昨日から雪になった。これほど雪の少ない正月だと雪景色が新鮮だ。秀麗な山容の千歳山がこの冬、二度目のきれいな雪をまとった。この美しい山の姿を見るにつけ、この地の領主の娘にこの山の精霊が儚い恋をした阿古耶姫伝説の舞台に、ここが選べれた理由が分かる気がする。精霊との恋が成就しなかった阿古耶姫はこの山の麓に庵を結んで尼となり、精霊の菩提を弔った。阿古耶姫は慶雲4年(707)に亡くなるが、その時辞世の歌を詠んだ。
消えし世の跡とふ松の末かけて名のみは千々の秋の月影
姫の遺言に、「遺骸は千歳山に葬り、そこへ松をうえよ」とあった。今、この山の頂上には、松がありその傍らに阿古耶の松の石碑がある。昨年もこの山に折にふれて登っているが、山中で行きかう人は見慣れた顔ぶればかりである。この山を愛し、毎朝この山に登るのを日課にしている人がたくさんにる。
降る雪のをりをり隙をひろげ舞ふ 井沢 正江