みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」(ハーグ条約)加盟めぐって。

2011-05-11 18:56:42 | ほん/新聞/ニュース
昨日から雨が降りつづいてて、
夕方から、山県市にも「大雨警報」が出ている。

東京に行く前に咲いた、大輪の白い牡丹の花は、
雨が止んだら写そうと思っていたのに、あえなく散ってしまった。
苗を植えてから、かれこれ10年になって、初めて咲いた花なのに、
えーん、ザンネン。

花が大きいナオオデマリは、
地面にくっつきそうに垂れてきたので、
少し切り取って、片付けた薪ストーブの上に活けました。
牡丹は散ったけど、これでガマンしましょう。

このお花は、正確には「ビバーナム・スノーボール」(別名:セイヨウカンボク )。
オオデマリ(別名:テマリカンボク)とよく似ていますが、葉の形が違います。
こちらが、オオデマリ。  
木も花もおおきめです。

昨日、朝日新聞の社説を紹介しましたが、
もう一つの社説は、「ハーグ条約加盟」の問題。

社説:国際離婚条約―「加盟後」の姿が見えぬ 
2011年5月11日(水)付 朝日新聞

 国際結婚が破綻(はたん)した時の子の扱いを定めたハーグ条約加盟への検討が政府内で進んでいる。
 一方の親が16歳未満の子を無断で国外に連れ去った場合、元の居住国にいったん戻し、その地の手続きに従って子の面倒を見る者を決めようというのが条約の骨子だ。欧米を中心に締結を迫る声は強く、結論を出す時期は近いとされる。
 加盟国は80を超え、「日本人に子を奪われた」と問題になっている事例は約200件にのぼるという。国際社会における日本の地位や他国との協調を考えれば、いつまでも決断を先延ばしするわけにはいくまい。
 歴代政府が慎重だったのは、夫の暴力を耐えかねて子と一緒に帰国したという日本人妻が少なくないからだ。異国に戻り、不慣れな言葉や法慣習の下で主張を貫くのは容易でない。
 だが、子を連れ去られた側に視点を移せば事情は一変する。日本人がその立場に置かれている例もある。それまで暮らしていた国で関係を清算し、子の処遇を決めるという考え自体には一定の合理性がある。
 もどかしいのは、この問題が政治日程にのぼって相当の時間が経つのに、「加盟後」の姿が一向に見えないことだ。
 引き渡し要請がきた場合、どの機関が責任をもち、どうやってその子を捜し出すのか。条約は、子に「重大な危険」が及ぶ場合は返還を拒めるとするが、国内でどんな法律を制定して保障するのか。抵抗された場合、いかなる手段をとるのか。加盟諸国は実際どのように対応し、問題は起きていないのか。
 細部までの設計は無理としても、不明な点があまりに多い。海外に住む日本人の保護と支援は政府の重要な仕事だが、加盟後の取り組みも判然としない。弁護士らから「外交とりわけ対米関係を気づかうばかりで国民の方を見ていない」と批判の声が上がるのも理解できよう。
 この条約は一見、国境を越えた結婚をした人だけに関係するもののように映る。だが考えを進めていくと、離婚後の親子関係をどう築くか、子の意向をどうくむか、子の利益を最優先で考えるとはどういうことか――といった普遍的な問題が浮かび上がってくる。親権のあり方や養育費の支払い確保策など、国内の制度に将来影響が及ぶ可能性も否定できない。
 政策決定の過程で情報が適切に開示されない傾向が、民主党政権には往々にして見られる。親子や家族の間に深刻な混乱を招きかねないテーマだけに、十分な説明と手当てを求めたい。


この問題には関心があって、折りあるごとに記事を追っていたのですが、
ここへきて、子どもを連れ帰った日本人の女性を米国の男性が訴えて5億円賠償の判決が出て、
外務大臣が条約締結に前向きな姿勢を示すなどの動きがある。

米裁判所、日本人の元妻に5億円賠償命令 子連れ帰りで 
2011年5月10日 朝日新聞

 離婚した日本人の元妻が、米国から2人の子どもを勝手に日本に連れ帰ったとして、米国人男性(40)が元妻を相手に損害賠償などを求めた訴訟で、米テネシー州の裁判所は9日、元妻に610万ドル(4億9千万円)を支払うよう命じる判決を言い渡した。
 AP通信によると、賠償金額は男性の精神的苦痛などをもとに算出された。ただし、日本に住む元妻に直ちに判決の効力が及ぶ可能性は低い。判決後、男性は「子どもたちと再び会える環境をつくれるよう、元妻に考え直してもらうのが訴訟の目的だ」などと語っているという。
 元妻は実家のある福岡県に2人の子どもと帰国。男性は2009年9月、小学校に登校中だった子ども2人を無理やり米国に連れ戻そうとしたとして、福岡県警に未成年者略取容疑で逮捕されたが、起訴猶予処分となった。この事件は米国でも報道され、高い関心を呼んだ。
 米政府は、国際結婚が破綻(はたん)した場合には「ハーグ条約」に基づき、一方の親が勝手に子どもを国外に連れ出さないよう求めている。だが日本は同条約に加盟しておらず、国際問題に発展するケースが少なくない。
 昨年9月に米下院、今年1月にはフランス上院が日本政府に早期加盟を求める決議を可決するなど、欧米諸国は日本に対して加盟を迫っている。(ニューヨーク=田中光)


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ハーグ条約については、弁護士会が締結には前向きな姿勢を示しながら、
解決すべき問題も多い、と意見書を表明している。
いずれにしても、当事者である子どもの利益になるような方向性を出せないものかと思う。

「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」( ハーグ条約) の締結に際し,
とるべき措置に関する意見書(2011.2.18 日本弁護士連合会)


国際的な子の奪取の民事面に関する条約の批准についての意見書(2011.2.25 大阪弁護士会)


ニュースUP:ハーグ条約加盟を危惧する母親たち=社会部・酒井雅浩 

<おおさか発・プラスアルファ>
 ◇子の幸せ、十分議論を

 破綻した夫婦の子どもの扱いを定めた国際ルール「ハーグ条約」への加盟が外交問題に浮上している。欧米各国が早期加盟を迫り、日本政府が検討を進める中、加盟しないよう求める活動をする母親たちがいる。「当事者の会」を結成し、「加盟によって子の幸せを保障できるのか」と懸念する。その訴えを聞き、条約加盟について考えた。

 ■身を守るため
 「結婚生活が危機を迎えた時、母が子を連れて一時的に実家に帰る。日本ではよくあることも、条約に加盟すると禁止されます」
 昨年8月結成の「Safety Network for Guardians and Children」(略称SNGC)の代表を務める近畿在住の30代の女性は、そう訴える。約50人の会員はいずれも、国際結婚して外国に渡った後、夫のドメスティック・バイオレンス(DV)や、子への虐待から身を守るため帰国した日本人女性だ。
 代表の女性は、オーストラリア人男性と結婚。現在10代の長男が生まれ、オーストラリアで生活していたが、夫のDVが原因で長男を連れて別居し、帰国後に離婚した。
 元夫は離婚後、オーストラリアで長男の親権を求める訴訟を起こす。女性は、裁判費用や現地での生活費など約1000万円を親類からの借金で工面し応訴、「元夫の親権を認めない」との判決を勝ち取った。安心し帰国した後、現地で訴訟を担当した弁護士から思いもよらない連絡を受けた。元夫が再度、親権を求めて提訴し、出廷しなかった女性は敗訴。元夫に単独親権が認められたというのだ。さらに「あなたには現地の警察から『誘拐』の逮捕状が出ています」とも告げられた。
 オーストラリアはハーグ条約の加盟国だ。ハーグ条約は、子を養育する権利手続きは移動前の国で行われるべきだとの考えに立つ。日本も加盟すれば、「長男は連れ戻される」と女性は危惧する。加盟前にさかのぼって適用されないとの解釈が一般的だが、加盟後に元夫から帰国を迫られた場合、応じなければ条約の定めた不法行為とみなされる可能性がある。
 女性は現地に生活基盤がなく、元夫への嫌悪感もぬぐえないため、戻って再び裁判をしながら暮らしていくことは難しい。長男についても「就学前に帰国し、英語は話せない。長男の幸せはどうなるのでしょうか」と訴える。

 ■立証の難しさ
 1983年の条約発効当時、想定されていたのは、母に養育されていた子を、父が国外に連れ去るケースだった。しかし条約事務局が03年に行った調査では、連れ去りの7割が母親。DVや子への虐待が原因と考えられるという。
 条約には「元の国に戻った場合に重大な危険があるときは、裁判所は返還を命じないことができる」という例外規定がある。しかし、問題となるのが、DVや虐待の立証の難しさだ。判断には物証が必要とされ、連れ去った側に極めて高い立証責任が求められる。迅速審理を優先するため、例外の適用範囲は非常に狭く、母親へのDVは重大な危険と認められていない。SNGC代表の女性は「子どもへの虐待も、十分な証拠がないとして返還を命じられた例が数多い」と話す。
 背景にDVがあるとの指摘に対し、米国のキャンベル国務次官補は10年2月の記者会見で「実際に暴力があった事例はほとんど見つからない。大半は米国内で離婚し共同親権が成立しており、誘拐だ」と発言した。
 DVから女性を守る機関などは、海外にも存在するが、言葉の壁や、生活費などの問題で帰国せざるをえない、との指摘もある。

 ■「親権」にずれ
 外務省によると、これまでに外国政府から日本人による連れ去りを指摘された事例は米国100件、英国38件、カナダ37件、フランス30件にのぼる。
 欧米各国は連れ去りを誘拐とみなし、数年前から、日本の条約批准を「外圧」といえるほど強く要求してきた。今年1月、フランス上院議会が日本の条約批准を求める決議を可決。米のクリントン国務長官は日米外相会談の度に、早期加盟を迫る。政府は09年12月、外務省に「子の親権問題担当室」を設置。松本剛明外相は「東日本大震災後もしっかり国内作業を進めている」と外相会談で発言している。
 また、日本で暮らしていた外国人の親が、もう一方の親に無断で子を連れて母国に帰国しても、現状では連れ戻す手段はない。さらに、日本が条約に加盟していないことを理由に、海外在住の日本人母が、子を連れての一時帰国を許可されなかった例も報告されている。さまざまな問題の解決方法として、条約加盟を支持する意見も多い。
 こうした動きに「加盟は時間の問題」と危機感を強める女性は「メリット、デメリットを示して議論したうえで、国民が加盟を選択するなら仕方ない。でも、今は省庁の担当者ですら問題の本質を理解していない」と言う。
 日弁連は2月、加盟前に「DVや虐待事例は返還を拒否できるよう国内法を整備すること」との意見書をまとめた。兵庫県弁護士会も昨年末、「親の権利保護が第一とされ、子の利益への配慮が薄い」と国内法との整合性を問題視する会長声明を出した。「単独親権」で、親権のない親の面会権が制度化されていない日本に対し、加盟国は親権を両親が持つ「共同親権」の国が多い。条約の理念と日本の法制度の乖離(かいり)をどう解消するかも、制度化する必要がある。
 SNGC代表の女性は、帰国した理由を「現地では子を守ることができないため、やむを得ない選択だった」と話す。その上で「もし子どもが『父の元で暮らしたい』と言うなら、自分の気持ちは押し隠し、笑顔で送り出す」。この言葉が印象に残っている。
 条約に加盟した場合、運用を積み重ねることにより、国内の家族観にも影響を与えることは避けられない。まずは結論を出す前に議論を深めることが必要だと思う。

