梅雨に入って、紫の花が咲き始める。ひときわ輝きを見せるのは、紫陽花である。
紫陽花が日本古来の種であることは、この花が万葉集で詠まれていることからもわかる。それゆえ、寺院のある古都京都に似合う花である。
あぢさゐの 八重咲くごとく 八つ代にを
いませ我が背子 見つつ偲はむ (巻20・4448)
京都府井出町地福寺境内には、橘諸兄夫妻の供養塔があり墓もある。歌は八重に咲く紫陽花の花のように、諸兄へ弥栄を寿ぐ歌である。
紫陽花の花は、飾り花で実を結ばない。花に見えるのはがくで、4、5枚ある。がくは咲きはじめは白く、やがて青になり、しだいの青紫に変化する。こんなことから「七変化」とも呼ばれる。
わが家のベランダには、紫陽花ならぬサクソルムの花(写真)が満開である。一つの花茎から、2,3輪の紫の可憐な花をつけ、こちらはしっかりと実を結ぶ。原産地は南アフリカはタンザニア、ケニア地方である。イワタバコ科で同じ科のセントポーリアは花を咲かせるのは、なかなか難しいが、サクソルムは比較的簡単だ。但し、鉢植えでは根が廻りすぎると、花が咲かなくなるので、植え替えなどしっかりとした管理が必要だ。
ストレプトカーパス・サクソルムは園芸種として、昭和初期にイギリスから輸入された。花言葉は主張。ストレプトカーパスとは牛の舌の意味だ。そういえば、花びらがどこか牛の舌に似ている。
紫陽花の咲く里へ出かけるまえに、ベランダのソクソルムの花で一時癒されていたい。