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北野武監督『監督、ばんざい』

2008-09-25 15:20:38 | ノンジャンル
 WOWOWで北野武監督の'07年作品「監督、ばんざい」を見ました。
 等身大の北野の人形にMRT、胃カメラ、エコーなどの検査がされ、次は本人に来るように言われます。「事の起こりはギャング映画だった」というナレーションの後、暴力団員を非情に殺す場面が描かれますが、北野は得意だったギャング映画を撮るのを止め、小津のような人情映画を撮ることにします。しかし、そのような映画には客が入らず、今度は恋愛映画を撮りますがうまくいかず、今度は男が女に尽くす映画を撮ります。話が展開していかないので、男をワルにしてみます。またギャングが出てきてしまったので、今はやりの昭和30年代の映画を撮ります。北野の少年時代を描いた「コールタールの力道山」という映画になりますが、貧困と暴力の映画となり、撮らないと決めたバイオレンス映画になってしまいます。日本で量産される恐怖映画に挑戦しますが、あまり怖くないので、今まで自分の映画で唯一大きな黒字を出した時代劇を撮ります。忍者映画でしたが「座頭市」と同じようになってしまったので止め、CGを使ったSF映画にします。小惑星の表面に顔が現れたので、その顔を主人公にした映画を作ることにします。女2人だとストーリー展開に限界があるので、男を登場させます。マトリックスのパロディがあり、ギャグに次ぐギャグ。北野は都合が悪くなると自分の人形に入れ替わります。最後に彗星が落下して皆死んでしまい、そこに「GROLY TO THE FILMMAKER」の文字が浮かび上がります。そしてラスト。冒頭の検査の結果「これはもうダメ」と医者に言われてしまいます。
 北野監督が脚本・編集も行なっています。出演者が豪華で、寺島進、入江若葉、松坂慶子、佐藤浩市、内田有紀、藤田弓子、大杉蓮、江守徹、岸本加世子、宝田明、吉行和子、そしてどこに出演していたかは分からなかったのですが、木村佳乃もキャストロールに名前が載っていました。お笑い映画であり、「みんな~やってるか!」よりは笑えました。それにしてもこんなに馬鹿馬鹿しい映画の企画がよく通るなと言うのが素直な感想です。結構お金も掛けているし、どうみても採算割れしそうに思うのですが‥‥。暇つぶしのつもりで見た方が楽しめるかもしれません。

中島京子『平成大家族』

2008-09-24 15:51:12 | ノンジャンル
 高野秀行さんがファンである中島京子さんの'08年作品「平成大家族」を読みました。
 引退した72才の龍太郎は妻の春子と住み、別棟に春子の母のタケが住んでいましたが、長女の逸子の夫・悠介が事業に失敗したので、逸子夫婦とその息子のさとるが一緒に住むことになり、タケを母屋の1階に住まわせ、1階にあった自分たちの寝室は、未だに定職に就かず家に引きこもっている長男の克郎の隣の部屋に移し、タケの住んでいた別棟に逸子の家族が住むことになります。ところが経済的理由で私立中を辞めることになったさとるが物置にひきこもり、夜中に隣の部屋から聞こえるキーボードの音にいらついた龍太郎が克郎を怒鳴りつけると、次の日から克郎はさとると部屋を交換して物置に住むようになり、その上離婚した次女の友恵が売れない若手芸人の子を妊娠して帰ってきてしまいます。さとるは公立中に通い始め、当初はいじめられないために保身に走りますが、それで1人の女生徒を傷つけることになり、以後いじめと戦う決心をします。さとるが決心した日に学校を休んだので、逸子はその原因を思い悩み、イライラが高じて家族に当たりまくります。タケはボケ始めていて、家族を時々戸惑わせます。小さい頃から期待されず存在を無視され続けてきた克郎は、太り続けた結果動くのが億劫になり閉じこもったのですが、5年前に5万円を元手にインターネット株を始めてから外に出ることを諦め、今では月に10万ほど稼ぐようになっていました。そして義理チョコをもらったのがきっかけで、タケのヘルパーの若い女性・皆川カヤノと付き合うようになり、徐々に外に出るようになっていました。悠介は求人ポスターを見て農作業の手伝いをするようになり、やがて本気で農業をする気になります。春子は6年ぶりに会った友人たちに子供たちについての悩みを打ち明けますが、平和ねえと言われてしまいます。帰りに夫が倒れたという知らせを受けますが、大事には至らず、夫の友人から気持ちを告白された後思い出し笑いしてしまいます。そして友恵は健太郎を産み、自分の姓にするために元夫に協力してもらいます。それからしばらくして皆川カヤノが克郎と結婚すると龍太郎と春子に告げ、2人の婚約を祝う家族総出の夕食会で、悠介が単身で1年千葉の農園の経営コンサルタントをしに行き、成功すれば逸子も行くという話を発表し、春子が龍太郎のプロポーズの言葉が「幸福な家庭を築こう」だったことを皆に教えると、悠介はお父さんがこの素晴らしい家族を作ったのだと涙するのでした。克郎たちが無事に結婚式を済ませた後、タケは急逝し、龍太郎はこの1年の出来事を書こうとしましたが、何一つ知らない自分に気付くのでした。
 家族を構成する一人一人が順番に語り手となって、物語が進んでいきます。今まで読んだ中島京子さんの作品「TOUR 1989」と「桐畑家の縁談」と比べて、一番面白く読めました。中でもタケが語り手となっている部分は、同じことを何度も口にしたり考えたり、時制が飛んだり、相手が誰だか分からなくなったり、認知症の父を持つ私としては、身につまされるほど描写がリアルで、また笑えました。他の登場人物も皆感情移入できる人ばかりで、久々にいい小説と出会えた気がします。コミカルな小説が好きな方にはオススメです。