==============
 ◇ハーグ条約

 正式名称は「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」。加盟国は、子どもを連れ出された親が居住国の政府に返還を申し立てた場合、相手国の政府は子どもを速やかに元の国に戻す協力義務を負う。現在84カ国が加盟し、主要8カ国(G8)で批准していないのは日本とロシアのみ。
==============
 ご意見、ご感想は〒530-8251 毎日新聞「プラスα・ニュースUP」係。
 郵便、ファクス(06・6346・8104)、メール(o.talk-news@mainichi.co.jp)へ。
毎日新聞 2011年4月27日 大阪朝刊 



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浜岡原発:全原子炉の運転停止決定/新聞各紙の社説/市民の声

2011-05-10 19:16:22 | 地震・原発・災害
菅直人首相の、中部電力・浜岡原発の全原子炉の運転停止要請を受け、
中部電力は週明けの昨日、要請を受け入れることを決定。

浜岡原発:全面停止へ/首相の決断を評価する
/巨大地震の衝撃・日本よ! 元東大学長・有馬朗人さん


【浜岡原発停止】浜岡原発4、5号機含むすべての原子炉の運転停止要請へ/菅首相会見詳報


6日の菅首相の記者会見から、事態は急展開、
浜岡原発は、数日後には、全部の原子炉が止まることになりました。

中部電力の利用者として、中電の株主として、この決定を歓迎します。

じつは、わたしは中電の株式を保有しているので、
原発問題をめぐっては、株主総会に何回か出たことがあります。
当時は、反原発株主はマークされ、社員が動員されて前の席に陣取って、
質疑応答を妨害されたこともあります。

いずれにしても、浜岡原発に重大な事故が起きる前に停止を決断して、よかったです。

おりしも同じ9日、日本原子力発電の敦賀原発2号機から
放射能漏れがあったと発表されましたが、
あとは、北陸の常時風下地帯である岐阜県に住むものとしては、
日本原子力発電と関西電力の原子炉も全部停めて欲しいですね。

 浜岡原発:中部電力が原子炉全面停止決定 首相要請受け

 中部電力は9日午後の臨時取締役会で、浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)の全ての原子炉の運転停止を求めた菅直人首相の要請を受け入れることを決めた。現在運転中の4、5号機は数日後に運転停止し、定期点検中の3号機は再稼働を見送る。中部電力は7日に要請受け入れの結論を持ち越していたが、9日会見した水野明久社長は「福島第1原発の重大事故を契機に原子力への新たな不安が広がった。この不安を真摯(しんし)に受け止め、安全最優先という原子力事業の基本を貫くべきだと判断した」と説明した。
 水野社長は海江田万里経済産業相と8日に電話で協議したことを明らかにし、「防波壁などの津波対策完了を確認すれば運転再開を認めるとの確約をいただいた」と述べ、2~3年後の運転再開を目指す考えを示唆した。
 海江田経産相との協議では、津波対策完了後の3~5号機の再開のほか、顧客や株主の負担軽減に向けた国の支援▽御前崎市など立地地域への交付金や雇用への配慮▽全面停止は国民に一層安心してもらうためで、現在の安全対策は法令や技術基準に基づき適切に実施されていることの確認▽電力供給確保に対する国の支援--の計5項目を要請。水野社長は「経産相から了解を得たことが決め手になった」と語った。
 海江田経産相も9日会見し、中部電力に対し、原発停止に伴う費用負担への金融支援を行う用意があることを明らかにした。交付金についても「今後2年間はこれまで通り交付され、その後も減額されることがないようにしたい」と述べた。
 浜岡原発は3~5号機合わせた発電能力が約360万キロワット。全面停止に伴い、中部電力管内の7月の最大需要見込み(2560万キロワット)に対する供給力は2615万キロワットに落ち込む見通し。東京電力に対する100万キロワット、九州電力に対する40万キロワットの電力融通を取りやめる。水野社長は「(地域ごとに順番に停電する)計画停電のようなことはしない」と述べた。関西電力など各電力会社に支援を求め、休止中の火力発電所の再稼働を急ぎ、企業などへの節電を呼び掛ける。電力を火力発電で補うため燃料費2500億円の追加負担がかかるが、水野社長は「電気料金値上げは考えていない」と述べた。【丸山進】
毎日新聞 2011年5月9日

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
静岡・浜岡原発:停止決定 水野・中電社長一問一答「値上げ、今は考えず」 

水野明久中部電力社長の記者会見での主なやりとりは次の通り。

 --市民生活への影響は。
 電力需給は非常に厳しく、あらゆる対策をとらなければならない。現時点で値上げは考えていない。皆様にご迷惑をかけないように努力する。

 --政府の要請を受けることで利用者に不利益をもたらす。
 電力の安定供給の責務をまっとうしたい。原子力事業は安全確保を最優先に、地域や社会のみなさまの信頼を得て成り立つのが原点だと考える。福島の事故で広がった不安を真摯(しんし)に受け止め、安全最優先で進めることが長期的にはお客様や株主の利益につながると判断した。

 --リストラはあるか。
 経営効率化は常日ごろから念頭に置いているが、再度見直し、最大限の経営効率化の努力を続ける。

 --顧客に節電を求めるか。
 計画停電のように強制的に地域を決めて停電することは考えていない。エネルギーの効率的な使用を呼び掛けてきたが、一層お願いしないといけない。

 --今後も原発を推進するか。
 原発は日本のエネルギー事情を考えると基幹となることは間違いないが、地元や国民に信頼いただかなくてはならない。
毎日新聞 2011年5月10日 東京朝刊



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社説:浜岡運転停止 電力不足を招かぬよう 

 中部電力が浜岡原子力発電所の3基の原発について、「首相の要請は重い」として、運転停止と運転再開の中止を決めた。
 東京電力の福島第1原子力発電所の事故は、地震による津波の影響を過小評価していた結果だった。浜岡原発が立地する場所は、近い将来に必ず起きると考えられる東海地震の想定震源域の真上にある。
 福島第1原発の事故の後に、中部電力は浜岡原発について、津波対策のための防波壁の設置や非常用電源の拡充などの対策を打ち出した。しかし、対策が完了するまでには相当な時間がかかる。
 その間に東海地震が起こらないとも限らない。津波被害への対策がとられるまで運転停止を求めた菅直人首相の判断は評価できる。
 ただ、法律に基づく命令ではなく、要請という形で運転停止が唐突に首相から提起されたことに、中部電力は当惑したに違いない。
 原発停止に伴い電力の安定供給が維持できるのか。また、代替電源や燃料の確保に加え、発電コスト増に伴う収益の悪化など、利用者や株主、地元自治体などへの影響についても検討が必要だ。
 そうしたことを背景に、中部電力は運転停止要請を受け入れるにあたり国に5項目の確認を行った。防波壁など津波対策が整った後の運転再開や、電力確保へ向けた適切な施策、交付金や雇用などについて立地する地域に配慮することなどだ。
 菅首相の判断自体は評価できるとしても、中部電力が指摘するように、きめ細かな対策を併せて実施する必要がある。
 中部地方は自動車産業を中心に製造業が集積している地域だ。東日本の電力不足から、中部地方への生産移管を進めている企業もあるだろう。浜岡原発の運転停止は、そうした企業に影響するかもしれない。
 東日本大震災によって日本経済は大きな打撃を受けた。電力不足の影響がそれに拍車をかけないように、電力会社間の融通も含めて、電力確保に全力を尽くしてほしい。
 原発の運転停止要請は浜岡に限定した措置で、政府は他の原発に運転停止を求めることはないと強調している。
 しかし、他の原発でも、定期点検後の運転再開に地元の理解が得られないところも出てくるかもしれない。その結果、東日本や中部地方だけでなく、電力不足が他の地域にも広がる可能性がある。
 原発事故の補償や負担のあり方も含めて、電力供給をめぐる課題が山積しているが、必要な電力をどのように確保し供給していくのかについても、明確な方針を示し、対応策をとるよう、政府に求めたい。
毎日新聞 2011年5月10日 


社説:浜岡原発―津波だけではない
2011年5月10日(火)付 朝日新聞 

 東海地震の想定震源域の真上にある浜岡原発のすべての炉が当面は止まる。菅直人首相による異例の求めを中部電力が受け入れた。
 東日本大震災によって東京電力福島第一原発の事故が起き、原子力の安全神話は崩れた。
 国内で最も危険といわれてきた原発を止め、安全対策を強めるのは当然の決断と言えよう。
 ひとつ気になるのは、首相の要請が防潮堤づくりなどの中長期対策が施されるまで、となっていることだ。地震の揺れそのものに対しては大丈夫なのか、という心配が残る。
 中長期対策は、福島第一の事故を受けて、原子力安全・保安院が、津波に対する備えや、それによって起こる電源喪失などへの対策を確実にするために求めた。
 中部電の計画では、防潮堤のほか防水扉、非常用の炉心冷却系や電源を充実させる、と説明している。そこには、揺れそのものに対する安全度の確認や補強策は含まれていない。
 浜岡原発がこれまで不安視されてきたのは、なによりもプレート境界型の巨大地震である東海地震の揺れに耐えられるか、ということだった。
 そのこともあって、中部電は早めに手を打ち、2005年に補強を表明した。ほかの電力会社も追随した。
 それでも、06年に改定された新耐震指針による浜岡原発に対する保安院の審議は、まだ終わっていない。
 長引く背景には、07年の新潟県中越沖地震で東京電力柏崎刈羽原発が想定を大きく超える揺れに見舞われるなど、新しい事態に直面したことがある。
 東日本大震災からも、教訓を得る必要がある。
 福島第一原発の事故では、津波の高さばかりに目が向いている。だが、原子炉の配管系が津波襲来より前の強い揺れで大きく損傷した可能性がある。そして、揺れの最大加速度だけではなく、その継続時間の長さにも特徴があった。
 安全対策で忘れてならないのは、一つのことに目を奪われてはならぬということだ。
 福島第一原発は、それまで関心の低かった津波によって予想外の大打撃を受けた。浜岡で、その逆の愚をおかしてはならない。地震の揺れを忘れまい。
 日本列島周辺の地震の仕組みや危険度については年々、新しいことがわかってきている。新知識をとり込みながら、原発を動かすか止めるかを決める。
 そういう柔軟な原発政策が、いま求められている。  


