど何も考えることなく、仲間に迎えたい作家の最初のリストをつくった。
そのとき考えた作家の大半がぜひ参加したいと言ってくれた。
理由は友情ではなかった。(中略)エドワード・ホッパーが惹き寄せたのだ。全員が彼の作品を愛し、彼の作品に呼応してくれたのだ。それもいかにも作家らしく。
ホッパーの絵に強く惹かれるというのは、アメリカだけでなく世界において珍しいことでもなんでもないが、私は最近とみにこう思うようになった。その傾向は読書家と作家にとりわけ顕著だと。(中略)
ホッパーはイラストレーターでも物語画家でもない。(中略)ただ強く抗いがたく示唆している。絵の中に物語があることを、その物語は語られるのをも待っていることを。彼はある一瞬を切り取ってわれわれに提示する。そして、その瞬間には明らかに過去と未来がある。しかし、そのふたつを見つけるのはわれわれの仕事だ。
本書の寄稿者はみなそれを実践してくれた。(後略)
では、具体的に収録されている短編を述べていきましょう。
ミーガン・アボット『ガーリー・ショウ』(ホッパーの作品は『Girlie Show』、以下同じ)
ジル・D・ブロック『キャロラインの話』(『Summer Evening』)
ロバート・オレン・バトラー『宵の蒼』(『Soir Bleu』)
リー・チャイルド『その出来事の真実』(『Hotel Lobby』)
ニコラス・クリストファー『海辺の部屋』(『Rooms By The Sea』)
マイクル・コナリー『夜鷹(ナイトホークス』(『Nighthawks』)
ジェフリー・ディーヴァー『11月10日に発生した事件につきまして』(『Hotel By A Railroad』)
クレイグ・ファーガソン『アダムズ牧師とクジラ』(『South Truro Church』)
スティーヴン・キング『音楽室』(『Room In New York』)
ジョー・R・ランズデール『映写技師ヒーロー』(『New York Movie』)
ゲイル・レヴィン『牧師のコレクション』(『City Roofs』)
ウォーレン・ムーア『夜のオフィスで』(『Office At Night』)
ジョイス・キャロル・オーツ『午前11時に会いましょう』(『Eleven A.M.』)
クリス・ネルスコット『1931年、静かなる光景』(『Hotel Room』)
ジョナサン・サントロファー『窓ごしの劇場』(『Night Windows』)
ジャスティン・スコット『朝日に立つ女』(『A Woman In The Sun』)
ローレンス・ブロック『オートマットの秋』(『Automat』)
この中で特に面白いと思ったのは次の3編でした。
『海辺の部屋』 1年経つと1つずつ部屋が増えていき、家の構造も時によって変化するというファンタジーで、日本では三崎亜紀さんが書きそうな作品でした。
『映画技師ヒーロー』 映画技師をしている若い主人公が、みかじめ料を要求するやくざたちを、彼の恩師である引退した映画技師の指導に導かれて、5人射殺して回るというアクション満載の作品でした。
『窓ごしの劇場』 主人公は中庭をはさむ向かいの部屋で、若い女性が下着姿になったり裸になったりするのを毎日眺めています。そしてある日、今までの女と同じく、セックスで屈服させるため、手錠とナイフをポケットに入れて、彼女の部屋に入ることに成功しますが、セックスは彼女のペースで進んでしまい、彼は絶望して帰宅します。しかしあきらめきれない主人公は再び女の部屋を訪れると、そこには大量の血が残っていて、かけつけた警察は彼女の部屋から彼の精液の入ったコンドーム、そして彼の部屋からは女の血痕のついたナイフを発見します。しかし女の死体は見つかりません。それもそのはず、彼女は精神薄弱な妹の元に帰っていて、自分が殺されたように仕組み、男をだます策略を取っていたのでした。
上記の3作品の中でも『映画技師ヒーロー』がダントツで面白かったと思います。キングとディーヴァーは遥かに予測を下回る出来でした。(キングに至っては数ページの文章でしかなく、他の作品に対して無礼であるとも感じました。)
→サイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)
→FACEBOOK(https://www.facebook.com/profile.php?id=100005952271135)
エドワード・ホッパーは1882年7月22日にニューヨーク州アッパー・ナイアックで生まれ、1967年5月15日にニューヨーク市ワシントン・スクエア近くの自らのアトリエで死んだ。それまでの85年にわたる彼の人生はなかなか興味深いものだが、それをここで詳しく語るのは私の仕事ではない。(中略)