エリック・ロメール監督『満月の夜』

2008-09-23 18:17:09 | ノンジャンル
 WOWOWでエリック・ロメール監督の'84年作品「満月の夜」を見ました。
 「2人の女を持つ者は魂を失い、2軒の家を持つ者は理性を失う」の字幕。11月。ルイーズ(パルカル・オジェ)はレミと同棲している家を出て、妻のいるオクターブと、パリに借りてるアパルトマンに行き、ここで孤独になりたいと言います。2人でパーティーに行くとレミも来ますが、ルイーズが他の男に色目を使うので、レミは先に帰りルイーズは泣きます。家に帰ってもレミは怒っていて、オクターブのことが気に入らないと言います。12月。アパルトマンの改修が終わり、さっそく知り合いの男に次々に電話をかけますが、翌日にレミへの贈り物を買って帰ります。1月。オクターブとパリで会っていて、トイレを出ようとするとレミがいたのですぐに隠れます。オクターブはパーティーの時にレミが話していたカミーユがいたと言います。カミーユが訪ねてきますが、オクターブが見たのは自分ではないと言います。2月。パーティーで男と体を押し付け合って踊るルイーズ。別室でその男とキスをします。翌日、その男に会いに出かけようとすると、オクターブが押しかけてきて問いつめるので、ルイーズは泣き出します。オクターブは自分と寝てくれないから嫉妬するのだと言いますが、ルイーズはこの友人関係を大事にしたいと言います。ルイーズはパーティーの男と食事し、踊り、寝ます。先に起きたルイーズは一人カフェに行くと、隣の男(ラズロ・サヴォ)は昨夜は満月だったので誰も眠らなかったと言い、ルイーズは浮気をしたことで恋人のもとへ帰りたくなったと言います。そして始発でレミの家に帰りますが留守で、帰ってきたレミはルイーズの友達のマリアンヌを愛していると言い、ルイーズは泣きますが、すぐにオクターブに電話するのでした。
 この映画の後急死したことで話題になったパスカル・オジェですが、声がかわいいだけで半眼、室内ではジャージ姿、やせすぎで男性的に歩くといった感じで魅力的ではなく、良かったのはラズロ・サヴォとの会話シーンだけでした。しかし、クスリで体調がおかしくなっていたとも言われているので、この映画だけで判断すべきではないかもしれません。お母さんのビュル・オジェは大好きなので、他の映画ももし見られたら見てみたいと思います。浮気な懲りない女性を描いたこの映画ですが、やはり主演女性の魅力の無さが致命的でした。エリック・ロメールの映画なのに、残念です。