【社説】「浜岡」停止 他の原発も検証したい 
2011年5月10日 中日新聞

 中部電力が、首相の要請による浜岡原発の全面停止を受け入れた。五十四基の商業炉のうち三基が二年は止まる。だが、浜岡だけが本当に特殊な原発か。説明も検証も、まだ足りない。
 枝野幸男官房長官は、浜岡原発の停止要請は、大規模地震発生の確率が圧倒的に高いという特殊事情によるもので、原子力発電に関する基本政策に変わりはない、との見解を示した。
 「最も危険」と言われる浜岡原発を止める判断は、福島第一原発の危険な状態が続く中、首都圏や中京圏にも及ぶ住民の不安を思えば無理もない。
 だが、あまりにも唐突な要請だった。浜岡さえ止めればそれでよし、あとは今までのままで、将来の危険回避は本当に可能なのか。浜岡への停止要請も、その場しのぎと見られても仕方ない。
 日本は地震国である。どこで暮らしていようと、大地震への備えが必要な国である。近年、宮城県の女川原発や新潟県の柏崎刈羽原発も、想定を大きく超える揺れに見舞われ、そのたびに押っ取り刀で耐震強化や耐震基準の改定が図られた。この国で地震と原発が共存していくための根本的な安全策は、まだ見つかっていない。
 耐震性だけならば、浜岡3~5号機は三年前、国の審査指針を上回る地震の加速度に耐えられるよう、補強工事を終えている。
 東日本大震災のあと、各電力事業者は、津波対策に乗り出した。だが、それで本当に安全かどうか、国民にはよく分からない。
 浜岡の場合も、問題にされているのは津波対策だけである。十五メートル以上の防波壁を築くなど、今示されている対策が終われば、本当に今度こそ安全は盤石だと、政府と電力事業者が、地元はもちろん、国民が納得できるように説明しないと、安心は得られない。
 「関西も九州もいつ津波が来るか分からない。なぜ浜岡だけなのか」と、浜岡原発のある静岡県御前崎市の石原茂雄市長は、問いかける。
 電源立地交付金は減額しない方針だ。だが、協力企業も含め約千二百人という原発従事者の暮らしはどうするか、商店街など地域経済への影響はどうするかなど、国策に翻弄される地元への対応策は、明らかになっていない。
 原発を含むエネルギー政策は国民的課題であり、議論はようやく始まったばかりである。議論を前へ進めるには、まず政府の具体的な説明が不可欠だ。 


浜岡原発「廃炉・停止を」多数 中部5県の市民40人の声 
2011年5月8日 中日新聞

「料金値上げ」容認も
 大部分が中部電力の供給エリアと重なる愛知と岐阜、三重、静岡、長野の5県の40人に、中電はどうするべきか、仮に停止した場合、発電コストの増加に伴う電気料金の値上げを認められるかどうかを尋ねた。
 「浜岡原発をどうするべきか」との質問には「廃炉」と答えた住民が21人。地震・津波対策が終わるまでの「一時停止」と答えた住民が15人。「運転続行」との回答は4人だった。
 静岡市清水区の主婦窪田美保さん(61)は「浜岡は3回ほど見学した。職員は『安全』と繰り返したが、福島第一原発事故が起きたようにきれい事だった。ほかの原発も縮小を」と廃炉を主張。同市駿河区の会社員杉山峰之さん(30)も「立地的に危険」と廃炉を支持するが「運転を止めると夏場の電力がギリギリでは」と心配する。
 愛知県江南市の団体職員永井弘海さん(73)は「すぐに廃炉にするのは難しい。安全対策を講じた上で再稼働するのが現実的で、首相の判断は理解できる」と話す。
「運転続行」と答えた岐阜県高山市の農業渡辺祥二さん(41)は「事故の影響を考えると原発の是非を論じることは大事だが、現状は地域住民を置き去りに話を進めている。拙速だと思う」と批判する。
 中電が浜岡原発の全面停止を受け入れた場合、電力を穴埋めするために、休止中の火力発電所を再稼働させると発電コストが上がるなどといわれている。
 しかし「原発が停止した場合、電気料金の値上げを認めるか」との質問には、26人が「認める」と回答。「認めない」の14人を上回った。
 三重県桑名市の無職寺田忠弘さん(86)は「消費者として、みんなでリスクを負担しなければならないと思うから値上げは構わない」ときっぱり。
 浜松市中区の主婦鈴木政子さん(64)は値上げに反対。「みんな電気に頼り切っているから、この不況の中で電気料金が上がったらとても苦しい」と訴える。 



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【福島原発事故】1号機原子炉建屋の二重扉を開放/海からストロンチウム初検出/西の山に沈む夕陽

2011-05-09 07:54:25 | 地震・原発・災害
まったりと本を読みながら過ごした、東京のいちにち。

選挙以来、けっこうバタバタしてたので、
わたしにとって思いがけないプレゼントでした。

最後のひとときは、西の山に沈む夕陽をみました。






     

     ひとりの午後に。

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夕陽が沈む先は、
お天気が良い日には、富士山も見えるそうです。
     
今回は曇りだったので、3月に上京した時の、富士川からの富士山。

夜になって、テレビをつけたら、
福島第一原発1号機の原子炉建屋の扉を開けたというニュースが流れていました。

微量の放射能を放出、と報じていますが、
あとになって、膨大な数字が出てくるんだろうな。
もう、だまされないぞ!

けさの「朝ズバ」では、みのもんたが、
海水や原発周辺では、二桁多いストロンチウムが検出されたとの
朝日新聞の記事を紹介。
「魚によって10倍に濃縮され」、「白血病やがんになることも」。
放射能を垂れ流すだけ垂れ流して、
いまごろ言っても、あとの祭り、とはこのこと。

 【原発】1号機原子炉建屋の二重扉を開放(05/08 20:55)  
テレビ朝日

東京電力は、福島第一原発1号機の原子炉建屋の二重扉を8日午後8時過ぎに開放しました。
 1号機の原子炉建屋では、空気浄化装置をつけてから放射性物質の濃度が先月末の200分の1以下に下がりました。東京電力は、建屋の中で本格的な冷却装置の設置を行えるようにするため、午後8時過ぎに二重扉を開放しました。外部に微量の放射性物質が出ますが、東京電力によると、周囲の放射線測定装置に変動が出ないレベルだということです。 


提言 「福島大学および県は、低線量被曝リスクについて慎重な立場を」
(2011.4.27)福島大学原発災害支援フォーラム


福島第一原発3号機、圧力容器の温度上昇 
2011年5月7日 日テレNews24

 原子炉圧力容器の冷却に向けた作業が進む福島第一原子力発電所の1号機で原子炉建屋の空気の浄化が始まり、放射性物質の濃度が下がり始めたと「東京電力」が発表した。一方、3号機では圧力容器の温度が上昇していて、対策が必要になっている。
 福島第一原発の1号機では、5日から放射性物質で汚染された空気を吸い出し、フィルターに吸着させて浄化する装置の運転が始まっている。東京電力によると、放射性物質の濃度は運転開始直後に高くなったが、その後、低下が続いているという。東京電力は建屋内の空気を吸い出す際に放射性物質が舞い上がったものの、装置が順調に稼働し、濃度が下がったと分析している。8日に作業員が原子炉建屋に入り、浄化作業の進み具合などを詳しく調べる予定。
 一方、3号機では圧力容器の温度が上昇している。圧力容器下部の温度は先月30日には113.1℃だったが、7日は149.6℃で1週間で36.5℃上昇した。圧力容器に注入する水が途中で漏れている可能性があるという。東京電力は水を注入する配管を別の系統に変えて、3号機の冷却を進める方針。 


海からストロンチウム初検出 福島第一敷地内でも
2011年5月9日 朝日新聞

 東京電力は8日、福島第一原発の敷地内や周辺の海で4月18日に採取した土や海水から、放射性物質ストロンチウム90を初めて検出したと発表した。半減期が約29年と長いうえ、化学的にカルシウムと似ていて、体内に入ると骨にたまる傾向がある。原発敷地外で放射能モニタリング(監視)を行っている文部科学省も今後、海洋のストロンチウム調査を実施するという。
 1、2号機の排気筒から南南西約500メートル地点では、ストロンチウム90が乾かした土1キロあたり約570ベクレル検出された。1960年代の核実験などの影響で検出される通常の量より2けた大きい値で、原発から漏れたと考えられる。東電は「作業員はマスクで吸入しないようにしており、影響はない」としている。
 海水では、同原発5、6号機の放水口北側30メートルの地点で、濃度限度の約0.26倍に相当する1リットルあたり7.7ベクレル、沖合15キロでは約0.15倍に相当する4.6ベクレルだった。原発から大気中に放出されたものが海に落下したか、原発から海に流出した高濃度汚染水に含まれていたとみられる。
 文科省は3月中旬、福島県浪江町と飯舘村の土壌サンプルを採取し、最大で1キロあたり32ベクレルのストロンチウム90を検出した。だが、海水での調査は実施していない。(小堀龍之)


水や空気が放射能に汚染されていても、
自然は美しいままなのが、かなしい。

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『女は後半からがおもしろい』上野千鶴子・坂東眞理子/リブとフェミニズム(朝日カルチャー講座第一弾)

2011-05-08 15:38:22 | ジェンダー/上野千鶴子
昨日は、朝日カルチャーセンター連続講座、シリーズ「日本のフェミニズム」の第一弾、
上野千鶴子さんの「リブとフェミニズム」を聴きに東京に来ました。

新幹線の中で、放射線量を測りながら東に移動してきたのですが、
やっぱり、3月より0.02くらい高いです。
今日は、都内のマンションの室内で0.13、ベランダでは0.167。
今までで一番高い数値です。
晴れてきたので午後から東京をぶらぶらしようと思っていたのですが、
8日は福島原発の二重扉を開ける日、ということを思い出して、
きゅうきょ変更、昼間からブログをアップすることにしました。

「立夏」も過ぎて昨日の東京は小雨もようの蒸し暑い日、
濡れないように新宿西口から地下道を通って、会場の新宿住友ビルへ。

   

一番乗りだったので一番前の席に陣取ったのですが
100人の開場はほどなく満席になって、上野さんのお話を聞こうと熱気むんむん。
シリーズ「日本のフェミニズム」の初回だったので、
全12巻の本を作った経緯や解説も聴けて、得した気分。

