春の七種は、秋の七草と違って食べる菜である。「セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ」であるが、日本人が万葉時代の昔から、春の丘で摘んで食べたものである。新しい年に萌え出るので、香り高い植物である。今はもう食卓に上らないものもある。
ナズナはペンペン草と言われ、花が終わって生る実が三味線のバチの形に似ているのでこの名がある。ゴギョウはハハコグザ、茎葉の出たばかりの若いものを食する。
ハコベラはハコベとも呼ばれ、藤村の詩に「緑なすハコベは萌えず、若草もしくによしなし」と詠まれている。小鳥の餌さに使われたりもする。ホトケノザは、葉が広がるので仏様の座のようでこの名がある。しかし、秋から冬、越年する植物は一般に大きく葉を広げて少なくなった太陽の紫外線を受け取ろうとする。タビラコ(田平子)とも呼ばれるようだ。
スズナ、スズシロは今でも食卓に上る定番だある。スズナがカブ、スズシロがダイコンと言えば誰もが容易に分かる。正月の七日には、春の七草を入れた七草粥が食されてきたが、今ではどれほどの家庭にこの習慣が残っているだろうか。我が家ではも何十年も前から、粥を作ることすら忘れている。
すずろいでて松笠ひろふ七日かな 渡辺 水巴