すさまじい暴圧の現場
映画「高江ー森が泣いている」藤本幸久・影山あさ子共同監督
警察・機動隊、海上保安庁を前面に立てて、反対する人たちを力ずくで抑え込みながら、辺野古の米軍新基地工事を推し進める日本政府。その暴挙は止まることなく、今夏、沖縄本島北部の東村高江のヤンバルの森でヘリパッド建設を再開した。この作品は高江の住民たちの不屈の抵抗の記録である。
辺野古の海が珊瑚とジュゴンが生息する美しい海ならば、高江の森は天然記念物のノグチゲラやヤンバルクイナも棲む自然の宝庫。その森に米軍の北部訓練場がある。高江の人口は140人。ここに、6ヵ所のヘリパッド建設が07年に始まったが、住民たちは座り込みで抵抗。4ヵ所はまだ作られていない。新たなヘリパッドは、海兵隊の新型輸送機・オスプレイのためのもので、従来のヘリコプターよりも騒音も墜落の危険も上回る。
この小さな集落に日本政府は東京、神奈川、愛知、福岡など全国の機動隊、警察、防衛局職員ら1000人と警察車両を大動員し、工事に反対する住民たちを暴力的に排除、住民たちのテントまで破壊した。現場はまるで戒厳令下の様相を呈する。この映画には、圧倒的な警察権力で人々を押さえ込もうとするシーンが随所に映し出されている。怒号と悲鳴。真夜中から明け方にも及ぶ警察の制圧作戦と住民たちの抵抗。警察の暴力で、傷つき、倒れる住民たち。それでも、救急車を呼ぼうとしない機動隊の非人間性が浮き彫りにされていく。「記録なくして事実なし」という監督の執念が人々の闘いを熱く支え続ける。
それにしても、自国民をこれほどまで徹底的に痛めつける「警備」がありえるのか。憲法が保障する集会の自由も基本的人権も表現の自由もここには存在しない。まるで戦争前夜のような、反対派への牙をむき出しにした弾圧が容赦なく襲いかかる無法地帯、それが高江なのだ。
「普段は山羊と鶏を相手に農業を営んでいる」という素朴な農民たちの願いを踏みにじって戦場のような場所に一変させた安倍政権の狙いは何なのか。戦争法を成立させた安倍政権は日米軍事同盟の最前線基地として、沖縄を朝鮮半島や東アジア再侵略の踏み台にしようとの野望をあからさまにしている。
藤本幸久共同監督は「辺野古で起きていること、高江で起きていることに、日本の今の姿がはっきりと表れている。そして、それはこれから日本全国で起きることの序章なのかもしれない。私たちの未来をどう作っていくのか。今、市民一人ひとりの意志と行動が試されている。ヤンバルが棲む自然豊かな高江の森を破壊して、何万本の立木が伐採されようとしている。希少種への影響も計り知れない。すぐ近くに住む60代、70代、80代の住民たちが森に入って必死に抵抗している。彼らの抵抗をこれからも伝えていこうと思う」と力強く語った。
(粉、写真は「森の映画社」提供)
※2週間緊急上映=東京・ポレポレ東中野(03-3371-0088)。15日(土)~28日(金)。連日18時から。入場料金1000円均一。