リラックスした雰囲気の中にも、胸にしみる言葉も随所にあり、
上野さんたちが、あとから来る女性たちに手渡したい、と
この(カネにならない)「日本のフェミニズム」にかけた熱い思いが伝わってきました。

お話が終わった後は、ていねいな質疑応答、最後は著書のサイン会。
と、どこまでもサービス精神満点のうえのさん(笑)。
   

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サイン会の本。
最新刊『女は後半からがおもしろい』と『結婚帝国』(河出文庫)。
みどり追伸です。
あすのNHK朝イチに信田さんが生出演。とご本人のツイッター情報。
「いちおうお知らせしときますね。明日朝8時からのNHK朝イチに生出演予定です。テーマは買い物依存症。・・・」
  

『女は後半からがおもしろい』は、あとで上野さんからいただきました(嬉)。

女は後半からがおもしろい
■ 著者名: 上野千鶴子 坂東眞理子
 

■ カテゴリ名:書籍/単行本
■ 発刊日:2011年05月06日
■ 判型:小B6判
■ ページ数:152
■ 税込価格:1,155 円(本体 1,100 円)
■ ISBNコード:978-4-267-01874-9
■ Cコード:0095

本の内容:
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5月6日発売予定

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坂東眞理子さんに、対談を終えた感想をインタビューしました!
その模様を、潮チャンネルにてご覧になれます!
↓  ↓  ↓  ↓  ↓  ↓  ↓  ↓  ↓  ↓
http://www.usio.co.jp/html/usio_channel/bando_interview.html
坂東眞理子さんインタビュー(新刊『女は後半からがおもしろい』PR)潮チャンネル

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『女性の品格』の坂東眞理子氏と
『おひとりさまの老後』の上野千鶴子氏。
ベストセラー著者が人生を振り返りながら、
「女の一生」をとことん語り合う。

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仕事、恋愛、結婚、子育て、老後――
山あり谷あり、女の道。
だから飽きない! これからがおもしろい!
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目次:
第一章 二人の歩んできた道~ちがいすぎる私たち~
母のようになりたくない/大学闘争の真っ只中で/学んだことは何もありません(笑)/結婚という分かれ道/男になるか、アイドルになるか/良き“男性メンター”と出会えれば
第二章 女の道を切り拓く
ふたりに訪れた転機/仕事と子育てで綱渡りの日々/女の仕事は後半からがおもしろい/お互い、パイオニアとして
第三章 現代社会と女のあれこれ
雇用環境は女性のほうが深刻/男と女の関係が変わってきた/娘には「手に職」を/学歴と仕事/自分の満足感が最高の報酬/最大の少子化対策はジョブセキュリティ
第四章 新しい老いのかたち
いつかは必ず「弱者」になる社会/「老・障・幼」統合の保険システム/「上野さんの死
にざまを見届けたい」 


講座が終わってから、WAN東京事務所に移動してメンバーのみなさんで、
上野さんのwebゼミのお誘いのプロモーションビデオを撮影したので、
わたしもギャラリーとして参加。

引っ越しのときから二カ月ぶりにお会いした、なつかしいお顔も。

おわったあとに、わいわいわがやがや、
と、みんなでおいしいものを食べました。
 

   

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浜岡原発:全面停止へ/首相の決断を評価する/巨大地震の衝撃・日本よ! 元東大学長・有馬朗人さん/

2011-05-07 07:10:51 | 地震・原発・災害
昨夜の菅直人首相の「浜岡原発:全面停止へ要請」を受けての新聞報道、
反響や、社説などです。

浜岡原発 全面停止へ 首相、中部電に要請 
2011年5月7日 07時01分 東京新聞

 中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)は六日、地震、津波対策を強化するまでの間、すべての原子炉の運転を停止する見通しになった。菅直人首相は六日夜の記者会見で浜岡原発について今後、発生する可能性が高い地震、津波に対して十分な安全性が確保されていないことを理由に稼働中の4、5号機を含め「すべての原子炉を停止すべきだと判断した」と表明。首相の方針を受け、海江田万里経済産業相は中部電力に全面停止を要請した。中部電力は六日夜、要請内容を「迅速に検討」する考えを強調。要請を最終的には受け入れ、全面停止に踏み切る見通しだ。
 菅首相は六日夜の記者会見で浜岡原発の全面停止の理由について「国民の安全と安心を考えて決断した。浜岡原発で重大事故が発生した場合に日本社会全体に及ぶ影響も考慮した」と説明した。
 浜岡原発が東海地震の震源域に位置し、文部科学省の地震調査研究推進本部が今後三十年以内にマグニチュード(M)8程度の地震が発生する可能性を87%と予測していることも指摘した。
 運転停止期間は防潮堤建設や原子炉建屋の補強工事など中長期的な地震・津波対策が終わるまでとし経産省原子力安全・保安院は「おおむね二年」と説明。浜岡以外の原発には停止を求めない方針だ。
 一方、首相は浜岡原発全面停止による中部電力の電力供給について「多少の不足が生じる可能性があるが、この地域をはじめとする全国民の理解と協力があれば夏場の電力需要に十分に対応できる」と述べた。経産相は会見で「計画停電には至らない」と強調。電力不足は火力・水力発電で補うとともに、関西電力にも協力を要請したことを明らかにした。
 今回の政府の要請は法律に基づく措置ではなく、強制力はない。
 東日本大震災後、新たな大地震発生の可能性を踏まえ、政府が原発停止を求めたのは今回が初めて。
 浜岡原発は3号機が一九八七年、4号機が九三年、5号機が二〇〇五年にそれぞれ運転を開始。供給電力は三基で計約三百六十万キロワット。

<浜岡原発> 静岡県御前崎市にある中部電力の原発。東海地震の想定震源域の中にある。1~4号機は沸騰水型、5号機は改良沸騰水型で1976~2005年に順次運転を始めたが、1、2号機は09年に運転を終了した。運転段階の3基の総出力は約360万キロワット。3月11日の地震時に3号機は定期検査で停止中で、4、5号機は運転を続けてきた。4号機ではプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を燃やすプルサーマル発電を計画している。地元住民らが1~4号機の運転差し止めを求めた訴訟は、一審静岡地裁で07年に住民側が敗訴し、東京高裁で係争中。
(東京新聞) 


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静岡・浜岡原発:全面停止へ 「唐突」「英断だ」 地元、戸惑いと歓迎 

 中部電力浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)の原子炉を全て停止するよう菅直人首相が6日、中部電力に要請したことについて、地元住民や自治体、関係者の間には戸惑いと歓迎が交錯した。「唐突で人気取り」「交付金に依存する自治体財政はどうなる」と疑問視する向きがある一方、静岡県の川勝平太知事は「英断に敬意を表する」と評価、危険性を訴えてきた市民団体などからも「当然の判断だ」とする声が上がった。
 浜岡原発を市内に抱える静岡県御前崎市の建設業、植田政志さん(55)は友人から原発停止要請のニュースを聞いた。「あまりにも唐突で戸惑った。(菅首相が)人気取りのためにやったのではないか」と感じたという。「福島第1原発の事故で安全神話が崩れたということなのだろうが、止めるというなら地元にきちんと説明をすべきではないか。これまで原発と共存共栄でやってきたので、税収ダウンなどの影響が心配だ」と話した。
 原発から約1キロ離れた国道沿いのコンビニに親子3人で買い物に来ていた水道業の男性(31)は「私の仕事は原発とは関係ないが、関連した職場で働く友人がたくさんいる。不安はあるが、ここで生まれ育ったから安全だと信じて受け入れてきた。今は地元の雇用がどうなるのかが一番気になる」と語った。
 石原茂雄・御前崎市長は「話が唐突過ぎて言葉が出ない。海江田万里経済産業相と5日に会って話したばかりだ。地元の意見をよく聞いて3号機の運転再開を判断すると言っていたのに4、5号機も止めるなんて」と戸惑う。「原発交付金に依存する自治体財政はどうなるのか、困惑を通り越してあっけに取られるばかり。菅首相は選挙目当てでこんな思い付きを言うのかと勘ぐってしまう。国策に従い原発を受け入れてきた自治体はどうなるのか。中部電力はどうするのか聞きたい」と怒りをあらわにした。
 静岡県の川勝知事は「福島第1原発の事故を受け、安全性確保に対する地元の要望を最優先した英断に敬意を表する」と歓迎。ただし、「国におかれては地元経済に対する影響にも適切に対応していただかねばならない」と注文も付けた。
 静岡市葵区の会社員、加藤菜津希さん(21)は「福島第1原発事故のニュースを聞いてから、浜岡原発は大丈夫かとの怖い思いがあった。東海地震がいつ来るかも分からないので首相の決断を聞いて安心した」と話した。
毎日新聞 2011年5月7日


社説:浜岡停止要請 首相の決断を評価する 

菅直人首相が中部電力浜岡原発の全号機の停止を要請した。東日本大震災による原発震災を経験した上での決断だ。
 浜岡原発は近い将来に必ず起きると考えられる東海地震の想定震源域の真上に建つ。建設当時には知られていなかった地震学の知識である。知っていたなら、避けたはずの場所であり、そのリスクは私たちもかねて指摘してきた。
 地震と津波の威力がいかにすさまじいか。原発震災の影響がいかに深刻か。東日本大震災で私たちはその恐ろしさを身をもって体験した。
 万が一、重大な事故が再び発生するようなことがあれば、菅首相が述べたように日本全体に与える影響はあまりに甚大だ。
 中部電力は東日本大震災を受け、防潮堤の設置など複数の津波対策を計画している。しかし、その対策が終わる前に、東海地震に襲われる恐れは否定できない。南海、東南海地震と連動して起きる恐れもある。  防潮堤の設置など中長期の対策が終わるまで停止するよう要請したのは妥当な判断だ。首相の決断を評価したい。中部電力も要請に従わざるを得ないのではないか。
 ただ、運転を停止しても、核燃料の安全性には引き続き念入りな注意がいる。いったん使用した核燃料を冷却し続けることの重要性は、福島第1原発で身にしみている。
 浜岡原発さえ止めれば、それで安心と思ってしまうことがないようにすることも大事だ。大地震のリスクを抱えているのは、浜岡原発だけではない。
 菅首相は、浜岡原発停止の理由として、文部科学省の地震調査研究推進本部が「30年以内にマグニチュード8程度の想定東海地震が発生する確率は87%」と推定していることを挙げている。
 しかし、推進本部の推定がすべて正しいとは限らない。事実、東日本大震災のような地震を推進本部は考慮していなかった。たとえ、現在想定確率が低い場所でも大地震が起きる恐れは否定できない。今回の巨大地震で日本列島全体の地震活動が活発化している可能性もある。
 政府は、浜岡以外の原発についても、決して油断しないようにしてほしい。国の要請に従った電源車の配備などの緊急対策が、原子炉や使用済み核燃料を安定して冷却し続けるのに十分か、懸念も残されている。
 津波対策に気を取られ、地震の揺れに対する対策がおろそかになるようなことも避けなくてはならない。
 浜岡原発を停止することによる、電力供給の問題を心配する人も多いだろう。政府は、混乱が生じないよう、先手を打ってもらいたい。
毎日新聞 2011年5月7日