話は脱線するが(中略)いかに本書編集のアイディアが浮かび、なぜこれほど著名な多くの作家が賛同してくれたのか、少し書いておきたい。
(中略)気づいたときにはもうそこにアイディアが━━土台もタイトルも何もかもそろったアイディアが━━あった。私はほとんど何も考えることなく、仲間に迎えたい作家の最初のリストをつくった。
そのとき考えた作家の大半がぜひ参加したいと言ってくれた。
理由は友情ではなかった。(中略)エドワード・ホッパーが惹き寄せたのだ。全員が彼の作品を愛し、彼の作品に呼応してくれたのだ。それもいかにも作家らしく。
ホッパーの絵に強く惹かれるというのは、アメリカだけでなく世界において珍しいことでもなんでもないが、私は最近とみにこう思うようになった。その傾向は読書家と作家にとりわけ顕著だと。(中略)
ホッパーはイラストレーターでも物語画家でもない。(中略)ただ強く抗いがたく示唆している。絵の中に物語があることを、その物語は語られるのをも待っていることを。彼はある一瞬を切り取ってわれわれに提示する。そして、その瞬間には明らかに過去と未来がある。しかし、そのふたつを見つけるのはわれわれの仕事だ。
本書の寄稿者はみなそれを実践してくれた。(後略)
では、具体的に収録されている短編を述べていきましょう。
ミーガン・アボット『ガーリー・ショウ』(ホッパーの作品は『Girlie Show』、以下同じ)
ジル・D・ブロック『キャロラインの話』(『Summer Evening』)
ロバート・オレン・バトラー『宵の蒼』(『Soir Bleu』)
リー・チャイルド『その出来事の真実』(『Hotel Lobby』)
ニコラス・クリストファー『海辺の部屋』(『Rooms By The Sea』)
マイクル・コナリー『夜鷹(ナイトホークス』(『Nighthawks』)
ジェフリー・ディーヴァー『11月10日に発生した事件につきまして』(『Hotel By A Railroad』)
クレイグ・ファーガソン『アダムズ牧師とクジラ』(『South Truro Church』)
スティーヴン・キング『音楽室』(『Room In New York』)
ジョー・R・ランズデール『映写技師ヒーロー』(『New York Movie』)
ゲイル・レヴィン『牧師のコレクション』(『City Roofs』)
ウォーレン・ムーア『夜のオフィスで』(『Office At Night』)
ジョイス・キャロル・オーツ『午前11時に会いましょう』(『Eleven A.M.』)
クリス・ネルスコット『1931年、静かなる光景』(『Hotel Room』)
ジョナサン・サントロファー『窓ごしの劇場』(『Night Windows』)
ジャスティン・スコット『朝日に立つ女』(『A Woman In The Sun』)
ローレンス・ブロック『オートマットの秋』(『Automat』)
この中で特に面白いと思ったのは次の3編でした。
『海辺の部屋』 1年経つと1つずつ部屋が増えていき、家の構造も時によって変化するというファンタジーで、日本では三崎亜紀さんが書きそうな作品でした。
『映画技師ヒーロー』 映画技師をしている若い主人公が、みかじめ料を要求するやくざたちを、彼の恩師である引退した映画技師の指導に導かれて、5人射殺して回るというアクション満載の作品でした。
『窓ごしの劇場』 主人公は中庭をはさむ向かいの部屋で、若い女性が下着姿になったり裸になったりするのを毎日眺めています。そしてある日、今までの女と同じく、セックスで屈服させるため、手錠とナイフをポケットに入れて、彼女の部屋に入ることに成功しますが、セックスは彼女のペースで進んでしまい、彼は絶望して帰宅します。しかしあきらめきれない主人公は再び女の部屋を訪れると、そこには大量の血が残っていて、かけつけた警察は彼女の部屋から彼の精液の入ったコンドーム、そして彼の部屋からは女の血痕のついたナイフを発見します。しかし女の死体は見つかりません。それもそのはず、彼女は精神薄弱な妹の元に帰っていて、自分が殺されたように仕組み、男をだます策略を取っていたのでした。
上記の3作品の中でも『映画技師ヒーロー』がダントツで面白かったと思います。キングとディーヴァーは遥かに予測を下回る出来でした。(キングに至っては数ページの文章でしかなく、他の作品に対して無礼であるとも感じました。)
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