常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

やませ

2017年08月23日 | 日記


オホーツク海高気圧が南下して、三陸沖に停滞し、真夏に湿った冷たい風が流れ出すのを、「やませ」と言う。この風が吹くと、東北地方の米はおしなべて被害をうける。この地方に稲作が始まって、1200年以上の歳月を経るが、その間に300回を超える冷害の年があった。農業の技術が発達していない時代には、4年に一回冷害起き、飢饉で多くの人が命を失った。

太宰治は『津軽』に、この夏の冷害の様子を、郷土史研究の書物からその有様を書き写している。津軽弁で云う「ケガズ」は凶作のことだが、その語源は飢渇であろうと書いている。

「7月6日頃より暑気出で、盆前単衣物を着用す、同13日頃より早稲大いに出穂ありし為人気頗る宜しく盆踊りも頗る賑やかなりしが、同15日、16日の日光白色を帯び恰も夜中の鏡に似たり、同17日後半、踊子も散り、来往の者も稀疎にして追々暁け方に及べる時、図らざりき厚霜を降らし出穂の首傾きたり、往来老若之を見る者涕泣充満たり。」

盆踊りの頃、出穂した稲の上に、霜がぶ厚く降りたのである。米を作る農民たちに、一体このような自然現象に立ち向かうどんな術があったであろうか。ただ、泣き叫ぶほかはない。この夏も、宮城県を中心に、冷害の被害が心配されている。米ばかりではなく、野菜のできにも大きな影響がある。「やませ」は、日々の食品である野菜の価格を、驚くほどに上げている。

津軽女等やませの寒き頬被 富安 風生

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