 社説:浜岡原発―「危ないなら止める」へ 
2011年5月7日(土)付 朝日新聞

 近い将来に発生が予想される東海地震の想定震源域の真上にある中部電力の浜岡原発について、菅直人首相は運転中の4、5号機を停止し、定期検査中の3号機の運転再開も見送るよう中部電に要請した。
 東京電力の福島第一原発が想定外の惨事を引き起こした以上、危険性がより具体的に指摘され、「最も危ない」とされている浜岡を動かし続けるのは、国際的にも説明が難しい。日本周辺の地殻変動が活発化しているとの懸念もある。中部電は、発電量に占める原発の割合も低い。首相の停止要請の判断は妥当だ。中部電は速やかに要請を受け入れるべきだ。
 ただ、中部電の需給見通しでは、浜岡をすべて止めた場合、夏の需要ピーク時に余裕を見込むと、数%の節電が必要になる。産業界や各家庭でも節電に協力したい。
 中部電は大震災を受けた緊急対策として防潮堤の増設などを計画している。停止はこの工事が完成するなど中長期的な防災対策が整うまでの措置という。
 ここで考えたいのは、前提が「安全神話」から、世界最悪の事故が起こりうることに様変わりしたことだ。専門家も予想しなかったM9.0の大地震が起きた以上、浜岡での地震の強さ、津波への想定、設備の頑丈さなどについて中部電は妥当性を証明する責任がある。
 原発震災は想像を絶する巨大さ、複雑さ、速さで進行する。停電、放射能漏れ、計器の不調、余震の続発などで作業員の行動が極端に制約される中、いざという時は、速やかに廃炉も辞さない判断を下せるのか。中部電は疑問を氷解させる責任があるし、国も厳しく審査しなければならない。
 福島第一原発事故は、国の安全基準や審査プロセス、規制機関のあり方など、原子力行政そのものに見直しを迫っている。国は浜岡の停止期間中に新たな体制を整えるべきだ。
 夏場の需要期への対応や、収益見通しを立てるため、各電力会社は定期検査中の原発の運転再開を模索している。
 濃淡に差はあれ、ハイリスクと懸念される原発は浜岡以外にもある。活断層の真上に立つ老朽原発、何度も激しい地震に見舞われた多重ストレス原発……。立地条件や過去の履歴などを見極め、危険性の高い原発を仕分けする必要がある。
 すべての原発をいきなり止めるのは難しい。しかし、浜岡の停止を、「危ない原発」なら深慮をもって止めるという道への一歩にしたい。  


<この国はどこへ行こうとしているのか>特集ワイド:巨大地震の衝撃・日本よ! 元東大学長・有馬朗人さん 

 ◇自然界に「想定外」当然--元東大学長・有馬朗人さん(80)
 「2004年12月のスマトラ沖大地震を受け、私も含め日本の科学者たちはなぜ日本の津波対策を考え直さなかったのか。それが私の科学者としての一生の不覚です」
 新緑の中にたたずむ武蔵学園(東京都練馬区)のゆったりと広い園長室。有馬朗人さんは淡々とした口調でこう語り始めた。東大学長や文相などを歴任し、日本のリーダーや科学者の育成を先導してきたこの人の表情は、苦い。
 マグニチュード(M)9・1のスマトラ沖大地震に伴うインド洋大津波。タイなどで20万人以上の死者が出た。
 「あの大変な津波の被害を我々は新聞やテレビで嫌というほど見た。しかし、日本でも同じような被害が起こることを想定した議論をついに聞いたことがなかった」
 スマトラ沖大地震の後、有馬さんは被災国の人々が来日するたびに日本では防災教育が充実していて、特に東北地方では津波対策が進んでいることを説明してきた。「あなた方の国でももっと対策を講じたほうがいい」とさえ話してきたという。
 「東大の研究所があるので岩手には何度も行きましたが、ギネスブックに載るような立派な堤防があり、安心してしまった。スマトラの時に自然の怖さを再認識し、もう一歩防災について議論すべきだった」
 自然をコントロールしようとする人間の傲慢さを戒めるかのように沿岸部の暮らしを破壊し、自然の力を見せつけた巨大津波。しかし、原子核物理学者である有馬さんは科学技術の進歩によって地震や津波の被害は防ぐことができると言い切る。では福島第1原発事故は、なぜ防ぐことができなかったのか。
 「阪神大震災直後に静岡県で開かれたシンポジウムで津波の話が少しだけ出て、私たちは中部電力の浜岡原発を視察しました。その時は約10メートルの砂丘が防波堤になると説明を受け、これならば大丈夫だろうと思いました。それ以来、私の周りの研究者から津波の話が聞こえてきたことはありませんでした。地震科学者のもっぱらの関心は地震そのものや地震予知です。ごく一部の研究者が津波の危険性を言っていたけれど、それを地震科学者や防災科学者が虚心坦懐(たんかい)に聞いて、国を動かすくらいまですべきだった」
 なぜそれができなかったのだろうか。
 有馬さんは、水俣病問題を検証する環境相の私的懇談会の座長を務めた経験もある。水俣病問題で、魚からの有機水銀摂取が原因と主張する科学者の声が聞き入れられなかったように、国策に反する少数意見を排除する動きはなかったのか。
 「それはなかったと思います。(巨大津波の)経験がなかったからでしょう。震災後の今でこそ約1200年前に貞観地震で今回のような大津波が来たことが知られていますが、残念ながら私も地震後に知りました。国もそのことを事前に認識し、十分な対策を提示することがなかった」
 科学は経験の域を超えることはできないのか--。街や地域や国は復興できても、失われた命は返らず、個人の生活も元通りにはならない。科学技術は命や人生を左右しうるだけに、やるせなくなって、重ねて聞いた。なぜ科学者たちはスマトラ後も日本は大丈夫だと思ったのか。
 「分からない」
 有馬さんは一瞬考えた後、ソファにもたれかかりながら苦笑した。「地震科学者は確かに地震研究に情熱をかけていた。しかしながら、イマジネーションの不足は起こりうる。それは人間の限界であり、日本の科学者に限ったことではない。大陸移動説とかDNAとか、およそ日常生活からは想像できないことに取り組むのが科学。未知のことを研究する。だからあらゆることが想定できるなんてあり得ません。今回は、政府や東京電力が言い訳のように『想定外』と言ったから批判を受けたけれど、自然の中には想定外がたくさんあるんです」
 さらにこう続けた。「私が心配しているのは、地球温暖化問題です」。有馬さんによると、日本中の家の屋根に太陽光発電の設備を付けても、まかなえる電力量は日本全体の消費電力の7%。二酸化炭素を出す火力発電が全体の約60%、原発が約30%で合わせて約90%。「これを風力や水力の自然エネルギーで代替できますか。自然エネルギーの利用推進はもちろん必要ですが、安全で安心できる原発を造るしかない。理想的にはない方がよかったとしても、現実的に考えて、今ある原子炉は使わざるをえません」
 もう一点、有馬さんはエネルギー問題から生じる国際紛争や、戦争の恐れを挙げる。「第二次世界大戦が始まる頃、ABCD包囲陣が作られ、日本は石油を一滴も輸入できなくなりました。それで、日本は石油のあるインドネシアに進出し、開戦につながった。そういう苦い経験がある。日本のエネルギー自給率はわずか4%。自給率を高めるために原発は必要です」
 地震から2カ月近くがたった今も福島第1原発事故の収束の見通しは立たず、反原発の声が高まっている。有馬さんの原発推進の意見は変わらないのだろうか。
 「変わりません。天災は技術で防ぐしかありません。現に福島第2原発にも津波がきています。第2原発の方が第1原発よりも新しいから、冷却のための発電機などが建物内にあり被害を受けませんでした。費用はかかるが、被害が出る前に、防災をしっかりすすめなくてはなりません」
 今後も原発の運転を続けるのならばなおさら、今回の災害を機に科学者のあり方を問い直すべきではないだろうか。有馬さんは「科学の世界は縦割りで、異分野間の情報交換の機会は限られている。比較的津波の研究がなされている土木工学と、地震工学の研究者が一堂に会する機会をもっと増やすべきです。科学者はもっと広い視野を持つべきです」と口調を強める。
 最後に、席を立とうとしてこう付け加えた。「しかしながら、私は日本人にもっと自信を持とうと言いたい」。あれだけの大地震でも新幹線は脱線せず停車し、福島第1以外の原発は自動停止し冷却できた。日本の技術の優れているところは評価し、反省すべき点は反省すべきだと。
 震災を受け4月上旬に開かれた静岡県の臨時会議。浜岡原発について、砂丘や堤防で津波は防げると主張する中部電力に、有馬さんは「津波は前面からでなく前後左右から回ってくるものもある」と対策の甘さを指摘している。
 科学技術は本当に自然災害に打ち勝つことができるのか。学園から駅に続く並木道で、遅咲きの桜を見上げながら自問した。【山寺香】

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 ◇「特集ワイド」へご意見、ご感想を
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 ■人物略歴
 ◇ありま・あきと
 1930年大阪生まれ。原子核物理学者。東大学長、文相、理化学研究所理事長などを歴任。現在、日本科学技術振興財団会長、武蔵学園園長。俳人としても有名。
毎日新聞 2011年5月6日 東京夕刊


今日はこれから東京に行きます。

ではまた。

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【浜岡原発停止】浜岡原発4、5号機含むすべての原子炉の運転停止要請へ/菅首相会見詳報

2011-05-06 20:35:43 | 地震・原発・災害
ビッグニュースです。

菅首相が、浜岡原発の全部の原子炉の運転停止を、中部電力に要請したそうです。

8日に卒原発のパレードが名古屋で行われる、ということで、
夕方、主催者の関係者が宣伝カーを借りに見えたばかりです。

経過や理由はどうであれ、菅さんの英断に拍手です。
記者会見の詳報とともにお知らせします。

浜岡原発:4、5号機含む全原子炉の運転停止要請 菅首相
2011.5.6 毎日新聞 

 菅直人首相は6日午後7時10分から緊急記者会見し、中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)について、稼働中の4、5号機を含むすべての原子炉の運転停止を中部電力に要請したことを明らかにした。
 会見で菅首相は運転停止要請について「国民の安全と安心を考えてのことだ」と説明。今後30年間に、この地域でマグニチュード8級の地震が発生する可能性が87%にのぼるとの文部科学省関係機関の調査結果が出たことを明らかにしたうえで「熟慮の結果、停止を決断した」と述べた。
 また菅首相は「運転停止に伴う夏の電力需給バランスに大きな支障が生じないよう、政府として最大限の対策を講じる」と強調。「全国民の理解と協力があれば、夏場の電力需要に十分対応できる形がとりうる」と述べ、理解を求めた。


