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中島京子『桐畑家の縁談』

2008-09-20 18:28:01 | ノンジャンル
 高野秀行さんがファンである中島京子さんの'07年作品「桐畑家の縁談」を読みました。
 大企業の人間関係に疲れて会社を次々に辞め、3番目に就職したデザイン事務所も1年半前につぶれてしまい、それ以来妹の佳子のところにやっかいにやっている露子は、ある日佳子から台湾人のウー・ミンゾンと結婚することにしたと言われます。日本語学校で事務員として働いている佳子は、他の日本語学校を退学になって転入してきたウーと知り合い、ウーのしつこいアプローチに陥落したのでした。露子は就職先を探すため、恋人の研修医・渡辺邦男に相談しますが、勝手なことばかり言われます。佳子の父は娘の結婚話を聞いて動揺し、国際結婚など五つの熟慮すべき点を書いて佳子に送りますが、一顧だにされません。母は愚痴を言いに佳子たちの家に泊まりに来ます。小中学生時代は自分を変わっていると思っていた佳子が自分よりも先に結婚することに露子はとまどいます。露子は昔露子の絵を誉めた元恋人の写真家に出会い、別れた後泣いているところをウーに会って号泣します。そしてウーのアルバイト先の中華料理屋に連れていかれ、写真家の話をすると、ウーの仲間たちはひどい男だと言い、たまたま持っていたクロッキーノートの自分の描いた絵を彼らに見せることによって過去の絵へのこだわりが消えていきます。そして結婚式前夜、ジンマシンの出た佳子を渡辺邦男が研修医をしている医院で治療してもらった後、露子は渡辺邦男を自宅まで送り、この男とは結婚しないと決めると、明るい気持ちになるのでした。
 この前に読んだ中島京子さんの作品「TOUR 1989」よりは楽しく読めました。コミカルなところも多く、露子の気持ちの揺れに共感でき、いい小説だと思いました。ただ、じゃあ積極的に中島京子さんの作品をこれからも読んでいこうと思ったかというと、そこまでの気持ちにはなりませんでした。次に読む作品に期待したいと思います。

年金の歴史とねんきん特別便の注意点

2008-09-19 15:07:56 | ノンジャンル
 昨日発行のフリーペーパー「R25」に、ねんきん特別便に関する記事が載っていました。
 ねんきん特別便はもうご存じのように、社会保険庁が把握している年金記録と、実際に年金を納めた事実とが合っているかどうかを我々に確認してもらうために社会保険庁が送っているものです。では、なぜ年金がこれまでしっかり社会保険庁で管理されていなかったのでしょうか? 私は今まで単に社会保険庁の職員の怠慢のためだと思っていたのですが、どうもそれだけではないようです。
 記事を引用してみましょう。「『年金大崩壊』などの著者で知られ年金業務・社会保険庁監視等委員会の委員を務める岩瀬達哉氏に聞いた。『そもそも年金の歴史は社会保障制度として導入されたものではありません。戦時中の戦費調達を目的としていた。だから支払いに関する記録管理はずさんでした。年金制度で最も重要な、誰がいくら払ったかの記録をきちんと管理していなかったんです。加えて、戦争中に疎開をさせた記録を紛失したりして、余計混乱したんですね。実際に年金記録に多くの不備があるのは昭和35年にはわかっていました。しかし、そこで修正すると、いい加減な管理がばれるからやらなかった。これが今まで尾を引いているんです。』」
 何ともひどい話です。もともと国民から財産を収奪する制度として始まった訳ですね。だから社会保険庁となってからも、あれだけどうしようもない箱ものを次々に大金を注いで建てていたということなのでしょうか。
 そして、社会保険庁のいい加減さを正すために我々に与えられた武器であるねんきん特別便ですが、どこをチェックすればいいかというのも記事に載っていました。その中で特に注意すべき点として、「期間が連続しているかどうか」というのがあります。「資格を失った年月日と次の段の資格を取得した年月日がつながっていれば大丈夫。1日でも空白がある場合は相談をした方がよい。」そうです。気をつけましょう!

