沖縄タイムスに、首都大学東京准教授で憲法学者の木村草太さんの憲法の新手:久辺3区への補助金「違法」が掲載されていました。
辺野古新基地建設に関連し、政府による名護市の久辺三区への直接振興費の支出が問題となっていますが、この問題を公法学の視点から考えてみようというものです。
公的助成については、幾つか守らなければならない法原則があります。
まず、公共の目的を達成するため(公益性原則)、かつ、目的を達成するために有効なものでなければならない(有効性原則)。
そして、これらの原則の派生原則として、補助金の使途は、公益目的のために有効な範囲に限定されていなくてはならない(使途特定原則)というものです。
それでは、今回の直接振興費に公益性と有効性を認めることができるのかを検討してみます。
前提として、辺野古区・豊原区・久志区の三区の性質を確認しておくと、沖縄では、その地域の住民からなる地縁団体を「区」と呼んでいます。
それ以外の都道府県では、町内会や自治会と呼ばれることが多いのですが、東京都の「特別区」や政令指定都市の「区」などの行政区画とは異なるものです。
菅義偉官房長官は、11月6日の記者会見で、直接振興費を反対運動から生じる騒音やごみへの対応だと説明していました。
しかし、反対運動は適法な表現活動の範囲にあり、仮に、周辺住民が運動する市民を騒音で訴えても、損害賠償が認められることはありません。
その程度の「騒音」に、政府が高額の補助金を支出するのは、公益性原則に反することになりますね。
また、ごみ対策なら、直接振興費の使途を掃除代に限定すべきです。
しかし政府からは、使途を厳しく限定する旨の説明は全くありません。
また、直接振興費の目的として、辺野古への基地移設に「地元の理解を得るため」と言われることもありますが、政策への支持は、その政策が公共的で合理的であることの説明によって獲得すべきです。
政策への支持を取り付けるためにお金を出すというのでは、まるで地域ぐるみの買収ですね。
そのために税金を使うことは、当然、公益性原則に反することは明らかです。
このように、現状の説明では、公益性原則に反するので、直接振興費の支出は違法だと思われます。
政府は、誰もが納得できる公共の目的を、しっかりと提示する必要がありますが、まあ説明できないでしょうね(説明する気もないでしょうが)。
さらに、平等原則・公正手続きとの関係も大問題です。
もし久辺三区に直接振興費を給付すれば、沖縄県内はもちろん、全国の米軍基地周辺の区・町内会・自治体などが、同等の給付を要求するでしょう。
憲法14条1項は、平等原則を保障しているから、政府は、それらの要求に応えざるを得なくなり、財政に与える影響はかなり深刻です。
政府は、「久辺三区は特別だ」と主張するかもしれませんが、対象を厳しく選択する補助金については、公正な第三者委員会を設置して交付の可否を判断する仕組みが広がっています。
先に確認した通り、誰もが納得する理由は示されていない以上、否決の可能性が高いと考えられます。
もし第三者委員会を設置せずに、政府の意向だけで対象を選べば、公正手続きに違反すると評価されてもやむを得ません。
このように、法的に解釈すれば違法であることが明らかな直接交付について、ごり押ししようとする安倍政権の政策は破たんしています。
これからは、独裁政治対法律との戦いになりますね。
裁判所の良心が問われています。
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辺野古新基地建設に関連し、政府による名護市の久辺三区への直接振興費の支出が問題となっていますが、この問題を公法学の視点から考えてみようというものです。
公的助成については、幾つか守らなければならない法原則があります。
まず、公共の目的を達成するため(公益性原則)、かつ、目的を達成するために有効なものでなければならない(有効性原則)。
そして、これらの原則の派生原則として、補助金の使途は、公益目的のために有効な範囲に限定されていなくてはならない(使途特定原則)というものです。
それでは、今回の直接振興費に公益性と有効性を認めることができるのかを検討してみます。
前提として、辺野古区・豊原区・久志区の三区の性質を確認しておくと、沖縄では、その地域の住民からなる地縁団体を「区」と呼んでいます。
それ以外の都道府県では、町内会や自治会と呼ばれることが多いのですが、東京都の「特別区」や政令指定都市の「区」などの行政区画とは異なるものです。
菅義偉官房長官は、11月6日の記者会見で、直接振興費を反対運動から生じる騒音やごみへの対応だと説明していました。
しかし、反対運動は適法な表現活動の範囲にあり、仮に、周辺住民が運動する市民を騒音で訴えても、損害賠償が認められることはありません。
その程度の「騒音」に、政府が高額の補助金を支出するのは、公益性原則に反することになりますね。
また、ごみ対策なら、直接振興費の使途を掃除代に限定すべきです。
しかし政府からは、使途を厳しく限定する旨の説明は全くありません。
また、直接振興費の目的として、辺野古への基地移設に「地元の理解を得るため」と言われることもありますが、政策への支持は、その政策が公共的で合理的であることの説明によって獲得すべきです。
政策への支持を取り付けるためにお金を出すというのでは、まるで地域ぐるみの買収ですね。
そのために税金を使うことは、当然、公益性原則に反することは明らかです。
このように、現状の説明では、公益性原則に反するので、直接振興費の支出は違法だと思われます。
政府は、誰もが納得できる公共の目的を、しっかりと提示する必要がありますが、まあ説明できないでしょうね(説明する気もないでしょうが)。
さらに、平等原則・公正手続きとの関係も大問題です。
もし久辺三区に直接振興費を給付すれば、沖縄県内はもちろん、全国の米軍基地周辺の区・町内会・自治体などが、同等の給付を要求するでしょう。
憲法14条1項は、平等原則を保障しているから、政府は、それらの要求に応えざるを得なくなり、財政に与える影響はかなり深刻です。
政府は、「久辺三区は特別だ」と主張するかもしれませんが、対象を厳しく選択する補助金については、公正な第三者委員会を設置して交付の可否を判断する仕組みが広がっています。
先に確認した通り、誰もが納得する理由は示されていない以上、否決の可能性が高いと考えられます。
もし第三者委員会を設置せずに、政府の意向だけで対象を選べば、公正手続きに違反すると評価されてもやむを得ません。
このように、法的に解釈すれば違法であることが明らかな直接交付について、ごり押ししようとする安倍政権の政策は破たんしています。
これからは、独裁政治対法律との戦いになりますね。
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