 【浜岡原発停止】菅首相会見詳報 「東海地震に十分対応できるよう防潮堤など中長期対策が大切」 
2011.5.6 20:07 産経新聞

 菅直人首相は6日夜、首相官邸で記者会見を開き、静岡県御前崎市にある中部電力の浜岡原子力発電所の運転停止を要請したことを明らかにし、「東海地震に十分対応できるよう防潮堤の設置など中長期の対策を確実に実施することが大切だ」と述べた。記者会見の詳報は以下の通り。
 「国民の皆様に重要なお知らせがあります。本日、私は内閣総理大臣として海江田(万里)経済産業大臣を通じて、浜岡原子力発電所の全ての原子炉の運転停止を中部電力に対して要請しました。その理由は何と言っても国民の皆様の安全と安心を考えてのことです。同時にこの浜岡原発で重大な事故が発生した場合の日本社会全体に(与える)甚大な影響も合わせて考慮した結果です。文部科学省の地震調査研究推進本部によれば、これから30年以内にマグニチュード8程度の想定の東海地震が発生する可能性は87%と極めて切迫しています。こうした浜岡原子力発電所の置かれた特別な状況を考慮するならば、想定される東海地震に十分対応できるよう防潮堤の設置など中長期の対策を確実に実施することが大切です。国民の安全と安心を守るためにはこうした中長期対策が完成するまでの間、現在、定期検査中で停止中の3号機のみならず運転中のものも含めて全ての原子炉の運転を停止すべきと私は判断しました。浜岡原発では従来から活断層の上に立地する危険性などが指摘されてきましたが、先の震災とそれに伴う原子力事故に直面して私自身、浜岡原発の安全性についてさまざまな意見を聞いて参りました。その中で、海江田経済産業大臣とともに熟慮を重ねた上で、内閣総理大臣として本日の決定をいたした次第です」・・・・・ 



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浜岡原発関連で、中日新聞が静岡県の首長にしたアンケートです。

15市町長が浜岡再開「反対」、新設「凍結を」 県内首長に本紙原発アンケート 
2011年5月1日 中日新聞

中電対策に不満
 東日本大震災の福島第一原発事故を受け、中日新聞東海本社は4月中・下旬、静岡県内35市町の首長に原発問題に関するアンケートを行った。浜岡原発(御前崎市)3号機の運転再開や6号機の新設については15市町の首長が計画の廃止または一時凍結を求めた。中部電力は3号機の7月再開を盛り込んだ業績予想を公表したが、県内自治体の理解を得るのは難しい情勢だ。
 アンケートは記述式で実施した。定期検査のため停止中の浜岡原発3号機の運転再開、使用済み核燃料を再利用するプルサーマル、1、2号機廃止に伴う6号機新設の是非については、3市が計画廃止を明確に主張。「福島第一原発の検証が終わるまでは」「国の方向性が示されるまでは」など一時的な措置を含めると計15市町が凍結・廃止を訴え、予想される東海地震の震源域にある浜岡原発への不安感を表した。
 他の20市町は「代替エネルギーがない以上やむなし」「関係機関で十分議論を」などの意見だった。
 福島第一原発の事故を受け、中電は防波壁の建設など浜岡原発の津波対策を打ち出しているが、中電が実施または今後計画している対策で安全が十分に確保されると答えた首長はいなかった。
 国のエネルギー政策について聞いた質問に対しては、23市町が「政策の見直し」を求めたが、その中で「脱原発」の立場を明確にしたのは三上元・湖西市長のみ。他の22市町は太陽光や風力など自然エネルギーの導入に目を向けながらも「現実的でない」などと原発を一部容認、または原発の是非には言及しなかった。
 残りの12市町からは「国と電力会社で議論を」「原発の安全性再確保を」などの声が上がったが、政策の「見直し」までは明記していない。
 福島第一原発事故をめぐる国や東京電力の情報公開については、全市町が「情報があいまい、遅い」「国民を不安にした」などと対応を批判した。
 アンケートは、35市町に対し4月13日に質問書を発送。首長に回答を求め、28日までに回収した。富士宮市と小山町は先の統一地方選の投票日前に前首長が答えた。

 質問の内容

<1>福島第一原発の事故を受け、国のエネルギー政策の見直しを求める声が高まっています。どう考えますか。
<2>エネルギー政策を見直す場合、具体的にはどのような方向が望ましいでしょうか。
<3>今回の原発事故では、国や東京電力の情報公開が不十分だと指摘する意見があります。どう思いますか。
<4>東日本大震災の発生後、中部電力は浜岡原発に防波壁を建設するなど津波対策の強化を表明しました。中電の対策は十分だと思いますか。
<5>浜岡原発3号機の運転再開、プルサーマル計画、6号機の新設についてどう考えますか。 


じっさいに停止するには、色んなところから抵抗もあるかもしれませんが、
菅さんが首相になってよかった、と思えた記念すべき日です(笑)。

母の日の、おいしそうなケーキも届いて、ダブルでうれしい。
  

とはいえ、
このケーキ、食べられません。
   

   

ほんもののお花のケーキ、ありがとう!

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『婦人公論』一生ものの友だちをつくる/緑と白のオオデマリ・クリスマスローズセミダブル・ライラック白

2011-05-05 07:09:32 | ジェンダー/上野千鶴子
庭仕事をしていると、さわやかな香り。
白ライラックが咲いています。

   
初夏の光あふれる5月は、白い花と新緑の緑が似合います。
リキュウバイ、シャガ、梅花ウツギ、大山レンゲ、
オオデマリ、コデマリ、姫ウツギ、など、大好きな白花が次々に咲きます。

最新の5月7日号の『婦人公論』に上野千鶴子さんが載ってるよ、
と教えてもらって、さっそく本屋さんに買いに行きました。

表紙は寺島しのぶさん。

特集は、 「一生ものの 友だちをつくる」。 

上野さんのロングインタビューは、特集のさいしょ。
ページをめくると  
やさくほほえむ上野さんの写真とご対面。

冒頭は、3月に5泊してお手伝いした引越しのことに触れられていて、
うれしかったです。
 〈特集〉一生ものの 友達をつくる (『婦人公論』5/7)

未曾有の大震災に襲われた日本。
「人と人のつながり」の大切さを
再認識するきっかけになりました。
これから先の人生で、
自分にとって本当に必要な関係とは、
どのようなものでしょうか?
この時期だからこそ、考えてみませんか

上野千鶴子
人生の一大事に直面するとき
友だちの"在庫"が量れます
       

 友情のありがたみは、人生の危機にわかります。この3月で東京大学を退職したので、東日本大震災が起こったときは、引っ越しの最中でした。とても幸いだったのは、お友だちが助けてくれたこと。「梱包からセッティングまでを引っ越し屋さんにまかせればいい」と助言してくれる人もいましたが、私はそれを採用しませんでした。第一の理由は、ものを捨てなくてはならなかったので、その仕分けは誰にも委ねられず、自分でやるしかなかったから。もう一つの理由は、お友だちが多くて、もうずいぶん前から「手伝ってあげる」と申し出てくださったからです。
 まだ交通網が復旧していない頃なのに、仕切り能力と引っ越しのキャリアがある頼りがいのある友人が2人、京都と名古屋から泊まりがけで来てくれました。昼間は学生さんやスタッフも献身的に助けてくれた。だから、地震直後、私は引っ越しの梱包をしながらずっと人と一緒だったんです。それで、いろんな意味で救われました。どんなに悲惨な映像を見ていても、誰かと一緒なら気持ちを分かち合うことができる。しかも若者がいたので、三食がっつり食べて、心身共にストレスフルな時期を乗り切れた。友情が身に沁みました。
 自分を幸運だと思いましたね。・・・・
(『婦人公論』2011年5月7日号より一部抜粋)  


「ちづこのブログ」の最新記事、「断捨離」もおもしろいですよ。
断捨離(ちづこのブログ・WAN上野千鶴子web研究室)

7日には、朝日カルチャーセンター新宿教室(東京都) で、上野さん講師で、
「シリーズ 日本のフェミニズム・・・リブとフェミニズム」の講座もあります。

上野千鶴子さんの講演などの予定は、WAN上野千鶴子web研究室の、
「ちづこの手帖」で読めます。

   クリスマスローズ白セミダブル
   

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今日は午後から、ウイルあいちで、「市民派議員大集合~当選してからが本番です」。
市民型選挙で当選された人たちに、お会いできるのがたのしみです。

3月5日の選挙講座から二ヶ月ぶりですが、
選挙を経て、全員当選されて、きっと一回り大きくなっていらっしゃることでしょう。
4年前につづいて、「全員当選」がとってもうれしいです。

 ★2011年度「市民派議員大集合~当選してからが本番です」

日時:5月5日(木・祝)13:30~16:30
会場:ウイルあいち(愛知県女性総合センター)会議室5
対 象:「無党派・市民派」の議員・市民に限定。
講 師:寺町みどり&ともまさ
参加費:議員3000円/市民1000円
主催:女性を議会に 無党派・市民派ネットワーク(「む・しネット」)
当日スタッフ:小川まみ

【持ち物】
・議員の方は、今回の選挙の政治活動、選挙運動に作成した文書、「リーフ、ニュース、選挙ハガキ、ポスター(あれば) 、選挙公報、など」を15部持参
・『市民派議員になるための本』(寺町みどり著/学陽書房)
・『議員必携』(全国町村議長会編/学陽書房)
・『地方自治小六法』(学陽書房)
※市民の参加者は、上記テキストがあればお持ちください。

【内容:スケジュール】
13:00 開場・受付
    参加費は、受付でお支払の上、ご参加ください。

13:30 開会(時間厳守)
13:30 統一自治体選挙を終えて
13:40【Part-1】選挙を終えて:わたしの市民型選挙
   ・わたしの選挙の勝因および反省

14:30【Part-2】法律やルールを熟知して、市民派議員として働く
   ・選挙の仕方が、その後の議員の仕事を決める
   ・議会は「言論の府」~発言してこそ議員です~政策実現は議会の場で
   ・「初議会にのぞむ」~市民派議員としてのスタンス/会派をどうするか
   ・「議会の基本」を知らないと議員活動は安易に流れる

15:30 【Part-3】「議会」を体験する
  ・模擬議会~実際の議会の進行に即して、「議長・答弁者・議員」などの 
    役割分担をして模擬議会をします

16:10 ◎質疑応答・まとめ
16:30 終了
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・閉会後、「議員と市民の勉強会」参加希望者で、2回目以降の日程の相談をします。
・「む・しネット」会員継続および入会も受け付けます。