行定勲監督『クローズド・ノート』

2008-09-18 15:30:17 | ノンジャンル
 スカパーの707チャンネル「日本映画専門チャンネル」で、行定勲監督の'07年作品「クローズド・ノート」を見ました。
 香恵(沢尻エリカ)は古い家に引越してきますが、鏡の裏に前の住人が残していった日記を発見します。万年筆屋でバイトをしながら、教師を目指して大学に通う香恵。日記には真野伊吹と名前が書いてあり、小学校の新任教師(竹内結子)のものだと分かります。バイト先に若い男が来て、試し書きで絵を描き、文字を書くように香恵に言われて自分の名前「石飛竜」と書きますが、後に新聞でその男がイラステレーターであることを知ります。日記を読むと、一人の女子生徒が不登校になったことが書いてありました。石飛が香恵を訪ねてきたので、香恵は今度の日曜日にマンドリンの演奏会があるから来てほしいと言います。石飛は花束を持って行きますが、他の男が大きな花束を持ってきていたので、気後れして帰ってしまいます。香恵が日記を読み進めると、伊吹は不登校の子が歌が好きだったので、クラスで合唱を始め、その楽譜を不登校の子に渡しましたと書いてあります。その頃、伊吹は大学時代の恋人だった隆に出会い、交際を再会します。香恵は演奏会に石飛が来ていたことを知らされ、石飛に会いに行くと、石飛は今度自分の個展があるので、そこでマンドリンを演奏してほしいと言います。日記に書いてあった料理を作り、石飛に持って行くと、そこで石飛の知人の女性から石飛にはずっと思っている女性がいると知らされ、香恵は泣きます。日記にも、隆が女性と歩いているのを見て泣いたと伊吹が書いていましたが、その後すぐに仲直りしたと書いてあったので、香恵もすぐに石飛と仲直りをします。そして香恵は石飛の思っている人が伊吹であり、石飛の本名が隆であることを知ります。香恵の家に伊吹と彼女を描く石飛が現れます。そこへ現実の伊吹が訪ねてきて、伊吹の存在を告白し、謝り、香恵はまた泣きます。香恵は伊吹の学校を訪れますが、伊吹は交通事故で死んでいました。日記は不登校の子がまた学校に戻り、担任の最後の日を迎えたところで終わっていました。香恵は石飛の個展を訪ね、マンドリン演奏の代わりに、日記の最後の部分に書いてあった石飛への愛の告白を読み上げると、石飛は泣きます。石飛は香恵を訪ね、伊吹に負けないように自分の絵を描くと言い、香恵も伊吹に負けないような先生になると言うのでした。
 沢尻エリカ主演ということで見ましたが、彼女の顔がしもぶくれのように見えるシーンもあり、彼女の良さが生かされているとは思えませんでした。男っぽい歩き方をし、気が強い彼女を生かすには、井筒和幸監督の「パッチギ」のような気丈な役の方が合っていると思います。わざとらしいシーンと演技の連続で、聞いてて恥ずかしくなるような台詞も多く、スローモーションを絶対に使ってはいけないところで使うなど、かなりひどいお涙頂戴映画でした。蓮實重彦氏風に言うと「映画の敵」だと言ってもいいかもしれません。沢尻エリカを見るためだけの映画のような気がしましたが、皆さんはどう感じられたでしょうか?

高野潤『アマゾン源流生活』

2008-09-17 16:12:39 | ノンジャンル
 高野秀行さんが推薦する、高野潤さんの「アマゾン源流生活」を読みました。
 写真家の高野潤さんは、アンデスの高地を訪れるうちに、アマゾンの魅力に惹かれ、1970年代の後半から年に40~50日ほど、アマゾンの源流地帯に滞在するようになります。そこで著者を脅かすものは、地域によってうじゃうじゃいる毒ヘビ、野性の牛の厚い皮を貫くために太くて鋭い針を持ち、衣類の上から刺してきて、刺されると痛くてコブのような腫れだらけになってしまう蚊、刺されると猛烈にかゆくなる、雲のようになって襲ってくるブヨ、皮膚の中で寄生虫として成長し、体液を吸ったり肉をかじったりして激痛を与える昆虫、木に少しでも触れると落ちて来て、首筋がヒリヒリと痛み、火であぶられたように熱くなる赤い極小のアリ、咬まれるとほぼ1日リンパ腺が腫れて熱が出た上、泣き出したくなるほどの痛みに襲われる毒アリ、目に飛び込んでくるハチ、何でも噛み切って運んでいってしまうハキリアリ、牛をも殺すデンキウナギ、釣り針にかかってくる2m以上もあるワニ、釣り上げて半日たっても死なない魚ワサコ、真昼を闇に変える雷雨、大木をなぎ倒す局所的な突風、釣り針にかかるとドーンという大きな音をたてる、体長1mもある大ナマズ、6,7年以上して再発し、日に2回1時間ほど高熱と猛烈な悪寒に襲われる病気マラリア、寄生虫が皮膚を食い荒らし化膿させる病気ウタ、動きが速く人間を丸飲みする体長7mのアナコンダ、現地人は妖怪のものだという、森の中から聞こえてくる謎の大きな音、食糧の匂いに惹かれてやってくるゲリラ、麻薬を精製しているマフィア、外国人以外の他の民族だと分かると攻撃してくる原住民、などなどです。他にも、アマゾン源流におけるキャンプの作り方、案山子を作って盗賊から身を守る方法、排水溝を作る重要性、地面に穴を掘って冷蔵庫を作る方法、食事などの生活方法に言及する記述も豊富にあります。
 読んでいると、アマゾン源流にこれから行く人のために書かれた本であることが分かります。したがって、面白く書こうという意思は見られず、実用的な知識の紹介となっていて、エンタメ・ノンフとしては少し価値が低いような気がします。ただ、未開の地での暮らしに興味がある人は面白く読めるかもしれません。本屋さんで手に取っても損はないと思います。