宮本常一『忘れられた日本人』

2008-09-22 15:13:01 | ノンジャンル
 高野秀行さんが推薦する、宮本常一さんの「忘れられた日本人」を読みました。
 本のカバーには次のように書いてあります。「昭和14年以来、日本全国をくまなく歩き、各地の民間伝承を克明に調査した著者(1907-81)が、文化を築き支えてきた伝承者=老人達がどのような環境に生きてきたかを、古老たち自身の語るライフヒストリーをまじえて生き生きと描く。辺境の地で黙々と生きる日本人の存在を歴史の舞台にうかびあがらせた宮本民俗学の代表作。」
 私は民俗学の本について読んだことはありませんが、この本で学問的な考察がなされているのは冒頭の寄り合いについて書かれた部分だけです。ここでは、重要なことは寄り合いで、長いと何日もかけて、村人全員の了承を得るまで話し合って決める対馬の村のこと、決して口外しないことを条件に、言いたいことを言ってうっぷんを解消する老人たちの寄り合いのことなどが語られ、寄り合いが村で持つ意味に言及されています。
 ただ、他の部分に関しては、とりとめもない老人たちの昔話が書かれているだけで、何が民俗学なのか、何が伝承者なのか、ちっとも分かりません。そこではただ昔の暮らしぶりが語られているだけです。それが文化なのだと言えば文化なのでしょうが、「文化を築き支えてきた伝承者」などと紹介文に書かれているので、言い伝えとか、そうしたものを期待していた者としては、見事に裏切られました。民俗学とは単に老人に昔話を聞くことなのでしょうか? そうだとしたら老人福祉施設で毎日のように老人たちの昔話を聞いているケアワーカーの人たちは民俗学のフィールドワークをしていることになるような気もしますが、どうなのでしょう?
 私は少なくともこの本が学問に関する本だとは到底思えませんでした。機会があれば戦前戦後の日本の民俗学の本を読んで、日本における民俗学がどういうものなのかを知りたいと思いました。老人の昔話が好きな方にはオススメです。

エリック・ロメール監督『美しき結婚』

2008-09-21 15:41:36 | ノンジャンル
 WOWOWで、エリック・ロメール監督の'82年作品「美しき結婚」を再見しました。
 軽快なテクノ音楽。「夢中にふけらない人があろうか、空想を抱かない人があろうか ラ・フォンテーヌ」の字幕。若い女性のサビーヌ(ベアトリス・ロマン)は、恋人のシモンとセックスをしていますが、電話に邪魔されて気分を害し、妻子持ちのシモンと別れることを決意。相手を探して結婚することを宣言します。友人の若い女性画家クラリス(アリエル・ドンバル)にそのことを話し、結婚しているクラリスと延々と話し合います。クラリスの弟の結婚パーティーで、クラリスからクラリスの従兄のエドモンを紹介されます。後でクラリスからエドモンがサビーヌに気があると聞くと、サビーヌはにやついてしまいます。クラリスに勧められてエドモンに電話し、エドモンが探していた古美術が見つかったと言って会う約束をし、エドモンにそれを手に入れさせ、一緒に食事をし、一人で延々としゃべります。そしてバイト先の古美術商から客と勝手に取り引きしたことを責められ、バイトを辞めてしまいます。母にエドモンとの結婚について話すと、未婚で子供を産んだ母は喜んでくれます。サビーヌの誕生パーティーにエドモンがなかなか来ないので、サビーヌはイライラし泣きますが、パーティの終わり近くになってやっとエドモンは来ます。しかしエドモンは仕事を理由にすぐに帰っていまい、サビーヌは怒ります。母は違う世界に生きる人だから、あまり夢中になるなと言います。それ以来、エドモンへの電話は通じなくなり、サビーヌはそれをクラリスのせいにして、何も言ってこないエドモンを非難します。そしてエドモンの事務所に乗り込むと、エドモンはパーティーが気詰まりだったと言い、サビーヌにも惹かれないと言うので、サビーヌは怒って帰ります。クラリスにすべてを話した後、冒頭のシーンで気になっていた男性と列車の中で視線を交わして、映画は終わります。
 あらすじを書いていて気付いたのですが、すべてのシーンにサビーヌが出て来ます。これはロメール監督の「緑の光線」と同じです。彼女は常に話していて、それが彼女のコケティッシュな性格をよく表しています。最初はあまり魅力を感じなかったサビーヌですが、映画を見ていくにしたがって、ちょっとした仕種や表情がとてもかわいく感じられてきます。「浜辺のポーリーヌ」にも出ていたロメール映画の常連アリエル・ドンバルがとても魅力的に見えるのも、彼女たちが自然に演技しているからでしょう。これほどリラックスした女性たちを描けるというのも、ロメールが少人数でロケ撮影しているからだと思いました。活き活きとした女性を見られる希有な映画だと思います。オススメです。