今朝は、(わたしにしては)はやく起きたので、もう朝ごはんを食べました。
昨夜寝る前に作っておいたブログをアップしてから、講座の資料を見直してプリントアウト。
サクサクと仕事がはかどります。

「早起きは三文の得」

わかってるんだけどねー。

オオデマリ
 

 

オマケの
山石楠花(ヤマシャクナゲ)。 

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憲法記念日の記事:試される民主主義/福島第1原発事故と産業優先/原発「聞きたくない」

2011-05-04 19:17:16 | 地震・原発・災害
「夏も近づく八十八夜・・・♪」。
昨日は立春から数えて八十八日目。
連休は夏野菜の植え付け適期で、お百姓さんや家庭菜園は忙しいのですが、
「八十八夜の別れ霜」というように、このころまで遅霜がおりることがあります。
こちらは、山に藤の花が咲いたので、もう霜はないという花暦です。

連休中は、ニホンミツバチがやってくるのを待ちながら、
植木を植えたり庭仕事に精を出しています。

明日は、名古屋で「市民派議員大集合」の講座を開催するので、
午前中はその資料作りなどの仕事、午後は気分転換で、
半額以下で買った百合の球根と、花木の苗などを植えました。
  

ニホンミツバチは、午前中はクマバチがホバリングシテいたのでチラホラ、
クマバチがいなくなった午後からはけっこう来ていたのですが、
残念ながら、分蜂群はやって来ませんでした。

   

お天気がよければ、明日の留守中に入るでしょうか。

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ここ数日、庭仕事をすることが多いので、新聞はたまるばかり。
福島原発事故の報道を検証しようと、3月11日以来の新聞も
すべて残してあるので、新聞で埋まりそうです(笑)。

憲法記念日の昨日の、朝日と中日と毎日の3紙の記事で、
それぞれいちばん印象に残った記事を紹介します。

 【社説】試される民主主義 憲法記念日に考える 
2011年5月3日 中日新聞

 震災被害者、原発避難者の日常生活を取り戻して「生きる権利」を守ることは当面の最優先課題です。復興で日本の民主主義の成熟度が試されます。
 テレビから流れた声に耳を疑った視聴者は多いでしょう。
 「主体は自治体ですから…。われわれは応援ですから…」-ふかふかのじゅうたんが敷かれた広い執務室で、政府高官がそう言い放ったのです。
 テレビは、東日本大震災の被災者受け入れを観光地の旅館などが申し出ているのに、情報が被災者に届いていないことを報じていました。「なぜ?」と追及された高官の答えが冒頭のセリフです。

 血の通っていない行政
 続いて登場した自治体の職員は「学校や買い物など生活に必要な情報とセットでなければ被災者に紹介できない。自治体は目の前の仕事に追われて自ら調査する余裕がない」と答えていました。
 中途半端な情報を流してこと足れりとしている高官の側に非があることは明らかです。まさに血の通っていない行政です。
 時計を六十五年前に戻します。一九四六年夏、新しい憲法案を審議する衆院の小委員会が「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という現行憲法の第二五条第一項をめぐって熱気に包まれました。
 社会保障の充実をうたった同条第二項は当初から原案にありましたが、問題の生存権条項は社会党の修正で挿入されたのです。
 「健康で文化的な生活を妨げてはならないが、権利とするのはいかがなものか」「第二項だけで十分だ」など他党から次々異議が出ました。そのたびに、後に文相を務める森戸辰男議員が「それでは恩恵的、慈善的にすぎない」「権利として保障することで政府に積極的施策を求めることができる」などと主張しました。

 希望の灯だった生存権
 「屋上屋を架すようなものだ」と批判もされました。「国民は個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については…最大の尊重を必要とする」との第一三条の採用が既に決まっていたからです。森戸議員は「生存権の裏付けがなければ個人の尊厳も守れない」と粘りました。こうして“生存”は「人権」として保障されました。今では「政府はこの権利を実現する法的義務を負っている」というのが憲法学の通説です。
 第一三条、第二五条第一項と第二項は、廃墟(はいきょ)に立つ日本人にとって希望の灯となりました。人々は憲法に励まされ「今日は昨日よりも、明日は今日より良くなる」と信じて懸命に働きました。曲折もありましたが、政府の経済政策の成功もあって生活水準は大幅に向上しました。
 しかし、あの地震と津波、そして原発事故が多くの人たちを半世紀以上前の悪夢の世界へ引き戻しました。生活再建のめどが立たない被災者、避難者らには、六十五年前の日本人が頼りにした光が果たして見えているでしょうか。
 被災者らの生活再建は生存権の問題です。政府にはその権利を保障し実現する責任があります。復旧、復興対策のもたつきぶりをみると、関係者が責任を十分自覚しているとは思えません。
 避難者らの苦しみをよそに「われわれは応援」と平然としている政府高官、政権の足を引っ張り、責任を担おうとしない野党と与党内の一部議員…国会とその周辺で繰り広げられる荒涼たる光景は、制憲議会における新国家建設への熱気と無縁です。
 政治家や官僚たちは当時の議事録を読み返し、原点に戻るべきでしょう。民主主義、憲法感覚の成熟度が問われています。
 同時に国民が自覚すべきこともあります。憲法は第一義的には国家、政府と国民との関係を定めたものですが、国民の行動指針を示してもいることです。
 難局を前に国民が求められているのは、政治家や専門家任せにせず主体的に参画する姿勢です。
 まず「社会連帯」に基礎を置く支えを被災者らに提供しなければなりません。全国からボランティア活動家が集まり、予想を遥(はる)かに超える義援金が寄せられ、被災自治体に応援が駆けつけるなど、重荷の分かち合いが始まっていますが、民主主義が試される事態が今後も次々生まれるでしょう。

 求められる自覚的参加
 地震、津波にもろい国土、綱渡りのエネルギー需給など、基礎の危うい日本社会をどう変え、そのための負担をどうするのか。復興に向かって社会構造の根本的改革を迫られるはずです。
 憲法の大原則である「国民主権主義」は、国民が自らの社会をつくりかえていく営みに自覚的に参加することを求めています。 


記者の目:福島第1原発事故と産業優先=福岡賢正

 東京電力福島第1原発で進行中の危機に、私は既視感を覚えている。経済成長を追い求め、産業の利益を最優先する国策の下で、その意思を代弁する学者の意見だけに政治が耳を傾け続けた結果、この国は取り返しのつかない被害を何度も生じさせてきたからだ。その連鎖を止めない限り、再び悲劇が起きるだろう。
 日本原子力学会の元会長や原子力安全委員会の元委員など原子力を先頭に立って推進した学者16人が連名で3月末、「緊急建言」をまとめた。4月1日に行った会見で彼らは、福島の原子炉内に蓄えられている放射性物質の量はチェルノブイリをはるかに上回ることを指摘し、たとえ危機を脱しても極めて長い歳月、厳重な管理を続ける必要があると語った。反原発側ではなく、推進側の学者がようやく、現状の深刻さを認めた。

 ◇14年前の警告 班目氏らは無視
 今回のような大地震・大津波による原発事故を、地震学者の石橋克彦・神戸大名誉教授が「原発震災」と名付け14年前に論文で警告していたことを、3月29日にコラム「発信箱」で書いた。
 その石橋論文に対し、現在の原子力安全委員長である班目(まだらめ)春樹氏や今回の事故発生5日後に内閣参与に任じられた小佐古敏荘(こさことしそう)・東大大学院教授(4月30日内閣参与辞任)が当時、どんな見解を示していたのか。石橋氏が雑誌「世界」5月号に書いている。
 班目氏はあらゆる懸念を打ち消した上で「石橋氏は原子力学会では聞いたことがない人である」と素人扱いした。小佐古氏も「多量な放射能の外部放出は全く起こり得ない」とし、「論文掲載にあたって学者は、専門的でない項目には慎重になるのが普通である。石橋論文は、明らかに自らの専門外の事項についても論拠なく言及している」と批判したという。
 国の施策遂行にあたって、都合のよい学者の意見を「お墨付き」にして、不都合な他の意見を封じ込めてしまった例は過去にいくらでもある。
 水俣病では、1956年に熊本大の研究班が水俣湾の魚介類に蓄積された重金属による中毒と指摘し、59年には厚生省(当時)の研究部会も魚介類の有機水銀が原因と報告した。しかし、国は腐った魚原因説などを発表した学者の見解を盾に公害と認めず、その後もチッソのアセトアルデヒド工場からの廃液の垂れ流しが放置された。その結果、湾周辺の人々は汚染された魚を食べ続け、膨大な数の新しい患者が生まれ続けた。65年には新潟にあった昭和電工の同型工場の廃水による「第二水俣病」も見つかった。
 国は68年9月の政府見解で、この公害の原因を有機水銀と正式に認めたが、その4カ月前までに、技術革新によって国内の同型工場はすべて生産を終えていた。公害と認定されたのは、産業界にとって用済みとなった後だった。
 アスベスト問題でも、被害の拡大が明らかになった後、環境省が設けた健康被害問題検討会の座長に就いた学者が、日本石綿協会の顧問を13年間務め、PRビデオで石綿規制に疑問を呈していた事実が発覚し、座長を辞めている。
 長良川河口堰(ぜき)や諫早湾干拓事業などの大型公共事業が、「環境に与える影響は軽微」との学者の見立てを口実に推進され、深刻な環境破壊を招いたのも記憶に新しい。
 そんな産官学の癒着の果てに、私たちは今、福島の事態に直面している。

 ◇「お上任せ」脱し、自ら考え行動を
 公開された福島第1原発の水位や圧力のデータから、元原子炉製造技術者でサイエンスライターの田中三彦氏は、1号機では激しい地震動によって原子炉圧力容器の配管が破損して冷却材喪失が起きた可能性を「世界」5月号で指摘している。同様に2号機についても、圧力容器内で発生した水素が、空気より軽いのに原子炉建屋の最下部にある圧力抑制プール近くにたまって爆発した理由として、水素が圧力調整用の配管を伝ってプールに流れ込み、地震でプールに生じた亀裂から外に漏れて周辺の酸素と反応した--と推論している。
 つまり、津波の前に原子炉は地震によって深刻なダメージを受けていたというのだ。こうした点の検証も行われていないのに、産業界などからは早くも「津波対策を万全にすれば日本の原発は安全」との声が漏れ始めている。
 このまま原発に依存し続けるのか。リスクの高い原子炉から順に廃止するのか。一気に全廃を目指すのか。廃止に伴う不便は甘受できるのか。今度こそ国民一人一人が自らの胸に問い、答えを出し、そして行動を起こさねばならない。「お上任せ」がいかに危ういか、私たちはもう十分に学んだはずだ。
毎日新聞 2011年5月3日 毎日新聞