吉田喜重監督『エロス+虐殺』

2008-09-16 18:40:58 | ノンジャンル
 スカパーの707チャンネル「日本映画専門チャンネル」で、吉田喜重監督の'70年作品「エロス+虐殺」を見ました。
 大正12年(1923年)、関東大震災の混乱に乗じて、社会主義者・大杉栄(細川俊之)とその愛人・伊藤野枝(岡田茉莉子)は官憲によって虐殺されます。野枝は28才の生涯の間に3回結婚し、7人の子供を産んでいます。18才で家を出て単身上京し、女性解放運動の創始者・平賀哀鳥(平塚雷鳥のこと)を訪ね、彼女の元で運動に参加しますが、やがて最後の夫である辻と離婚しないまま、以前に平賀の同志であった正岡を愛人とする大杉と同棲を始め、正岡と大杉との三角関係を生きます。大杉は革命の名のもとに一夫一婦制を旧制として切って捨て、フリーセックス主義を唱え、正岡と野枝と同時に付き合う自分を正当化します。そして嫉妬に狂った正岡が大塚に短刀で斬り付ける事件が起き、大塚は傷を負っただけで済みますが、関東大震災の時に官憲によって野枝と野枝の甥とともに絞殺されます。
 一方、1969年には、性に奔放な永子が、性に対して臆病な青年(原田大二郎)とともに野枝たちのことを調べています。その間にも永子は興味本意で売春をし、死にたいという友人に男を紹介したりします。そして最後には青年を誘惑し、自分を抱かせるのでした。

 関東大震災の混乱に乗じて警察が社会主義者の大杉栄とその愛人の伊藤野枝を虐殺した1923年と、この映画が撮られた1969年の出来事が交互に描かれ、最後には混ざりあって終わります。その前にも現代の風景の中に野枝らがいるシーンもあり、時制は意識的に混乱するように撮られています。一つ一つのシーンの意味は非常に難解で、特に1969年の永子と青年を中心としたシーンは断片的であり、意味を捕らえるのが困難で、いわゆる芸術映画的になっています。
 最初に社会主義者とその愛人が虐殺されたと語られるので、その政治的意味を期待していると見事にはぐらかされることになり、実は男女の愛情を描いた映画であることに気付きます。伊藤野枝も正岡も大塚を愛する一人の女性であり、社会主義のいう名のもとに自己を正当化する大塚に正岡と野枝が振り回されるドラマが展開されています。
 1969年のシーンにおいても、抽象的な言葉を抜きにして見ていれば、性の悦楽を享受する永子と、性に臆病な青年のドラマと見ることもでき、そう見れば分かりやすくもなるのでしょう。
 野枝も28年の生涯の間に3回結婚し、7人もの子供を産んでいる恋多き女性なので、その点で永子と共通するところがあるのだと思います。
 そしてこの映画で特筆すべきなのは、その音楽の素晴らしさです。吉田喜重監督の「秋津温泉」でも音楽が効果的に使われていましたが、この映画でも同じことが言えます。音楽を聞くだけのためにでも見る価値のある映画だと思います。