春の息吹が感じられるうららかな日和のなか、岳風会山形地区の「新春の集い」が開かれた。もう新年会の集まりも最後である。山形地区の集いであるため、集まった150名はより身近な存在である。この日注目された吟詠は、山形岳風会の太田会長が披露した和歌連吟である。和歌の吟詠は通常一首の和歌を、序詠と本詠で2回繰り返して詠ずる。序詠はその一首の紹介という形でさらりと詠じ、本営で声を張り、詩情を格調高く歌い上げる。
太田会長が試みた和歌連吟は、2首の和歌を詠ずることであった。1首は斎藤茂吉の「新年の歌」、そしてもう一首は佐々木信綱の「春」である。「新年の歌」を序詠に、「春」を本詠に据えた。詩文を記すと
新しき年のはじめの朝めざめ
生きとし生けるこころはげまむ (茂吉)
春ここにうまるる朝の日をうけて
山河草木みな光あり (信綱)
こうして2首が連吟されると、年が明けて、春の日差しをあまねく受けて、木々の芽がふくらんでいく様子が大きく広がっていく。とくにこの日は、空に雲一点もない快晴。じつに清々しい陽気にふさわしい吟詠となった。これからの吟詠は、こうした新しい挑戦が、次の時代を拓いていくように思えた。