社会面に大きく載った、朝日新聞の「『みる・きく・はなす』はいま」の記事には、
友人の敦賀市議、今大地はるみさんも登場します。

原発「聞きたくない」 「みる・きく・はなす」はいま 

 「原子炉は五重の壁で守られている」「大きな地震や津波に耐えられる」
 黒潮が乗る太平洋に面した宮崎県最南端、串間市。今年1月、A4判49ページのカラー冊子が市役所から回覧板で各世帯に配られた。
 国が作った中学生向けの社会科副読本「チャレンジ! 原子力ワールド」。原子力発電所の立地の賛否を問う全国3例目の住民投票を4月10日に控えていた。
 回覧板には「市民投票の学習の一助としてご活用頂きたい」とある。市内のサツマイモ農家、松本寿利(ひさとし)さん(53)は冊子を手にしながら、思った。
 「人間がやることに絶対に安全なものがあるのか。都合の良い情報提供だ」
 農業と漁業の人口2万人の市に、九州電力の原発計画が持ち上がったのは19年前。1997年に白紙撤回されたが、昨夏の市長選で元職の野辺修光氏(68)が住民投票実施を公約に返り咲き、問題が再燃した。
 「原電立地で串間の活性化を」「子どもたちに原発のない未来を!」。市内に推進派と反対派の看板やのぼりが入り乱れた。地域経済の衰退に歯止めがかからない中、賛成派の間で「6対4で圧勝する」と「票読み」がささやかれた。
     ■
 震災翌日の3月12日朝。推進派の元市議会議長、森光昭さん(77)の自宅の電話が鳴った。食卓に置かれた新聞は、約1100キロ離れた福島第一原発で炉心の冷却が止まり、住民の避難が始まったと伝えている。
 「投票はどげんしたらよかろうか」
 野辺市長からだった。
 「天地がひっくりかえった。やめた方がいいっちゃ」。間を置かずに答えると、市長が言った。
 「腹は決まっている」
 2日後の14日。住民投票の見送りを知らせるビラが全戸に配られた。
 推進派団体の元幹部(67)が明かす。「事故の後では、推進派が何を発言しても不利になるだけだ」
震災後、地域を二分してきた議論は消えた。
 3人の子育てをする畜産農家の松田香里さん(31)は悔やむ。家畜を置き去りにして避難を強いられる福島の被災者は他人事ではない。「子どもの未来のためにも意思を示したかった」
     ■
 「原発銀座」と呼ばれる福井県若狭地方の敦賀市。4月24日にあった市議選で4回目の当選を果たした今大地(こんだいじ)晴美さん(60)の気持ちはいまも晴れない。
 告示日の街頭演説で「福島の原発事故は他人事でありません」と口にすると、「耳の痛い話は聞きたくない」と聴衆が離れた。支持者の60代の女性に「ごめんなさい」と握手を拒まれた。「いまなら聞いてもらえる」と期待していたが、脱原発の主張をいったん封印。数日後、別の支持者に背中を押されて脱原発の持論を訴えたが得票を減らした。

     ■
 山口県上関町は、瀬戸内海西部にある。2018年の運転開始を目指す中国電力の原発建設をめぐり、推進派と反対派のせめぎ合いが約30年間続く。
 3月14日。2人の町議が町議会事務局を相次いで訪れ、2日後に予定していた質問の取り下げを伝えた。
 反対運動で1年3カ月中断した工事が、2月下旬に再開したばかり。座り込みなどの反対運動を工事を遅らせた「違法な妨害」と非難し、追及の矛先を向けようとした矢先だった。
 「いまそんな質問をすれば、かえって発電所建設のマイナスになる」。質問を取り下げた1人、西哲夫町議(63)は理由を説明した。
 原発推進を掲げる柏原重海町長(61)は言う。「いまは原子力に関するあらゆる議論をやめ、国民すべてが収束を願うことが人の道だ」
 推進派は沈黙し、原発をめぐる世論はどこかつかみどころがない。
住民団体「上関原発を建てさせない祝島島民の会」の代表、山戸貞夫さん(61)は会員に「言動は慎重に」と伝えた。「事故を『それ見たことか』と思っていると誤解されれば、世論を敵に回す」と考えた。
 上関原発の建設工事は一時中断しているが、地質調査のための掘削は続く。現場の田ノ浦湾には毎日、ダイナマイトの音が響いている。
     ◇
■福島第一原発事故をめぐる主な動き
3月11日 福島第一原発が津波で全電源を喪失。政府が初の原子力緊急事態宣言を発令
  12日 1号機で水素爆発。社員ら4人がけが
  14日 3号機で水素爆発
  18日 福島第一原発事故が国際評価尺度でスリーマイル島原発事故と並ぶ「レベル5」に
  24日 3号機タービン建屋内の放射能汚染水で、作業員3人が被曝(ひばく)
4月12日 福島第一原発事故が国際評価尺度でチェルノブイリ事故と並ぶ「レベル7」に
  22日 福島第一原発の半径20キロ圏内が「警戒区域」に。住民も含め、原則立ち入り禁止となる
     ◇
 激しい揺れ、大津波、そして原発事故。経験したことのない大災害は、日本社会の言論状況に何をもたらしたのか。朝日新聞阪神支局で記者2人が殺傷された事件(1987年5月3日)を機に始めた企画の第36部でその姿を追う。(この連載は、武田肇、白木琢歩、山田優、神田大介、成沢解語、羽根和人が担当します)  




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世界一小さい椿「エリナ」・桃花ロドレイア(シャクナゲモドキ)・椿「白芯ト伴」/珍しい花木の植え付け

2011-05-03 19:48:23 | 花/美しいもの
ドウダンツツジが満開で、この花の蜜を求めて、
クマバチがたくさん蜜を吸いにやってきます。
  
毎日、クマバチを網でつかまえて退治するのが日課になっています。

クマバチは日本蜜蜂の大敵。
っていうか、オスバチがホバリングして、
ミツバチはもちろん、縄張りに近づくものを追っ払ってしまうのです。

昨日、巣箱にはいったミツバチは、この場所が気に入ったのか
一晩たっても、元気に出入りしているのですが、
他の二つの箱は、屋根の上で待ち構えているクマバチに体当たりされて、
昼過ぎにはミツバチがいなくなってしまいました。

昨年の経験では、蜂たちが「あそこは危険」と相談するのか、
数日たっても、戻ってこないのです。
「猫を追うより皿を引け」ということわざに習って、あと二つも、
昨日ミツバチが入った崖下に場所をかえました。

ということで、きょうはミツバチは入りませんでした。
明日を期待しましょう。

  

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ミツバチを気に賭けながら、今日も、花木の苗木を植えました。

るなさんのブログを見て欲しかった、世界一小さい椿「エリナ」。
●妖精のような椿。エリナカスケード。
(●苔玉ごろごろ、だから苔想●●2009年04月24日)

 
いちばんよく見えるところに植えました。
 

うしろはマーシュの花です。

桃花ロドレイアは、浜松フラワーパークで見た花。
マンサク科シャクナゲモドキ属、別名:シャクナゲモドキ。

ロドレイア『レッドファンネル』
 
はじめてみたとき、「えっこれ何」と思った、
石楠花に似た印象的な花です。
生育は遅いそうで、まだ珍しいので苗も高いのです。
どうしても欲しくて、花木センターを探し回って、比較的安い苗を購入。

こちらもよく見える、坂をあがったところに植えました。

一目ぼれした椿「白芯ト伴」(はくしんぼくはん)。
別名「月光」(ガッコウ)、花は濃紅色 唐子咲き。
花芯の唐子弁は白色に赤が少しまじっいて、とても美しい花です。
 
 
 

かれんな枝垂れ椿「孔雀」(くじゃく)。
  

ハナミズキ(ピンク)。
  
ハナミズキは2本買ったのですが、小さいほうです。

とりあえず、今日はここまで。
花木の植え付けは、まだまだ続きます。

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キンリョウヘンの花に魅せられて日本蜜蜂がやってきた。

2011-05-02 19:08:57 | ニホンミツバチ
キマタ種苗店に夏野菜の苗を買いに行った時、
ひょっとしたらあるかな、と思って、
キンリョウヘンを探したら、「ありました!」。
東洋ランの横に、それも、花つきで三鉢も。

花が3本立っていて、3,500円は格安です。
迷わず、2鉢かごの中に入れて、先に清算して車の中に。
残りの一鉢は、「キンリョウヘン・トキワ」という花の大きい品種で、
花が2本で、3,850円だったので少し迷ったのですが、
まだ開いていない蕾がついていたので、買いました。
 
この時期に、開花鉢が手に入ると思っていなかったし、
値段も相場の半額以下なので、るんるんと持ち帰りました。、

家にかえったら、さっそく、鉢にネットをかけました。
 
なぜネットをかけるかというと、ニホンミツバチはキンリョウヘンの花が
大好きなので、ネットをかけないと、すぐに花にもぐりこんで受粉してしまい、
そうなると、花が終わってしまうんですって。

   

ネットをかけたキンリョウヘンを待ち受け箱の横にセット。
  




きのうは雨が降っていたので、ミツバチの分蜂はありません。
とはいえ、夕方雨があがったら、何匹か偵察してるみたいに、
花のまわりを飛んでいました。

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きょうは晴れて暖かい日なので、ミツバチの分蜂群がやってくるかも、
と期待しながら、庭仕事をしていました。
ミツバチはどの花のまわりにも、10匹以上飛び回っていて、
箱の具合を確かめているのか、しきりに出たり入ったり。

お昼過ぎにご飯を食べようと、帽子をぬいだら、
ブンブンとすごい蜂の羽音がするので、ふと屋根の上を見ると、
無数の蜜蜂が空を飛んでいます。

「ともちゃん、ニホンミツバチ来たよ」
とさけんで、蜜蜂の飛んで行く方向に走っていくと、
山の下の箱の前に、飛び回っています。

箱の左柄、白い点々に見えるのがミツバチです。

キンリョウヘンの花を置いて、たった一日で日本蜜蜂の一群がやってきました。
キンリョウヘン、すごい威力。日本蜜蜂の媚薬のようです。

飛んでいたミツバチたちは、まずキンリョウヘンに集まったのですが、
   
すぐに、自発的に箱の中に入り始めました。
   
整然と順番に、下の隙間から、歩いて入っていきます。
   

  

夕方見に行くと、もう全部の蜂のお引越しが終わったようで、
箱の中でから、一、二匹の蜂が顔をのぞかせています。
   

日本蜜蜂がやってきた、とてもハッピーな、感動の一日でした。

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コメント
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